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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ
ホットミルクはどこいった
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「え? ゾーイ、友達って……長い付き合いなんだし、二人とも普通に仲良そうにしてるし、友達だろ?」
俺は二人のことを交互に見ながらそう質問する。
質問をゾーイがしてから、シンの周りの空気が変わったのがわかった。
ゾーイも、何か含み笑いをしている。
一方で取り残された俺は、もうわけがわからず、パニックだった。
「何で、その質問をしようと思った」
「興味本位ってやつだけど?」
「本当に食えねえよな、お前って……」
ゾーイはシンに、わざとらしく首を傾げる仕草をする。
それに対してシンは、肩をすくめて観念したように話し出す。
「俺は、アランを友達だと思ってる」
「お……思ってる?」
思わず聞き返した俺に、シンはどこか複雑そうに笑う。
え? 待て、アランとシンって、実は友達じゃないってこと?
「随分、自信なさげじゃんよ?」
「本人に聞いたわけじゃねえしな……」
「あっそ。不思議だったのよ。あんたとアランって、パッと見は完璧にボスと子分その一って感じだし」
「あの、ゾーイさん……わかってるんだけど、そのもうちょっとさ……」
けど、俺が内心でものすごいパニックに陥っている横で、どんどん二人の話は進んでいく。
今もグサリとゾーイの言葉のナイフは当たり前に、シンを傷付けている。
「さっきだってさ、クレアに対して、本気でブチ切れてたみたいだし?」
「あ、いや、あれは何ていうか……!!」
「アランのこと悪く言われて、頭に血が上ったんでしょ? けど、クレアの言うこともわかってるでしょ? あんな風に説明もなしに逃げ出したら、そりゃアランのこと責めもするでしょうよ」
「まあ、そうなんだよな……うん」
「あたしには関係ないけどね? この先ずっと、あんたがクレアから怯えられるってだけだから」
「ええ!? そんな……それはいやだあああああああああああ!!!!」
無理だ、俺は話に混ざるのは諦めて聞き役に徹することにした。
本当にゾーイは、全てのことがお見通しで上げて落とすのが上手いよなと、俺は妙に感心してしまう。
そして、とりあえずシンはとっさのことだとしても、先ほどのクレアへの対応を反省してるようだ。
それはもう、めっちゃ絶叫してるし。
「このボケカス! 夜中よ、夜中!」
「うっ! わ、悪い!」
まあ、その絶叫も、なかなかのゾーイのチョップによって止められていた。
「あ、けど、意外だったよ。シンってアランのことが、すごい大切なんだな」
そして、若干だけども落ち込んでしまったシンの気を晴らそうと、俺は話題を振ってみる。
けど、狙いとは裏腹に、さらにシンは沈んだような表情を浮かべた。
「大切っていうか、俺はアランのこと尊敬してんだよな……」
「そうなのか?」
「アランってさ、喧嘩は強いし、頭も切れて、俺の故郷では同世代の中じゃ圧倒的カリスマって感じで……正直、最初は見上げてたんだよ。バカみてえな考えだけど、人間じゃねえと思ってたな」
静かに落ち着いたトーンで話し出したシンの表情は、とても穏やかで、すごく寂しそうなものだった。
「けど、実際は良くも悪くもすごい人間臭い奴なんだよ。確かに、極端で乱暴なとこあるし、目付きは悪いし、無口で何を考えてるかわからねえけど……義理堅くて、守るって決めた人間のことは絶対に守り抜くような……どこまでもすごく不器用な奴なんだよ」
「そっか……正直、それ聞いてアランのイメージ変わったよ」
「さすが、昴! そうだろ!? あいつは自分が倒れちゃいけねえって、トップの責任感もすげーからさ……ナサニエルに入学するって聞いて、絶対について行くって、そんで支えるって、俺とデルタとソニアで約束してよ! そこから、生まれて初めて、本気で勉強したんだよ!」
どんどん話をしていくうちに、シンの表情は明るくなっていった。
俺も、何だかとても嬉しくなった。
シンから伝わるのは、アランのことが大切で、頼ってほしいと、幸せになってほしいという気持ち。
だから、俺はより一層、あのことの真実が知りたくなった。
「じゃあ、シン、聞いていいか?」
「え? 何だ?」
「アランが、ナサニエルの入学式で起こした数十人を病院送りにした事件の真相って、何なんだ?」
「あー、あれは向こうが、デルタとソニアにしつこく絡んできてさ、あれよあれよと人数も増えて、結果数十人を病院送りってわけなんだよな……」
どうやらシンはその時の光景を思い出したのか、苦笑いを浮かべる。
ゾーイのこともだけど、やっぱり人は見た目で決めつけたらいけないんだな。
アランは悪い人間じゃなかった。
それがわかったおかげで、俺はすごくホッとしていた。
「だから……今回のことも、絶対に何か事情があると思うんだ! アランは理由とかなく怪我させたり、ましてや逃げ出したりする奴じゃねえんだ!」
すると、シンはとても苦しそうに俺とゾーイのことを見ながら、叫んだ。
それを受けて、少し前から黙っているゾーイのことを俺は見た、見たけど……
「ねえ、ホットミルクってどうなったのよ?」
ホットミルクは鍋からほとんど溢れ出しており、ゾーイの叫びが響いたのだ。
俺は二人のことを交互に見ながらそう質問する。
質問をゾーイがしてから、シンの周りの空気が変わったのがわかった。
ゾーイも、何か含み笑いをしている。
一方で取り残された俺は、もうわけがわからず、パニックだった。
「何で、その質問をしようと思った」
「興味本位ってやつだけど?」
「本当に食えねえよな、お前って……」
ゾーイはシンに、わざとらしく首を傾げる仕草をする。
それに対してシンは、肩をすくめて観念したように話し出す。
「俺は、アランを友達だと思ってる」
「お……思ってる?」
思わず聞き返した俺に、シンはどこか複雑そうに笑う。
え? 待て、アランとシンって、実は友達じゃないってこと?
「随分、自信なさげじゃんよ?」
「本人に聞いたわけじゃねえしな……」
「あっそ。不思議だったのよ。あんたとアランって、パッと見は完璧にボスと子分その一って感じだし」
「あの、ゾーイさん……わかってるんだけど、そのもうちょっとさ……」
けど、俺が内心でものすごいパニックに陥っている横で、どんどん二人の話は進んでいく。
今もグサリとゾーイの言葉のナイフは当たり前に、シンを傷付けている。
「さっきだってさ、クレアに対して、本気でブチ切れてたみたいだし?」
「あ、いや、あれは何ていうか……!!」
「アランのこと悪く言われて、頭に血が上ったんでしょ? けど、クレアの言うこともわかってるでしょ? あんな風に説明もなしに逃げ出したら、そりゃアランのこと責めもするでしょうよ」
「まあ、そうなんだよな……うん」
「あたしには関係ないけどね? この先ずっと、あんたがクレアから怯えられるってだけだから」
「ええ!? そんな……それはいやだあああああああああああ!!!!」
無理だ、俺は話に混ざるのは諦めて聞き役に徹することにした。
本当にゾーイは、全てのことがお見通しで上げて落とすのが上手いよなと、俺は妙に感心してしまう。
そして、とりあえずシンはとっさのことだとしても、先ほどのクレアへの対応を反省してるようだ。
それはもう、めっちゃ絶叫してるし。
「このボケカス! 夜中よ、夜中!」
「うっ! わ、悪い!」
まあ、その絶叫も、なかなかのゾーイのチョップによって止められていた。
「あ、けど、意外だったよ。シンってアランのことが、すごい大切なんだな」
そして、若干だけども落ち込んでしまったシンの気を晴らそうと、俺は話題を振ってみる。
けど、狙いとは裏腹に、さらにシンは沈んだような表情を浮かべた。
「大切っていうか、俺はアランのこと尊敬してんだよな……」
「そうなのか?」
「アランってさ、喧嘩は強いし、頭も切れて、俺の故郷では同世代の中じゃ圧倒的カリスマって感じで……正直、最初は見上げてたんだよ。バカみてえな考えだけど、人間じゃねえと思ってたな」
静かに落ち着いたトーンで話し出したシンの表情は、とても穏やかで、すごく寂しそうなものだった。
「けど、実際は良くも悪くもすごい人間臭い奴なんだよ。確かに、極端で乱暴なとこあるし、目付きは悪いし、無口で何を考えてるかわからねえけど……義理堅くて、守るって決めた人間のことは絶対に守り抜くような……どこまでもすごく不器用な奴なんだよ」
「そっか……正直、それ聞いてアランのイメージ変わったよ」
「さすが、昴! そうだろ!? あいつは自分が倒れちゃいけねえって、トップの責任感もすげーからさ……ナサニエルに入学するって聞いて、絶対について行くって、そんで支えるって、俺とデルタとソニアで約束してよ! そこから、生まれて初めて、本気で勉強したんだよ!」
どんどん話をしていくうちに、シンの表情は明るくなっていった。
俺も、何だかとても嬉しくなった。
シンから伝わるのは、アランのことが大切で、頼ってほしいと、幸せになってほしいという気持ち。
だから、俺はより一層、あのことの真実が知りたくなった。
「じゃあ、シン、聞いていいか?」
「え? 何だ?」
「アランが、ナサニエルの入学式で起こした数十人を病院送りにした事件の真相って、何なんだ?」
「あー、あれは向こうが、デルタとソニアにしつこく絡んできてさ、あれよあれよと人数も増えて、結果数十人を病院送りってわけなんだよな……」
どうやらシンはその時の光景を思い出したのか、苦笑いを浮かべる。
ゾーイのこともだけど、やっぱり人は見た目で決めつけたらいけないんだな。
アランは悪い人間じゃなかった。
それがわかったおかげで、俺はすごくホッとしていた。
「だから……今回のことも、絶対に何か事情があると思うんだ! アランは理由とかなく怪我させたり、ましてや逃げ出したりする奴じゃねえんだ!」
すると、シンはとても苦しそうに俺とゾーイのことを見ながら、叫んだ。
それを受けて、少し前から黙っているゾーイのことを俺は見た、見たけど……
「ねえ、ホットミルクってどうなったのよ?」
ホットミルクは鍋からほとんど溢れ出しており、ゾーイの叫びが響いたのだ。
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