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第三章-⑶ ジェームズとコタロウ
実は一石三鳥は建前なんです
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「……お前の神経がわからん」
「アランくん、久しぶりに喋ったかと思えば、そんなことしか言えないの?」
不満たっぷりに、ゾーイはそう言い返している。
むしろ、この状況で言葉を発せるのはアランしかいないと思うよ……
「ゾーイ! あのさ、ほら! 飽きるとは言っても緊急事態だし……ね?」
「そ、そうよ! レオ達にはいろいろと助けてもらってるし、そんな風に……」
しばらくの沈黙の後、どうにか空気を変えようと、意を決してサトルと真由がしどろもどろに取り繕った。
「けど、事実じゃんよ。絶対飽きるに決まってる。レオ、モカ、そうでしょ?」
まあ、ゾーイには毎度の如く同じように伝わらないばかりか、最終的にはレオとモカに直接質問するという始末。
俺は頭を抱えるしかなかった。
気を遣うとか……気を遣うとか、気を遣うとかって言葉、知らないのか……
「まあ……確かに、夏の間は同じような献立が続くから、犬族も猫族も体調を崩しやすい時期ではあるかな……」
「ゾーイが言った通り、材料が塩漬けやジャムばかりだとそんなに料理も応用が効かないのよね……」
そして、誰もが見てわかるほど、レオとモカは揃って、俯いて落ち込んでしまっていた。
ほら、二人揃ってしっぽがあんなに垂れ下がっちゃってるよ……
「お前、これどうするつもりだよ……」
「やっぱり、冷蔵庫は必要ね!」
「まだ言うのか!? あのな、こいつらの気持ちも少しは考えて……」
「好きじゃないのよ」
「は?」
「あたし、借りを作るのって本当に好きじゃないのよね」
気まずさから望がたまらず声をかけると、ゾーイからはそんな言葉が出る。
え、どういうこと……?
それを受けたレオとモカはあまりの話の飛びように驚いたのか、俯いていた顔を上げる。
「レオ? モカ? 今のあたし達のことをどう思う?」
「え? あ、えっと、みんな、それぞれよく働いてくれてると思うけど……」
「う、うん……すごく助かってるよ?」
「働くのは当然でしょ、あたし達はここに住んでるんだもの。けど、そんなの住まわせてもらってることのお礼にはほど遠いのよ? そもそも、あんた達は気を許したからって、あたし達に甘すぎるのよ。いつか、底意地の悪いゴミカス野郎とかに騙されるわよ?」
「それは……気を付ける、ね?」
見渡すけど、全員の頭の上にはてなが見えるのは気のせいじゃないな。
レオとモカなんて、途中から何で自分達は叱られてるんだって顔だしな……
「そうしてちょうだいな。まあ、少し話はズレたけど……つまり、あたし達はここにいる間は、人類と空島の文明の限りを教える。それが、あんたら犬族と猫族へのお礼ってわけよ」
「あ……えっと、ゾーイ? そんな風に借りとか考えなくても……」
「はあ……レオ? 貰えるものは、危なくなければ何でも貰いなよ」
「えっと、それどういう意味……?」
疑問が晴れないまま、とにかくレオは気にしなくていいとゾーイに答える。
けど、ゾーイは大きなため息と共にレオに投げかけた。
「この先もずっと、こんな大昔みたいな生活続けていくつもり? 生物は常に進化し続けないと、生き残れないのよ? あんたがリーダーでしょ? あんた達が地上の文明を進めて、頂点に立つの」
「え? ま、待って、そんなこと……!!」
思ってた以上の壮大な計画に、レオはガタッと勢いよく立ち上がってゾーイの目の前に出て来る。
隣のモカはまだ頭の整理ができず、呆然として座ったままだ。
他のみんなも大慌てだったけど、俺はようやくゾーイの言わんとしていることを理解できた気がしていた……
「拒否権ないわよ? 他ならぬあたしが決めたんだから」
「そっ、そそそそそ、そんなの……!!」
「ゾーイ……ほ、本当に、あの……まだ心の準備とかが……」
レオは呂律が上手く回らなくなるほど驚き、戸惑っていた。
モカはようやく言葉を発せたが、動揺マックスのようで、猫族特有の毛が逆立っているように見える。
「その方があたし達がここにいる間の不自由は減るし、借りも作らないし、一石三鳥ぐらいの価値があるのよね。おわかりになりまして?」
「全然! 全然わからないよ!?」
リラックスしてチキンスープを飲むゾーイに、レオは必死に懇願する。
それを横目で見ていると、隣の真由が笑いながら話しかけてきた。
「ゾーイって、正面から助けないで遠回りするよね」
「本当にそうだな……普段は正直すぎるぐらいなのに、こういうことになると途端に回りくどくなる」
そう、この一連の出来事は、ゾーイのわかりにくすぎる優しさと恩返しと罪滅ぼしなんだと思う。
――「会ったこともない人間の罪を背負えるほど、あたしは暇でも、お人好しでもないの!」
処刑台に立たされたあの日、君は空に向かってはっきりと告げた。
俺はやっぱり、君がわからなくなる。
そんな無茶苦茶なことを言っていたくせに、今の君は会ったこともない人間の罪を償おうとしてるじゃないか。
「アランくん、久しぶりに喋ったかと思えば、そんなことしか言えないの?」
不満たっぷりに、ゾーイはそう言い返している。
むしろ、この状況で言葉を発せるのはアランしかいないと思うよ……
「ゾーイ! あのさ、ほら! 飽きるとは言っても緊急事態だし……ね?」
「そ、そうよ! レオ達にはいろいろと助けてもらってるし、そんな風に……」
しばらくの沈黙の後、どうにか空気を変えようと、意を決してサトルと真由がしどろもどろに取り繕った。
「けど、事実じゃんよ。絶対飽きるに決まってる。レオ、モカ、そうでしょ?」
まあ、ゾーイには毎度の如く同じように伝わらないばかりか、最終的にはレオとモカに直接質問するという始末。
俺は頭を抱えるしかなかった。
気を遣うとか……気を遣うとか、気を遣うとかって言葉、知らないのか……
「まあ……確かに、夏の間は同じような献立が続くから、犬族も猫族も体調を崩しやすい時期ではあるかな……」
「ゾーイが言った通り、材料が塩漬けやジャムばかりだとそんなに料理も応用が効かないのよね……」
そして、誰もが見てわかるほど、レオとモカは揃って、俯いて落ち込んでしまっていた。
ほら、二人揃ってしっぽがあんなに垂れ下がっちゃってるよ……
「お前、これどうするつもりだよ……」
「やっぱり、冷蔵庫は必要ね!」
「まだ言うのか!? あのな、こいつらの気持ちも少しは考えて……」
「好きじゃないのよ」
「は?」
「あたし、借りを作るのって本当に好きじゃないのよね」
気まずさから望がたまらず声をかけると、ゾーイからはそんな言葉が出る。
え、どういうこと……?
それを受けたレオとモカはあまりの話の飛びように驚いたのか、俯いていた顔を上げる。
「レオ? モカ? 今のあたし達のことをどう思う?」
「え? あ、えっと、みんな、それぞれよく働いてくれてると思うけど……」
「う、うん……すごく助かってるよ?」
「働くのは当然でしょ、あたし達はここに住んでるんだもの。けど、そんなの住まわせてもらってることのお礼にはほど遠いのよ? そもそも、あんた達は気を許したからって、あたし達に甘すぎるのよ。いつか、底意地の悪いゴミカス野郎とかに騙されるわよ?」
「それは……気を付ける、ね?」
見渡すけど、全員の頭の上にはてなが見えるのは気のせいじゃないな。
レオとモカなんて、途中から何で自分達は叱られてるんだって顔だしな……
「そうしてちょうだいな。まあ、少し話はズレたけど……つまり、あたし達はここにいる間は、人類と空島の文明の限りを教える。それが、あんたら犬族と猫族へのお礼ってわけよ」
「あ……えっと、ゾーイ? そんな風に借りとか考えなくても……」
「はあ……レオ? 貰えるものは、危なくなければ何でも貰いなよ」
「えっと、それどういう意味……?」
疑問が晴れないまま、とにかくレオは気にしなくていいとゾーイに答える。
けど、ゾーイは大きなため息と共にレオに投げかけた。
「この先もずっと、こんな大昔みたいな生活続けていくつもり? 生物は常に進化し続けないと、生き残れないのよ? あんたがリーダーでしょ? あんた達が地上の文明を進めて、頂点に立つの」
「え? ま、待って、そんなこと……!!」
思ってた以上の壮大な計画に、レオはガタッと勢いよく立ち上がってゾーイの目の前に出て来る。
隣のモカはまだ頭の整理ができず、呆然として座ったままだ。
他のみんなも大慌てだったけど、俺はようやくゾーイの言わんとしていることを理解できた気がしていた……
「拒否権ないわよ? 他ならぬあたしが決めたんだから」
「そっ、そそそそそ、そんなの……!!」
「ゾーイ……ほ、本当に、あの……まだ心の準備とかが……」
レオは呂律が上手く回らなくなるほど驚き、戸惑っていた。
モカはようやく言葉を発せたが、動揺マックスのようで、猫族特有の毛が逆立っているように見える。
「その方があたし達がここにいる間の不自由は減るし、借りも作らないし、一石三鳥ぐらいの価値があるのよね。おわかりになりまして?」
「全然! 全然わからないよ!?」
リラックスしてチキンスープを飲むゾーイに、レオは必死に懇願する。
それを横目で見ていると、隣の真由が笑いながら話しかけてきた。
「ゾーイって、正面から助けないで遠回りするよね」
「本当にそうだな……普段は正直すぎるぐらいなのに、こういうことになると途端に回りくどくなる」
そう、この一連の出来事は、ゾーイのわかりにくすぎる優しさと恩返しと罪滅ぼしなんだと思う。
――「会ったこともない人間の罪を背負えるほど、あたしは暇でも、お人好しでもないの!」
処刑台に立たされたあの日、君は空に向かってはっきりと告げた。
俺はやっぱり、君がわからなくなる。
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