エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

文字の大きさ
139 / 257
第三章-⑸ クレアとハロルド

フォールスイルニィス

しおりを挟む
「あ、けど、こいつらが聞いてたのってクレアがハロルドに謝ってるぐらいのとこからだから、まあ安心したら?」


 そして、ゾーイは唖然として固まったままだった俺、クレア、ハロルドに淡々とそう告げた……ドアの上から。
 何が安心できるのかはさて置き……


「え? あ、あの、ゾーイ? そんなに前から、みんながここで聞いてたことに気付いてたのか?」
「そりゃね? 気配とか、その他諸々でわかるでしょ?」


 質問をしながら、俺は今の自分の顔が盛大に引きつっているのがわかった。
 そんな当然だろみたいなテンションのとこ申し訳ないけど、分からないと思う人間が大半だと思うよ!?
 ねえ、ゾーイ? 本当の本当に超能力とかないんだよね!?
 どうしよう……俺はこの状況に、一体どこからツッコミを入れたらいいのかまったくわからず、立ち尽くしていた。


「つーか、ゾーイ! お前はいつまでそこに乗ってんだ! 下りろ!」


 けど、その望の声によって、俺は思考の渦から強制的に引き戻されたのだ。


「何よ。逆ギレ? ていうか、あたし体重的には、全然余裕で平均クリアしてると思うけど?」
「それはそうだろうけどな? ドアの重さもプラスされてんだよな……ははっ」
「……それとだ。お前、今わざと体重を下にかけてるだろ。わかるぞ」


 そんな望の怒号に対し、ゾーイはドアの上から、少し楽しんでるような口調で三人に返した。
 すると、デルタが笑いながらも限界寸前だというように、アランは普段より若干低めの声でそう答えた。
 まあ、ゾーイ単体ならまだしも、あのドアって何キロあるんだろ……?


「とにかく! お前は黙って、さっさとそこどけって言ってんだよ!」


 そして、再び望のさらに荒い怒号がその場に飛んだ。
 結構本気で、三人とも限界を迎えようとしているのではなかろうか……?


「おー、おー、望くんの怖いこと。わかりましたよ、下りますよっと」


 そう言って、絶対に百パーセント怖がってなんかいないゾーイは、ひょいっとドアの上から下りる。


「危なかった……ガチで危なかった……」
「できることなら、もう二度とドアの前に立ちたくねえ……!!」
「……少し、鍛え直すか」


 すると、すぐさま、ドアの下からは顔色を悪くした三人が這い出てきた。
 望は肩で息をしており、デルタの顔は真っ青で床に手を付き、アランは密かに何かを誓っている。
 三者三様か……本当にお疲れ様だよ。


「あ、シン? このドア、直しといて」
「え? あ、ああ……」
「クレアは女子だし、防犯対策として夜までにはやっておいてね?」
「ははは……承知しました……」


 そして、下りてすぐ、ゾーイはシンに自分の飛び蹴りによって大破したドアの修理を命令し……頼んでいた。
 それをシンは、慣れたように、諦めたように了承していた。
 うん、ゾーイが大破した物の修理を頼むのって、もう何十回目とかだもんね?
 四方八方からのシンへの同情の視線が刺さるのも、今となってはもう見慣れた光景になっていた。
 というか、待て? それよりも……


「ゾオオオオオオオオオイ!! 君、ケガをしていたはずでは!? なぜ、そんな自由自在に動いているんだ!? さっきまで車椅子に乗っていたではないか!?!?」


 うん、俺のというよりも、この場の全員の言いたかったことを、ハロルドが壮大に代弁してくれた。
 ゾーイはハロルドを倒木から庇ったあの日以来、右足の激痛で、自分で歩くことができなかったはずだ。
 だから、ゾーイのために俺達は病院の跡地から車椅子を探してきて、シンに修理してもらったのだ。
 けど、そのゾーイはたった今、俺達の目の前で、綺麗な飛び蹴りをくらわしたばかりなわけで……は?


「別に最初からケガしてないけど? 近頃歩くのが面倒だったのよ。けど、そろそろ、車椅子も飽きたし。歩くわ」


 すると、ゾーイは淡々と笑顔で、特に悪びれる様子は皆無で、言い放った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...