エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ

バキューンと狙い撃ち

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 夜になっても、アランを誰一人として見つけることができなかった。
 そして、今俺達人類はいつかの処刑台の上に立たされている。


「人間はやっぱり、悪魔だったんだ!」
「今すぐに追い出せ!」
「受け入れたのが、間違いだ!」


 あの日と同じように、犬族と猫族は処刑台の前にせめぎ合っている。
 けど、唯一、あの日と違うことは俺達を非難する声が鳴り止まないことだ。
 まあ、あとは手を縛られてないだけ幾分かマシかなと、皮肉を考えてみる。
 どうしてこうなったかは、単純明快。  
 見つからないアランの代わりに、俺達人類全員が謝罪をしろとの犬族と猫族の猛抗議の末の、この処刑台の前への大集合だった。


「みんな……ごめん、本当に……!!」
「レオ! モカ、コタロウ、僕達は大丈夫だから!」


 泣きそうな顔で謝罪するレオと、これまた泣きそうなモカと、見てられないとばかりに顔を逸らすコタロウ。
 そんな三人にサトルは明るく大丈夫だと言い放った。
 それを聞いた三人は、さらに申し訳なさそうな顔をする。
 けど、今の俺達が三人にできることはそれぐらいしかないのだ。


「イッタタ……歩けなくなったら、どう責任とってくれんだよ~!」


 そして、そんな時にわざとらしく痛がりながら処刑台に上がって来た連中。
 アランに重症を負わされた六人。
 それぞれ六人全員が、杖をついてニヤニヤしながら、俺達の目の前までやって来た。
 改めて見ると、俺の記憶にその犬族と猫族の種類に思い当たるものが、まったく浮かんでこなかった。
 となると、全員雑種ってことか?
 そんなことを考えてると、一人の茶色の毛で耳がピンっと立った犬族が、杖を使って歩きながら、前に出て来た。


「さて、お前らには全員揃って謝罪してもらおうか? いやまあ、謝罪するのは当然として、どうするか……」
「フウタ……」


 どうやらレオによると、そいつはフウタという名前のようだ。
 俺達全員の顔を舐め回すようなその視線は、本当にいい気分がしなかった。
 見渡す間もずっと、フウタはニヤニヤしっぱなしで、何を考えているかなんて想像したくもなかった。


「まあ、追い出すことはしねえよ。俺達は慈悲深いからな? けど、この怪我のケジメは必要なんだよ……そうだ! 俺達、犬族と猫族の奴隷としてならここに住まわしてやってもいいぞ!」


 ほらな? やっぱりだよ、ろくなことじゃなかった。


「奴隷だなんて、人権侵害だぞ! 恥を知るべきだ!」
「私達は、何もしてないのに……!!」


 すかさず、ハロルドが猛抗議をし、震える声で橘さんも続いた。


「人権侵害か……恨むなら、残酷なお仲間を恨むんだな! はははっ!」


 フウタは目を見開いて、俺達のことをバカにするような視線を向けると、その場で高笑いを飛ばしたのだった。
 フウタに続くようにして、他の重症を負わされた五人も大笑いし始めたのだ。
 悔しくて、腹立たしくて、俺が奥歯を噛んだその時だった……


「ほうほう、なるほどね。それが狙いだったわけね? この状況を見て、それはさぞかしいいご気分かしら?」


 君はとてもいい笑顔で、そいつらの目の前に歩きながら、そう言い放った。


「お、お前……!! 何がだ! 何か文句があるのか!? あの人間が、俺達に怪我をさせたのは事実だぞ!」


 声の主がゾーイだとわかると、途端にフウタを始めとした、重症を負わされた六人は笑うのをピタリとやめる。
 そして、さっきまでの饒舌ぶりからは一変し、急にどもり始める。
 まあね、そろそろゾーイが動く頃かなとは思っていたけど……


「確かにね? あんたらが一人の人間に六人で相手して、ボコボコにされたってのは事実よね? この場にいる全員に自分達はひ弱な間抜けだって、知られちゃったんだもの。さぞ、体も心も傷だらけよね? ごめんなさいね? アランの代わりに心から謝るよ」


 うん、謝ってるのにまったくもって謝ってねえな……と、全員の心が一つになったのは言うまでもないだろう。
 こんなこと前にもあったような……?


「お、おまっ! は? どっ、どどど、どういうつもりなんだ!?!?」


 目の前で言われたフウタは、わなわなと震えながら、言葉にならない言葉をゾーイに発していた。
 まあ、あれをサラッと言われたら、口じゃ勝てないって絶望して、そりゃまあ口も回らなくなるよな……


「それって質問?」
「どう考えても違うだろ」


 しかし、おちょくってるのか、相手にしていないのか、ゾーイは通常運転。
 そんなゾーイに、俺の隣にいる望は呆れながらも律儀にツッコミを入れる。


「偶然だわ。実は、あたしからも質問があるんだよね~!」


 まあ、安定してゾーイは聞いちゃいねえですよ、うん。


「これ、な~に~?」


 そんなゾーイが、高く高く掲げたのは拳銃だった。
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