138 / 257
第三章-⑸ クレアとハロルド
現行犯逮捕という展開です
しおりを挟む
「は? 何にか知らんけど、別に勝つ気とかないから」
けど、安定してゾーイは何だそれはと言いたげに、吐き捨てた。
「人間として、あなたに挑戦するわ!」
「まったく意味がわからないけど、どうぞご勝手に」
それでもクレアは負けることなく、ゾーイにまた力強く宣言していた。
それに対して、ゾーイはもうまったく関心がないとばかりにクレアの横を通り過ぎようとするが……
また、クレアの手によって車椅子が止められたのだった。
「……何なのよ!?」
「ゾーイ。あなたって、自分勝手で、無茶ぶりが毎回ひどくて、言動に多大なる問題があって、得体が知れないところがあるわよね?」
ほとんどブチ切れ寸前のゾーイが、振り返ってクレアにそう吠える。
けど、今度はクレアがいつものゾーイのように質問を完全無視して、さっきのゾーイと同じように悪口のオンパレードを並べ立ててきた。
「はあ……何よ? さっきの仕返し?」
それにゾーイは、ものすごく深いため息をついて、クレアに聞き返す。
けど、珍しく俺はゾーイのその答えにハズしたなと、不思議と思った。
まあ、これが望とかならムカついてやり返したかもしれないけれど、クレアはそんなことする人間じゃないはずだ。
「けれど、やっぱり、私はあなたのこと嫌いじゃないみたいだわ」
「は?」
「思えば、あなたとこんなにゆっくり話をすることってなかったし、根底の無茶苦茶だって評価は変わらないけど……ゾーイ? 私は、今回のことであなたを目標にしたいと思った。そして、そう思うくらいには、私はあなたに対して好意があるんだと思う」
ほら、思った通り、クレアは、そんなことをする人間じゃなかった。
しかし、俺の中のクレアの評価が、少し変わった瞬間でもあった。
クレアって天然か? だって、目標にしたいと思うなんて、ものすごくゾーイのこと好きだと思うんだよな……
「わざわざ言うこと、それ?」
「それは、傷付けたかと思って……?」
一方で、その言葉を聞いたゾーイは顔色一つ変えずに、そう告げる。
本当に、どういう感情なんだよ?
そんなゾーイに対し、クレアは若干戸惑いつつ、疑問形で答えていた。
「別に? あたし、誰のことも特別に好きじゃないから。何言われたって、どう思われたって、傷付かないから」
すると、ゾーイは、淡々と俺達三人のことを見据えて、そう告げた。
ゾーイらしすぎるその答えに、俺は何とも言えない感情になった。
ショックではなかった、ゾーイのことを知れば知るほどゾーイは全員に平等だと、思い知ったから。
それに、これは俺達の中の妙な共通認識だと思うけど、いつかそんなゾーイに認めてもらいたいという感情がある。
俺達は、君のことをもっと知りたいと思っているのだ。
「てか、バレないと思ってるわけ?」
しかし、そんなことを思っているとゾーイは、急にドアに大声で叫んだのだ。
そして、ゾーイはゆっくりと立ち上がり……は? え、立ち上がり!?
「ゾーイ!? 君は何をしてるんだ!?」
ハロルドが真っ青な顔で叫び終わるのとほぼ同時に……
そのままゾーイは、ドアに綺麗なフォームの飛び蹴りをくらわしたのだ。
「マジ揃いも揃って盗み聞きとか、ド派手に趣味悪すぎな?」
ゾーイの飛び蹴りによりドアは見事に外れ、今はその上にゾーイが乗っている状態だ。
その状態のまま、ゾーイはドアの下に話しかけている。
どうしたのかと、俺達三人がゾーイが乗る大破したドアの下を覗くと……
「イッテテ……!! クソ、頭打った!」
「もう! こうなるから盗み聞きはやめようって言っただろ!?」
「何を言っても同じ、後の祭りだ」
何とそこには、望、デルタ、アランの三人が仲良く下敷きになっていた。
「は? お前ら、何をして……え!?」
そんな光景にクレアとハロルドは開きっぱなしの口が塞がらず、かろうじて声を出した俺だったが……
目の前のさらなる衝撃な光景に、俺は心臓が止まるかと思った。
何と、そこにいたのは三人だけじゃなくて、真由、サトル、橘さん、ローレンさん……さらに出て来る、ジェームズ、モーリス、シン、ソニアのナサニエル組に加えての、今ではすっかりお馴染みのレオ、モカ、コタロウ……嘘だろ?
「全員、ここにいたのか……?」
俺の質問に対して全員揃って、バツの悪そうな顔で頷く。
つまり、全員集合で、盗み聞きの現行犯というわけだね?
「プライバシーも何もないわね~?」
現在進行形でドアを下敷きにしているゾーイが、呑気に呟いた。
まあ、とりあえず必死に頭を回してゾーイが言えたことじゃないよねと、俺は心でツッコミを入れたのだった。
けど、安定してゾーイは何だそれはと言いたげに、吐き捨てた。
「人間として、あなたに挑戦するわ!」
「まったく意味がわからないけど、どうぞご勝手に」
それでもクレアは負けることなく、ゾーイにまた力強く宣言していた。
それに対して、ゾーイはもうまったく関心がないとばかりにクレアの横を通り過ぎようとするが……
また、クレアの手によって車椅子が止められたのだった。
「……何なのよ!?」
「ゾーイ。あなたって、自分勝手で、無茶ぶりが毎回ひどくて、言動に多大なる問題があって、得体が知れないところがあるわよね?」
ほとんどブチ切れ寸前のゾーイが、振り返ってクレアにそう吠える。
けど、今度はクレアがいつものゾーイのように質問を完全無視して、さっきのゾーイと同じように悪口のオンパレードを並べ立ててきた。
「はあ……何よ? さっきの仕返し?」
それにゾーイは、ものすごく深いため息をついて、クレアに聞き返す。
けど、珍しく俺はゾーイのその答えにハズしたなと、不思議と思った。
まあ、これが望とかならムカついてやり返したかもしれないけれど、クレアはそんなことする人間じゃないはずだ。
「けれど、やっぱり、私はあなたのこと嫌いじゃないみたいだわ」
「は?」
「思えば、あなたとこんなにゆっくり話をすることってなかったし、根底の無茶苦茶だって評価は変わらないけど……ゾーイ? 私は、今回のことであなたを目標にしたいと思った。そして、そう思うくらいには、私はあなたに対して好意があるんだと思う」
ほら、思った通り、クレアは、そんなことをする人間じゃなかった。
しかし、俺の中のクレアの評価が、少し変わった瞬間でもあった。
クレアって天然か? だって、目標にしたいと思うなんて、ものすごくゾーイのこと好きだと思うんだよな……
「わざわざ言うこと、それ?」
「それは、傷付けたかと思って……?」
一方で、その言葉を聞いたゾーイは顔色一つ変えずに、そう告げる。
本当に、どういう感情なんだよ?
そんなゾーイに対し、クレアは若干戸惑いつつ、疑問形で答えていた。
「別に? あたし、誰のことも特別に好きじゃないから。何言われたって、どう思われたって、傷付かないから」
すると、ゾーイは、淡々と俺達三人のことを見据えて、そう告げた。
ゾーイらしすぎるその答えに、俺は何とも言えない感情になった。
ショックではなかった、ゾーイのことを知れば知るほどゾーイは全員に平等だと、思い知ったから。
それに、これは俺達の中の妙な共通認識だと思うけど、いつかそんなゾーイに認めてもらいたいという感情がある。
俺達は、君のことをもっと知りたいと思っているのだ。
「てか、バレないと思ってるわけ?」
しかし、そんなことを思っているとゾーイは、急にドアに大声で叫んだのだ。
そして、ゾーイはゆっくりと立ち上がり……は? え、立ち上がり!?
「ゾーイ!? 君は何をしてるんだ!?」
ハロルドが真っ青な顔で叫び終わるのとほぼ同時に……
そのままゾーイは、ドアに綺麗なフォームの飛び蹴りをくらわしたのだ。
「マジ揃いも揃って盗み聞きとか、ド派手に趣味悪すぎな?」
ゾーイの飛び蹴りによりドアは見事に外れ、今はその上にゾーイが乗っている状態だ。
その状態のまま、ゾーイはドアの下に話しかけている。
どうしたのかと、俺達三人がゾーイが乗る大破したドアの下を覗くと……
「イッテテ……!! クソ、頭打った!」
「もう! こうなるから盗み聞きはやめようって言っただろ!?」
「何を言っても同じ、後の祭りだ」
何とそこには、望、デルタ、アランの三人が仲良く下敷きになっていた。
「は? お前ら、何をして……え!?」
そんな光景にクレアとハロルドは開きっぱなしの口が塞がらず、かろうじて声を出した俺だったが……
目の前のさらなる衝撃な光景に、俺は心臓が止まるかと思った。
何と、そこにいたのは三人だけじゃなくて、真由、サトル、橘さん、ローレンさん……さらに出て来る、ジェームズ、モーリス、シン、ソニアのナサニエル組に加えての、今ではすっかりお馴染みのレオ、モカ、コタロウ……嘘だろ?
「全員、ここにいたのか……?」
俺の質問に対して全員揃って、バツの悪そうな顔で頷く。
つまり、全員集合で、盗み聞きの現行犯というわけだね?
「プライバシーも何もないわね~?」
現在進行形でドアを下敷きにしているゾーイが、呑気に呟いた。
まあ、とりあえず必死に頭を回してゾーイが言えたことじゃないよねと、俺は心でツッコミを入れたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる