エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

文字の大きさ
100 / 257
第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ

熟年夫婦でも難しいかもね

しおりを挟む
「そんなことだと思ったけどね……」


 サトルが疲れたように呟き、その場の全員が苦笑いをこぼす。


「あ、えっと……みんなはどう?」


 すると、レオが話を立て直すように俺達に視線を向けて、問いかける。
 何はともあれ、俺達の答えは……


「まあ、今さっきのゾーイの言葉はさておき、異議なしだよ」
「多少の誤差ってやつが俺達とそこのアホの間であるが、人間側の総意だ」


 俺はぐるりと全員のことを見回し、まっすぐにレオに答える。
 それに続くように、軽くゾーイへの嫌味を漏らしつつも、望もレオに返す。
 まあ、ゾーイはいつもの如く、まったく聞いてないようで……
 そんな俺達の返事を聞いて、レオ、コタロウ、モカは安心したように笑う。
 しかし、そんな三人を他所にフウタはまだ納得してなかった……まあ、その展開は予想通りだ。
 けど、他の重症を負わされた五人をはじめとして、処刑台から見下ろす全ての犬族と猫族達も、まだまだ俺達人間への不安を拭いきれていないようで……
 その不安の原因は、きっとその場の全員がわかってたと思う。


「……アラン、君は?」


 そんな空気の核心をつくように、レオはアランに問いかけた。
 全員の不安の原因の、アランに……
 自然と、アランに俺達や、犬族と猫族達全員の視線が集まる。


「今、俺が何かを言って……それをお前達は大人しく信用するのか?」


 けど、アランもバカじゃないから、全員の言いたいことをわかっている。
 その上で、アランはその質問を俺達に無表情で吐き捨てた。
 そのアランの質問にグッと……途端に言葉が出なくなる。
 まんまと図星をつかれたからだ……
 けど、少なくとも、今の俺はアランが何を思って俺達のことを助けたのか、その真意がわからなかった。
 シンから聞いた話と、普段の王国の改革作業をサボるアランとのギャップで、ますますわからなくなったというのが本音だった。
 そして、その発言によって、アランへの視線はまた鋭くなっていく。


「ま、待てって、アラン! そういう喧嘩腰な言い方はやめろってば!」
「シン、お前は黙ってろ」
「頼むよ、アラン! そんなの……」


 そんな事態にこのままじゃマズいと察したシンが、慌てたように前に出てアランのことを咎める。
 けど、アランはシンのことを冷たく突き放したのだ。
 ひどく傷ついた様子のシン、その様子を見ていた犬族と猫族達の視線はさらに鋭くなる一方で……
 どうしたものかと俺がサトルと目を合わせた時……


「確かにね? 目付きは悪いし、すぐに暴力振るうし、無口だから何を考えてるのかわからんし、仲良しとは正反対の不安要素の塊みたいな奴だもんね?」


 ゾーイが、そんなとんでもないことを言い出したから、またまたその場の空気は凍りついている。


「ゾーイ!? ゾーイさん!? この状況で何を言い出すんだよ!? 今、言ったこと全部否定はできねえけどよ! けど……アランのことが嫌いだからって、そんなに追い詰めたいのかよ!?」


 まさかのゾーイの言葉にすっかりパニックに陥ってしまったシンは、大慌てで言い返しているせいか、若干の本音が漏れてしまっている。
 否定できないのかよ……多分、自分で何を言ってるのかわかってないな。


「ちょっと、シン! あんたは、もう口閉じてて!」
「ゾーイ、頼む! 散々迷惑をかけまくってあれなんだけど、今だけはアランに味方してくれないか!?」


 そんな状況にたまらずソニアが飛び出して、シンに怒鳴る。
 ソニアに続くように、デルタはゾーイに頭を下げていた。
 けど、そんな三人を他所に君は……


「まったく……アラン、わかってる? 元はと言えば、あんたが呆れるほど圧倒的に無口だから、こんな面倒なことになったのよ?」
「あ?」
「あたし達はね? 超能力者でもなければ、熟年夫婦でもないのよ? 何事も言葉にしなきゃわからんし、伝わらないのよ? 知ってます?」


 盛大なため息とともに、呆れたような態度でゾーイは、アランに向かって無表情で吐き捨てたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...