エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑸ クレアとハロルド

現行犯逮捕という展開です

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「は? 何にか知らんけど、別に勝つ気とかないから」


 けど、安定してゾーイは何だそれはと言いたげに、吐き捨てた。


「人間として、あなたに挑戦するわ!」
「まったく意味がわからないけど、どうぞご勝手に」


 それでもクレアは負けることなく、ゾーイにまた力強く宣言していた。
 それに対して、ゾーイはもうまったく関心がないとばかりにクレアの横を通り過ぎようとするが……
 また、クレアの手によって車椅子が止められたのだった。


「……何なのよ!?」
「ゾーイ。あなたって、自分勝手で、無茶ぶりが毎回ひどくて、言動に多大なる問題があって、得体が知れないところがあるわよね?」


 ほとんどブチ切れ寸前のゾーイが、振り返ってクレアにそう吠える。
 けど、今度はクレアがいつものゾーイのように質問を完全無視して、さっきのゾーイと同じように悪口のオンパレードを並べ立ててきた。


「はあ……何よ? さっきの仕返し?」


 それにゾーイは、ものすごく深いため息をついて、クレアに聞き返す。
 けど、珍しく俺はゾーイのその答えにハズしたなと、不思議と思った。
 まあ、これが望とかならムカついてやり返したかもしれないけれど、クレアはそんなことする人間じゃないはずだ。


「けれど、やっぱり、私はあなたのこと嫌いじゃないみたいだわ」
「は?」
「思えば、あなたとこんなにゆっくり話をすることってなかったし、根底の無茶苦茶だって評価は変わらないけど……ゾーイ? 私は、今回のことであなたを目標にしたいと思った。そして、そう思うくらいには、私はあなたに対して好意があるんだと思う」


 ほら、思った通り、クレアは、そんなことをする人間じゃなかった。
 しかし、俺の中のクレアの評価が、少し変わった瞬間でもあった。
 クレアって天然か? だって、目標にしたいと思うなんて、ものすごくゾーイのこと好きだと思うんだよな……


「わざわざ言うこと、それ?」
「それは、傷付けたかと思って……?」


 一方で、その言葉を聞いたゾーイは顔色一つ変えずに、そう告げる。
 本当に、どういう感情なんだよ?
 そんなゾーイに対し、クレアは若干戸惑いつつ、疑問形で答えていた。


「別に? あたし、誰のことも特別に好きじゃないから。何言われたって、どう思われたって、傷付かないから」


 すると、ゾーイは、淡々と俺達三人のことを見据えて、そう告げた。
 ゾーイらしすぎるその答えに、俺は何とも言えない感情になった。
 ショックではなかった、ゾーイのことを知れば知るほどゾーイは全員に平等だと、思い知ったから。
 それに、これは俺達の中の妙な共通認識だと思うけど、いつかそんなゾーイに認めてもらいたいという感情がある。
 俺達は、君のことをもっと知りたいと思っているのだ。


「てか、バレないと思ってるわけ?」


 しかし、そんなことを思っているとゾーイは、急にドアに大声で叫んだのだ。
 そして、ゾーイはゆっくりと立ち上がり……は? え、立ち上がり!?


「ゾーイ!? 君は何をしてるんだ!?」


 ハロルドが真っ青な顔で叫び終わるのとほぼ同時に……
 そのままゾーイは、ドアに綺麗なフォームの飛び蹴りをくらわしたのだ。


「マジ揃いも揃って盗み聞きとか、ド派手に趣味悪すぎな?」


 ゾーイの飛び蹴りによりドアは見事に外れ、今はその上にゾーイが乗っている状態だ。
 その状態のまま、ゾーイはドアの下に話しかけている。
 どうしたのかと、俺達三人がゾーイが乗る大破したドアの下を覗くと……


「イッテテ……!! クソ、頭打った!」
「もう! こうなるから盗み聞きはやめようって言っただろ!?」
「何を言っても同じ、後の祭りだ」


 何とそこには、望、デルタ、アランの三人が仲良く下敷きになっていた。


「は? お前ら、何をして……え!?」


 そんな光景にクレアとハロルドは開きっぱなしの口が塞がらず、かろうじて声を出した俺だったが……
 目の前のさらなる衝撃な光景に、俺は心臓が止まるかと思った。
 何と、そこにいたのは三人だけじゃなくて、真由、サトル、橘さん、ローレンさん……さらに出て来る、ジェームズ、モーリス、シン、ソニアのナサニエル組に加えての、今ではすっかりお馴染みのレオ、モカ、コタロウ……嘘だろ?


「全員、ここにいたのか……?」


 俺の質問に対して全員揃って、バツの悪そうな顔で頷く。
 つまり、全員集合で、盗み聞きの現行犯というわけだね?


「プライバシーも何もないわね~?」


 現在進行形でドアを下敷きにしているゾーイが、呑気に呟いた。
 まあ、とりあえず必死に頭を回してゾーイが言えたことじゃないよねと、俺は心でツッコミを入れたのだった。
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