43 / 257
第二章 未知の世界への移住
マリーアントワネットですか
しおりを挟む
「こんなのないわ……離してよ! まだ死にたくなんてないわ!」
「バカ犬とバカ猫! ふざけんじゃねえぞ! 全員まとめてぶっ殺してやる!」
泣きながら橘さんが、大暴れしながらシンがそう叫んでいる。
俺達は両手を縄で縛られて、木で作られた処刑台の上に一列で立っている。
処刑台は、木々を故意に切り開いたであろう場所に設置されていた。
俺達が並ぶ列の両端には、俺達の顔の三倍はあるであろう大きな斧を持った犬人間が二匹……まあ二人か。
体毛は黒で、鼻の周りは茶色、体長は俺達と変わらないだろうが、とにかく筋肉がすごくてごつかった。
何て犬種だったっけ……ロット? ロット何とかだった気がする。
きっと、あの大きな斧で端から首を落とされていくのだろうと、俺はやけに冴えきった頭でそう考えていた。
「あんたら全員、絶対にいい死に方とかしないから! 死ね、死んじまえ!」
「末代まで絶対に呪うからね! 一生化けて出てやるわよ……!! うう……!!」
デルタが普段よりドスの効いた声で怒鳴り、その隣でソニアは涙を浮かべて必死に耐えている。
処刑台に吹いた風が、そのソニアの涙を綺麗に攫っていく。
そこら中に自然が生い茂る森を通り抜けていく風は、とても冷たかった。
「これまでというとこですか……」
「こんなのあんまりだあああああ!! もうお願いだから、助けてくれええええええええええええ!!」
「父上! 母上! あなた方二人の息子として生まれて、このハロルド・早乙女は幸せでしたあああああ!!」
「どうして……ああ、何でなの……」
モーリスは全てを諦めたように天を仰ぎ、ジェームズは泣きじゃくったぐちゃぐちゃの状態で命乞いをして、ハロルドは家族に涙ながらに別れを告げる。
その隣で、クレアは静かに絶望し、座り込んで泣いていた。
今、俺達の目の前……つまり、処刑台の前には、何百という数の犬人間と猫人間が集まっている。
種類は様々で、昨日出会った犬人間と猫人間は鎧のようなものを着てたけど、目の前のおそらく市民であろう奴らも服を着ていた。
全員が俺達のことを見ている。
その視線には何かを……少なくともプラスの感情ではないことは確かだ。
「神よ……どうか、この魂をお守りくださいませ」
「大したことねえ人生だったな」
ローレンさんは目を閉じて神に祈りを捧げているようだ。
神なんて、本当にいるのかよ……
その横で望が覇気のない声で、そう吐き捨てた。
本当に同感だ、俺の人生こんなとこで終わるのか……
「昴! おーい、昴!」
「しっかりして! 聞いてんの!?」
「……サトル、真由」
ボーッとしていると、両隣のサトルと真由が俺に小声で話しかけてきた。
俺は、二人に交互に視線を向ける。
「湖中と一緒に、協力してくれ!」
「え、何する気だよ?」
「やっぱり、聞いてなかったのね? 昴のこと挟んで雨野と話してたのに」
「わ、悪かった……」
どうやら俺は思いの外、自分の世界に入ってしまっていたようだ。
「この縄、少し力入れて頑張ったら切れそうなんだよ! 切れたら、僕が囮になって奴らの気を逸らす! その隙に、全員で逃げるんだ!」
「落ち合うのは、自動車の場所よ!」
「は!? 待ってくれ! 無謀だし、全員の命の保証がないだろ!」
小声で奴らに気付かれないように話をしながらも、さすがに無茶な作戦に俺は口調が荒くなる。
「今はこれしかないんだよ!」
「昴……私、まだ死にたくないわ……すごく怖いもの! 何もせずに、大人しく処刑されるなんて、絶対にいや……!!」
「サトル、真由……わかった、やろう」
二人のことを強いなと、羨ましいなと素直に俺はそう思った。
このままなんて、確かにそんなこと許されないし、死にきれないよな。
作戦通りに、俺が両端に立つ犬人間に話しかけようとした時だ。
「おい、待て! 何する気だ!」
とても珍しいアランの、慌てた声が聞こえたと思った瞬間……
「ワンとか、ニャーとか、この場で全員鳴いてみろ!」
君は突然、森全体に響き渡ったかと思うほどの大声を響かせた。
「バカ犬とバカ猫! ふざけんじゃねえぞ! 全員まとめてぶっ殺してやる!」
泣きながら橘さんが、大暴れしながらシンがそう叫んでいる。
俺達は両手を縄で縛られて、木で作られた処刑台の上に一列で立っている。
処刑台は、木々を故意に切り開いたであろう場所に設置されていた。
俺達が並ぶ列の両端には、俺達の顔の三倍はあるであろう大きな斧を持った犬人間が二匹……まあ二人か。
体毛は黒で、鼻の周りは茶色、体長は俺達と変わらないだろうが、とにかく筋肉がすごくてごつかった。
何て犬種だったっけ……ロット? ロット何とかだった気がする。
きっと、あの大きな斧で端から首を落とされていくのだろうと、俺はやけに冴えきった頭でそう考えていた。
「あんたら全員、絶対にいい死に方とかしないから! 死ね、死んじまえ!」
「末代まで絶対に呪うからね! 一生化けて出てやるわよ……!! うう……!!」
デルタが普段よりドスの効いた声で怒鳴り、その隣でソニアは涙を浮かべて必死に耐えている。
処刑台に吹いた風が、そのソニアの涙を綺麗に攫っていく。
そこら中に自然が生い茂る森を通り抜けていく風は、とても冷たかった。
「これまでというとこですか……」
「こんなのあんまりだあああああ!! もうお願いだから、助けてくれええええええええええええ!!」
「父上! 母上! あなた方二人の息子として生まれて、このハロルド・早乙女は幸せでしたあああああ!!」
「どうして……ああ、何でなの……」
モーリスは全てを諦めたように天を仰ぎ、ジェームズは泣きじゃくったぐちゃぐちゃの状態で命乞いをして、ハロルドは家族に涙ながらに別れを告げる。
その隣で、クレアは静かに絶望し、座り込んで泣いていた。
今、俺達の目の前……つまり、処刑台の前には、何百という数の犬人間と猫人間が集まっている。
種類は様々で、昨日出会った犬人間と猫人間は鎧のようなものを着てたけど、目の前のおそらく市民であろう奴らも服を着ていた。
全員が俺達のことを見ている。
その視線には何かを……少なくともプラスの感情ではないことは確かだ。
「神よ……どうか、この魂をお守りくださいませ」
「大したことねえ人生だったな」
ローレンさんは目を閉じて神に祈りを捧げているようだ。
神なんて、本当にいるのかよ……
その横で望が覇気のない声で、そう吐き捨てた。
本当に同感だ、俺の人生こんなとこで終わるのか……
「昴! おーい、昴!」
「しっかりして! 聞いてんの!?」
「……サトル、真由」
ボーッとしていると、両隣のサトルと真由が俺に小声で話しかけてきた。
俺は、二人に交互に視線を向ける。
「湖中と一緒に、協力してくれ!」
「え、何する気だよ?」
「やっぱり、聞いてなかったのね? 昴のこと挟んで雨野と話してたのに」
「わ、悪かった……」
どうやら俺は思いの外、自分の世界に入ってしまっていたようだ。
「この縄、少し力入れて頑張ったら切れそうなんだよ! 切れたら、僕が囮になって奴らの気を逸らす! その隙に、全員で逃げるんだ!」
「落ち合うのは、自動車の場所よ!」
「は!? 待ってくれ! 無謀だし、全員の命の保証がないだろ!」
小声で奴らに気付かれないように話をしながらも、さすがに無茶な作戦に俺は口調が荒くなる。
「今はこれしかないんだよ!」
「昴……私、まだ死にたくないわ……すごく怖いもの! 何もせずに、大人しく処刑されるなんて、絶対にいや……!!」
「サトル、真由……わかった、やろう」
二人のことを強いなと、羨ましいなと素直に俺はそう思った。
このままなんて、確かにそんなこと許されないし、死にきれないよな。
作戦通りに、俺が両端に立つ犬人間に話しかけようとした時だ。
「おい、待て! 何する気だ!」
とても珍しいアランの、慌てた声が聞こえたと思った瞬間……
「ワンとか、ニャーとか、この場で全員鳴いてみろ!」
君は突然、森全体に響き渡ったかと思うほどの大声を響かせた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる