エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス

何て残酷な仕打ちだろうか

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「え? は、ゾーイ……え?」
「……マジかよ」


 ゾーイの爆弾発言を聞き、俺は慌てて言葉にならず、望は小さく呟くことが精一杯だった……そして、真由は……


「何で、ゾーイ……何で!?!?」


 めちゃくちゃに動揺しまくっていた。


「あー、やっぱりか」
「ちょっと、待って!? ゾーイ、それはどこ情報なの!?」


 落ち着きまくって、自分の中でマイペースに状況を整理してるゾーイと、幼なじみの俺達でさえ見たことのないほどのパニックぶりを見せる真由。
 そこだけ、同じ話題で会話をしているとは思えないほどの、テンションの落差っぷりだった。


「真由、それ本当なのかよ? サトルと橘さんが上手くいってないって」
「あ、いや……昴、あのね?」


 とにかく、俺は何もかもが初耳だったので、慌てて真由に確かめた。
 そんな俺に詰め寄られた真由は、さらに大慌てだったけど。


「ていうか、昴? お前、雨野から何か聞いてないのかよ?」
「全然! まったく、そんなこと……」


 望の言葉に、俺はすぐさま少し強く反論してしまった。
 どんなに思い返しても、サトルが俺に話をしたそうにしている素振りなんてなくて、ずっと普通だったんだよな……


「あ、ねえ、聞いて! ちょっと、全員話を聞いて!」


 少しばかりそのことに落ち込んでいると、真由が大声で必死に俺達の話を打ち切るように叫んできた。


「雨野は、何も知らないと思う……上手くいってないってのは、菜々美が一方的に思っていただけだから」


 そして、その場が静まってから改めて話されたのは、これまた衝撃的なことだった。


「菜々美曰く、雨野と一緒にいて違和感を抱くことがあったらしくて……」
「違和感って?」
「菜々美じゃなく、菜々美を通して誰か他の人のことを雨野は見てるって」
「は? どういう意味だ?」


 すると、ものすごく神妙な面持ちで話し始める真由だったのだけど、正直言うと俺と望は、まったく話についていくことができなかったのだ……
 相槌を打ちながら話を理解しようとはしているけど、困惑マックスで、俺達はお互いに顔を見合わせるばかり。
 橘さんを見てない? 橘さんを通して誰かを? 国語とかの読解問題か? ダメだこれ……無理だ!


「私もよくわからなかったから、ずっと気のせいじゃないかなって相談の度に言ってたんだけど……この前、すごく決定的なことがあったらしくて……」
「決定的って……何かされたのか?」


 けど、どうやら真由もよくはわかってはいないらしいが、その決定的なことと告げた時には、途端に悲しそうな、切なそうな顔に変わった。
 思わず、俺が真由を心配してしまうほどには、とても苦しそうだったのだ……


「ううん、その逆なの……」
「は?」


 しかし、俺の予想とやらはどうもハズレたらしかったが、次の真由の言葉に俺は息をすることを忘れてしまった。


「……キスを拒否られたらしくて」


 俺はまた、サトルがわからなくなってしまった。


「あ、けど、正確には、まだそういうことをする気にはなれないって言われた感じだから……まあ、どのみちショックなことには変わらないか……」


 空気が凍ったのを察したのか、なぜか真由が必死に場を取り繕おうとする。
 けど、またすぐ橘さんのことを思い出したのか、落ち込んでしまっていた。


「それで?」
「……それで、時期が早いだけだよって言ったら、菜々美に怒鳴られて……」


 望の促す言葉に、真由はすぐにでも消え入りそうな声でそう告げた。
 多分、その後の展開は、俺達が昼間に遭遇したあの一連の出来事ってわけか。
 恋愛にあまり詳しくない俺でも、キスを拒むことが、どれほどのことなのかは理解してるつもりだ。
 橘さんは、その瞬間泣かなかったのだろうか?
 無理をして、笑っていたのだろうか?
 サトル……お前、何を考えてるんだ?
 けど、俺はずっとサトルに抱いていた違和感が当たってしまったのではないかと思って、すごく怖くなった。
 橘さんに向ける視線と、あの海岸で見せた空を睨んでた表情がリンクする。
 それらが何を意味するかなんてまったくわからないけど、とにかく俺は全てが怖くなってしまっていた。
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