121 / 257
第三章-⑸ クレアとハロルド
スイーツは時に世界を救う
しおりを挟む
「だって、久しぶりだよ!? 一刻も早く食べたくて仕方なかったもん!」
「わかった、わかった。じゃあ、そこで待ってろ」
「待ちま~す! 喜んで!」
キラキラした笑顔を浮かべるゾーイに対し、デルタは愛しそうにゾーイのことを見つめながら座るように促す。
すると、ノリノリで着席したゾーイを確認してデルタは冷蔵庫へと向かった。
ちなみにだけど、その冷蔵庫ってのはゾーイがどこかのレストランだった場所の厨房から拾ってきた大型のもの。
ゾーイ直々の恐怖の命を受けたシンが徹夜で修理した、戦利品である。
「何か、今のゾーイって、いつもとどことなく違くないか?」
そのゾーイとデルタの光景に、俺は激しすぎる違和感を覚えて、二人に問いかけていた。
いや、だって、あんなゾーイの純粋な笑顔見たことないよ!?
ゾーイが笑う時って、何かを企んでる時とか、事が自分の思い通りになった時とか、相手をコテンパンにしようとする時がほとんどだよ!?
「フフン……あの笑顔こそが、ゾーイが一人の女子だったって証拠よ!」
すると、半分パニックな俺に、なぜか得意気に不敵に笑うソニア。
「え、ジェームズ、どういうこと? 全然わからないんだけど……」
「よし! じゃあ、ジェームズ! あたしの素晴らしい計画を、昴にドンッと説明してあげて!」
どんなに考えてもソニアの言いたいことが理解できず、俺は助けを求めるようにジェームズに尋ねた。
すると、またまた得意気にソニアは無駄に芝居がかった感じで、ジェームズにお願いをしていた。
「あー、えっと……昴くん? ゾーイがフルーツを何かと食べてる光景ってよく見ない?」
「は? フルーツって……あ、けど……」
それを受け取ったジェームズは、俺に突然質問をしてきた。
初めはわけがわからなくて聞き返そうとしたけど、ふと気付く。
俺は確かにゾーイとフルーツの組み合わせには、見覚えがあったからだ。
作業中も、食事の後も、よくゾーイはフルーツをかじっていたような……
「女子って、基本的には甘いもの好きでしょ? それってさ、多分ゾーイも例外じゃないと思うの」
「まあ、ゾーイも女子だしって……」
そんな光景を思い出していると、ソニアがそう投げかけてくる。
そこで俺は、そりゃそうだと返事を返そうとして我に返る。
もしかしてだけど、この展開って……
「デルタね? ゾーイのためにスイーツのこと、すごく研究してたんだ」
俺の思考を先読みするように、ジェームズは笑顔で俺にそう投げかけた。
「あの富士山って山を見てると、これがめちゃくちゃ食べたくなるのよ!」
「それが食べたかった理由か? 本当に行き当たりばったりだよな?」
そんなやり取りをしてると、ゾーイは窓から見える地上時代に日本一の山だと言われた富士山を指差し、満面の笑みでそう言い切る。
そのゾーイに笑いかけながら、シンのお手製の冷蔵庫からデルタが取り出してきたのは……
「プリンだ……まさか、地上でこれが拝めるなんてすごすぎ! 何億年ぶりかのプリンだ~!」
「大げさだな……地上に落ちてから、何億年も経ってないだろ」
ゾーイが見たことのないテンションで歓喜を上げたのは、プリン。
あ、富士山とプリン……似てるか?
それに、ここからじゃあまりよくは見えないけど、あのプリン結構な大きさがあるんじゃないか?
「食べていいの!?」
「何のためにここに来たんだ?」
「それもそうよね? ではでは、いただきま~す!」
待ってましたとばかりに、嬉しそうにプリンを食べ始めたゾーイのことを、優しげな顔でデルタは見ていた。
そんな二人を見るだけで、ソニアのゾーイの甘味好きという読みが当たってたこと、デルタがどれだけゾーイを思ってあのプリンを作ったかがわかる。
確かに、地上に落ちてからの甘味ってフルーツか、そのフルーツを使ったジャムか、砂糖そのものかの選択肢しかなかったし、これは普通に嬉しいよな……
今までずっと、生きるために、明日の体力のために食べてるって感じで、食事をようやく落ち着いて食べれるようになったのは、本当に最近だしな。
けど、大成功なその光景に、俺は望を思って複雑な気持ちになってしまった。
「胃袋を掴むのが、何よりの近道よ」
きっと、そんな俺の感情がソニアに伝わったのか、ソニアは俺の方を向いて得意気に笑うことはなかった。
本当に、恋って難しくて人生を豊かにしてくれる、残酷なイベントだよな……
「わかった、わかった。じゃあ、そこで待ってろ」
「待ちま~す! 喜んで!」
キラキラした笑顔を浮かべるゾーイに対し、デルタは愛しそうにゾーイのことを見つめながら座るように促す。
すると、ノリノリで着席したゾーイを確認してデルタは冷蔵庫へと向かった。
ちなみにだけど、その冷蔵庫ってのはゾーイがどこかのレストランだった場所の厨房から拾ってきた大型のもの。
ゾーイ直々の恐怖の命を受けたシンが徹夜で修理した、戦利品である。
「何か、今のゾーイって、いつもとどことなく違くないか?」
そのゾーイとデルタの光景に、俺は激しすぎる違和感を覚えて、二人に問いかけていた。
いや、だって、あんなゾーイの純粋な笑顔見たことないよ!?
ゾーイが笑う時って、何かを企んでる時とか、事が自分の思い通りになった時とか、相手をコテンパンにしようとする時がほとんどだよ!?
「フフン……あの笑顔こそが、ゾーイが一人の女子だったって証拠よ!」
すると、半分パニックな俺に、なぜか得意気に不敵に笑うソニア。
「え、ジェームズ、どういうこと? 全然わからないんだけど……」
「よし! じゃあ、ジェームズ! あたしの素晴らしい計画を、昴にドンッと説明してあげて!」
どんなに考えてもソニアの言いたいことが理解できず、俺は助けを求めるようにジェームズに尋ねた。
すると、またまた得意気にソニアは無駄に芝居がかった感じで、ジェームズにお願いをしていた。
「あー、えっと……昴くん? ゾーイがフルーツを何かと食べてる光景ってよく見ない?」
「は? フルーツって……あ、けど……」
それを受け取ったジェームズは、俺に突然質問をしてきた。
初めはわけがわからなくて聞き返そうとしたけど、ふと気付く。
俺は確かにゾーイとフルーツの組み合わせには、見覚えがあったからだ。
作業中も、食事の後も、よくゾーイはフルーツをかじっていたような……
「女子って、基本的には甘いもの好きでしょ? それってさ、多分ゾーイも例外じゃないと思うの」
「まあ、ゾーイも女子だしって……」
そんな光景を思い出していると、ソニアがそう投げかけてくる。
そこで俺は、そりゃそうだと返事を返そうとして我に返る。
もしかしてだけど、この展開って……
「デルタね? ゾーイのためにスイーツのこと、すごく研究してたんだ」
俺の思考を先読みするように、ジェームズは笑顔で俺にそう投げかけた。
「あの富士山って山を見てると、これがめちゃくちゃ食べたくなるのよ!」
「それが食べたかった理由か? 本当に行き当たりばったりだよな?」
そんなやり取りをしてると、ゾーイは窓から見える地上時代に日本一の山だと言われた富士山を指差し、満面の笑みでそう言い切る。
そのゾーイに笑いかけながら、シンのお手製の冷蔵庫からデルタが取り出してきたのは……
「プリンだ……まさか、地上でこれが拝めるなんてすごすぎ! 何億年ぶりかのプリンだ~!」
「大げさだな……地上に落ちてから、何億年も経ってないだろ」
ゾーイが見たことのないテンションで歓喜を上げたのは、プリン。
あ、富士山とプリン……似てるか?
それに、ここからじゃあまりよくは見えないけど、あのプリン結構な大きさがあるんじゃないか?
「食べていいの!?」
「何のためにここに来たんだ?」
「それもそうよね? ではでは、いただきま~す!」
待ってましたとばかりに、嬉しそうにプリンを食べ始めたゾーイのことを、優しげな顔でデルタは見ていた。
そんな二人を見るだけで、ソニアのゾーイの甘味好きという読みが当たってたこと、デルタがどれだけゾーイを思ってあのプリンを作ったかがわかる。
確かに、地上に落ちてからの甘味ってフルーツか、そのフルーツを使ったジャムか、砂糖そのものかの選択肢しかなかったし、これは普通に嬉しいよな……
今までずっと、生きるために、明日の体力のために食べてるって感じで、食事をようやく落ち着いて食べれるようになったのは、本当に最近だしな。
けど、大成功なその光景に、俺は望を思って複雑な気持ちになってしまった。
「胃袋を掴むのが、何よりの近道よ」
きっと、そんな俺の感情がソニアに伝わったのか、ソニアは俺の方を向いて得意気に笑うことはなかった。
本当に、恋って難しくて人生を豊かにしてくれる、残酷なイベントだよな……
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる