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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
裏切り者の末路と急な報告
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「待て、まずな? 足がどうこうって問題じゃねえだろうよ!! そもそも、キノコと魚は何も踊らねえよ!?」
「まあ、そろそろゾーイに振り回されて限界なんだろ。寝させてやれよ。ついでに、元から頭が限界のハロルドも寝かせとけ、うるせえから」
モーリスとハロルドのカオスな現場を目の前に、すかさず真っ青な顔でツッコミを入れるのはシンだ。
そのシンに続き、望も苦笑いとともに精一杯のモーリスへの労りと同情の言葉を告げているが、最後の最後でハロルドへの辛辣な言葉を吐き捨てていた。
あれ、きっと結構な本音だろうな……
そんなモーリスだが、この三か月間で一番と言っても過言ではないほど、俺達との関係性や人間性そのものが変わった人物の二人のうちの一人だと思う。
じゃあ、そのもう一人は誰だと言われれば、それはフウタだ。
二人は裏切り者として、当初はナサニエル側と王国側の両者から相当な白い目を向けられ、心ない言葉で罵られたり、遠巻きに見られるなんてことが、当たり前だった。
その光景は見ていて、奥から何かがせり上がって、吐き出してしまいたくなるほどに気持ちのいいものではなく……
そのことに対して、より近いところで裏切られたという意識が頭の片隅ではありながら、複雑な思いを抱えていた俺達ナサニエル組だったが、モーリスとフウタは絶対に泣き言や弱音を吐かなかったし、投げ出すことをしなかった。
それどころか、自分から積極的に誰かを手伝ったりだとか、自ら進んで頭を下げている現場を目撃することが増えた。
そんな状況を、自分は反省しているアピールも甚だしいだとか、気まぐれのパフォーマンスだとか、自業自得だとかの辛辣な言葉を並べ立てる者もいたが、それでも二人はやめなかった。
次第に、俺達の中では氷が溶けていくような感覚に陥っていて、やがてそれは他のみんなにも連鎖していき、いつしか二人の存在を認めていた。
モーリスとフウタは、許されることを俺達に、見事に認めさせたのだ。
そんなこともあって、自分の中でかなり打ち解けてきたと思った時に、俺はモーリスにあることを聞いた。
なぜ、許されようとしたのかと……
失礼な話だが、モーリスとフウタはあまり人からの評価を気にせずに、自分の中だけで消化するような性格だから、その二人が俺達に許されること、存在を認められることを望んだということが、俺の中でどうもしっくりこなかったのだ。
すると、その質問にモーリスは迷うことなく……ゾーイから繋がりってものは未来に残せる何よりもの財産で、まだその価値を知らないあんた達は、あたしに一生敵わないだろうなと、挫けそうになっていた時にそう焚き付けられ、その時に、将来は絶対にゾーイより前を歩いて振り返る景色を見てやるんだと、フウタと誓ったのだと答えた。
ついでに、そんな奴は将来はつるっぱげになることが決まっていると言われたとも、言っていた。
ああ、やっぱりだ、君の一言は誰かの未来を大きく変えると、俺は思った。
だって、その話をしていた時のモーリスは、口角を少し上げて、一見すると意地の悪い嫌味ったらしい不器用でまだ不慣れな笑みを浮かべていたのだから。
そして、めでたく許しを得たモーリスとフウタは、ゾーイからの指名でアシスタント……いや、手下として、それは心配になるほど早朝から夜中まで、こき使われていた。
多分だけど、俺達ナサニエル組の中では一番ハードだったのではなかろうか。
そりゃあ、キノコと魚だか、ニンジンと豚だかの幻覚も見るよな……
「何? もう、ギブアップなの? あたしにありがとうって、目の前で頭を下げさせるんじゃなかったの?」
そんな微妙な空気を一瞬で変える、響き渡る、心地のいい声。
揺れるゴールドのような透き通る茶色のフワフワな髪、空のように深く目が離せなくなる青い瞳。
ゾーイは、勢い良くコックピットのドアを開け放って、そう言い放った。
「フッ……誰がギブアップなんて言いました? 今のは、軽い冗談です」
「あっそ。あんま面白くないけど?」
「それは失礼しました。とにかく……ゾーイ! 私はいつか必ず、あなたより前に立ってみせます! そして、あなたが悔しがっている顔を見るまでは、絶対にどこまでも食らいついてみせます!」
「どうぞ? ご勝手にですわね~?」
すると、ゾーイの姿を目にとらえた途端に、今の今まで生ける屍のようだったモーリスは、姿勢を正し、いつもの俺達の知っている嫌味なほどきっちりかっちりとした状態に早変わり……
そして、鋭くキレのある言葉を紡ぐモーリスだが、ゾーイはそれを真顔でサラリと流していく。
なるほど……同じスケジュールをこなしていて、ひょうひょうとしてるゾーイには自分の弱っているところを見られたくないってことか。
というより、モーリスは、ゾーイには全般的に負けたくないんだろうな。
その光景を見て、他のみんなも俺と同じようなことを思ったのだろう、俺達は目を合わせて、こっそりと笑い合った。
「それで、ゾーイ。今回はまた一体、何を企んでるの?」
「待て待て。そんな企んでるとか、また人聞き悪いわね~?」
「お前の言葉の全てが人聞きの悪いことばっかだ。気にするな」
「どういう意味だ、それは」
ゆっくりとコックピットに入って来たゾーイは、そのまま俺達の輪をくぐり抜けて、操縦席の前に立った。
それを確認してから、クレアがド直球中のド直球で、ゾーイに問う。
すかさず、指摘するゾーイだが、続くアランの言葉に真顔で返す。
しかし、そのアランの言葉は俺達には大正解でしかなく、吹き出さなかった俺を誰か褒めてほしい。
そんな俺達を見回してから、気を取り直すようにため息をつき、ゾーイは……
「決まってるでしょ? 空島に帰る準備を始めるわよ」
「まあ、そろそろゾーイに振り回されて限界なんだろ。寝させてやれよ。ついでに、元から頭が限界のハロルドも寝かせとけ、うるせえから」
モーリスとハロルドのカオスな現場を目の前に、すかさず真っ青な顔でツッコミを入れるのはシンだ。
そのシンに続き、望も苦笑いとともに精一杯のモーリスへの労りと同情の言葉を告げているが、最後の最後でハロルドへの辛辣な言葉を吐き捨てていた。
あれ、きっと結構な本音だろうな……
そんなモーリスだが、この三か月間で一番と言っても過言ではないほど、俺達との関係性や人間性そのものが変わった人物の二人のうちの一人だと思う。
じゃあ、そのもう一人は誰だと言われれば、それはフウタだ。
二人は裏切り者として、当初はナサニエル側と王国側の両者から相当な白い目を向けられ、心ない言葉で罵られたり、遠巻きに見られるなんてことが、当たり前だった。
その光景は見ていて、奥から何かがせり上がって、吐き出してしまいたくなるほどに気持ちのいいものではなく……
そのことに対して、より近いところで裏切られたという意識が頭の片隅ではありながら、複雑な思いを抱えていた俺達ナサニエル組だったが、モーリスとフウタは絶対に泣き言や弱音を吐かなかったし、投げ出すことをしなかった。
それどころか、自分から積極的に誰かを手伝ったりだとか、自ら進んで頭を下げている現場を目撃することが増えた。
そんな状況を、自分は反省しているアピールも甚だしいだとか、気まぐれのパフォーマンスだとか、自業自得だとかの辛辣な言葉を並べ立てる者もいたが、それでも二人はやめなかった。
次第に、俺達の中では氷が溶けていくような感覚に陥っていて、やがてそれは他のみんなにも連鎖していき、いつしか二人の存在を認めていた。
モーリスとフウタは、許されることを俺達に、見事に認めさせたのだ。
そんなこともあって、自分の中でかなり打ち解けてきたと思った時に、俺はモーリスにあることを聞いた。
なぜ、許されようとしたのかと……
失礼な話だが、モーリスとフウタはあまり人からの評価を気にせずに、自分の中だけで消化するような性格だから、その二人が俺達に許されること、存在を認められることを望んだということが、俺の中でどうもしっくりこなかったのだ。
すると、その質問にモーリスは迷うことなく……ゾーイから繋がりってものは未来に残せる何よりもの財産で、まだその価値を知らないあんた達は、あたしに一生敵わないだろうなと、挫けそうになっていた時にそう焚き付けられ、その時に、将来は絶対にゾーイより前を歩いて振り返る景色を見てやるんだと、フウタと誓ったのだと答えた。
ついでに、そんな奴は将来はつるっぱげになることが決まっていると言われたとも、言っていた。
ああ、やっぱりだ、君の一言は誰かの未来を大きく変えると、俺は思った。
だって、その話をしていた時のモーリスは、口角を少し上げて、一見すると意地の悪い嫌味ったらしい不器用でまだ不慣れな笑みを浮かべていたのだから。
そして、めでたく許しを得たモーリスとフウタは、ゾーイからの指名でアシスタント……いや、手下として、それは心配になるほど早朝から夜中まで、こき使われていた。
多分だけど、俺達ナサニエル組の中では一番ハードだったのではなかろうか。
そりゃあ、キノコと魚だか、ニンジンと豚だかの幻覚も見るよな……
「何? もう、ギブアップなの? あたしにありがとうって、目の前で頭を下げさせるんじゃなかったの?」
そんな微妙な空気を一瞬で変える、響き渡る、心地のいい声。
揺れるゴールドのような透き通る茶色のフワフワな髪、空のように深く目が離せなくなる青い瞳。
ゾーイは、勢い良くコックピットのドアを開け放って、そう言い放った。
「フッ……誰がギブアップなんて言いました? 今のは、軽い冗談です」
「あっそ。あんま面白くないけど?」
「それは失礼しました。とにかく……ゾーイ! 私はいつか必ず、あなたより前に立ってみせます! そして、あなたが悔しがっている顔を見るまでは、絶対にどこまでも食らいついてみせます!」
「どうぞ? ご勝手にですわね~?」
すると、ゾーイの姿を目にとらえた途端に、今の今まで生ける屍のようだったモーリスは、姿勢を正し、いつもの俺達の知っている嫌味なほどきっちりかっちりとした状態に早変わり……
そして、鋭くキレのある言葉を紡ぐモーリスだが、ゾーイはそれを真顔でサラリと流していく。
なるほど……同じスケジュールをこなしていて、ひょうひょうとしてるゾーイには自分の弱っているところを見られたくないってことか。
というより、モーリスは、ゾーイには全般的に負けたくないんだろうな。
その光景を見て、他のみんなも俺と同じようなことを思ったのだろう、俺達は目を合わせて、こっそりと笑い合った。
「それで、ゾーイ。今回はまた一体、何を企んでるの?」
「待て待て。そんな企んでるとか、また人聞き悪いわね~?」
「お前の言葉の全てが人聞きの悪いことばっかだ。気にするな」
「どういう意味だ、それは」
ゆっくりとコックピットに入って来たゾーイは、そのまま俺達の輪をくぐり抜けて、操縦席の前に立った。
それを確認してから、クレアがド直球中のド直球で、ゾーイに問う。
すかさず、指摘するゾーイだが、続くアランの言葉に真顔で返す。
しかし、そのアランの言葉は俺達には大正解でしかなく、吹き出さなかった俺を誰か褒めてほしい。
そんな俺達を見回してから、気を取り直すようにため息をつき、ゾーイは……
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