エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ

過去の自分のようだと言うが

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「横からかっさらおうってか!? 絶対にそんなことさせねえからな!?」
「意外だな? 最近は落ち着いてきたと思っていたが……あいつに関することはマジになるってことか」
「う、うう、うるっせえよっ!!!!」


 望がアランに掴みかかり、そんな望をアランは必要以上に煽ってさらに事態が悪化していく。


「ストーップ! お願いだ、望くんは冷静に! そして、アランはこんなことで饒舌にならないでよ!」
「そ、そうだ! どんな時代も恋愛は奥深いもので、それは難航を極め……」
「ああん!?」
「ヒイイイイイイ!!」
「ハロルド! 止めたいのか、状況を掻き回したいのか、どっちなのさ!?」


 本気の望と楽しんでるアラン、そんな二人を引き離そうとして、ジェームズとハロルドが奮闘するが……
 的外れなハロルドの発言で、望の神経を逆撫でしてしまったようだ。


「何で、こうなる……ただでさえ女装をしてた弊害で、女への口説き方が迷子だっていうのに……ライバル追加って、それもアランとか、俺はどうしたら……」
「あ……デルタ! 大丈夫だって! お前は、外見は文句なしだし、料理の腕だって最高級だ! そうだろ!?」
「外見か……それなら、十分なほど望とアランも整ってんだろ……料理も、練習をすりゃ誰でも上手くなれるよ……」
「それもそう……待て! 今の、言葉は間違いだ! 忘れろ! お前には女装の経験がある! それで、女心ごと鷲掴みっていうのはどうだ!?」


 部屋の隅では絶望しているデルタのことを、シンが必死に慰めている。


「アランってば、さすが! 大胆すぎでしょ~!」
「ヤバいよね~! こんなの、キュンキュンが止まらないよね~!」


 ソニアと橘さんは興奮状態で黄色い悲鳴を上げている。
 そして、真由とレオとモカは揃いも揃って大爆笑、終いにはコタロウが陽気に口笛を吹く始末だ……
 まあ、言わずもがなというか、モーリスとローレンさんは端っこの方で興味なさそうにしてたけど……


「お願いだから! 全員静かに!」
「落ち着いてよ、みんな! 一旦、深呼吸して!」


 クレアとサトルのその大声で、とりあえずその場は静まった。
 まさに現場は蜂の巣をつついたような騒ぎだった。
 ちなみに、俺もどうしたものかと右往左往しっぱなしだったわけで……


「てか、もう帰っていい?」
「ダメに決まってるでしょ! まだ冷やしなさい!」


 けど、この状況の中心人物のはずのゾーイが一番面倒くさそうにしてたのは本当にわけがわからない。
 いや、ほとんどアランのセリフってプロポーズだよ!?
 どうして、そんな普通なのさ!?
 何なら、ちょっとどころか、かなり帰りたそうだし! どういうこと!?
 まあ、すぐさまそんなゾーイの言葉に真由がほとんど反射的に怒鳴って、制止してたけどね……
 明らかに、ゾーイは不満そうだった。


「あ、ねえ! 今回ゾーイは、どうしてアランの気持ちがわかったの!?」
「おお! 鋭い質問だ! 時間はたっぷりある、聞かせてくれたまえ!」


 そんな微妙な空気を察したのか、ジェームズが話題を変え、ここぞとばかりにハロルドも乗っかった。
 けど、それは気になっていた。
 ゾーイがいつも通りお見通しなとこは変わらないけど、今回の無口なアランの代わりに気持ちを代弁するゾーイは、どこか確信めいているように感じた。
 それは、他のみんなもそれぞれ思うことがあったのか、自然と視線はゾーイに集まっていく。


「あー、それは……何ていうか、鏡を見せられるような感覚ってやつなのよ」


 けれど、ゾーイにしては珍しく、歯切れの悪い返事が返ってきた。


「……どういう意味だ」


 そのゾーイの返事に対して、再び無表情だけど、どこか真剣な感じのアランが聞き返した。


「変わることに怯えてるとこが、そっくりなのよ……」
「誰にだ」


 思い出すように話すゾーイに、さらにアランは詰め寄る。
 そんなアランをゾーイは見てから、意を決したように、耳を澄ませないと聞こえないぐらいの声で話してくれた。


「……昔のあたし。アランは、昔のあたしにどこか似てるのよね」


 君はこの場の誰とも目を合わせず、宙を見ていた――
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