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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ
正体を知らない探し物
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翌朝になっても、誰もアランのことは見つけられていなかった。
「それじゃ、とりあえず、私達は西の方を捜してみるわ」
「了解。僕達は南の方に行ってみるよ」
朝になったということで、俺達もアランを捜すために森に行くことになった。
アランの捜索は二手にわかれて、それぞれ行う。
今、クレアとサトルが、教会の食卓でそのルートを確かめているところだ。
その様子を俺は、少しみんなの輪から外れた場所で見ていた。
そして、犬族と猫族達も昨日と同様にアランの捜索を続行するようで……
捜索人数は、数百人以上にも膨れ上がっていた。
「アラン、大丈夫なのかな……」
俺は誰にも聞かれないように、こっそりと呟いた。
あんな話を聞いた後だと、逃げ切ってくれって感情しか出てこないよ。
まあ、ゾーイはあの後で……あれ?
「ゾーイ……? どこ行った?」
さっきまでゾーイが座っていた窓枠に視線を移すと、そこはもぬけの殻。
どこに行ったのかと、キョロキョロと辺りを見渡してみるけど、目的の人物はどこにもおらず……
俺はこっそりと、教会を抜け出した。
そして、教会の裏に回ると、その君は裏庭に設置されたベンチに座っていた。
「ゾーイ?」
「え? あら、昴じゃん。アラン大捜索の作戦会議は終わった?」
名前を呼ぶと、ゾーイはくるりと振り向き、笑顔で俺に尋ねる。
「まだだよ。ていうか、その作戦会議を抜け出して、何してるのさ?」
「あー、あれを見てたの」
俺の質問に答えたゾーイが指を差したのは、森に走って行く犬族と猫族の兵士達の列だった。
「元気だね、みんな……まるで、景色は大昔の魔女狩りだわね」
「え? 魔女狩りって……」
「知らない? 魔女狩りはね、魔女だと疑いをかけられた人間に対して、手段を選ばなかった迫害のこと」
「……火あぶりとか?」
「うん。処刑と拷問全般って感じよ」
「そうなんだ……けど、アランのことはそんなひどいことは……」
「わからないわよ? 犬族と猫族ってば躍起になって捜してるし」
その言葉に思わず、俺はゾーイのことを凝視するけど、ゾーイの視線は犬族と猫族の兵士達の列に向けられたままだ。
今のこれ、どういう感情なんだろ?
俺はあまりにわからなくて、ゾーイのことを探るように隣に座ってみる。
けど、急にゾーイは振り返って……
「まあ、とりあえず、適当にアランのこと捜してきてよ」
「え、え? ゾーイは行かないの?」
笑顔で、ゾーイは俺にそう告げる。
突然に振り返ったことと、てっきりゾーイも行くと思っていたので、俺は二重に驚いて、変な声が出る。
「だって、行くだけ時間と体力の無駄だと思わない? あのアランくんが、そう易々と見つかるわけないだろし」
「……アランを信じてるってこと?」
「というより、あいつって、逃走だとかそういう感じのことに関しては、何かプロっぽいじゃん?」
「あー、ま、まあね……」
いつもの調子で、サラッとゾーイは首をわざとらしく傾げて言い放った。
まあ、確かにゾーイの言わんとしてることには激しく同意だった。
「けど、コタロウからの情報だと、犬族と猫族は、今日中にケリをつけたいっぽくて、今日の分の作業を全部中断して全員出動らしいのよ」
「は? 全員って……この王国の!?」
「それ以外にある? その証拠に、この王国、今はもぬけの殻だよ?」
ゾーイからの衝撃の事実に、俺はすぐさま確かめるために表に走った。
「ええ!? なっ、これって嘘だろ!?」
すると、見事に辺りを見渡す限りどこにも犬族と猫族の姿はなく、まるで亡国のような静けさだった。
待てよ? 全員出動ってことは、アランの捜索人数は三百人以上!?
「本気出てきたよね~、向こうもさ」
「そそっ、そんな呑気なこと言ってる場合じゃないだろ!? これは、さすがのアランでも絶体絶命だよ!」
「そう思う?」
「当たり前だろ!? どう考えたって、絶望的だよ!」
あまりにも呑気でいつも通りすぎるゾーイに、俺は叫びながらことの重大さを必死に説明する。
「そっか。じゃあ、昴? あたしのこと手伝ってくれない?」
すると、ゾーイから発せられたのは何の脈略もない言葉だった。
「え……手伝う? 何するつもり?」
「探してほしい物があるのよ」
「今?」
「うん、今」
「アランより?」
「うん、アランより」
本当にどうしよう、まったくもって意味がわからないぞ。
けど、ゾーイが一度言ったら絶対に曲げないことは、身に染みてるし……
「何か無くしたの?」
「あー、それがわからないんだよね」
「は?」
「探し物を、あたしも知らんのよ」
「はあ? じゃあ、何を探すのさ!?」
「それじゃ、とりあえず、私達は西の方を捜してみるわ」
「了解。僕達は南の方に行ってみるよ」
朝になったということで、俺達もアランを捜すために森に行くことになった。
アランの捜索は二手にわかれて、それぞれ行う。
今、クレアとサトルが、教会の食卓でそのルートを確かめているところだ。
その様子を俺は、少しみんなの輪から外れた場所で見ていた。
そして、犬族と猫族達も昨日と同様にアランの捜索を続行するようで……
捜索人数は、数百人以上にも膨れ上がっていた。
「アラン、大丈夫なのかな……」
俺は誰にも聞かれないように、こっそりと呟いた。
あんな話を聞いた後だと、逃げ切ってくれって感情しか出てこないよ。
まあ、ゾーイはあの後で……あれ?
「ゾーイ……? どこ行った?」
さっきまでゾーイが座っていた窓枠に視線を移すと、そこはもぬけの殻。
どこに行ったのかと、キョロキョロと辺りを見渡してみるけど、目的の人物はどこにもおらず……
俺はこっそりと、教会を抜け出した。
そして、教会の裏に回ると、その君は裏庭に設置されたベンチに座っていた。
「ゾーイ?」
「え? あら、昴じゃん。アラン大捜索の作戦会議は終わった?」
名前を呼ぶと、ゾーイはくるりと振り向き、笑顔で俺に尋ねる。
「まだだよ。ていうか、その作戦会議を抜け出して、何してるのさ?」
「あー、あれを見てたの」
俺の質問に答えたゾーイが指を差したのは、森に走って行く犬族と猫族の兵士達の列だった。
「元気だね、みんな……まるで、景色は大昔の魔女狩りだわね」
「え? 魔女狩りって……」
「知らない? 魔女狩りはね、魔女だと疑いをかけられた人間に対して、手段を選ばなかった迫害のこと」
「……火あぶりとか?」
「うん。処刑と拷問全般って感じよ」
「そうなんだ……けど、アランのことはそんなひどいことは……」
「わからないわよ? 犬族と猫族ってば躍起になって捜してるし」
その言葉に思わず、俺はゾーイのことを凝視するけど、ゾーイの視線は犬族と猫族の兵士達の列に向けられたままだ。
今のこれ、どういう感情なんだろ?
俺はあまりにわからなくて、ゾーイのことを探るように隣に座ってみる。
けど、急にゾーイは振り返って……
「まあ、とりあえず、適当にアランのこと捜してきてよ」
「え、え? ゾーイは行かないの?」
笑顔で、ゾーイは俺にそう告げる。
突然に振り返ったことと、てっきりゾーイも行くと思っていたので、俺は二重に驚いて、変な声が出る。
「だって、行くだけ時間と体力の無駄だと思わない? あのアランくんが、そう易々と見つかるわけないだろし」
「……アランを信じてるってこと?」
「というより、あいつって、逃走だとかそういう感じのことに関しては、何かプロっぽいじゃん?」
「あー、ま、まあね……」
いつもの調子で、サラッとゾーイは首をわざとらしく傾げて言い放った。
まあ、確かにゾーイの言わんとしてることには激しく同意だった。
「けど、コタロウからの情報だと、犬族と猫族は、今日中にケリをつけたいっぽくて、今日の分の作業を全部中断して全員出動らしいのよ」
「は? 全員って……この王国の!?」
「それ以外にある? その証拠に、この王国、今はもぬけの殻だよ?」
ゾーイからの衝撃の事実に、俺はすぐさま確かめるために表に走った。
「ええ!? なっ、これって嘘だろ!?」
すると、見事に辺りを見渡す限りどこにも犬族と猫族の姿はなく、まるで亡国のような静けさだった。
待てよ? 全員出動ってことは、アランの捜索人数は三百人以上!?
「本気出てきたよね~、向こうもさ」
「そそっ、そんな呑気なこと言ってる場合じゃないだろ!? これは、さすがのアランでも絶体絶命だよ!」
「そう思う?」
「当たり前だろ!? どう考えたって、絶望的だよ!」
あまりにも呑気でいつも通りすぎるゾーイに、俺は叫びながらことの重大さを必死に説明する。
「そっか。じゃあ、昴? あたしのこと手伝ってくれない?」
すると、ゾーイから発せられたのは何の脈略もない言葉だった。
「え……手伝う? 何するつもり?」
「探してほしい物があるのよ」
「今?」
「うん、今」
「アランより?」
「うん、アランより」
本当にどうしよう、まったくもって意味がわからないぞ。
けど、ゾーイが一度言ったら絶対に曲げないことは、身に染みてるし……
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「あー、それがわからないんだよね」
「は?」
「探し物を、あたしも知らんのよ」
「はあ? じゃあ、何を探すのさ!?」
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