エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ

君にかかればすべてが大発見

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「……女だって、確証があるのか?」


 ゾーイの、それは楽しげな笑みを気にしつつ、サトルはクレア、ハロルド、ジェームズ、モーリスの防犯カメラ検証組に緊張の面持ちで問いかけた。


「それはあるわ。誰かとか詳細なことはわからないけれど……あの日、被害者とコックピットに一緒にいた人物の性別が女だってことは、断定できるわ」


 サトルの質問にはっきりと言い切ったのは、クレアだ。
 その表情からも十分に、自信と確証が見て取れるほどに……


「どういうことなんだ? 完全に防犯カメラのデータは消えてたはずだろ?」
「ああ、映像データの方は、完全に役には立たない状態であったのだが……音声データは、かろうじて生きている部分が見つかったんだ!」
「は? あの、ノイズがひどくて、聞き取れなかった音声が解析できたのか!?」


 どういうことなのか、俺には上手く理解ができなくて、困惑しながらクレア達四人に質問を投げかける。
 すると、それに答えてくれたのは、光のように輝かんばかりの笑顔を浮かべたハロルドだった。
 その、まるで希望に満ちたハロルドの言葉を聞いて、俺も思わず、興奮気味に聞き返す。
 防犯カメラの音声はかろうじて残ってはいたのだが、ノイズがひどく、何を話してるのか、男なのか、女なのかそんなことすら判断できない状態だったはずだけど……


「ううん、正確には音声を聞き取れたわけじゃなくてね? 僕達は、音声データの周波数を解析したんだよ!」
「えっと……声の周波数ってことか?」
「そうです。男女の声では、およそ二倍ほどの周波数の差が出るので、どうにかそれを手がかりに、せめて性別がわかればと思いまして……」


 驚く俺の言葉を冷静に訂正して、説明してくれたのは、ジェームズだ。
 その説明を聞いたサトルが瞬時に理解して、その聞き返した言葉に、モーリスは頷くが……どんどん、四人の表情が暗くなっていくのがわかった。


「さすが、エリート中のエリート! アーデル様々ね?」


 そんな空気を一新したのは、呑気なゾーイのお褒めの言葉。


「ゾーイ……私達なりには頑張ったのだけど、こんな曖昧なことしか報告できなくて申し訳ないわ……」


 すると、クレアはゾーイに向かって申し訳なさそうに頭を下げ、そう告げる。
 それに続くように、ハロルド、ジェームズ、モーリスも頭を下げた。
 そうか、四人は自分達がそこまでの情報を見つけられなかったことに、責任を感じていたのか……
 けど、あんなに調べ尽くした後で、性別がわかっただけでも、相当にすごいことなんじゃないかなと思いながら、俺はサトルと目を合わせ頷き合う。
 穏便に済ませよう……と、サトルから聞こえた気がして、俺達は宥めるためにゾーイを振り返ったのだが……


「え、待って? 何で、そんなお葬式モードなのよ? 大発見でしょ?」
「は……?」
「だって、あの遺体は細身とはいえ、身長は百八十を超えてた。けど、その男を殺したのは、女。これがどういうことかわからないの?」


 予想に反して、これっぽっちもゾーイは怒ってなどいなかった。
 それどころか、俺達の反応に驚きと呆れを感じているようで、そのゾーイに対して、クレアは困惑の声を零していた。
 さらに言葉を続けるゾーイだが。、その場の全員がクレア同様に困惑の表情を変えず、何なら声も出ない状態。
 ダメだ……全然、ゾーイの言いたいことがわからないんだよな……


「おそらく、犯人は被害者に嘘をつき毒を飲ませたのよ。そして、それができたのは、犯人と被害者は顔見知り、もしくはそれ以上の信頼し合った関係だってこと。つまり、その犯人の女は、今回のナサニエル墜落事件を起こしたであろう組織の一員。だから、その女のことを特定さえすれば、おのずと今回の事件の全貌を知り、空島に帰ったら、堂々とその組織の罪を晒せる。ほら、未来は明るいでしょ?」


 そんな俺達の様子に、ゾーイは深く重苦しいため息とともに説明を紡ぐ。
 最後にこれでわかったかと言いたげな目で、ゾーイは話を締めくくる。
 そんなゾーイに、俺達はますます頭が上がらなくなるばかり。
 何で、そんなことまで……と、思わなくもないのだが、冷静に考えたら確かにと納得することばかりだった。
 俺達全員は、それぞれに目を合わせて苦笑いを零すのだ……


「まあ、簡単に言えば、この白黒の大蛇のシンボルの何らかを持っている女のことを、捜せばいいのよ!」


 あいかわらず、ゾーイはそんな俺達を無視して、簡単すぎるぐらいに話をまとめに入っている。
 待て待て、そう簡単に言うけど……


「ゾーイ? 一体どうやって、犯人を捜し出すつもり? 仮にナサニエルの女子生徒を一人ずつ取り調べしてたら、半年はかかると思うよ?」


 俺達を代表して、サトルが愛想笑いを浮かべながら、ゾーイが考えてそうなことを先手で潰していく。
 約二百人で空から落ちたから、女子生徒は百人弱かな?
 百人分の取り調べを俺達十五人だけで実行なんて、本来ならば人間のやることじゃないけど……ゾーイならありえる。


「まあ、別にその方法もありだとは思うけど? その前にまず、この白黒の大蛇のシンボルの意味を調べよ!」
「え……けど、どうやって調べるの?」


 ほら、案の定ありとか言っているしと思っていたが、どうやらゾーイはそれよりも白黒の大蛇のシンボルの方に意識が傾いていたようだった。
 俺は、ゾーイにどうするのかと問う。


「あるじゃないの。空島が誇る三大資料館と名高い場所がさ?」


 すると、ゾーイは得意げな顔で俺達を見て、高らかに答えた。


「それって……もしかして、図書室?」
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