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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
ピーポーコンペアー
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「まあ、菜々美の気持ちも複雑ってことよね?」
重い空気が漂っていたその時、空気を読まない呑気な声が響き渡ったのだ。
「え……ゾーイ、それどういう……?」
ゾーイのその言葉に、真由は明らかに困惑しながら問いかけた。
俺と望は、そんな二人のことを固唾を飲んで見守るしかできなかった。
「まず、菜々美が怒ったのは、真由の言葉にじゃなくて、真由に。もっと、正確に言うと、真由と昴の関係に焦った上での八つ当たりでしょうね?」
すると、ゾーイは淡々と真由から視線を外さずにそう言い切ったのだ。
え、ちょっと待ってくれよ……はあ!?
「お、俺と真由の関係に!?」
「八つ当たりって……」
「ダメだ、普通に意味不明だわ」
俺は叫び、真由はさらに困惑し、望は諦め半分で匙を投げた。
「あんたら仲が良いわね? 揃って、そこまでわからないって顔できるかね?」
そんな俺達三人の様子を見て、ゾーイは呆れたように、そして茶化すように軽く吐き捨てたのだ。
「え、だって……俺と真由に、橘さんが焦る要素がどこにあるんだよ?」
「そうだろうよ! 真由のことはともかくとして、昴のルックスはどんなに高く見積っても中の上! それに比べて、雨野と橘を見てみろよ? ありゃ、完璧なまでの上玉コンビだろうよ!」
「望……そ、それぐらいで……ふふっ」
「おい、望? どさくさに紛れに俺のこと落としてるよな? そして、真由はフォローするか、笑うか選べよな?」
二人揃って、あとで覚えとけよな?
俺のゾーイへの反論に続く片割れと彼女の言動が、こんなにも残酷なものだと誰が予想できたのか……
「ていうか、話戻すけど、焦る要素あるじゃん。あんたら、何だかんだで交際順調じゃんよ?」
そして、一番に傷付くのが、明らかに落ち込んでいる俺のことを、スルーしてしまうゾーイだよ……
「きっと、菜々美は一番近くにいた真由に昴って彼氏ができたことで、先を越されたって焦りと、置いて行かれるって怖さが溢れ出したんじゃない?」
そんな俺の心中なんて知るわけも知る気もないだろうゾーイは、さらに言葉を続けたって……あれ、今ゾーイが言ったことって?
「置いて行かれるって……私に?」
「他に誰がいるのよ」
目を見開いて驚いたように聞き返した真由も、何となく気付いたようだ。
「もっと言うなら、喪失感よ。真由にとっての一番が昴になっちゃうと、自分は一人になる。だから、自分もまた一番を見つけなきゃって焦ったんじゃん?」
そのゾーイの言葉を聞いて、真由は泣き崩れてしまった。
「わた、し……何も、わかって……!!」
俺が真由を抱きしめ、望は真由の背中を摩る。
知らず知らずのうちに、大切な人を傷付けてしまっていたと知った時は、すごくエネルギーを使う。
人とは理性ではどうにもならない時があるもので、恋愛や友情が代名詞だ。
初めから比べるものではないのに、比べて、傷付いて、悩んで……
けど、ゾーイの言葉には橘さんが真由のことを大好きだと、ぐちゃぐちゃな気持ちの中にも、その思いだけはしっかりと詰まっているような気がした。
「女の友情も、本当に面倒ばっかね」
君にはまだまだ敵いそうにはないな。
呆れたように呟いたゾーイ……これを伝えたかったのか?
俺が、ゾーイが今日ここに来た理由を探ろうとしていると……
「ねえ、真由?」
「……え?」
「菜々美から、サトルが最近どこかに消えるって話とか聞いてる?」
真由が泣き止んだタイミングを見計らって、ゾーイは話しかけ、妙なことを質問していたのだ……待てよ?
「消える……あ、そういえば! ここ最近になってから、なかなか雨野のことが捕まらないって言ってたような……?」
偶然なのか、必然なのか、その真由の答えには俺も身覚えがあった。
最近、サトルは作業が終わると気付くとその場からいなくなっていることが増えたのだ。
けど、夕飯になれば戻って来るし、子どもじゃあるまいし、心配するのも変な話だと思って、特に気にしてなかった。
そんなことを、ぼんやりと俺が思い出していた時だった。
「緊急招集かけて」
「は?」
そんなゾーイの言葉が響いたのだ。
しかも、普段よりも、いくらか低い真剣な声だったような気がするが……望はわけがわからず、聞き返していた。
「部屋にいる奴は全員強制、寝てる奴は叩き起して。部屋にいなかったら、見逃しといていいわ。あ、あと! レオとコタロウのことも呼んで。モカは……菜々美と一緒だろうから、今日は休ませてあげるでいいわ」
しかし、望の声を完全に無視して、ゾーイはどんどん話を進めていった。
「ちょっ、ちょっと待って!! 俺達の話を聞いてよ、ゾーイ!?」
「何よ?」
「それはこっちのセリフだよ! こんな夜中に何を始めるの!?」
このままではまずいと思って、俺は必死に言うだけ言って、部屋を出て行こうとしていたゾーイを体を張って止める。
案の定、面倒だなって顔をされたけど関係ないってか、おかしいでしょ!?
全員を叩き起こすって、何なのさ!?
どうにか怯まないように、俺は改めてゾーイに叫びながら質問をする。
すると、ゾーイはため息を吐いてこう答えたのだ。
「決まってるでしょ? 緊急会議よ」
重い空気が漂っていたその時、空気を読まない呑気な声が響き渡ったのだ。
「え……ゾーイ、それどういう……?」
ゾーイのその言葉に、真由は明らかに困惑しながら問いかけた。
俺と望は、そんな二人のことを固唾を飲んで見守るしかできなかった。
「まず、菜々美が怒ったのは、真由の言葉にじゃなくて、真由に。もっと、正確に言うと、真由と昴の関係に焦った上での八つ当たりでしょうね?」
すると、ゾーイは淡々と真由から視線を外さずにそう言い切ったのだ。
え、ちょっと待ってくれよ……はあ!?
「お、俺と真由の関係に!?」
「八つ当たりって……」
「ダメだ、普通に意味不明だわ」
俺は叫び、真由はさらに困惑し、望は諦め半分で匙を投げた。
「あんたら仲が良いわね? 揃って、そこまでわからないって顔できるかね?」
そんな俺達三人の様子を見て、ゾーイは呆れたように、そして茶化すように軽く吐き捨てたのだ。
「え、だって……俺と真由に、橘さんが焦る要素がどこにあるんだよ?」
「そうだろうよ! 真由のことはともかくとして、昴のルックスはどんなに高く見積っても中の上! それに比べて、雨野と橘を見てみろよ? ありゃ、完璧なまでの上玉コンビだろうよ!」
「望……そ、それぐらいで……ふふっ」
「おい、望? どさくさに紛れに俺のこと落としてるよな? そして、真由はフォローするか、笑うか選べよな?」
二人揃って、あとで覚えとけよな?
俺のゾーイへの反論に続く片割れと彼女の言動が、こんなにも残酷なものだと誰が予想できたのか……
「ていうか、話戻すけど、焦る要素あるじゃん。あんたら、何だかんだで交際順調じゃんよ?」
そして、一番に傷付くのが、明らかに落ち込んでいる俺のことを、スルーしてしまうゾーイだよ……
「きっと、菜々美は一番近くにいた真由に昴って彼氏ができたことで、先を越されたって焦りと、置いて行かれるって怖さが溢れ出したんじゃない?」
そんな俺の心中なんて知るわけも知る気もないだろうゾーイは、さらに言葉を続けたって……あれ、今ゾーイが言ったことって?
「置いて行かれるって……私に?」
「他に誰がいるのよ」
目を見開いて驚いたように聞き返した真由も、何となく気付いたようだ。
「もっと言うなら、喪失感よ。真由にとっての一番が昴になっちゃうと、自分は一人になる。だから、自分もまた一番を見つけなきゃって焦ったんじゃん?」
そのゾーイの言葉を聞いて、真由は泣き崩れてしまった。
「わた、し……何も、わかって……!!」
俺が真由を抱きしめ、望は真由の背中を摩る。
知らず知らずのうちに、大切な人を傷付けてしまっていたと知った時は、すごくエネルギーを使う。
人とは理性ではどうにもならない時があるもので、恋愛や友情が代名詞だ。
初めから比べるものではないのに、比べて、傷付いて、悩んで……
けど、ゾーイの言葉には橘さんが真由のことを大好きだと、ぐちゃぐちゃな気持ちの中にも、その思いだけはしっかりと詰まっているような気がした。
「女の友情も、本当に面倒ばっかね」
君にはまだまだ敵いそうにはないな。
呆れたように呟いたゾーイ……これを伝えたかったのか?
俺が、ゾーイが今日ここに来た理由を探ろうとしていると……
「ねえ、真由?」
「……え?」
「菜々美から、サトルが最近どこかに消えるって話とか聞いてる?」
真由が泣き止んだタイミングを見計らって、ゾーイは話しかけ、妙なことを質問していたのだ……待てよ?
「消える……あ、そういえば! ここ最近になってから、なかなか雨野のことが捕まらないって言ってたような……?」
偶然なのか、必然なのか、その真由の答えには俺も身覚えがあった。
最近、サトルは作業が終わると気付くとその場からいなくなっていることが増えたのだ。
けど、夕飯になれば戻って来るし、子どもじゃあるまいし、心配するのも変な話だと思って、特に気にしてなかった。
そんなことを、ぼんやりと俺が思い出していた時だった。
「緊急招集かけて」
「は?」
そんなゾーイの言葉が響いたのだ。
しかも、普段よりも、いくらか低い真剣な声だったような気がするが……望はわけがわからず、聞き返していた。
「部屋にいる奴は全員強制、寝てる奴は叩き起して。部屋にいなかったら、見逃しといていいわ。あ、あと! レオとコタロウのことも呼んで。モカは……菜々美と一緒だろうから、今日は休ませてあげるでいいわ」
しかし、望の声を完全に無視して、ゾーイはどんどん話を進めていった。
「ちょっ、ちょっと待って!! 俺達の話を聞いてよ、ゾーイ!?」
「何よ?」
「それはこっちのセリフだよ! こんな夜中に何を始めるの!?」
このままではまずいと思って、俺は必死に言うだけ言って、部屋を出て行こうとしていたゾーイを体を張って止める。
案の定、面倒だなって顔をされたけど関係ないってか、おかしいでしょ!?
全員を叩き起こすって、何なのさ!?
どうにか怯まないように、俺は改めてゾーイに叫びながら質問をする。
すると、ゾーイはため息を吐いてこう答えたのだ。
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