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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
俺達は笑顔の怖さを忘れていた
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「つまり、機は熟したのよ。九か月前と今とではあたし達も、変わってることがあるでしょ?」
「変わってるって……価値観とか?」
俺達の困惑なこの状態に、ゾーイは背中越しで気付いていないのだろうか?
そう思っている間も、ゾーイは俺達に背を向けたまま、話を進めていく。
それに対し、俺はゾーイの考えを探るように、問いかけた。
「ノーノー、関係性よ。あたし達はこの九か月でお互いを知って、関係性を築き上げたじゃんよ。だからこそ、サトルがこう見えて熱い奴だとか、クレアがこう見えて涙脆いとか、わかるでしょ?」
「あ、うん? 確かにね?」
さらにゾーイは背を向けたまま、話を進めるが……どうやら、ゾーイの求める答えは関係性だったようだ。
急に名指しをされたサトルとクレアは驚いていたが、確かにそのゾーイの意見には激しく同意だ。
俺達はこの九か月間で、他人から知り合いに、知り合いから戦友に、戦友から友達になり、友達からかけがえのない仲間になっていった。
こんなに育ってきた環境も、性格や価値観さえ違うのに、俺達は誰一人欠けてはいけない存在になった。
けど、それが今のこの流れで、どう関係するのか計りかね、俺は曖昧な返事をゾーイに返したのだが……
「そうでしょう? あたしが、必ず有言実行する奴だとかも、思い知っているでしょ?」
「それはもう! 知り尽く……して……」
俺は思わず、そこで言葉を発することをやめて、ゾーイを見る。
「そうよね? だからさ、あたしはこうして頼んでるわけよ。何か新しい情報を見つけてってさ。もしも、何一つとして見つけられなかったら、王国を五十周マラソンすることになるからさ。あ、ダイエットがしたいなら止めないわよ?」
そう言いながら、俺達の方にゆっくりと振り返ったゾーイは、これまで以上の満面の笑みだった。
気のせいだと思いたいが、若干声のトーンが下がっているし、言ってること無茶苦茶だし、俺達全員で後ずさりしてるし、コックピットの空気がいつの間にか寒くなってる気がするし……
「ちなみに、食事とかは……?」
「五十周のマラソンが終わってから、好きなだけお食べ?」
ゴクリと唾を飲み込みながら、俺はゾーイに恐る恐る問いかける。
すると、ゾーイはその笑顔を崩さずにというより、さらに深くさせ、そう静かに吐き捨てるのだ。
その瞬間に、俺達の心は一つだったに違いないだろう……ああ、完全に悪魔を呼び覚まさせてしまったと。
「調べます! 調べ尽くします、穴があくまで!」
「自分、まだまだ甘かったです!」
第一声を発したのは菜々美で、続くソニアも、思わずとっさに二人の聞いたことのない敬語が炸裂するほど、その場の空気は終わっていた。
「僕、走馬灯が見えるんだけど……」
「ジェームズ! あなたを逝かせはしませんよ! 人手が減ります!」
真っ青な顔で倒れるジェームズを、モーリスが素早く支えるという完璧なチームプレーを見せてくれたが、モーリスの言葉はとても非情だった。
「ちなみに期限は、あたし達が楽しいドライブから帰るまでね?」
「菜々美! ソニア! デルタ! 私達には休憩なんていらないわよねえ!?」
「ああ、必要ないよな! 暇があったら何か見つけろ、頼むからあああ!!」
さらに、ゾーイは追い討ちをかけるように、悪魔の囁きを吐き捨てる。
それを聞いた真由は言葉とは裏腹に全身がガタガタ震えており、デルタにいたってはほとんど泣いていた。
「五十周って……太陽が、何回昇れば終われる計算かしら……」
「クレア! 今こそ、君の冷静な頭脳を失うわけにはいかないんだ! カムバアアアアアック!!」
さらに珍しく絶望的な状況を、俺達は見てしまった……クレアが壊れたのだ。
そして、不安になるほど虚ろな目で数を数えるクレアを見ながら、ハロルドは悲痛な叫びを上げるのだった。
コックピットは地獄と化していた……
「俺、あっちのグループじゃなくて、本当によかった……」
そんな様子を見て、シンは涙ながらに本音を絞り出す。
「安心するのは、まだ早いぞ?」
「ああ、とにかく、楽しいドライブの行き先が天国でないことだけは確かだ」
「全員で空島に帰ろうよな……?」
「俺も、大して信じてないが、そのことを神に祈っておく」
しかし、そんな希望なんて持つなと言わんばかりに、望とサトルは遠い目でどこかを見つめて、そう告げる。
俺はとりあえずだが、最低限の希望である、全員で帰ろうなという夢を言葉にしたが、あのアランが神に祈るほど、それは遠い夢なのかもしれないな……
「ほら! さっさと出発しないと、日が暮れるわよ?」
張り切っているのは君だけだよ?
どこに連れて行かれるのやら、俺達とローレンさんと、ゾーイのドライブが幕を開けたのだ。
「変わってるって……価値観とか?」
俺達の困惑なこの状態に、ゾーイは背中越しで気付いていないのだろうか?
そう思っている間も、ゾーイは俺達に背を向けたまま、話を進めていく。
それに対し、俺はゾーイの考えを探るように、問いかけた。
「ノーノー、関係性よ。あたし達はこの九か月でお互いを知って、関係性を築き上げたじゃんよ。だからこそ、サトルがこう見えて熱い奴だとか、クレアがこう見えて涙脆いとか、わかるでしょ?」
「あ、うん? 確かにね?」
さらにゾーイは背を向けたまま、話を進めるが……どうやら、ゾーイの求める答えは関係性だったようだ。
急に名指しをされたサトルとクレアは驚いていたが、確かにそのゾーイの意見には激しく同意だ。
俺達はこの九か月間で、他人から知り合いに、知り合いから戦友に、戦友から友達になり、友達からかけがえのない仲間になっていった。
こんなに育ってきた環境も、性格や価値観さえ違うのに、俺達は誰一人欠けてはいけない存在になった。
けど、それが今のこの流れで、どう関係するのか計りかね、俺は曖昧な返事をゾーイに返したのだが……
「そうでしょう? あたしが、必ず有言実行する奴だとかも、思い知っているでしょ?」
「それはもう! 知り尽く……して……」
俺は思わず、そこで言葉を発することをやめて、ゾーイを見る。
「そうよね? だからさ、あたしはこうして頼んでるわけよ。何か新しい情報を見つけてってさ。もしも、何一つとして見つけられなかったら、王国を五十周マラソンすることになるからさ。あ、ダイエットがしたいなら止めないわよ?」
そう言いながら、俺達の方にゆっくりと振り返ったゾーイは、これまで以上の満面の笑みだった。
気のせいだと思いたいが、若干声のトーンが下がっているし、言ってること無茶苦茶だし、俺達全員で後ずさりしてるし、コックピットの空気がいつの間にか寒くなってる気がするし……
「ちなみに、食事とかは……?」
「五十周のマラソンが終わってから、好きなだけお食べ?」
ゴクリと唾を飲み込みながら、俺はゾーイに恐る恐る問いかける。
すると、ゾーイはその笑顔を崩さずにというより、さらに深くさせ、そう静かに吐き捨てるのだ。
その瞬間に、俺達の心は一つだったに違いないだろう……ああ、完全に悪魔を呼び覚まさせてしまったと。
「調べます! 調べ尽くします、穴があくまで!」
「自分、まだまだ甘かったです!」
第一声を発したのは菜々美で、続くソニアも、思わずとっさに二人の聞いたことのない敬語が炸裂するほど、その場の空気は終わっていた。
「僕、走馬灯が見えるんだけど……」
「ジェームズ! あなたを逝かせはしませんよ! 人手が減ります!」
真っ青な顔で倒れるジェームズを、モーリスが素早く支えるという完璧なチームプレーを見せてくれたが、モーリスの言葉はとても非情だった。
「ちなみに期限は、あたし達が楽しいドライブから帰るまでね?」
「菜々美! ソニア! デルタ! 私達には休憩なんていらないわよねえ!?」
「ああ、必要ないよな! 暇があったら何か見つけろ、頼むからあああ!!」
さらに、ゾーイは追い討ちをかけるように、悪魔の囁きを吐き捨てる。
それを聞いた真由は言葉とは裏腹に全身がガタガタ震えており、デルタにいたってはほとんど泣いていた。
「五十周って……太陽が、何回昇れば終われる計算かしら……」
「クレア! 今こそ、君の冷静な頭脳を失うわけにはいかないんだ! カムバアアアアアック!!」
さらに珍しく絶望的な状況を、俺達は見てしまった……クレアが壊れたのだ。
そして、不安になるほど虚ろな目で数を数えるクレアを見ながら、ハロルドは悲痛な叫びを上げるのだった。
コックピットは地獄と化していた……
「俺、あっちのグループじゃなくて、本当によかった……」
そんな様子を見て、シンは涙ながらに本音を絞り出す。
「安心するのは、まだ早いぞ?」
「ああ、とにかく、楽しいドライブの行き先が天国でないことだけは確かだ」
「全員で空島に帰ろうよな……?」
「俺も、大して信じてないが、そのことを神に祈っておく」
しかし、そんな希望なんて持つなと言わんばかりに、望とサトルは遠い目でどこかを見つめて、そう告げる。
俺はとりあえずだが、最低限の希望である、全員で帰ろうなという夢を言葉にしたが、あのアランが神に祈るほど、それは遠い夢なのかもしれないな……
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