エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

文字の大きさ
130 / 257
第三章-⑸ クレアとハロルド

ギスギスは息が詰まるよね

しおりを挟む
「ねえ、昴! クレアとアラン、それにハロルドも変だし、何があったの!?」
「だからさ、本人とか……あとは、ゾーイも事情を知ってるから、そこら辺に聞けって……」


 現在、俺は収穫した野菜達をレオの家に届けようとしている道すがら、真由に捕まって詰め寄られていた。
 クレアがアランに振られ、ハロルドがクレアにキレられ、夜通しでハロルドとゾーイと語り合ったあの日から、もう五日が経とうとしていた。
 俺の嫌な予想通り、クレアはアランとハロルドのことを避けまくり、心ここに在らずという状態。
 アランはクレアのことを気にしつつあまり変わらない様子だったけど、一方でハロルドのわかりやすさと動揺っぷりは頭を抱えるレベルだった。
 そんな三人のただならぬ雰囲気を察知して、みんなはソワソワしっぱなし……
 最終的にゾーイにどうしたのかと相談をしたサトルの一言にゾーイは、昴が全部知ってるからと俺に丸投げする一言を発したのだ。
 そのおかげで、俺は四六時中誰かに詰め寄られる日々を送ることになった……
 この真由とのやり取りさえ、何度目かわからなくなっている始末だ。


「クレアとアランに聞いてたって、大丈夫ってはぐらかされたわよ! ハロルドに関しては、もうずっと吃りまくってて話にならないし!」
「そこで、ゾーイだろ?」
「……昴? あのゾーイに、口で勝てると思ってるの? 全員で束になってかかっても負けるのが目に見えてるわよ」


 真由は深いため息をつきながら、それぐらいわからないのかというような顔で俺に吐き捨てる。
 十人以上対一で、全員に口で勝つとかどんな奴だよと普通だったならば言いたくなるが、ゾーイが相手ではそうだよなと俺は開きかけた口を閉じた。


「けど、俺の口から軽々しくこんなこと言えないんだって……わかってくれ」
「それは……そうかもだけど、このままじゃ、どんどん空気っていうか、悪くなっちゃうばっかりだと思って……」
「まあ、そうだよな……全員、そろそろ限界だろうし」


 当たり前に、みんなの気持ちは痛いほどわかってはいる。
 けど、さすがに誰が振られた、誰がキレられたなんて……そんなことが他人の口から知れ渡るなんて、最低なことだ。
 恋愛事ほど、自分で動いて解決をしなきゃいけない問題もないと、俺はここ最近で本当に学んだんだ。
 それでも真由が言う通り、今の俺達の空気がギスギスしてるのは確かで……


「……やっぱり、本人同士がしっかりと話し合うのが一番だと思うんだよな」
「まあ、確かにね……けどさ、その前に一度、私達に話したいことぶつけて、気持ちの整理をしてから話し合った方が良くない!?」
「あー、それもそうだな」
「そうでしょ!? じゃあ、女子全員でクレアから話を聞くから、男子全員でアランとハロルドのことお願いね?」


 真由はそう言うと、それがもう決定事項のように俺に強く訴えてくる。
 もうやるのかと、一瞬狼狽えてしまう俺だが……けど、こういうことは時間が経てば経ってしまうほど、気まずくなるよなと思い直して、俺は覚悟を決めた。


「早い方がいいもんな……わかった、サトル達にも話しとく」
「ありがとう! よし、そうと決まればクレアを……あ、タイミング最高!」


 俺の返事にどこか安心したように、真由はほっと一息つく。
 そして、この後の行動を計画しようとしていた時に、真由は視線の先で何かを見つけたようだった。
 俺も真由のその視線を辿ると、そこには大きな木にもたれかかって、空を見上げているクレアがいた。


 「クレア~! クレアってば~!」


 真由はすぐに、大声でクレアの名前を呼んでいたが、クレアはボーッとしてるようで、気付かなか……待てよ、あの木って、まさか……!?


「あれ、全然、クレア気付かない? ごめん、昴! 私、ちょっとクレアのとこ行ってくる!」


 そう言って、真由はすぐにクレアのところに走り出そうとする。


「待て、真由ッ!!!!」


 けど、俺は無我夢中で、真由の左腕を掴んで引き止めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...