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第三章-⑸ クレアとハロルド
未遂ですのでご安心を
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「ウマッ! 本当に最高!」
「それはよかった」
「てか、デルタも食べなよ! すっごく美味しいよ?」
「……俺の分も食べていいぞ?」
「え? 本当? もう返さないよ?」
「どうぞ? お召し上がりを」
一方で、すっかり、ご満悦なゾーイを見ているデルタもご満悦なようで……
デルタはゾーイに自分の分のプリンを譲っていた。
目を見開いて驚きながら聞き返してるゾーイに、デルタは執事の真似事の、丁寧にお辞儀をし、プリンを差し出した。
それをゾーイは、これまた嬉しそうに受け取って食べ始める。
「これならデルタは、今すぐどこへ婿に出しても恥ずかしくないわね!」
ゾーイってあんな顔するんだ……俺は少し失礼だけど、そんなことを思う。
そうとうご機嫌なゾーイは、デルタに対し、満面の笑みでそう告げた。
こんな風にしてると、普段あんなに無茶苦茶で悪魔みたいな提案をする君とはほど遠いんだな。
そう思っていると、俺はさっきまで聞こえていたもう一人の声が急に止んだことに気付く……デルタは俯いていた。
「……アニキ、どうしたんだろ?」
「わ、わからないね……」
ソニアとジェームズも不審に思ったようで、心配する声を隣で上げる。
まあ、ゾーイは気にせずに、目の前のプリンを完食しそうな勢いだけど……
すると、少しして、ようやくデルタは俯いていた顔を上げる。
「ゾーイ」
「お? どうかした?」
デルタの呼びかけに、ゾーイはプリンを食べながら返事をする。
俺達三人は、静かに息を呑んだ。
だって、デルタがすごくスッキリしたような顔をしていたから……
「俺を男に戻してくれて、ありがとう」
デルタは少し震えている声で、確かにゾーイにそう告げる。
「はい? 男にって、元々デルタは男でしょうよ?」
そんなデルタに対し、ゾーイは不思議そうな顔で振り向く。
「そうじゃなくて、過去に縛られていた俺を解放してくれたって意味だ」
「へー、そうなの?」
「はあ……お前な? 自分がどれだけ周りに影響与えてるか、わかってるか?」
ピンときていないゾーイは、デルタの話を何となくで聞いていると思う……
そんなゾーイをわかった上で、ため息をつきながらデルタはゾーイに問う。
本当に良くも悪くも、君のおかげで俺達は生きているのに……そこに関する興味とか皆無だもんな、ゾーイって。
「影響? あたし、別に誰かのためになればいいとかのお人好しな優しい心で生きてないから。人は人で、自分は自分なことは一生ものだし? 常に生きるのは自分のためだけど?」
けど、君はやっぱり、今回も俺達の予想を裏切らない乱暴な答えを出す。
そんな風に自由に生きれたら、俺の未来はどう変わるのだろう……
君の影響はすごいけど、俺は絶対に君にはなれないなと、改めて思う。
それはこの場の全員、デルタも同じなようで、少し笑いながらゾーイの近くを離れて窓の近くに佇む。
「そんなお前だから、俺の踏み越えて行けなかった壁を壊したんだろな……」
デルタは、男にしては綺麗すぎる笑顔を浮かべながら、そう呟く。
「……ゾーイ。俺、ゾーイにはありがとうって言葉をどんなに言っても、一生足りない気がしてんだ」
さらに、デルタはゾーイへの感謝の言葉を続けている。
けど、少し照れ臭いのか、ゾーイへは背中を向けたまま、窓の外を見ていた。
待て、ひょっとしてこの流れは……?
「ずっと、ゾーイが美味いって言ってくれるように俺、頑張るから……ずっと死ぬまで、どんな時も美味いものを食べさせるから……ゾーイ、俺と……!!」
隣では、ソニアが祈るように、ジェームズが瞬き一つせず、見守る。
予想通りの目の前の展開に、とっさに俺が望の顔を思い浮かべた時……
なぜだろうか、次の瞬間には爆発音とともに、キッチン全体にプリンが飛び散っていた。
「ごめん、デルタ。電子レンジが謎の爆発だわ」
さすがの反射神経なのか、ちゃっかりしてるだけなのか、ゾーイは自分のことを近くの鍋の蓋でガードしており、プリンの被害はなく、綺麗な状態でデルタに淡々と告げた。
「……まず、何をしたんだ」
その一方で、デルタは頭からプリンをどっさりと被ってしまっており、全身がプリン塗れとなっていた。
そして、デルタは死んだ魚のような正気を感じられないような目で、ゾーイにそう問いかける。
「それが、焼きプリンにしようと思って電子レンジに入れたら、このザマよ」
そのデルタの質問にゾーイは悪びれることなく、肩をすくめて答える。
この電子レンジも、シンが三日間徹夜して修理した戦利品である。
というか、まず焼きプリンって……
「ゾーイ。焼きプリンってのは、本当に焼くわけじゃなくてな……?」
「けど、不思議よね? 何で、こんなに散り散りバラバラになるわけ?」
「……プリンを温めたことが最大の原因じゃねえかな」
「まあ、何百年も前の機械だし、きっと寿命だったのね?」
「百パーセント、お前のせいだぞ?」
「まあ、しょうがないから、シンのこと呼んで来るか」
「お願いだから、話を聞けよ!?!?」
聞こえていないんじゃないかと思うほど、ゾーイはどこまでもデルタの話を聞こうとしなかった。
隣のソニアとジェームズは、あまりの急展開に固まってしまった。
まあ、結論から言うと、デルタのプロポーズは電子レンジ爆発により、未遂で終わった。
「それはよかった」
「てか、デルタも食べなよ! すっごく美味しいよ?」
「……俺の分も食べていいぞ?」
「え? 本当? もう返さないよ?」
「どうぞ? お召し上がりを」
一方で、すっかり、ご満悦なゾーイを見ているデルタもご満悦なようで……
デルタはゾーイに自分の分のプリンを譲っていた。
目を見開いて驚きながら聞き返してるゾーイに、デルタは執事の真似事の、丁寧にお辞儀をし、プリンを差し出した。
それをゾーイは、これまた嬉しそうに受け取って食べ始める。
「これならデルタは、今すぐどこへ婿に出しても恥ずかしくないわね!」
ゾーイってあんな顔するんだ……俺は少し失礼だけど、そんなことを思う。
そうとうご機嫌なゾーイは、デルタに対し、満面の笑みでそう告げた。
こんな風にしてると、普段あんなに無茶苦茶で悪魔みたいな提案をする君とはほど遠いんだな。
そう思っていると、俺はさっきまで聞こえていたもう一人の声が急に止んだことに気付く……デルタは俯いていた。
「……アニキ、どうしたんだろ?」
「わ、わからないね……」
ソニアとジェームズも不審に思ったようで、心配する声を隣で上げる。
まあ、ゾーイは気にせずに、目の前のプリンを完食しそうな勢いだけど……
すると、少しして、ようやくデルタは俯いていた顔を上げる。
「ゾーイ」
「お? どうかした?」
デルタの呼びかけに、ゾーイはプリンを食べながら返事をする。
俺達三人は、静かに息を呑んだ。
だって、デルタがすごくスッキリしたような顔をしていたから……
「俺を男に戻してくれて、ありがとう」
デルタは少し震えている声で、確かにゾーイにそう告げる。
「はい? 男にって、元々デルタは男でしょうよ?」
そんなデルタに対し、ゾーイは不思議そうな顔で振り向く。
「そうじゃなくて、過去に縛られていた俺を解放してくれたって意味だ」
「へー、そうなの?」
「はあ……お前な? 自分がどれだけ周りに影響与えてるか、わかってるか?」
ピンときていないゾーイは、デルタの話を何となくで聞いていると思う……
そんなゾーイをわかった上で、ため息をつきながらデルタはゾーイに問う。
本当に良くも悪くも、君のおかげで俺達は生きているのに……そこに関する興味とか皆無だもんな、ゾーイって。
「影響? あたし、別に誰かのためになればいいとかのお人好しな優しい心で生きてないから。人は人で、自分は自分なことは一生ものだし? 常に生きるのは自分のためだけど?」
けど、君はやっぱり、今回も俺達の予想を裏切らない乱暴な答えを出す。
そんな風に自由に生きれたら、俺の未来はどう変わるのだろう……
君の影響はすごいけど、俺は絶対に君にはなれないなと、改めて思う。
それはこの場の全員、デルタも同じなようで、少し笑いながらゾーイの近くを離れて窓の近くに佇む。
「そんなお前だから、俺の踏み越えて行けなかった壁を壊したんだろな……」
デルタは、男にしては綺麗すぎる笑顔を浮かべながら、そう呟く。
「……ゾーイ。俺、ゾーイにはありがとうって言葉をどんなに言っても、一生足りない気がしてんだ」
さらに、デルタはゾーイへの感謝の言葉を続けている。
けど、少し照れ臭いのか、ゾーイへは背中を向けたまま、窓の外を見ていた。
待て、ひょっとしてこの流れは……?
「ずっと、ゾーイが美味いって言ってくれるように俺、頑張るから……ずっと死ぬまで、どんな時も美味いものを食べさせるから……ゾーイ、俺と……!!」
隣では、ソニアが祈るように、ジェームズが瞬き一つせず、見守る。
予想通りの目の前の展開に、とっさに俺が望の顔を思い浮かべた時……
なぜだろうか、次の瞬間には爆発音とともに、キッチン全体にプリンが飛び散っていた。
「ごめん、デルタ。電子レンジが謎の爆発だわ」
さすがの反射神経なのか、ちゃっかりしてるだけなのか、ゾーイは自分のことを近くの鍋の蓋でガードしており、プリンの被害はなく、綺麗な状態でデルタに淡々と告げた。
「……まず、何をしたんだ」
その一方で、デルタは頭からプリンをどっさりと被ってしまっており、全身がプリン塗れとなっていた。
そして、デルタは死んだ魚のような正気を感じられないような目で、ゾーイにそう問いかける。
「それが、焼きプリンにしようと思って電子レンジに入れたら、このザマよ」
そのデルタの質問にゾーイは悪びれることなく、肩をすくめて答える。
この電子レンジも、シンが三日間徹夜して修理した戦利品である。
というか、まず焼きプリンって……
「ゾーイ。焼きプリンってのは、本当に焼くわけじゃなくてな……?」
「けど、不思議よね? 何で、こんなに散り散りバラバラになるわけ?」
「……プリンを温めたことが最大の原因じゃねえかな」
「まあ、何百年も前の機械だし、きっと寿命だったのね?」
「百パーセント、お前のせいだぞ?」
「まあ、しょうがないから、シンのこと呼んで来るか」
「お願いだから、話を聞けよ!?!?」
聞こえていないんじゃないかと思うほど、ゾーイはどこまでもデルタの話を聞こうとしなかった。
隣のソニアとジェームズは、あまりの急展開に固まってしまった。
まあ、結論から言うと、デルタのプロポーズは電子レンジ爆発により、未遂で終わった。
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