エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ

ギャップ萌えとは違うけど

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「マジかよ……逃げたら、もっと事態がややこしくなるぞ!」
「あ……と、とりあえず! みんなは教会に戻ってて! 心配しないで!」


 コタロウは頭を抱えてすぐさま走り出し、レオは俺達にそう言い残してコタロウの後を追った。
 そして、俺達を取り囲んでいた犬族と猫族も次々と走り出して行き、その場には俺達人間だけが残されたのだ。


「本当に人騒がせよね、やれやれと」
「ちょっ、ゾーイ? どこ行くの?」


 あまりの一連の流れのスピードにその場の誰も動けない状況で、一番に声を上げたのはゾーイだった。
 そして、ゾーイは欠伸をしながら歩き出したのだ。
 思わず、サトルが呼び止めると……


「え? 寝るけど?」


 ゾーイからは、もう夜だし眠いしとでも言いたげに、その答えが返ってきた。
 呼び止めたサトルも、さすがに顔が引きつっていた。
 嘘だろ!?!? 俺はすぐにでもそう叫んでやりたかったけど……


「何を考えてるの!? こんな時に呑気に寝るだなんて、どうかしてるわ!」


 真っ先にクレアが声を荒らげゾーイに怒鳴ったから、俺や他のみんなは言葉を呑み込んだ。


「どうかしてるって、この状況で寝る以外に何かある?」
「あるでしょ!? 私達も全員でアランを捜すの! 犬族と猫族が見つけてしまうよりも前に!」


 激怒のクレアに、ゾーイはいつもの調子で軽く返す。
 その態度が余計に、クレアをヒートアップさせ、ほぼほぼ叫ぶような状態でクレアはゾーイに怒鳴っていた。
 そして、クレアの言葉に対して黙って見守る他のみんなも、アランのことを捜さなければと焦る声を上げる。
 まあ、言ってることはわかるけど……


「別に反対しないけど、こんな暗闇での捜索は、あたし達人間には難しいと思うけど? しかも、犬族と猫族よりも前にとかほぼ無理でしょ」


 そう、俺の不安要素はまさにゾーイが言った通りのことだ。
 犬は鼻が利くし、猫は夜目が見える。
 けど、俺達人間には何もないのだ。
 こんな闇の中で松明の明かりだけで捜索するだなんて、しかも森に入るなんて完璧に自殺行為だ。
 いつもの冷静沈着なクレアならこんな基本的なことに気付かないはずないが、今は頭に血が上ってしまって、すっかり忘れていたのだろう。
 ゾーイの言葉で気付かされたのか、他のみんなはそれもそうかと考え直しており、クレアは言葉に詰まっていた。


「だ、だからって、日が昇るのを待ってじっとしてるだけなんて……!!」
「けど、実際それしかないじゃん?」
「このまま何もしなかったら、私達全員アランのせいでどんなひどい目にあうかわからないのよ!? もし、ここを追い出されたら、行く宛なんてないのよ!?」
「そうなったら、考えればいいじゃん」


 それでもクレアは食い下がり、それにゾーイはまだ通常運転で返す。
 けど、そのことがクレアの中で限界に達してしまったのだと思う……


「真面目に考えてよ! そもそも、アランもアランだわ! 攻撃的で、こっちの都合はお構いなし! 何を考えてるのかわからないし……今回のことも逃げるほどくだらない理由に決まってる! 振り回される私達を……!!」
「それ以上、喋るな!!!!」


 止まらなくなってしまったクレアのことを止めたのは、シンだった。


「もし、それ以上アランのことを悪く言ってみろ……ただで済むと思うなよ?」


 その時のシンは、普段の軽くてどこかおちゃらけたシンとは真逆だった。
 視線だけで人を殺せるほど、それは鋭く射抜くようにクレアを睨んでいた。


「あ……ご、ごめ……わ、私……!!」


 まっすぐに敵意を向けられたクレアは自分の失言に気付くと同時に、完全に涙を流して、怯えきってしまっていた。


「シン! ちょっと怖いよ!」
「とにかく……ここは話し合おうぜ?」


 見かねたソニアとデルタがシンのことを宥めるが、当の本人のシンはまったく聞こえていないようだった。
 まさかの展開に、俺はどうしようもなくてオロオロしていると……


「あんたらがモタモタしてるから、目が覚めたんだけど」


 これまた、いつもの通りのゾーイの言葉だった。


「最悪最低だわ……ホットミルクでも飲むかな。シン、あんたも来て」
「え? お、俺?」


 全員の視線が集中する中、ゾーイの指名を受けたシンは驚いたのか、いつも通りのシンに戻っていた。


「あんたの大声が、耳に響いたから目が覚めたのよ。責任とって、ホットミルクぐらい作って。え? それともあたしには作りたくないとでも言うわけ?」
「いやいやいやいや! そんなことは絶対にねえから! 作るよ! 最高級のホットミルクを作らせていただきます!」


 そして、口調が完全にブチ切れていたゾーイの言葉に、シンは首がもげるのではないかというほど頷く。
 そんな様子にみんなは苦笑いと密かにシンにエールを送っていたけど……
 俺は妙な違和感を覚えてしまった。


「ゾーイ! 俺も行っていいかな?」
「昴もホットミルク作らせるの?」
「あ、いや……俺は自分で作るから、大丈夫だよ」
「そう。まあ、別にあたしに許可とる必要ないよ。来れば?」
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