113 / 257
第三章-⑸ クレアとハロルド
不良が子犬を拾う的展開
しおりを挟む
アランのいざこざが解決して、すぐにそれは開かれた。
リーダー決めの会議はレオ、モカ、コタロウと人間側全員参加の形で、教会で行われた。
「サポートは、サトルがやるのがいいと思います!」
「え? 何で、僕? 他にも……!?」
真っ先にシンが立ち上がり、サトルのことを推薦する。
まさかのシンからの提案に、ほとんど全員が驚いていたと思う。
しかし、納得いかないサトルが反論をしようとしたところで、シンが首根っこを掴み、とある人物以外の全員を呼び寄せて小声で話し出した。
「シン!? 急に何なんだよ!?」
「静かにしろって! ゾーイが起きるだろうが!」
怒るサトルに、さらに、しかし小声で怒るシンは様子を伺っている。
そう、とある人物とは、今まさに夢の中のゾーイのことだ。
「サトル、いいか? お前はサポート役という名の、ゾーイのストッパーだ」
「……は?」
「ゾーイの性格から考えて、絶対にリーダーをやらせろと言うだろう。実際に俺達がここまで生きてるのは、問題は大ありでもゾーイのおかげだからな。多分全員が、ゾーイがリーダーをやることに異論はないだろう」
ストッパー、その言葉で俺はシンの言わんとしてることが理解できた。
きっと他のみんなもだ、シンの言葉に全員が力強く頷いていたし……
というか、レオ達もそうなるだろうと予想して、リーダーをそろそろ決めればって意味で提案したんだろうしね?
「しかしだ、リーダーなんて役職をあのゾーイに与えてみろ。今でさえも無茶苦茶なのに、あっという間に独裁国家と成り果て、俺達が泣く展開になるのは目に見えてる現実だ」
「あ、あー、まあね……?」
この上なく饒舌に語るシンに、全員がこれまた頷く。
サトルもそこには異論がないようだ。
「そうなったら、誰がゾーイの暴走を抑えるのに適任かという話だ。サトル?」
つまり、誰がやっても泣くなら今までゾーイと一緒に中心に立ってやってきた影のリーダーであるサトルが、サポートをするのが適任だという話だった。
さすがにここまでくると、サトルも事態を理解したようで……
「待って!? 僕に丸投げって……」
「リーダーはやってもいいんだけど」
しかし、サトルが何かを反論しようとした時にゾーイが起き上がったのだ。
そして、欠伸をしながら、ゾーイは俺達に眠そうな顔で向き直ると……
「あたしよりも、クレアの方が適任だと思うよ」
「え……なっ、え?」
まさかのゾーイからの推薦という事実に、その場は凍りつく。
しかも、推薦されたその張本人であるクレアは状況を飲み込めていなかった。
「あと、サポートはアランで」
「……は?」
「散々迷惑かけたんだから、少しは役に立ってよ。ファイト一発ってね?」
「お前、正気か?」
「百パーセント正気。じゃあ、あたしは寝るから、あとはよろしく頼んだ」
そして、さらにゾーイは爆弾を追加で落とすだけ落とし、後処理を押しつけて早々に眠りについたのだ……
***
そんな無茶苦茶な展開で、リーダーはクレア、そのサポート役がアランということになったのだ。
正直、初めはもう一度話し合って決めようという空気もあったが、クレアは謎にやる気だったし、アランも嫌だとは言わなかった。
とりあえず、試験的にやってみようかとなったのだが、これがなかなかしっくりきた。
クレアは元々努力家で真面目だし、アランもジャンルは違うけど無法地帯のボスに君臨してただけあって、人の心を掴むことやまとめること、計画を立てて遂行することなどはカリスマ的だった。
何よりも、アランは本当にいい方向に変わった。
何か柔らかくなったというか、前が前の態度なだけに、ごく当たり前なことをしても何だか特別に思えてしまう。
ゾーイ曰く、これは不良が子犬を拾う的展開の吊り橋効果なのだとか……
「ありがとう、アラン! あなたに相談してよかったわ!」
「……何でも一人で背負うな。迷ったりしたら、頼れ」
けど、そんな吊り橋効果でも、時には落ちることもあると思う……
「う、うん……わかったわ……!!」
穏やかなアランに対して、真っ赤に染まった顔のクレアは何度も頷いた。
いつからかはわからないけど、クレアはアランに恋をするようになっていた。
きっと、一緒に活動していく中で前の人を殺してそうなアランと、頼りになる今のアランのギャップにやられたのだろうと、少し冷静に分析をしてみる。
恋愛は素晴らしいし、どんどん青春はした方がいいと思うけど、このことで俺達は新たな問題に直面していたのだ。
リーダー決めの会議はレオ、モカ、コタロウと人間側全員参加の形で、教会で行われた。
「サポートは、サトルがやるのがいいと思います!」
「え? 何で、僕? 他にも……!?」
真っ先にシンが立ち上がり、サトルのことを推薦する。
まさかのシンからの提案に、ほとんど全員が驚いていたと思う。
しかし、納得いかないサトルが反論をしようとしたところで、シンが首根っこを掴み、とある人物以外の全員を呼び寄せて小声で話し出した。
「シン!? 急に何なんだよ!?」
「静かにしろって! ゾーイが起きるだろうが!」
怒るサトルに、さらに、しかし小声で怒るシンは様子を伺っている。
そう、とある人物とは、今まさに夢の中のゾーイのことだ。
「サトル、いいか? お前はサポート役という名の、ゾーイのストッパーだ」
「……は?」
「ゾーイの性格から考えて、絶対にリーダーをやらせろと言うだろう。実際に俺達がここまで生きてるのは、問題は大ありでもゾーイのおかげだからな。多分全員が、ゾーイがリーダーをやることに異論はないだろう」
ストッパー、その言葉で俺はシンの言わんとしてることが理解できた。
きっと他のみんなもだ、シンの言葉に全員が力強く頷いていたし……
というか、レオ達もそうなるだろうと予想して、リーダーをそろそろ決めればって意味で提案したんだろうしね?
「しかしだ、リーダーなんて役職をあのゾーイに与えてみろ。今でさえも無茶苦茶なのに、あっという間に独裁国家と成り果て、俺達が泣く展開になるのは目に見えてる現実だ」
「あ、あー、まあね……?」
この上なく饒舌に語るシンに、全員がこれまた頷く。
サトルもそこには異論がないようだ。
「そうなったら、誰がゾーイの暴走を抑えるのに適任かという話だ。サトル?」
つまり、誰がやっても泣くなら今までゾーイと一緒に中心に立ってやってきた影のリーダーであるサトルが、サポートをするのが適任だという話だった。
さすがにここまでくると、サトルも事態を理解したようで……
「待って!? 僕に丸投げって……」
「リーダーはやってもいいんだけど」
しかし、サトルが何かを反論しようとした時にゾーイが起き上がったのだ。
そして、欠伸をしながら、ゾーイは俺達に眠そうな顔で向き直ると……
「あたしよりも、クレアの方が適任だと思うよ」
「え……なっ、え?」
まさかのゾーイからの推薦という事実に、その場は凍りつく。
しかも、推薦されたその張本人であるクレアは状況を飲み込めていなかった。
「あと、サポートはアランで」
「……は?」
「散々迷惑かけたんだから、少しは役に立ってよ。ファイト一発ってね?」
「お前、正気か?」
「百パーセント正気。じゃあ、あたしは寝るから、あとはよろしく頼んだ」
そして、さらにゾーイは爆弾を追加で落とすだけ落とし、後処理を押しつけて早々に眠りについたのだ……
***
そんな無茶苦茶な展開で、リーダーはクレア、そのサポート役がアランということになったのだ。
正直、初めはもう一度話し合って決めようという空気もあったが、クレアは謎にやる気だったし、アランも嫌だとは言わなかった。
とりあえず、試験的にやってみようかとなったのだが、これがなかなかしっくりきた。
クレアは元々努力家で真面目だし、アランもジャンルは違うけど無法地帯のボスに君臨してただけあって、人の心を掴むことやまとめること、計画を立てて遂行することなどはカリスマ的だった。
何よりも、アランは本当にいい方向に変わった。
何か柔らかくなったというか、前が前の態度なだけに、ごく当たり前なことをしても何だか特別に思えてしまう。
ゾーイ曰く、これは不良が子犬を拾う的展開の吊り橋効果なのだとか……
「ありがとう、アラン! あなたに相談してよかったわ!」
「……何でも一人で背負うな。迷ったりしたら、頼れ」
けど、そんな吊り橋効果でも、時には落ちることもあると思う……
「う、うん……わかったわ……!!」
穏やかなアランに対して、真っ赤に染まった顔のクレアは何度も頷いた。
いつからかはわからないけど、クレアはアランに恋をするようになっていた。
きっと、一緒に活動していく中で前の人を殺してそうなアランと、頼りになる今のアランのギャップにやられたのだろうと、少し冷静に分析をしてみる。
恋愛は素晴らしいし、どんどん青春はした方がいいと思うけど、このことで俺達は新たな問題に直面していたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる