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第三章-⑵ デルタとソニア
嘘つきはゾーイの始まり
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アランは、今いる一般的に言えばリビングのような場所とは別に、奥の寝室であろう部屋から出て来た。
そして、ゆっくりと歩いて来たのだ。
「え……アラン!? そこにいたのか!?」
「待って! 本当にいつから!?」
レイモンド兄妹は揃って、これでもかと目を見開き、驚いて叫んでいた。
「最初からよ? ねえ? 心優しきアランくん?」
しかし、質問された本人よりさっさと答えてしまう、ゾーイ……
おまけにとてもいい笑顔で、アランに問いかけていた。
「……何のことだ」
それに対するアランの顔は、無表情の中にも隠し切れないゾーイへの怒りや悔しさとかが、ぐちゃぐちゃになっている複雑な感情が見てとれた。
これで少し合点がいったぞ?
アランの名前が出る度に、いつもより少しだけゾーイの言葉がおちょくりマックスだなとは思っていたけど……
アランがいることを知ってたから、あえて挑発してたのか……
そして、おそらくアランは今回の集まりのことを知って、レイモンド兄妹が心配だったと……
けど、これ不法侵入ってやつ……
というか、ゾーイも知ってたなら俺には教えてくれたって……
本当にゾーイといるだけで、俺の精神とかその他もろもろがすり減る……
「まあまあ、経緯がどうだったかへの興味はないけど、この二人を救った恩人なわけでしょ? 惜しいわよね~? もう少し愛想が良かったら、モテるのに」
「ぶっ殺されたいのか」
「あ、おっと失礼? そもそも、アランくんは女に困ってないか」
俺が軽く現実逃避をしてる間にも、ゾーイから溢れるアランへのおちょくりの数々。
見えないの、ゾーイ?
今のアランね? 青筋を立ててるよ?
いよいよ、どうしたものかと密かに震えが止まらない俺である。
そんな俺の目の前で、糸が切れたように吹き出して、爆笑し始めたのはレイモンド兄妹だった。
「あははは……!! 本当に、ゾーイって面白いよね!」
「まったくだよ。アランに対して、ここまで言えるなんてな……ははっ」
ずっと笑いが止まらないレイモンド兄妹のことを、俺にはゾーイがどこか満足げに見ているように思えた。
思えば、昨日のことがあって、今日は無意識にレイモンド兄妹のことを目で追っていたけど、俺が見てた限りでは今日の二人は笑ってなかった気がする。
まさか、ゾーイは二人を笑わせようとしてわざとアランのことを……
「それで、夜這いしたの?」
多分、いや、絶対に俺の考えすぎだ。
「シンじゃないんだから、そんなことアランがするわけないでしょ?」
「えっと……それじゃ、何で、アランは気付いたの?」
どうやら、落ち着いたらしいソニアが呆れながら答えていた。
待て、その流れで引き合いに出されるシンは何なんだ。
とにかく、ここもまた話題転換をするのが一番だと思って、俺は自ら動く。
「アランは初めて会った時から、俺が男って気付いてたんだよ。事情を話すと、誰にもバレないようにしろ、何かと女に化けてた方が都合がいいってことで、俺は女装を続けたんだ。実際、アランの近くでの生活は女の方が生きやすかったのは事実だな」
デルタはアランの顔を横目でチラリと見ながら、少し笑いながら答えた。
「そうなんだ……シンに話さなかった理由とかは聞いてもいい?」
「昴、それ本気で聞いてる? 理由とか簡単じゃないの。シン、絶対に秘密とか守れないでしょうよ。喋らなくても、挙動不審になってバレるでしょ」
俺は個人的にずっと気になっていたことをデルタに尋ねたけど、それはゾーイによって一蹴されることになる。
そして、ぐるりと三人を見回すとレイモンド兄妹は顔を見合せて苦笑いで、アランは無表情だけど、途端に俺から目を逸らしていた。
それを見れば、シンに話さなかった理由はそれが正解だと一目瞭然だった。
「お前も同じだろ」
そんな時、微妙になってしまった空気の中から、まさかのアランからあのゾーイに向かって声が上がった。
「え、何が?」
「……お前だって、デルタの性別には気付いていたはずだ」
「まさか! あたし、他人に関心なんて皆無だもの」
アランは確信しているという口ぶりでゾーイに問う。
けど、質問された張本人は、いつも通りのテンションで軽く受け流していく。
そんな若頭と問題児の、怖すぎるやり取りをひっくり返したのは……
「ふふっ、関心があるかどうかはともかく、気付いてないは嘘だね?」
話題の中核、デルタの言葉だった。
「ゾーイは一度だって俺に女扱いしたこともなければ、むしろ、他の男連中と同じような態度だったよ? ずっと……」
「お前は、男と女では態度と横暴さに多少なり差が出る」
デルタは含み笑いをしながらどこか面白そうに、アランは鋭い目付きで視線を逸らさず淡々と……
それぞれが、確信めいたような言葉をゾーイに投げかけるのだ。
「……疑り深いわね。別に、その爆乳が本物なわけないって思ってた程度よ」
「まあ、そういうことにしときますか」
そして、ゾーイも絶対目を逸らさずに堂々と答えるのだ。
やっぱり、この一連の行動、ゾーイは確信犯だよな……
そのゾーイの答えに対して、アランはさもバカにしたように鼻で笑い、デルタはしょうがないかと肩をすくめる。
けど、次の瞬間には、デルタの表情は真剣なものへと変わっており、ゾーイのことをまっすぐに見ていた。
「それで? 軽蔑した? この際、もうどうするのかはっきり言ってくれ」
そして、ゆっくりと歩いて来たのだ。
「え……アラン!? そこにいたのか!?」
「待って! 本当にいつから!?」
レイモンド兄妹は揃って、これでもかと目を見開き、驚いて叫んでいた。
「最初からよ? ねえ? 心優しきアランくん?」
しかし、質問された本人よりさっさと答えてしまう、ゾーイ……
おまけにとてもいい笑顔で、アランに問いかけていた。
「……何のことだ」
それに対するアランの顔は、無表情の中にも隠し切れないゾーイへの怒りや悔しさとかが、ぐちゃぐちゃになっている複雑な感情が見てとれた。
これで少し合点がいったぞ?
アランの名前が出る度に、いつもより少しだけゾーイの言葉がおちょくりマックスだなとは思っていたけど……
アランがいることを知ってたから、あえて挑発してたのか……
そして、おそらくアランは今回の集まりのことを知って、レイモンド兄妹が心配だったと……
けど、これ不法侵入ってやつ……
というか、ゾーイも知ってたなら俺には教えてくれたって……
本当にゾーイといるだけで、俺の精神とかその他もろもろがすり減る……
「まあまあ、経緯がどうだったかへの興味はないけど、この二人を救った恩人なわけでしょ? 惜しいわよね~? もう少し愛想が良かったら、モテるのに」
「ぶっ殺されたいのか」
「あ、おっと失礼? そもそも、アランくんは女に困ってないか」
俺が軽く現実逃避をしてる間にも、ゾーイから溢れるアランへのおちょくりの数々。
見えないの、ゾーイ?
今のアランね? 青筋を立ててるよ?
いよいよ、どうしたものかと密かに震えが止まらない俺である。
そんな俺の目の前で、糸が切れたように吹き出して、爆笑し始めたのはレイモンド兄妹だった。
「あははは……!! 本当に、ゾーイって面白いよね!」
「まったくだよ。アランに対して、ここまで言えるなんてな……ははっ」
ずっと笑いが止まらないレイモンド兄妹のことを、俺にはゾーイがどこか満足げに見ているように思えた。
思えば、昨日のことがあって、今日は無意識にレイモンド兄妹のことを目で追っていたけど、俺が見てた限りでは今日の二人は笑ってなかった気がする。
まさか、ゾーイは二人を笑わせようとしてわざとアランのことを……
「それで、夜這いしたの?」
多分、いや、絶対に俺の考えすぎだ。
「シンじゃないんだから、そんなことアランがするわけないでしょ?」
「えっと……それじゃ、何で、アランは気付いたの?」
どうやら、落ち着いたらしいソニアが呆れながら答えていた。
待て、その流れで引き合いに出されるシンは何なんだ。
とにかく、ここもまた話題転換をするのが一番だと思って、俺は自ら動く。
「アランは初めて会った時から、俺が男って気付いてたんだよ。事情を話すと、誰にもバレないようにしろ、何かと女に化けてた方が都合がいいってことで、俺は女装を続けたんだ。実際、アランの近くでの生活は女の方が生きやすかったのは事実だな」
デルタはアランの顔を横目でチラリと見ながら、少し笑いながら答えた。
「そうなんだ……シンに話さなかった理由とかは聞いてもいい?」
「昴、それ本気で聞いてる? 理由とか簡単じゃないの。シン、絶対に秘密とか守れないでしょうよ。喋らなくても、挙動不審になってバレるでしょ」
俺は個人的にずっと気になっていたことをデルタに尋ねたけど、それはゾーイによって一蹴されることになる。
そして、ぐるりと三人を見回すとレイモンド兄妹は顔を見合せて苦笑いで、アランは無表情だけど、途端に俺から目を逸らしていた。
それを見れば、シンに話さなかった理由はそれが正解だと一目瞭然だった。
「お前も同じだろ」
そんな時、微妙になってしまった空気の中から、まさかのアランからあのゾーイに向かって声が上がった。
「え、何が?」
「……お前だって、デルタの性別には気付いていたはずだ」
「まさか! あたし、他人に関心なんて皆無だもの」
アランは確信しているという口ぶりでゾーイに問う。
けど、質問された張本人は、いつも通りのテンションで軽く受け流していく。
そんな若頭と問題児の、怖すぎるやり取りをひっくり返したのは……
「ふふっ、関心があるかどうかはともかく、気付いてないは嘘だね?」
話題の中核、デルタの言葉だった。
「ゾーイは一度だって俺に女扱いしたこともなければ、むしろ、他の男連中と同じような態度だったよ? ずっと……」
「お前は、男と女では態度と横暴さに多少なり差が出る」
デルタは含み笑いをしながらどこか面白そうに、アランは鋭い目付きで視線を逸らさず淡々と……
それぞれが、確信めいたような言葉をゾーイに投げかけるのだ。
「……疑り深いわね。別に、その爆乳が本物なわけないって思ってた程度よ」
「まあ、そういうことにしときますか」
そして、ゾーイも絶対目を逸らさずに堂々と答えるのだ。
やっぱり、この一連の行動、ゾーイは確信犯だよな……
そのゾーイの答えに対して、アランはさもバカにしたように鼻で笑い、デルタはしょうがないかと肩をすくめる。
けど、次の瞬間には、デルタの表情は真剣なものへと変わっており、ゾーイのことをまっすぐに見ていた。
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