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第三章-⑸ クレアとハロルド
口車と車椅子にのって
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「今、何と?」
「は?」
「あれ、聞こえなかった? 二人でこのドアを……」
「ゾーイ? 俺達、別に聞こえなかったわけじゃないんだよ?」
ハロルドの顔が引きつって、俺が間抜けな声を出し、ゾーイはもう一度同じ説明をし、俺のツッコミで締めるというこの一連の流れ。
大昔のコントの鉄板のようなやり取りをした俺達だったが、それでも頭が大混乱中なのは変わらなかった。
「じゃあ、何? あ、突き破った後の心配してるの? 大丈夫だって、シンが直してくれるから!」
「ゾーイ? 本当にいろいろ言いたいことがあるんだけど……まずね? シンは修理屋じゃないんだよ?」
「え? 昴、さすがに知ってるわよ?」
「あ……そうだよね? ごめ……」
「シンは便利屋でしょ?」
「どうしよう、さらにひどかった!」
またまたそんなコントのようなやり取りに、俺は思わず叫んだ。
そして、ゾーイのズレまくりな回答に頭を抱えてからの、不憫で散々な言われようのシンに心で手を合わせた。
「何が不満なのよ? あ、ごめんなんだけど、あたし、ケガ人だから突き破るの手伝えないのよ。まあ、けど、こんなの男二人なら楽勝でしょ?」
「いや、本当に君は……手伝えない以前にだ! これは、できるできないの話ではないと思うのだが!?!?」
ゾーイは車椅子に乗っていても、普段とまったく変わらない。
むしろ、自由に動けない代わりに傍若無人ぶりが増している気すらする。
そんなゾーイのいつも通りの自己中な進行に、ついにハロルドが叫んだのだ。
「まず! なぜ、君はそんな常識外れな答えにたどり着く!? 初めに、話し合うという選択肢はないのか!?」
「話し合うも何も、どうするのよ? クレアが部屋に引きこもって、ずっと黙秘権を行使してるんでしょ?」
「それはそうだが……とにかく、ドアを突き破る前に、クレアの気持ちを第一に考えるべきだ!」
「おーけー? じゃあ、考えたら、問答無用で突き破ってもいいわけ?」
「話を聞いていたのか、君は!?」
ハロルドは必死に叫んでいるが、ゾーイの前では迫力と貫禄に雲泥の差があるのが悲しいとこだ。
そんな迫力満点のゾーイは、今日も今日とて、止まることもなく……
「あのね? 二人とも、もっと、想像力を働かせろよって言ってんの! クレアの返事がない理由が部屋の中で倒れてて動けないからとか、侵入者に脅されてて喋れないとかだったら、あんたら責任取れるの? 最悪なケースってのは、身近にあるのよ?」
ゾーイは一気に、俺とハロルドにそうまくし立てた。
まあ、そうかもだけど、何か大げさな気もしないでもないでも……
「そ、それは盲点だった!」
あ、ダメだ、俺の目の前にお人好しで騙されやすいランキングナンバーワンの奴がいたの忘れてたわ。
「そうでしょ? ハロルド? 事は一刻を争うってことよ!」
「確かに! 大変だ、クレアの身に何かあっては……!!」
ハロルドは物の見事にゾーイの口車に乗せられ、あれよあれよという間にゾーイの思い通りに事が進む。
「昴くん! 私と君で、せーのでドアに体当たりしよう! すぐにクレアを救出しなければ、危険だ!」
「いやいやいやいや、待て待て待て」
ハロルドの中ではすっかり、クレアがどこかの組織に捕まったとばかりの緊急事態に陥っていることになっている。
今すぐにもドアを突き破ろうとする気満々で、丁寧にゾーイの車椅子を端に避けていた。
俺は、ハロルド? お前の将来が心配になってきたよ?
後ろのゾーイ見てみろよ!? 思いっきり欠伸してるぞ!?
「ハロルド、よく考えろって!? 最初に言ってた通りに、まずはクレアと話し合ってから……」
このままでは、今度こそ絶対に取り返しのつかないことになると思って、俺が必死に声を上げたその時……
「……何をしているの」
目の前のドアが静かに開き、中から三日ぶりのクレアが顔を出したのだ。
「く、クレア、無事だったのか!? ケガはしてないか!? 侵入者は!?」
ハロルドの突然の心配に、すぐさまクレアはゾーイのことを嫌悪感を丸出しにして睨みつける。
「まあまあ、結果的に閉ざされたドアはオープンして、クレアも無事! 何よりじゃないの!」
「ドアの前で、あれだけ騒いでたクセによく言うわ……」
まあ、そんな睨みに屈するゾーイなわけもなく、クレアは深いため息とともにそう吐き捨てた。
「さてさて、クレア。女同士、腹割って話そうじゃないの」
すると、ゾーイは部屋の主のクレアの許可をまったく取らずに、車椅子で部屋の中にズカズカと入っていく。
そして、振り返り、ゾーイはクレアに挑発するように笑いながらそう告げた。
「……私は、話すことなんてないわ」
「嘘が下手ね~? このあたしのケガに思うことがないなら、三日も引きこもるわけないでしょう? 世の中から取り残されたよほどの暇人でない限り、それは無理無理」
クレアはゾーイのことを一睨みして吐き捨てるが、そんなことで引き下がるゾーイなわけもなく……
見事に、クレアの図星をついていた。
まあ、いつもの如く、最後の一言が余計だけど……
「はあ……何を聞きたいの」
すると、クレアはそのゾーイの言葉に挑発されたのか、深いため息とともに観念したように、そう切り出した。
「まあ、単刀直入に聞くけど、あたしのことそんな好きじゃないでしょ?」
けど、その一言で、再びその場の空気をドン底に下げるなんて、本当に才能だと思う……
「は?」
「あれ、聞こえなかった? 二人でこのドアを……」
「ゾーイ? 俺達、別に聞こえなかったわけじゃないんだよ?」
ハロルドの顔が引きつって、俺が間抜けな声を出し、ゾーイはもう一度同じ説明をし、俺のツッコミで締めるというこの一連の流れ。
大昔のコントの鉄板のようなやり取りをした俺達だったが、それでも頭が大混乱中なのは変わらなかった。
「じゃあ、何? あ、突き破った後の心配してるの? 大丈夫だって、シンが直してくれるから!」
「ゾーイ? 本当にいろいろ言いたいことがあるんだけど……まずね? シンは修理屋じゃないんだよ?」
「え? 昴、さすがに知ってるわよ?」
「あ……そうだよね? ごめ……」
「シンは便利屋でしょ?」
「どうしよう、さらにひどかった!」
またまたそんなコントのようなやり取りに、俺は思わず叫んだ。
そして、ゾーイのズレまくりな回答に頭を抱えてからの、不憫で散々な言われようのシンに心で手を合わせた。
「何が不満なのよ? あ、ごめんなんだけど、あたし、ケガ人だから突き破るの手伝えないのよ。まあ、けど、こんなの男二人なら楽勝でしょ?」
「いや、本当に君は……手伝えない以前にだ! これは、できるできないの話ではないと思うのだが!?!?」
ゾーイは車椅子に乗っていても、普段とまったく変わらない。
むしろ、自由に動けない代わりに傍若無人ぶりが増している気すらする。
そんなゾーイのいつも通りの自己中な進行に、ついにハロルドが叫んだのだ。
「まず! なぜ、君はそんな常識外れな答えにたどり着く!? 初めに、話し合うという選択肢はないのか!?」
「話し合うも何も、どうするのよ? クレアが部屋に引きこもって、ずっと黙秘権を行使してるんでしょ?」
「それはそうだが……とにかく、ドアを突き破る前に、クレアの気持ちを第一に考えるべきだ!」
「おーけー? じゃあ、考えたら、問答無用で突き破ってもいいわけ?」
「話を聞いていたのか、君は!?」
ハロルドは必死に叫んでいるが、ゾーイの前では迫力と貫禄に雲泥の差があるのが悲しいとこだ。
そんな迫力満点のゾーイは、今日も今日とて、止まることもなく……
「あのね? 二人とも、もっと、想像力を働かせろよって言ってんの! クレアの返事がない理由が部屋の中で倒れてて動けないからとか、侵入者に脅されてて喋れないとかだったら、あんたら責任取れるの? 最悪なケースってのは、身近にあるのよ?」
ゾーイは一気に、俺とハロルドにそうまくし立てた。
まあ、そうかもだけど、何か大げさな気もしないでもないでも……
「そ、それは盲点だった!」
あ、ダメだ、俺の目の前にお人好しで騙されやすいランキングナンバーワンの奴がいたの忘れてたわ。
「そうでしょ? ハロルド? 事は一刻を争うってことよ!」
「確かに! 大変だ、クレアの身に何かあっては……!!」
ハロルドは物の見事にゾーイの口車に乗せられ、あれよあれよという間にゾーイの思い通りに事が進む。
「昴くん! 私と君で、せーのでドアに体当たりしよう! すぐにクレアを救出しなければ、危険だ!」
「いやいやいやいや、待て待て待て」
ハロルドの中ではすっかり、クレアがどこかの組織に捕まったとばかりの緊急事態に陥っていることになっている。
今すぐにもドアを突き破ろうとする気満々で、丁寧にゾーイの車椅子を端に避けていた。
俺は、ハロルド? お前の将来が心配になってきたよ?
後ろのゾーイ見てみろよ!? 思いっきり欠伸してるぞ!?
「ハロルド、よく考えろって!? 最初に言ってた通りに、まずはクレアと話し合ってから……」
このままでは、今度こそ絶対に取り返しのつかないことになると思って、俺が必死に声を上げたその時……
「……何をしているの」
目の前のドアが静かに開き、中から三日ぶりのクレアが顔を出したのだ。
「く、クレア、無事だったのか!? ケガはしてないか!? 侵入者は!?」
ハロルドの突然の心配に、すぐさまクレアはゾーイのことを嫌悪感を丸出しにして睨みつける。
「まあまあ、結果的に閉ざされたドアはオープンして、クレアも無事! 何よりじゃないの!」
「ドアの前で、あれだけ騒いでたクセによく言うわ……」
まあ、そんな睨みに屈するゾーイなわけもなく、クレアは深いため息とともにそう吐き捨てた。
「さてさて、クレア。女同士、腹割って話そうじゃないの」
すると、ゾーイは部屋の主のクレアの許可をまったく取らずに、車椅子で部屋の中にズカズカと入っていく。
そして、振り返り、ゾーイはクレアに挑発するように笑いながらそう告げた。
「……私は、話すことなんてないわ」
「嘘が下手ね~? このあたしのケガに思うことがないなら、三日も引きこもるわけないでしょう? 世の中から取り残されたよほどの暇人でない限り、それは無理無理」
クレアはゾーイのことを一睨みして吐き捨てるが、そんなことで引き下がるゾーイなわけもなく……
見事に、クレアの図星をついていた。
まあ、いつもの如く、最後の一言が余計だけど……
「はあ……何を聞きたいの」
すると、クレアはそのゾーイの言葉に挑発されたのか、深いため息とともに観念したように、そう切り出した。
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