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第三章-⑶ ジェームズとコタロウ
シャレはやめなしゃれ
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レオの必死の叫びが聞こえて、何事かと全員の視線が運転席に集中する。
俺は突然の揺れに耐えられるように壁に背中をつけながら立ち上がり、前方を確認する。
「……冗談だろ」
俺が呟いた時は、まさしく時すでに遅しで後戻りできない状況だった。
目の前には、細く続く路地の入口。
そこにゾーイとジェームズを乗せた自動車が、猛スピードで入って行くのが確認できた。
けど、その路地はあの赤い小型の自動車だから余裕で通れるのだろうが、このバスの幅ギリギリ……
というか、ほとんど無理じゃないか!?
「は? 道なんて立派なもの、この一帯あってないようなもんだろうが!」
「無茶よ! 通れるわけがないわ!」
頭に血が上っているのか、コタロウはモカの忠告にも耳を傾けずに、スピードを落とすことなく、路地に突っ込む。
「真由、望……頭下げろ! そして、絶対上げるな!」
「え、ちょっ、それ意味あるの!?」
「わからん! けど、何もしないよりは少しはマシだろ!?」
「はあ……勘弁してくれよな……」
真由の呆れたような声と、望の諦めたような声が、やたらと俺の耳に響く。
俺達は、なるべく車内の真ん中に身を寄せ合って、頭を守るようにしてうずくまる。
しょうがないだろ!? 他にどんな身の守り方があるっていうんだよ!?
けど、間もなくして、とんでもない聞くに耐えない騒音が車内に響き渡る。
「うぎゃああああ!! 何なんだ、この不愉快極まりない音はああああああ!?」
「耳塞いだところで意味ねえよ! 頭全部がガンガンしやがる……!!」
「ちょっと! 二人とも合わせて大声で喚かないでよ! 余計に響くから!」
ハロルドとシンの絶叫に、ブチ切れたソニアがそう返す。
どう表せばいいのか、これを何に例えればいいのかわからないけど、とにかく空気を裂くような摩擦音。
おそらく、バスの車体と路地の壁が擦り合っているんだろうけど……
「おい、バカ犬! このクソみたいな騒音はいつ止まるんだ!」
「黙っとけ! これぐらいのことも人間様は耐えられねえのか!?」
「何だと……? この犬っころ……!!」
「わああああああ! 望、待て! 今は待ってくれ!」
同族嫌悪か、水と油か、本当に望とコタロウは衝突する。
けど、今はそんな場合じゃない!
そう思って、俺が望のことを止めようとして肩に触れようとした時……
俺達は全員で、宙に浮いたのだ。
「う……うわあああああああああ!?」
そして、すぐに俺達は四方八方の壁に向かって転がり、衝突する羽目になる。
「今度はどこって……森!?」
「どこかに捕まってろ。揺れるぞ」
「いや、待って! コタロウ、それは事後報告にもほどが……どおわっ!?」
そして、息付く間もなく俺はまた大きく揺れる車内で床に尻もちをつく。
コタロウに文句の一つも言うこともままならないほどの揺れっぷり。
そりゃそうだ、森ならあちこちに石が転がってたり、木の根が生えてたり……
こんなとこ走っていいはずないよ!
「……あそこか」
「え? うおおっ!?」
しかし、ボソリとコタロウが何かを吐き捨てたかと思ったら、今度は突然の急ブレーキだ。
俺は重力に耐えきれず、そのまま後頭部をぶつける羽目になった。
「イッタタ……あのさ、コタロウ? せめて、止まる時は止まるって……」
「到着だ。下りるぞ」
うん、コタロウも大概だよね?
ゾーイほどじゃないけど、やっぱり話を聞かないよね?
まあ、コタロウの場合は聞こえているけど、あえてスルーしてる。
根本的に、聞こえてすらいないゾーイとは違うかもな……
そんなことを考えて、どこか現実逃避をしながら、俺は一番にバスを下りる。
白い砂浜に足を踏み入れると……
「この勝負、あたしの勝ちね!」
そこには青い海をバックにフワフワな髪を風になびかせる、君がいた。
「そんな無意味な勝負、最初から受けるとも言ってねえよ」
「あらま! コタロウってば、勝てなかったからって言い訳? 負け犬の遠吠えになっちゃうよ? 犬だけに?」
後ろから聞こえたコタロウの声に、ゾーイはいつもの調子で返す。
本当にやめてくれ……帰りたすぎる。
コタロウはゾーイに何も言い返さなかったけど、後ろから何かが切れる音を俺はしっかりと聞いた。
「ていうか、見てよ! 海に到着よ!」
「何が海だ……ゾーイ・エマーソン、覚悟はできてるんだろうな?」
手を広げて楽しそうなゾーイとは対照的に、ブチ切れ寸前のコタロウ。
本当にどうなっちゃうんだろう……
俺は突然の揺れに耐えられるように壁に背中をつけながら立ち上がり、前方を確認する。
「……冗談だろ」
俺が呟いた時は、まさしく時すでに遅しで後戻りできない状況だった。
目の前には、細く続く路地の入口。
そこにゾーイとジェームズを乗せた自動車が、猛スピードで入って行くのが確認できた。
けど、その路地はあの赤い小型の自動車だから余裕で通れるのだろうが、このバスの幅ギリギリ……
というか、ほとんど無理じゃないか!?
「は? 道なんて立派なもの、この一帯あってないようなもんだろうが!」
「無茶よ! 通れるわけがないわ!」
頭に血が上っているのか、コタロウはモカの忠告にも耳を傾けずに、スピードを落とすことなく、路地に突っ込む。
「真由、望……頭下げろ! そして、絶対上げるな!」
「え、ちょっ、それ意味あるの!?」
「わからん! けど、何もしないよりは少しはマシだろ!?」
「はあ……勘弁してくれよな……」
真由の呆れたような声と、望の諦めたような声が、やたらと俺の耳に響く。
俺達は、なるべく車内の真ん中に身を寄せ合って、頭を守るようにしてうずくまる。
しょうがないだろ!? 他にどんな身の守り方があるっていうんだよ!?
けど、間もなくして、とんでもない聞くに耐えない騒音が車内に響き渡る。
「うぎゃああああ!! 何なんだ、この不愉快極まりない音はああああああ!?」
「耳塞いだところで意味ねえよ! 頭全部がガンガンしやがる……!!」
「ちょっと! 二人とも合わせて大声で喚かないでよ! 余計に響くから!」
ハロルドとシンの絶叫に、ブチ切れたソニアがそう返す。
どう表せばいいのか、これを何に例えればいいのかわからないけど、とにかく空気を裂くような摩擦音。
おそらく、バスの車体と路地の壁が擦り合っているんだろうけど……
「おい、バカ犬! このクソみたいな騒音はいつ止まるんだ!」
「黙っとけ! これぐらいのことも人間様は耐えられねえのか!?」
「何だと……? この犬っころ……!!」
「わああああああ! 望、待て! 今は待ってくれ!」
同族嫌悪か、水と油か、本当に望とコタロウは衝突する。
けど、今はそんな場合じゃない!
そう思って、俺が望のことを止めようとして肩に触れようとした時……
俺達は全員で、宙に浮いたのだ。
「う……うわあああああああああ!?」
そして、すぐに俺達は四方八方の壁に向かって転がり、衝突する羽目になる。
「今度はどこって……森!?」
「どこかに捕まってろ。揺れるぞ」
「いや、待って! コタロウ、それは事後報告にもほどが……どおわっ!?」
そして、息付く間もなく俺はまた大きく揺れる車内で床に尻もちをつく。
コタロウに文句の一つも言うこともままならないほどの揺れっぷり。
そりゃそうだ、森ならあちこちに石が転がってたり、木の根が生えてたり……
こんなとこ走っていいはずないよ!
「……あそこか」
「え? うおおっ!?」
しかし、ボソリとコタロウが何かを吐き捨てたかと思ったら、今度は突然の急ブレーキだ。
俺は重力に耐えきれず、そのまま後頭部をぶつける羽目になった。
「イッタタ……あのさ、コタロウ? せめて、止まる時は止まるって……」
「到着だ。下りるぞ」
うん、コタロウも大概だよね?
ゾーイほどじゃないけど、やっぱり話を聞かないよね?
まあ、コタロウの場合は聞こえているけど、あえてスルーしてる。
根本的に、聞こえてすらいないゾーイとは違うかもな……
そんなことを考えて、どこか現実逃避をしながら、俺は一番にバスを下りる。
白い砂浜に足を踏み入れると……
「この勝負、あたしの勝ちね!」
そこには青い海をバックにフワフワな髪を風になびかせる、君がいた。
「そんな無意味な勝負、最初から受けるとも言ってねえよ」
「あらま! コタロウってば、勝てなかったからって言い訳? 負け犬の遠吠えになっちゃうよ? 犬だけに?」
後ろから聞こえたコタロウの声に、ゾーイはいつもの調子で返す。
本当にやめてくれ……帰りたすぎる。
コタロウはゾーイに何も言い返さなかったけど、後ろから何かが切れる音を俺はしっかりと聞いた。
「ていうか、見てよ! 海に到着よ!」
「何が海だ……ゾーイ・エマーソン、覚悟はできてるんだろうな?」
手を広げて楽しそうなゾーイとは対照的に、ブチ切れ寸前のコタロウ。
本当にどうなっちゃうんだろう……
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