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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
金持ちは金を使うべき論
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「は、はあ!? ぶっ壊すって……!!」
俺達が、ゾーイの発言に耳を疑って聞き返すことは見慣れた光景だ。
今回だって、指名されたコタロウを始め、全員の視線がゾーイに集中した。
「ゾーイ、どういうことなの? わかるように説明を……」
「そんなの後だっての! 一か月も無駄にしたのよ!? ムッカつくわ……誰か、斧持ってきて、斧!」
モカが落ち着くように、ゾーイに説明を促すが……すぐさま、それはゾーイによって遮られる。
どうやら、普段は冷静で淡々としてて雲の上ぐらいの上から物事を見ているゾーイだが、今回は珍しく、感情をむき出しにしていた。
怒ってるというより、悔しがってる?
普段とは違う様子のゾーイに、ただでさえ戸惑っている俺達なのに、ゾーイの要求はさらに増える。
「は? 待て、斧って……!!」
「何なら、手っ取り早く、電動ノコギリとかでもいいわ! とにかく、三秒以内に持ってきて!」
「そんなの無理に決まってるでしょ!?」
コタロウがギョッとしたようにゾーイのことを振り返るが、さらにゾーイの要求は激しくなる。
斧の次は、電動ノコギリ……!?
興奮状態で無茶を言うゾーイに、すぐさまレオは叫んでいた。
しかし、そこからのやり取りは、目を当てられないほどひどいものだった。
結果的に俺達は全員で束になってもゾーイの口に敵わず、わけもわからぬままの状態で、斧と電動ノコギリがゾーイの目の前に届くことになったのだ。
「よし! コタロウ! じゃあ、この本棚、真っ二つにしちゃって!」
「それで、本当にいいのか……?」
「一応、ナサニエルの備品ですが、緊急事態ということで……?」
「もしも、請求されたら、全部の本棚を新品に買い換えてやるわよ」
「え……ゾーイ? そんなこと言って大丈夫なの?」
ゾーイはお望みの物が届くや否や、そのままコタロウに、再び本棚の解体を要求していた。
あれ、真っ二つって、さっきの要求よりもひどくなってる?
そのゾーイの要求を本当に大丈夫かと確認するように、コタロウは苦笑いで俺達に振り返る。
そのコタロウの言葉を受けて、代表でモーリスが、若干言い淀むようにして考えながら答えていた。
その後に、すぐさまゾーイは、淡々とこれまた驚くことを口にする。
待ってくれよ、全部って……合計で金額がいくらになるとか、わかるのか?
ゾーイの実家のことなんて、一年近く一緒にいるのに何も知らないけど、そこまで言うってことは、お金があるってことか?
そのことはその場の全員が思うだろうことで、菜々美が心配そうに眉を下げて質問を投げかけたのだが……
「心配ないって。サトル、ハロルド、ジェームズ、アランの金持ち組には、このぐらいの本棚は楽勝でしょうよ」
その返ってきた答えが、清々しいほどの他力本願という、ひどいものだった。
「それもそう……ゾオオオオオオオオオオオオオオオオイ!? 今、何と!? 聞き間違いか!? いや、君のことだからそんなことはないのだろうな!?」
「そんな……ええ!? 急すぎるよ! 空島に帰った後で、何がどうなるか、全然わからないわけだし……!!」
「はあ!? この緊急事態に何をダサいこと言ってんのよ!? 知ってる? お金は持っていたって、意味がないのよ!? 使わなきゃ、そのすべてが世の中のためにはならないの! 金持ちだったら、経済回しなさいよね!?」
一瞬の頷きと間を置いて、ハロルドは叫び声を上げた。
身振り手振りつきの、見事なオーバーリアクションで……
それに続くジェームズは、真っ青な表情で愛想笑いをしながら、ゾーイの説得を試みるが、無駄な抵抗である。
あっという間に、ゾーイに論破されてしまっていたのだから……まあ、誰だとしても勝ち目はほとんどないけど。
「何で、頼まれるべきはずなのに、僕達は怒られているんだろうね……」
「そもそも、人にものを頼む態度じゃねえだろ。普通はあんなの論外だ」
そして、俺の隣では、サトルが遠くを見つめながら静かに呟き、それに続くアランも頭を抱えていた。
第一王位継承者のサトル、名門早乙女家第二十六代目を継ぐハロルド、空島が誇る五代財閥の跡取りジェームズ、裏社会の大物の息子のアラン。
確かに、金銭面において、この四人は頼もしいけど……よくそんな堂々と、ゾーイは押し付けられるよねなんて、ここまでくると、抵抗をしても、何か異論を唱えても無駄だと、俺達は嫌ってほどに学んでしまったので、誰も何も言うことはなかった。
後からの本棚の請求も怖かったが、何より今はゾーイへの恐怖が勝ったので、その時はその時だなと、ほとんど投げやりな気持ちとともに、俺達は本棚の解体作業に同意した。
「それじゃあ、電動ノコギリのスイッチ入れるぞ?」
「頼んだわ、コタロウ! さてと、全員下がってなよ? 危ないから!」
コタロウが電動ノコギリのスイッチを入れると、ゾーイは俺達に叫んだ。
言われた通りに、俺達は少し離れたところで、終わるのを待った。
そして、三十分ほど経った時……
「ビンゴだあああ!」
ゾーイの感極まった叫びが聞こえ、俺達は走った。
そこら中に、本棚だったものの残骸が散らばっており、その中心にゾーイは立っていた。
「見つけたわ! 完璧な手がかりよ!」
ゾーイは俺達を振り返り、何かを前に出す……それは一冊の本のような?
目を凝らすと、表紙には、荻凛太郎の文字が記されていたのだった。
俺達が、ゾーイの発言に耳を疑って聞き返すことは見慣れた光景だ。
今回だって、指名されたコタロウを始め、全員の視線がゾーイに集中した。
「ゾーイ、どういうことなの? わかるように説明を……」
「そんなの後だっての! 一か月も無駄にしたのよ!? ムッカつくわ……誰か、斧持ってきて、斧!」
モカが落ち着くように、ゾーイに説明を促すが……すぐさま、それはゾーイによって遮られる。
どうやら、普段は冷静で淡々としてて雲の上ぐらいの上から物事を見ているゾーイだが、今回は珍しく、感情をむき出しにしていた。
怒ってるというより、悔しがってる?
普段とは違う様子のゾーイに、ただでさえ戸惑っている俺達なのに、ゾーイの要求はさらに増える。
「は? 待て、斧って……!!」
「何なら、手っ取り早く、電動ノコギリとかでもいいわ! とにかく、三秒以内に持ってきて!」
「そんなの無理に決まってるでしょ!?」
コタロウがギョッとしたようにゾーイのことを振り返るが、さらにゾーイの要求は激しくなる。
斧の次は、電動ノコギリ……!?
興奮状態で無茶を言うゾーイに、すぐさまレオは叫んでいた。
しかし、そこからのやり取りは、目を当てられないほどひどいものだった。
結果的に俺達は全員で束になってもゾーイの口に敵わず、わけもわからぬままの状態で、斧と電動ノコギリがゾーイの目の前に届くことになったのだ。
「よし! コタロウ! じゃあ、この本棚、真っ二つにしちゃって!」
「それで、本当にいいのか……?」
「一応、ナサニエルの備品ですが、緊急事態ということで……?」
「もしも、請求されたら、全部の本棚を新品に買い換えてやるわよ」
「え……ゾーイ? そんなこと言って大丈夫なの?」
ゾーイはお望みの物が届くや否や、そのままコタロウに、再び本棚の解体を要求していた。
あれ、真っ二つって、さっきの要求よりもひどくなってる?
そのゾーイの要求を本当に大丈夫かと確認するように、コタロウは苦笑いで俺達に振り返る。
そのコタロウの言葉を受けて、代表でモーリスが、若干言い淀むようにして考えながら答えていた。
その後に、すぐさまゾーイは、淡々とこれまた驚くことを口にする。
待ってくれよ、全部って……合計で金額がいくらになるとか、わかるのか?
ゾーイの実家のことなんて、一年近く一緒にいるのに何も知らないけど、そこまで言うってことは、お金があるってことか?
そのことはその場の全員が思うだろうことで、菜々美が心配そうに眉を下げて質問を投げかけたのだが……
「心配ないって。サトル、ハロルド、ジェームズ、アランの金持ち組には、このぐらいの本棚は楽勝でしょうよ」
その返ってきた答えが、清々しいほどの他力本願という、ひどいものだった。
「それもそう……ゾオオオオオオオオオオオオオオオオイ!? 今、何と!? 聞き間違いか!? いや、君のことだからそんなことはないのだろうな!?」
「そんな……ええ!? 急すぎるよ! 空島に帰った後で、何がどうなるか、全然わからないわけだし……!!」
「はあ!? この緊急事態に何をダサいこと言ってんのよ!? 知ってる? お金は持っていたって、意味がないのよ!? 使わなきゃ、そのすべてが世の中のためにはならないの! 金持ちだったら、経済回しなさいよね!?」
一瞬の頷きと間を置いて、ハロルドは叫び声を上げた。
身振り手振りつきの、見事なオーバーリアクションで……
それに続くジェームズは、真っ青な表情で愛想笑いをしながら、ゾーイの説得を試みるが、無駄な抵抗である。
あっという間に、ゾーイに論破されてしまっていたのだから……まあ、誰だとしても勝ち目はほとんどないけど。
「何で、頼まれるべきはずなのに、僕達は怒られているんだろうね……」
「そもそも、人にものを頼む態度じゃねえだろ。普通はあんなの論外だ」
そして、俺の隣では、サトルが遠くを見つめながら静かに呟き、それに続くアランも頭を抱えていた。
第一王位継承者のサトル、名門早乙女家第二十六代目を継ぐハロルド、空島が誇る五代財閥の跡取りジェームズ、裏社会の大物の息子のアラン。
確かに、金銭面において、この四人は頼もしいけど……よくそんな堂々と、ゾーイは押し付けられるよねなんて、ここまでくると、抵抗をしても、何か異論を唱えても無駄だと、俺達は嫌ってほどに学んでしまったので、誰も何も言うことはなかった。
後からの本棚の請求も怖かったが、何より今はゾーイへの恐怖が勝ったので、その時はその時だなと、ほとんど投げやりな気持ちとともに、俺達は本棚の解体作業に同意した。
「それじゃあ、電動ノコギリのスイッチ入れるぞ?」
「頼んだわ、コタロウ! さてと、全員下がってなよ? 危ないから!」
コタロウが電動ノコギリのスイッチを入れると、ゾーイは俺達に叫んだ。
言われた通りに、俺達は少し離れたところで、終わるのを待った。
そして、三十分ほど経った時……
「ビンゴだあああ!」
ゾーイの感極まった叫びが聞こえ、俺達は走った。
そこら中に、本棚だったものの残骸が散らばっており、その中心にゾーイは立っていた。
「見つけたわ! 完璧な手がかりよ!」
ゾーイは俺達を振り返り、何かを前に出す……それは一冊の本のような?
目を凝らすと、表紙には、荻凛太郎の文字が記されていたのだった。
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