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第三章-⑸ クレアとハロルド
再び弟が恋をする音がした
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「てか、これって隠れた方がいい展開だったりするかな?」
サトルのその言葉に、俺と真由は顔を見合せハッとして、三人でダッシュで物陰に隠れる。
そして、俺達が隠れるのとほぼ同時に望とゾーイが屋上に入って来た。
けど、望は足早で落下防止のために設置された手すりのとこまで歩いて行く。
「……あれ?」
思わず、俺は間抜けな声が漏れてしまっていた。
いやでも、そうなるよ……望は手すりを掴むと、そのまままったく動かなくなってしまった……え?
「……それで、話って何?」
「え!? あ、あー! それは……何て言うのか……あれだ!」
「どれよ?」
「それはだな……あの……!!」
そんな無言を貫いてる望に痺れを切らしたゾーイが、そう問いかける。
わかりやすいほど、背筋が伸び、動揺してるのが丸わかりの望。
そんな動揺をキープしながら、望は歯切れ悪く答え……というか、その答える時でさえも、望はゾーイに対して背中を向けっぱなしだった。
普段の望からは、想像もできない姿だった。
「え? これ本当にどういう状況だ?」
思わず、俺は同じように状況を覗き見してる真由とサトルに問いかける。
「状況から考えると、望がゾーイのことを呼び出したって感じ……?」
「あ、昴に言った用事があるって、このことだったんじゃないか?」
真由が首を傾げて考えながら答えるのに対し、サトルは閃いたとばかりに俺に投げかけた。
あ、そっか! これがさっきの望の真剣な顔の理由だったのか!
そして、俺がハッとして、サトルに答えようと口を開くと、なぜか二人から望達の方向を、必死のジェスチャーで指差される。
そんな二人に何事だと思って振り返ると、ゾーイが望に歩み寄って行ってる光景がそこにはあった。
「望く~ん? せめて、こっちを向いてくれませんかね?」
隣まで歩いて行くと、望のことを覗き込むように横からズイっと入ってくるゾーイだが、ぐりんっと音がつきそうなほどの勢いで望は顔を逸らす。
その望の顔は、案の定真っ赤だった。
一方で、ゾーイはそんな望の奇妙な行動に、さすがに苦笑を漏らしていた。
「え~? あのさ、あたしって意外と忙しいんだよ?」
さらに、ゾーイは望に困惑しつつ、ため息をつきながら、そう投げかける。
望は、そんなゾーイのため息に、一瞬ビクッと肩を揺らしたのだが、頑なに変わらずにゾーイからはそっぽを向いたままだった。
「もう、見てらんないわ! どれだけ口下手なのよ!?」
「まあまあ、気持ちはわかるけど、ここは少し落ち着こう!?」
目の前で巻き起こるその焦れったい状況に、遂に真由はキレた……小声で。
そんな真由のことを、サトルは優しく丁寧に宥めている。
「けど、このままだと、ゾーイのことだし、帰っちゃう……ああ、やっぱりな」
そう声に出した瞬間、俺の心配は現実のものとなる……望、頑張れよ!
ゾーイは呆れたように、望の隣から離れて扉に歩き出してしまったのだ。
それに気付いた望が、さすがに慌てて後を追おうとした、その時……
「……お前、何してんだ?」
望は、振り返った先の光景に、目を見開いてそう尋ねた。
ゾーイのことを見下ろしてである。
「見りゃわかるでしょ? 空見てるの」
そんな望に、ゾーイはいつも通り自分本位で話を淡々と進める。
驚いたのは俺達も同じで、今のこの状況を上手く飲み込めていなかった。
だって、てっきり、待ちくたびれてそのまま帰るだろうと思ったゾーイが、屋上に寝転がり、望を見上げながら淡々と答えるんだから、そりゃ驚くよ?
「ゆっくりでいいよ」
「は?」
そして、ゾーイは屋上に寝転がって空を見上げて指差しながら、望にそう切り出す。
何のことかがわからない望は、純粋にそう聞き返す。
けど、次の君の言葉でその場の空気は一掃されることになる。
「あんたが、言いたいことほどなかなか言えない人間だって知ってるし、気長に待ってるよ。それに、この空はどれだけ見てても飽きないしね」
ゾーイに答えるかのように、タイミング良く気持ちのいい風が吹いてきた。
どうして、君は、その人間の一番に欲してる言葉をくれるのだろう……
サトルのその言葉に、俺と真由は顔を見合せハッとして、三人でダッシュで物陰に隠れる。
そして、俺達が隠れるのとほぼ同時に望とゾーイが屋上に入って来た。
けど、望は足早で落下防止のために設置された手すりのとこまで歩いて行く。
「……あれ?」
思わず、俺は間抜けな声が漏れてしまっていた。
いやでも、そうなるよ……望は手すりを掴むと、そのまままったく動かなくなってしまった……え?
「……それで、話って何?」
「え!? あ、あー! それは……何て言うのか……あれだ!」
「どれよ?」
「それはだな……あの……!!」
そんな無言を貫いてる望に痺れを切らしたゾーイが、そう問いかける。
わかりやすいほど、背筋が伸び、動揺してるのが丸わかりの望。
そんな動揺をキープしながら、望は歯切れ悪く答え……というか、その答える時でさえも、望はゾーイに対して背中を向けっぱなしだった。
普段の望からは、想像もできない姿だった。
「え? これ本当にどういう状況だ?」
思わず、俺は同じように状況を覗き見してる真由とサトルに問いかける。
「状況から考えると、望がゾーイのことを呼び出したって感じ……?」
「あ、昴に言った用事があるって、このことだったんじゃないか?」
真由が首を傾げて考えながら答えるのに対し、サトルは閃いたとばかりに俺に投げかけた。
あ、そっか! これがさっきの望の真剣な顔の理由だったのか!
そして、俺がハッとして、サトルに答えようと口を開くと、なぜか二人から望達の方向を、必死のジェスチャーで指差される。
そんな二人に何事だと思って振り返ると、ゾーイが望に歩み寄って行ってる光景がそこにはあった。
「望く~ん? せめて、こっちを向いてくれませんかね?」
隣まで歩いて行くと、望のことを覗き込むように横からズイっと入ってくるゾーイだが、ぐりんっと音がつきそうなほどの勢いで望は顔を逸らす。
その望の顔は、案の定真っ赤だった。
一方で、ゾーイはそんな望の奇妙な行動に、さすがに苦笑を漏らしていた。
「え~? あのさ、あたしって意外と忙しいんだよ?」
さらに、ゾーイは望に困惑しつつ、ため息をつきながら、そう投げかける。
望は、そんなゾーイのため息に、一瞬ビクッと肩を揺らしたのだが、頑なに変わらずにゾーイからはそっぽを向いたままだった。
「もう、見てらんないわ! どれだけ口下手なのよ!?」
「まあまあ、気持ちはわかるけど、ここは少し落ち着こう!?」
目の前で巻き起こるその焦れったい状況に、遂に真由はキレた……小声で。
そんな真由のことを、サトルは優しく丁寧に宥めている。
「けど、このままだと、ゾーイのことだし、帰っちゃう……ああ、やっぱりな」
そう声に出した瞬間、俺の心配は現実のものとなる……望、頑張れよ!
ゾーイは呆れたように、望の隣から離れて扉に歩き出してしまったのだ。
それに気付いた望が、さすがに慌てて後を追おうとした、その時……
「……お前、何してんだ?」
望は、振り返った先の光景に、目を見開いてそう尋ねた。
ゾーイのことを見下ろしてである。
「見りゃわかるでしょ? 空見てるの」
そんな望に、ゾーイはいつも通り自分本位で話を淡々と進める。
驚いたのは俺達も同じで、今のこの状況を上手く飲み込めていなかった。
だって、てっきり、待ちくたびれてそのまま帰るだろうと思ったゾーイが、屋上に寝転がり、望を見上げながら淡々と答えるんだから、そりゃ驚くよ?
「ゆっくりでいいよ」
「は?」
そして、ゾーイは屋上に寝転がって空を見上げて指差しながら、望にそう切り出す。
何のことかがわからない望は、純粋にそう聞き返す。
けど、次の君の言葉でその場の空気は一掃されることになる。
「あんたが、言いたいことほどなかなか言えない人間だって知ってるし、気長に待ってるよ。それに、この空はどれだけ見てても飽きないしね」
ゾーイに答えるかのように、タイミング良く気持ちのいい風が吹いてきた。
どうして、君は、その人間の一番に欲してる言葉をくれるのだろう……
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