エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

文字の大きさ
142 / 257
第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス

小さな小さなサプライズ

しおりを挟む
「さあ、夕飯も食べ終わったし、真由の部屋に突撃しようぜー!」
「気のせいか? これから結構真面目な話し合いだよな? テンション明らか間違ってるよな?」
「うん、本当に……何で、今日に限ってあんなに張り切ってるんだ?」


 元気良く、飛び跳ねそうな勢いのゾーイの背中を見ながら、俺と望はその不気味さに顔を見合わせた。
 俺、望、ゾーイの三人は、昼間の約束通りに話を聞くために、真由の部屋へと向かっていた。


「真由~? 全員集合だよ!」


 談話室の女子部屋に続くドアを通り過ぎて、真由の部屋の前にたどり着く。
 ゾーイがドアをコンコンと叩き、真由を呼んだ。


「……ごめん、夜遅くに……どうぞ?」


 ゆっくりとドアが開き、中から真由が申し訳なさそうに顔を出して、俺達のことを招き入れた。


「うん、さっきより顔色良くなったな」
「ごめんね、昴……」
「気にすんなって。あ、これ、デルタとソニアが作ってくれたんだ」


 ゾーイと望は、部屋に入ると、各々好き勝手にその場に座り込む。
 一方で、俺は真由の顔を覗き込み、少しだけ明るくなった表情に安心した。
 そんな俺に、心配をかけたことを泣きそうな顔で謝る真由。
 気にしなくていいのに……そんな俺の気持ちが伝わってほしくて、俺はデルタとソニアからの差し入れを渡した。


「ありがとう……え? 私の好物ばっかりだ……!!」


 真由は驚いた後で、すぐに嬉しそうな表情に変わる。


「これ、昴……?」
「作ったのは俺じゃないから、デルタとソニアにもお礼言っとけよ?」
「うん……!! ありがとう」


 本当些細なことだし、実際俺はデルタとソニアにお願いをしただけだから、あまり偉そうなことは言えないけど……
 真由が笑ってくれるならいいんだ。
 俺は、ありがとうと笑う真由の頭を優しく撫でた……撫でたんだけど。


「ちょっとそれだけ? もう付き合ってそこそこ経つでしょうよ? ガっと肩を抱き寄せて、顔を近づけて……今度は俺のためにお前が作ってくれ。この先未来永劫……とかぐらい、言えないわけ?」


 まさかのゾーイからの、盛大なダメ出しが入るとは予想外で……おまけに?


「……ゾーイ!! お前は、俺のことを試験体に使うな!!」
「え? 何でよ? 望って、あたしのこと好きなんでしょ? よくない?」
「あ……なっ!? テメーの理屈は、どこまで狂ってやがんだ!? ああ!?」


 望は、真っ赤な爆発しそうな状態でゾーイにブチ切れた。
 そう、ゾーイはご丁寧に望の肩を抱き寄せ、顔を近づけ、セリフを言うというオール再現度マックスな状態で、ダメ出しをしてきたのだ。
 望の言う通り、ゾーイと望の距離はこれ以上ないぐらい近いし……
 おまけに自分の好きな相手に好意が伝わった状態のこれで、さらにその相手によくないかと質問されてしまうこの状況って……俺なら、海に身を投げてるな。
 前からゾーイのデリカシーの無さは定評があったけど、ここまでとは……


「さ、さあ! とりあえず、本題に入ろうか? なあ、真由?」
「ええ!? あー、そ、そうね?」


 とにかく、俺は話題を変えようと必死に取り繕った。
 事は一刻を争う、そろそろ本当に望が限界だ。


「そういや、忘れてたわ。さて、気を取り直しまして……真由? 昼間に菜々美と何があったの?」


 けど、いつものことだけど、場をかき乱すだけかき乱してからの、ゾーイの切り替えの早さには本当について行くのが大変だよ……
 まあ、それもいまさらなので、真由と苦笑いをして、恥ずかしさでブチ切れ寸前の望を宥める。


「あ、そういえば、菜々美は……!?」
「安心しろ、見つかったから」
「そう……」
「とりあえず、今日はモカの家に泊まるって、クレアが言ってた」


 すると、ハッとしたように、焦ったように真由は俺達に問うたが、俺はなるべく安心させるように優しく答えた。
 そして、望からクレアからの伝言を伝えると、真由はまた悲しそうに、俯いてしまった。
 すっかり落ち込んでしまった真由を前にして、どうしたものかと望と顔を見合わせていると……


「ねえ? 勘違いだったらごめんなんだけどさ。サトルと菜々美って、最近上手くいってないでしょ?」


 またまたゾーイから、爆弾発言が当然の如く飛び出したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...