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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ
夕焼けに背中を押されてみた
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「昴! こっち、こっち!」
「あ、真由……!!」
あと数分したら日が沈んで、辺りはゆっくりと暗くなっていくだろう。
「ごめん……俺が呼び出したのに、待たせちゃってて」
「本当よ! まったく、やっとアランが仲間に加わって、そのお祝いの準備で忙しい時にさ!」
「本当に、ごめん……!!」
「……ふふっ、冗談だよ? 実はそんな待ってないから、大丈夫!」
そう、真由が言う通り、この後めでたく本当の仲間となったアランのお祝いと仲直りを兼ねた、ささやかなパーティーをやることになってる。
その後で、一段落がついた俺達人間側と犬族と猫族達の歩み寄りの方法なんかとかも話し合うつもりだ。
どちらにしても、突然決まったことだったので全員が大慌てって感じだった。
そんな時に、俺は真由のことをいつかのりんごの木の下に呼び出した。
理由は情けないことに、今この瞬間行動をしないと、俺の中の決意が揺らいでしまいそうだったから……
「それで、改まって何なの?」
「……少し、歩かないか?」
「え? 別にいいけど……」
不思議そうな顔をする真由より、俺は少し先を歩き始めた。
歩いてる間、俺達は無言だった。
まあ、俺の方は緊張しすぎて、何を話したらいいか、そっちに頭が回らなくなっていたからだけど……
真由は終始怪しんでいて、少し後ろを歩いていたのに、急に俺の隣に並び、俺の顔を探るように覗き込む。
「……何だよ」
「え? あー、どこに行くの?」
「すぐわかるよ……」
「あ、そう」
意地でも目を合わせようとしない俺に呆れたのか、真由は俺の顔を覗き込むことをやめていた。
それを確かめてから、俺は真由の横顔を盗み見る。
地上に落ちたばかりの頃には、両肩にようやくつくぐらいの髪の長さだったのに、今では背中まで伸びている。
それほど、俺達の時間は流れたのだ。
「到着しました」
「お、やっとかって……これ」
到着したその場所に、真由は目を見開き驚いていた。
意外な場所だし、当たり前かな?
「上るぞ?」
「え、ちょっと! 昴ってば!」
「早く来いよ」
俺は用意しておいた梯子を持って来ると、それを使って屋根に上る。
そう、俺達がやって来たのは、この前ゾーイと激しすぎるカーレースを繰り広げたばかりの、あのバス。
あの日から、バスや洞窟に眠っていたその他の車は王国の外れに停車してる。
遠出の狩りの時に、よく使われているのを目にするようになった。
俺はそのバスの屋根に上り、困惑した表情で上ってくる真由に手を貸す。
「何で、バスの屋根?」
「……あっち、見てみろよ」
「え? 何が……うわあ……!!」
俺が指差す方向を見た真由から、感激したような声が上がる。
俺達の目の前には夕日で照らされた真っ青な空と、赤みを帯びた雲が広がる大きく綺麗な世界がある。
「すごい綺麗……何これ……」
「バスの屋根に上るだけで、何十倍も見晴らしが綺麗なんだよ」
まあ、それを教えてくれたのはレオだったんだけどね……
「空島じゃ、絶対見れない景色ね……」
「雲とか近すぎるからな?」
「……初めは不安だらけだったけど、地上での生活も楽しいよね? 望とも仲直りできちゃったし……」
不意に真由は空を見上げたまま、俺にそう切り出した。
「ああ。そう思えるのも、ほとんどがゾーイのおかげだよな」
「確かに! ゾーイって、この先も出会わないだろうなって思うほど、本当に強烈な子だよね?」
「まあ……あんなのにしょっちゅう出会ってたら身も心もボロボロだよ……」
「それ本人に言ってあげようか?」
「言ったら、俺に笑って暮らせる明日は二度とこないぞ!?」
真由が死刑宣告のような、世にも恐ろしいことを言い出すから俺は大慌てで止めにかかる。
そんな俺に真由はケラケラ笑うのだ。
「ふふっ、想像できる! まあ、確かにゾーイには感謝してもしきれないこと山ほどあるけど……」
けど、真由は笑うのをやめると、急に俺に向き直った。
「私が生き残ってこれたのは、絶対に昴のおかげだよ!」
「……え?」
「昴がいなかったら、私あっという間に不安に押しつぶされてだと思う。今も昴は私のヒーローなんだなって、この頃改めて思うんだって……聞いてた!? 二度と言わないからね!?」
そう言って、真由は照れたように、怒ったように、そっぽを向く。
「真由、ゾーイの言葉ってさ、俺達に刺さることばっかだって思わないか?」
「は? え、まあ、そうだね?」
「本当にドキッとするんだけどさ、その中でもどんなに強く思ってもそれは言葉にしなきゃ伝わらないって、アランに言ってた言葉が、特に刺さってさ……」
「うん……」
「望のこともそうだった。やっぱり、後悔しないためにも伝えなきゃな」
「昴? 全然話が……」
ダメだな、これ……溢れてきて、もう止まらないな。
「真由、俺と結婚しないか」
「あ、真由……!!」
あと数分したら日が沈んで、辺りはゆっくりと暗くなっていくだろう。
「ごめん……俺が呼び出したのに、待たせちゃってて」
「本当よ! まったく、やっとアランが仲間に加わって、そのお祝いの準備で忙しい時にさ!」
「本当に、ごめん……!!」
「……ふふっ、冗談だよ? 実はそんな待ってないから、大丈夫!」
そう、真由が言う通り、この後めでたく本当の仲間となったアランのお祝いと仲直りを兼ねた、ささやかなパーティーをやることになってる。
その後で、一段落がついた俺達人間側と犬族と猫族達の歩み寄りの方法なんかとかも話し合うつもりだ。
どちらにしても、突然決まったことだったので全員が大慌てって感じだった。
そんな時に、俺は真由のことをいつかのりんごの木の下に呼び出した。
理由は情けないことに、今この瞬間行動をしないと、俺の中の決意が揺らいでしまいそうだったから……
「それで、改まって何なの?」
「……少し、歩かないか?」
「え? 別にいいけど……」
不思議そうな顔をする真由より、俺は少し先を歩き始めた。
歩いてる間、俺達は無言だった。
まあ、俺の方は緊張しすぎて、何を話したらいいか、そっちに頭が回らなくなっていたからだけど……
真由は終始怪しんでいて、少し後ろを歩いていたのに、急に俺の隣に並び、俺の顔を探るように覗き込む。
「……何だよ」
「え? あー、どこに行くの?」
「すぐわかるよ……」
「あ、そう」
意地でも目を合わせようとしない俺に呆れたのか、真由は俺の顔を覗き込むことをやめていた。
それを確かめてから、俺は真由の横顔を盗み見る。
地上に落ちたばかりの頃には、両肩にようやくつくぐらいの髪の長さだったのに、今では背中まで伸びている。
それほど、俺達の時間は流れたのだ。
「到着しました」
「お、やっとかって……これ」
到着したその場所に、真由は目を見開き驚いていた。
意外な場所だし、当たり前かな?
「上るぞ?」
「え、ちょっと! 昴ってば!」
「早く来いよ」
俺は用意しておいた梯子を持って来ると、それを使って屋根に上る。
そう、俺達がやって来たのは、この前ゾーイと激しすぎるカーレースを繰り広げたばかりの、あのバス。
あの日から、バスや洞窟に眠っていたその他の車は王国の外れに停車してる。
遠出の狩りの時に、よく使われているのを目にするようになった。
俺はそのバスの屋根に上り、困惑した表情で上ってくる真由に手を貸す。
「何で、バスの屋根?」
「……あっち、見てみろよ」
「え? 何が……うわあ……!!」
俺が指差す方向を見た真由から、感激したような声が上がる。
俺達の目の前には夕日で照らされた真っ青な空と、赤みを帯びた雲が広がる大きく綺麗な世界がある。
「すごい綺麗……何これ……」
「バスの屋根に上るだけで、何十倍も見晴らしが綺麗なんだよ」
まあ、それを教えてくれたのはレオだったんだけどね……
「空島じゃ、絶対見れない景色ね……」
「雲とか近すぎるからな?」
「……初めは不安だらけだったけど、地上での生活も楽しいよね? 望とも仲直りできちゃったし……」
不意に真由は空を見上げたまま、俺にそう切り出した。
「ああ。そう思えるのも、ほとんどがゾーイのおかげだよな」
「確かに! ゾーイって、この先も出会わないだろうなって思うほど、本当に強烈な子だよね?」
「まあ……あんなのにしょっちゅう出会ってたら身も心もボロボロだよ……」
「それ本人に言ってあげようか?」
「言ったら、俺に笑って暮らせる明日は二度とこないぞ!?」
真由が死刑宣告のような、世にも恐ろしいことを言い出すから俺は大慌てで止めにかかる。
そんな俺に真由はケラケラ笑うのだ。
「ふふっ、想像できる! まあ、確かにゾーイには感謝してもしきれないこと山ほどあるけど……」
けど、真由は笑うのをやめると、急に俺に向き直った。
「私が生き残ってこれたのは、絶対に昴のおかげだよ!」
「……え?」
「昴がいなかったら、私あっという間に不安に押しつぶされてだと思う。今も昴は私のヒーローなんだなって、この頃改めて思うんだって……聞いてた!? 二度と言わないからね!?」
そう言って、真由は照れたように、怒ったように、そっぽを向く。
「真由、ゾーイの言葉ってさ、俺達に刺さることばっかだって思わないか?」
「は? え、まあ、そうだね?」
「本当にドキッとするんだけどさ、その中でもどんなに強く思ってもそれは言葉にしなきゃ伝わらないって、アランに言ってた言葉が、特に刺さってさ……」
「うん……」
「望のこともそうだった。やっぱり、後悔しないためにも伝えなきゃな」
「昴? 全然話が……」
ダメだな、これ……溢れてきて、もう止まらないな。
「真由、俺と結婚しないか」
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