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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
熟成した方がおいしいよ
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「まあ、とにかく、何事もそんな簡単に捨てちゃダメって話よ」
自分が作り出した空気を、自分から壊していく、それはゾーイが俺達をコントロールする時のやり方だ。
現に今も、ゾーイはローレンさんとの地獄みたいに気まずく不気味なこの空気を、それは強引に変えてきたのだから。
俺はその瞬間に、ようやく息ができたような気がした。
「とにかく、真由、菜々美、デルタ、ソニア。お願いね?」
「え? あ、ああ……」
「どうかした? あ、もしかして、本当に遺体を掘り返すと思ってた? けど、さすがに九か月も前だから、もう白骨化していると思うよ? まあ、そこまで調べたいなら止めないけどさ」
「待て! 何を勝手に、話をおかしな方向に進めてんだよ!? 違うからな!?」
「は? じゃあ、何よ?」
ゾーイは、そんな俺達に漂っている空気を知ってか知らずなのか、話を戻し、遺留品の捜査に任命された四人のことを見回しながらそう告げる。
しかし、代表して返事をしたデルタを筆頭に、四人は微妙な反応をする。
それを見ていたゾーイは、本気なのか冗談なのかわからないことを言い出す。
え、冗談だよね? さずかにゾーイの言う通り白骨化してるだろうし、専門の人間でないと解剖したところで……
けど、ゾーイなら、骨ぐらい鳥とか豚とかで見飽きてるでしょとか言いそうで恐ろしいな……
まあ、おそらく、デルタも同じことを思ったようで、慌ててゾーイに否定のための鋭いツッコミを入れていた。
それを受けたゾーイは、本気で意味がわからないという顔をして……何で、それがわからないのさ?
きっと、この場のゾーイ以外の全員が同じことを思っていたと思う。
「何っていうか……もうこの遺留品、あの時に散々調べ尽くしただろ? それをまた調べたところで、ただの時間の無駄じゃないか?」
「私も、この遺留品を見るのは初めてだけど、デルタに賛成だわ。見たところ、何の変哲もない作業着とアクセサリーだし、調べても意味がない気がするわ」
意を決したように、デルタははっきりとゾーイに意見を告げる……それに続く真由も同じだった。
後ろで菜々美とソニアも、何度も大きく頷いていた。
二人の言う通りに、九か月前のナサニエルが墜落したあの日に、散々俺達は遺体を調べ尽くした。
作業着のポケットはもちろんだが、裏地までしっかり調べたし、アクセサリーのブレスレットと指輪だって、顕微鏡を何回使って調べたかわからないほどだ。
けど、手がかりどころか、遺体の身分を証明する物さえも、何一つとして出てこなかったのだ。
「それならば、防犯カメラに関しても同じことが言えますよ。何度も、巻き戻しと再生を繰り返して、データが完全に消えていると判明したではないですか」
「そうだよ! もういまさら、新しい情報が出てくるとは思えないよ? それよりも、たとえば聞き込みとかをした方が発見があると思うんだけど……」
さらに続いたのがモーリスで、冷静な表情で、そう言い放った。
そして、ジェームズはそれを補足するように、少し困惑したような表情を浮かべながらも、そうゾーイに告げる。
本当にその通りだと、俺も思った。
コックピットには二台の防犯カメラが設置されており、それも俺達は九か月前のあの日に、散々見尽くした。
犯行が行われたと思う各当部分の約二十分間は、突然始まり、突然終わる。
急に画面が黒く塗りつぶされたように真っ暗になって、約二十分間映像は遮断され、音声もノイズがひどくて聞き取ることはできなかった。
そして、そのまま画面が戻ったかと思えば、血を流して倒れている男と、一番にコックピットにやって来た、クレア、ハロルド、モーリス、ジェームズの姿が映し出されるというわけだ。
本当に、データが炎上でも起こすのではないかと思うほど、この防犯カメラのデータは繰り返し見たが、遺留品と同様に何かを発見することはできなかった。
だから、俺達は結果がわかり切ってるのに、もう一度調べる意味があるのかとそこが疑問だったのだ。
何か他に新しいことをやるべきなのではないかと、そう思ったのだが……
「あんた達全員、ワインは熟成した方がおいしくなるって知ってる?」
「え、ワイン?」
「カレーだって、同じものなのに二日目の方がおいしく感じるでしょ?」
「待って、何の話?」
ゾーイは俺たちに背を向けたまま、これまたわけのわからないことを告げる。
その言葉のそれぞれに、菜々美とソニアが困惑マックスな返事を返す。
ワインにカレー? それは、俺達も同じことであり、この時にゾーイがどんな表情をしていたかなんて、知る由もなかった。
自分が作り出した空気を、自分から壊していく、それはゾーイが俺達をコントロールする時のやり方だ。
現に今も、ゾーイはローレンさんとの地獄みたいに気まずく不気味なこの空気を、それは強引に変えてきたのだから。
俺はその瞬間に、ようやく息ができたような気がした。
「とにかく、真由、菜々美、デルタ、ソニア。お願いね?」
「え? あ、ああ……」
「どうかした? あ、もしかして、本当に遺体を掘り返すと思ってた? けど、さすがに九か月も前だから、もう白骨化していると思うよ? まあ、そこまで調べたいなら止めないけどさ」
「待て! 何を勝手に、話をおかしな方向に進めてんだよ!? 違うからな!?」
「は? じゃあ、何よ?」
ゾーイは、そんな俺達に漂っている空気を知ってか知らずなのか、話を戻し、遺留品の捜査に任命された四人のことを見回しながらそう告げる。
しかし、代表して返事をしたデルタを筆頭に、四人は微妙な反応をする。
それを見ていたゾーイは、本気なのか冗談なのかわからないことを言い出す。
え、冗談だよね? さずかにゾーイの言う通り白骨化してるだろうし、専門の人間でないと解剖したところで……
けど、ゾーイなら、骨ぐらい鳥とか豚とかで見飽きてるでしょとか言いそうで恐ろしいな……
まあ、おそらく、デルタも同じことを思ったようで、慌ててゾーイに否定のための鋭いツッコミを入れていた。
それを受けたゾーイは、本気で意味がわからないという顔をして……何で、それがわからないのさ?
きっと、この場のゾーイ以外の全員が同じことを思っていたと思う。
「何っていうか……もうこの遺留品、あの時に散々調べ尽くしただろ? それをまた調べたところで、ただの時間の無駄じゃないか?」
「私も、この遺留品を見るのは初めてだけど、デルタに賛成だわ。見たところ、何の変哲もない作業着とアクセサリーだし、調べても意味がない気がするわ」
意を決したように、デルタははっきりとゾーイに意見を告げる……それに続く真由も同じだった。
後ろで菜々美とソニアも、何度も大きく頷いていた。
二人の言う通りに、九か月前のナサニエルが墜落したあの日に、散々俺達は遺体を調べ尽くした。
作業着のポケットはもちろんだが、裏地までしっかり調べたし、アクセサリーのブレスレットと指輪だって、顕微鏡を何回使って調べたかわからないほどだ。
けど、手がかりどころか、遺体の身分を証明する物さえも、何一つとして出てこなかったのだ。
「それならば、防犯カメラに関しても同じことが言えますよ。何度も、巻き戻しと再生を繰り返して、データが完全に消えていると判明したではないですか」
「そうだよ! もういまさら、新しい情報が出てくるとは思えないよ? それよりも、たとえば聞き込みとかをした方が発見があると思うんだけど……」
さらに続いたのがモーリスで、冷静な表情で、そう言い放った。
そして、ジェームズはそれを補足するように、少し困惑したような表情を浮かべながらも、そうゾーイに告げる。
本当にその通りだと、俺も思った。
コックピットには二台の防犯カメラが設置されており、それも俺達は九か月前のあの日に、散々見尽くした。
犯行が行われたと思う各当部分の約二十分間は、突然始まり、突然終わる。
急に画面が黒く塗りつぶされたように真っ暗になって、約二十分間映像は遮断され、音声もノイズがひどくて聞き取ることはできなかった。
そして、そのまま画面が戻ったかと思えば、血を流して倒れている男と、一番にコックピットにやって来た、クレア、ハロルド、モーリス、ジェームズの姿が映し出されるというわけだ。
本当に、データが炎上でも起こすのではないかと思うほど、この防犯カメラのデータは繰り返し見たが、遺留品と同様に何かを発見することはできなかった。
だから、俺達は結果がわかり切ってるのに、もう一度調べる意味があるのかとそこが疑問だったのだ。
何か他に新しいことをやるべきなのではないかと、そう思ったのだが……
「あんた達全員、ワインは熟成した方がおいしくなるって知ってる?」
「え、ワイン?」
「カレーだって、同じものなのに二日目の方がおいしく感じるでしょ?」
「待って、何の話?」
ゾーイは俺たちに背を向けたまま、これまたわけのわからないことを告げる。
その言葉のそれぞれに、菜々美とソニアが困惑マックスな返事を返す。
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