140 / 257
第三章-⑸ クレアとハロルド
一つになったなんて幻想だ
しおりを挟む
「俺達の心配を返せや、コラアアアアアアアア!!!!」
「お前は、人騒がせにもほどがあるだろおおおおおおおお!!!!」
予想通りに、一番にキレたのは望とコタロウだった。
望はジェームズとシンに、コタロウはレオとモカに、それぞれ抑えられてる。
「本当にいつか殺されるぞ……」
「そうなったなら、まず裁判じゃ勝ち目はないだろうな。十中八九、悪いのはゾーイの方だ」
デルタが頭を抱え、真っ青な顔でそう呟くと、その隣ではアランが真顔で妙にリアルなことを話していた。
「ごめん、ちょっと目眩が……」
「え!? ま、真由!?」
「大丈夫!? 聞こえてる!?」
そして、真由がその場に崩れ落ち、それを慌てて、橘さんとソニアが支える。
真由、めちゃくちゃ一生懸命ゾーイののこと看病してたもんな……
「昴、お疲れ様」
「ああ、サトルか……お疲れ」
「大丈夫か? 今にも魂が抜けそうな顔してるけど……」
「そうもなるって! あの日、ゾーイのこと運んだの俺だぜ!? 本当にあの時は生きた心地がしなかったのに……こんなオチって……!!」
俺は苦笑いのサトルの目の前で、文字通りに崩れ落ちた。
その俺の背中を擦りながら、サトルはおかしなことを口にした。
「けど、ぶっちゃけ、今回のこと、全部ゾーイの計算だと思うんだよな」
「え?」
「まあ、さすがに、クレアとハロルドの事故のことは偶然だろうけど……瞬時に考えて、あの状況を利用して仮病だと偽ったんじゃないかな?」
「ま、まさか……」
俺はサトルの言葉に、苦笑いで曖昧な答えを返すしかなかった。
仮にサトルの言う通りだとしたら、ゾーイは最初から、クレアに自信をつけさせるためと、ハロルドと仲直りさせるためにずっとケガ人を演じていたということになる……そんなこと、あのゾーイだとしても、さすがに……?
「あ、それとさ、ドアの下敷き三人衆に言いたいことあるんだけど」
すると、そんな風に俺がまた思考の渦に入っている間に、四方八方からの苦情をかわしてたゾーイが、望、デルタ、アランに向かってそう言い放った。
そういや、最近のバタバタですっかり忘れてたけど、ここの恋愛問題もあったよな……
メンバーがメンバーだけに、俺達の注目は自然とそこに集まった。
「あたしさ、お城で大人しく王子様が助けに来るのを待ってるような、人任せのお姫様タイプじゃないのよ」
「は?」
「何だって?」
「……ほう」
そして、満を持して放たれたゾーイの言葉に望とデルタは聞き返し、アランは含み笑いを返した。
藪から棒にどういう意味だ?
けど、理解が追いつかぬまま、ゾーイはさらに言葉を続けた。
「自由でいたいの。だから、誰かのものになる気とかはないから。まあ、来世であんたらが世界を統べるような伝説の存在にでもなってから、出直して?」
真顔でそう言い放ったゾーイは、そのまま部屋を出て行った。
あれ、待てよ? 今のって……?
「仲良く振られたな? これで、とりあえずは、恨みっこなしだな?」
アランは面白そうに、絶望の縁に立たされたような顔の望とデルタに、そう告げたのだ。
あ、やっぱり、あれって、振られたであってるよね?
そのアランの言葉を皮切りに、当事者の三人に触れないように、俺を含めた他の全員は、気まずそうに目を逸らした。
「タイミングを考えろよなああ!!」
「心の準備してなかったってのおお!!」
後ろでは、望とデルタのそう叫ぶ声が聞こえてきた。
これで大丈夫、俺達はようやく本当に一つになれた。
この仲間とならば、この先のどんな困難でも乗り越えられる……この時の俺は本気で、そう思っていた。
「モーリス、どこか行くのか?」
「……忘れ物に気付きました」
ハロルドの質問に、いつも通りにモーリスは素っ気なく答えて、部屋を出て行った。
「サトル、今日の夜会えないかな!?」
「あー、菜々美、ごめんね? 今日は疲れてて……」
橘さんからの誘いを、手を合わせてサトルは申し訳なさそうに断る。
残念そうにしてた橘さんだが、すぐに笑顔に戻っていた。
「ゾーイ・エマーソン……本当に、どこまでも油断ならないわ」
そうボソリとローレンさんは呟き、不穏な空気を残して、部屋を出て行った。
鈍感なのは、俺だったのだと思う。
全てがいつも通りだろうと、この前と同じだろうと、目を瞑ってしまった。
「あ、てか、ゾーイ! 暗くなるのにどこ行ったんだよ!」
俺は部屋の誰かに聞こえただろう声を残して、そのまま部屋を飛び出した。
家を出て、裏に回ったところに君は空を見上げて立っていた。
知らなかった、すぐそこまで俺達にとっての最大の困難が訪れようとしていたことなんて……
「……これは嵐が来るな」
ゾーイ・エマーソン、君以外は――
「お前は、人騒がせにもほどがあるだろおおおおおおおお!!!!」
予想通りに、一番にキレたのは望とコタロウだった。
望はジェームズとシンに、コタロウはレオとモカに、それぞれ抑えられてる。
「本当にいつか殺されるぞ……」
「そうなったなら、まず裁判じゃ勝ち目はないだろうな。十中八九、悪いのはゾーイの方だ」
デルタが頭を抱え、真っ青な顔でそう呟くと、その隣ではアランが真顔で妙にリアルなことを話していた。
「ごめん、ちょっと目眩が……」
「え!? ま、真由!?」
「大丈夫!? 聞こえてる!?」
そして、真由がその場に崩れ落ち、それを慌てて、橘さんとソニアが支える。
真由、めちゃくちゃ一生懸命ゾーイののこと看病してたもんな……
「昴、お疲れ様」
「ああ、サトルか……お疲れ」
「大丈夫か? 今にも魂が抜けそうな顔してるけど……」
「そうもなるって! あの日、ゾーイのこと運んだの俺だぜ!? 本当にあの時は生きた心地がしなかったのに……こんなオチって……!!」
俺は苦笑いのサトルの目の前で、文字通りに崩れ落ちた。
その俺の背中を擦りながら、サトルはおかしなことを口にした。
「けど、ぶっちゃけ、今回のこと、全部ゾーイの計算だと思うんだよな」
「え?」
「まあ、さすがに、クレアとハロルドの事故のことは偶然だろうけど……瞬時に考えて、あの状況を利用して仮病だと偽ったんじゃないかな?」
「ま、まさか……」
俺はサトルの言葉に、苦笑いで曖昧な答えを返すしかなかった。
仮にサトルの言う通りだとしたら、ゾーイは最初から、クレアに自信をつけさせるためと、ハロルドと仲直りさせるためにずっとケガ人を演じていたということになる……そんなこと、あのゾーイだとしても、さすがに……?
「あ、それとさ、ドアの下敷き三人衆に言いたいことあるんだけど」
すると、そんな風に俺がまた思考の渦に入っている間に、四方八方からの苦情をかわしてたゾーイが、望、デルタ、アランに向かってそう言い放った。
そういや、最近のバタバタですっかり忘れてたけど、ここの恋愛問題もあったよな……
メンバーがメンバーだけに、俺達の注目は自然とそこに集まった。
「あたしさ、お城で大人しく王子様が助けに来るのを待ってるような、人任せのお姫様タイプじゃないのよ」
「は?」
「何だって?」
「……ほう」
そして、満を持して放たれたゾーイの言葉に望とデルタは聞き返し、アランは含み笑いを返した。
藪から棒にどういう意味だ?
けど、理解が追いつかぬまま、ゾーイはさらに言葉を続けた。
「自由でいたいの。だから、誰かのものになる気とかはないから。まあ、来世であんたらが世界を統べるような伝説の存在にでもなってから、出直して?」
真顔でそう言い放ったゾーイは、そのまま部屋を出て行った。
あれ、待てよ? 今のって……?
「仲良く振られたな? これで、とりあえずは、恨みっこなしだな?」
アランは面白そうに、絶望の縁に立たされたような顔の望とデルタに、そう告げたのだ。
あ、やっぱり、あれって、振られたであってるよね?
そのアランの言葉を皮切りに、当事者の三人に触れないように、俺を含めた他の全員は、気まずそうに目を逸らした。
「タイミングを考えろよなああ!!」
「心の準備してなかったってのおお!!」
後ろでは、望とデルタのそう叫ぶ声が聞こえてきた。
これで大丈夫、俺達はようやく本当に一つになれた。
この仲間とならば、この先のどんな困難でも乗り越えられる……この時の俺は本気で、そう思っていた。
「モーリス、どこか行くのか?」
「……忘れ物に気付きました」
ハロルドの質問に、いつも通りにモーリスは素っ気なく答えて、部屋を出て行った。
「サトル、今日の夜会えないかな!?」
「あー、菜々美、ごめんね? 今日は疲れてて……」
橘さんからの誘いを、手を合わせてサトルは申し訳なさそうに断る。
残念そうにしてた橘さんだが、すぐに笑顔に戻っていた。
「ゾーイ・エマーソン……本当に、どこまでも油断ならないわ」
そうボソリとローレンさんは呟き、不穏な空気を残して、部屋を出て行った。
鈍感なのは、俺だったのだと思う。
全てがいつも通りだろうと、この前と同じだろうと、目を瞑ってしまった。
「あ、てか、ゾーイ! 暗くなるのにどこ行ったんだよ!」
俺は部屋の誰かに聞こえただろう声を残して、そのまま部屋を飛び出した。
家を出て、裏に回ったところに君は空を見上げて立っていた。
知らなかった、すぐそこまで俺達にとっての最大の困難が訪れようとしていたことなんて……
「……これは嵐が来るな」
ゾーイ・エマーソン、君以外は――
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる