エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑴ 昴と望と真由

人間関係って難しいですよね

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「昴! こっちを頼む!」
「少し待ってくれ、すぐ行く!」


 俺は今、屋根に上って雨漏りの修理をしているところだ。
 早いもので、俺達が犬族と猫族の国に移住して三週間が経過した。


「レオ! サトル! 終わったぞ!」
「お疲れ、昴!」
「さっそくで悪いけど、また床抜けがあったらしいから、修理に行ってくれ!」
「了解!」


 慣れたもので、俺はすんなりと屋根を下りて、レオから労りの言葉を受ける。
 すると、すぐにサトルからの次の仕事場への声がかかり、俺は走り出す。


「昴! 待って!」
「あ、真由か。お疲れ!」


 真由に呼び止められ、俺は足を止めて向き直る。


「お疲れ様! ちょっと目瞑って?」
「え?」
「目の下、また汚れてるから」
「お、おう……悪いな」


 言われた通りに目を瞑り、俺は真由の身長に合わせるように少し屈む。
 目の下に布を当てられ、優しく丁寧に真由は拭いてくれる。
 ナサニエルが地上に落ちて約二か月。
 俺は遅めの成長期なのか、身長がグンと伸び始めていた。
 そのせいで、今までほぼ身長差がなかった真由との目線が、最近ではかなり下の方になってしまった。
 

「うん、綺麗になった! 目開けても大丈夫だよ!」
「あ、ありが……どおわっ!?」
「え? な、何!?」
「お、お前……近いんだよ……!!」


 叫ぶと同時に、思わず俺は後ろに大きく仰け反ってしまった。
 けど、無理もないだろうよ!
 目を開けたら、すぐそこに真由の顔があって、少し動いたら……ああああ!


「近いって、当たり前でしょ? 目の下の汚れを拭いてたんだから」
「それは! そうだけど……目を開けて大丈夫とかは、自分が離れてから……」
「え? ごめん、何て言ったの?」


 本当におかしいんだよな、最近全てが調子狂ってる。
 前まで普通にしてたことが、何だか照れくさかったりで。
 そもそもだ、真由ってこんなに小さかったっけな……?


「あ、そうだ! 昴、野菜の成長なんだけどね?」
「え、あ、ああ……」
「キャベツとニンジンは、すごくいい感じに成長してるわ! 見に来てね!」
「そ、それは、よかったよ……」
「あと、ジャガイモの収穫のタイミングって、いつなんだっけ?」
「あれはだな……えっと、葉と茎が黄色に変色して、枯れてきたらだ……うん」
「ありがとう! まだまだだけど、ワンニャン王国の改革、頑張ろうね!」
「そうだな……あ、俺行くわ!」
「あ、そっか! 急に引き止めちゃってごめんね?」
「全然! まったく大丈夫だから!」


 俺は逃げるように、足早に真由のもとを走り去った。
 今の会話の間、俺はなぜか真由と目を合わせることができなかった。
 何を動揺してんだよ……これからまだ忙しくなるんだぞ?
 犬族と猫族と暮らすようになり、俺達は空島で築いた文明を活かし、このワンニャン王国を改革することにした。
 今の俺達は、毎日それで大忙しだ。
 ちなみに、いつの間にか定着したワンニャン王国とこの村を名付けたのは、橘さんとソニアだ。
 来たばかりの時は、まるで古い映画で見た中世のヨーロッパのようだった。
 石造りの家、衣服は地味で、使う道具は粗末なものばかりか、電気、ガス、水道なんてあるわけもなく……
 そんな状況を変え、力を合わせて生活を豊かにしようと俺達は様々な知恵を絞った。
 まずは、家の建て直しと、全ての道具の強固や新調と、食料を自分達で作ることから始めたのだが……


「望! お前も少しは手伝え!」 
「俺に指図すんな!」
「これは指図じゃないだろ!? みんなが協力して街作りしてるのを見て、悪いとは思わないのか!?」
「あ? ふざけんな、テメーらが勝手に決めたことだろうが! 俺は一度も賛成した覚えはねえ!」


 望をはじめとして、作業をサボる奴が少なからず悲しいことにいる。
 おかげで、本来なら進むはずの作業があまり進んでいないのが現状だ。
 望とはそれも原因で、最近は顔を合わせれば喧嘩ばかりしてしまう。


 今では想像もできないけど、昔の俺達はこんなんじゃなかった。
 喧嘩なんてしたこともないほど、あの頃の俺達は仲が良かったんだ。
 けれど、いつからか望は俺の目を見なくなり、俺を避けるようになり、話をしなくなっていった。
 理由が何なのか、今でも俺はどこかでその答えを探している気がする……
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