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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
許可ない破壊行為は続く
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「昴? 昴!? 意識はここにあるか!?」
名前を呼ばれたな……おそらく、これは望の声なので、俺は体力と気力を振り絞って、そちらに意識を向ける。
すると、そこには望だけでなく、心配そうに俺を見つめる、サトル、アラン、シンという、ここにはいるはずがない飛行機修理組の姿があった。
「あれ……? 何で、ここにいる?」
「それが急な土砂降りでさ? 今日の作業は中止にして、帰って来たんだ」
「けど、暇だしってことで、久しぶりにお前らとゆっくり話をしながら、手がかりを見つけるの手伝うかってなって、ここに来たんだけどよ……」
俺の質問に対し、サトルは眉を下げて困惑した顔で、望は引きつった顔でそう俺に教えてくれる。
確かに、四人の髪が若干濡れてる気がしなくもないな……
「待て待て待て! 昴! その目の下の黒いのって、隈か!? 本当に、お前らはここで何してんだよ!?」
俺が顔を上げ手目をあわせると、すぐさまシンは真っ青な顔で絶叫してくる。
そういや、望達四人は朝早くに空港に出かけて行くから、最近はまともに顔を合わせていなかったな。
そりゃ、こんな濃い隈があったら驚くよな……ちなみに、俺だけじゃないぞ?
俺は、意識が朦朧とする中、久しぶりの再会を果たした望達四人に対して、まともに寝れてないこと、ほとんど図書室に住み着いてること、まったく手がかりを見つけられていないこと、ゾーイの苛立ちが日に日に増していること、もう文字を見たくないこと……とにかく、俺達の一か月の状況を事細かに説明した。
「俺達なんかよりも、よっぽど過酷な状況だったんだな」
説明が終わると、あまり感情を見せることがないアランが、明らかな同情の視線を向けながら、俺の肩を叩く。
泣かなかっただけ、俺は偉くないか?
「それにしてもよ、これだけあって、本当に一つも手がかりがないのか?」
「うん、間違いないよ……すべての資料を少なくとも、十回は見てるから……」
「はあ!? 十回だあ!?」
「この、一人の人間が一生かかっても読めるかどうか怪しいこの量をか……?」
「まあね……途中から、何番目の本棚の何列目とかで、何の本かわかる領域まで達したよ」
望からしたら、素朴な疑問だったのだろうが、それに答えたせいで俺はさらに四人から、突き刺さるような驚愕の眼差しをもらうことになる。
シンは見たことがないぐらいに目を見開いて叫んでいたし、アランからは恐ろしいほどの真顔での質問をくらった。
そう、余裕で三百万冊は超えているであろうこの図書室の本や資料を、俺達は来る日も来る日も読み漁っていた。
そのおかげで、不本意にも、図書室に詳しくなってしまうという悲しい現実が俺達を襲っている。
「あ、そういえば! 一つだけ、幅が他と違う本棚があるの気付いたか?」
「幅が違う?」
そんな俺を見兼ねてなのか、空気を変えたかったのかはこの際どうでもいいとして、サトルは俺に話題を振る。
しかし、覚えがないその話題に、俺は首を傾げた。
「他のは僕の足で、四歩ぐらいの幅に収まるんだけど、その本棚は七歩ぐらいの幅があって、少し広いんだよ」
「ああ。そういや、そんなのあったな」
サトルに説明されても、まったく俺はピンと来なかったが、どうやら同じ建築科の望は違ったようだ……
「建築科の性ってやつか」
「これも、一種の職業病かもな?」
「その本棚、どこ」
アランからの質問にサトルは苦笑いで答えている。
ああ、それって、俺が雨が降ると水やりは不要だなって考えが先に来るのと同じような感じか……待て、この声って?
「うわあああ!? 何だ、ゾーイか……!!」
「急に出て来るなよな!?」
シンは大きく仰け反り、望はまたもや怒鳴り声を上げる。
本当にいつの間にか、ゾーイが俺達の後ろに立っていたのだ。
レオ達と話をしていたのではなかったのか、いつここに来たのかと言いたいことは山ほどあったが、俺に関しては、驚きすぎての声も出なかった。
毎度のごとくだけど、ゾーイって気配を感じないんだよな……
「サトル! その幅の違う本棚って、どこにあるの!?」
「え、あー、えっと……六列目の、右端とかだった気が?」
俺の心臓が鳴り止まない中、ゾーイは俺達のことなんてお構いなしにサトルに叫びながら、珍しく焦った様子で質問を投げかけていた。
それを見たサトルは、こちらも珍しくしどろもどろで答えていて……それを聞くと、ゾーイが一目散で走って消えたかと思えば……
「コタロウオオッ!!!!」
程なくして、サトルが言った方の本棚の方から、ゾーイの叫び声が上がった。
何事だと思って、俺達は全員でゾーイの元に向かう。
「なっ、何だよ!? どうし……うおっ!?」
「お願いがある! あんたにしか、絶対に無理なこと!」
「わかった! わかったから……首が絞まってんだよ、お前は!」
「おおっと……これは失礼!」
到着して、ご指名をくらったコタロウ本人が一番に声をかけたのだが、その言葉を遮ったかと思えば、ゾーイはコタロウの胸ぐらを掴んで……あ、いや、ゾーイは、おそらく掴みあげる気はなかったのだろうが、結果的に必死さゆえにコタロウの首を絞める事態になっていた。
コタロウが訴え、それに気付くと、ゾーイは素早く手を離していたしな……
「はあ、はあ……!! それで? 何がどうしたんだよ?」
「そんな説明は後で! とにかく……!!」
解放されたコタロウは呼吸を整え、そのゾーイの見たこともないただならぬ様子を問いただす。
すると、ゾーイはさらに急かすように指を本棚に指し示して……
「この本棚、全部ぶっ壊して!」
どういう結果が待つのか不明で不安なことを、堂々と叫ぶのであった。
名前を呼ばれたな……おそらく、これは望の声なので、俺は体力と気力を振り絞って、そちらに意識を向ける。
すると、そこには望だけでなく、心配そうに俺を見つめる、サトル、アラン、シンという、ここにはいるはずがない飛行機修理組の姿があった。
「あれ……? 何で、ここにいる?」
「それが急な土砂降りでさ? 今日の作業は中止にして、帰って来たんだ」
「けど、暇だしってことで、久しぶりにお前らとゆっくり話をしながら、手がかりを見つけるの手伝うかってなって、ここに来たんだけどよ……」
俺の質問に対し、サトルは眉を下げて困惑した顔で、望は引きつった顔でそう俺に教えてくれる。
確かに、四人の髪が若干濡れてる気がしなくもないな……
「待て待て待て! 昴! その目の下の黒いのって、隈か!? 本当に、お前らはここで何してんだよ!?」
俺が顔を上げ手目をあわせると、すぐさまシンは真っ青な顔で絶叫してくる。
そういや、望達四人は朝早くに空港に出かけて行くから、最近はまともに顔を合わせていなかったな。
そりゃ、こんな濃い隈があったら驚くよな……ちなみに、俺だけじゃないぞ?
俺は、意識が朦朧とする中、久しぶりの再会を果たした望達四人に対して、まともに寝れてないこと、ほとんど図書室に住み着いてること、まったく手がかりを見つけられていないこと、ゾーイの苛立ちが日に日に増していること、もう文字を見たくないこと……とにかく、俺達の一か月の状況を事細かに説明した。
「俺達なんかよりも、よっぽど過酷な状況だったんだな」
説明が終わると、あまり感情を見せることがないアランが、明らかな同情の視線を向けながら、俺の肩を叩く。
泣かなかっただけ、俺は偉くないか?
「それにしてもよ、これだけあって、本当に一つも手がかりがないのか?」
「うん、間違いないよ……すべての資料を少なくとも、十回は見てるから……」
「はあ!? 十回だあ!?」
「この、一人の人間が一生かかっても読めるかどうか怪しいこの量をか……?」
「まあね……途中から、何番目の本棚の何列目とかで、何の本かわかる領域まで達したよ」
望からしたら、素朴な疑問だったのだろうが、それに答えたせいで俺はさらに四人から、突き刺さるような驚愕の眼差しをもらうことになる。
シンは見たことがないぐらいに目を見開いて叫んでいたし、アランからは恐ろしいほどの真顔での質問をくらった。
そう、余裕で三百万冊は超えているであろうこの図書室の本や資料を、俺達は来る日も来る日も読み漁っていた。
そのおかげで、不本意にも、図書室に詳しくなってしまうという悲しい現実が俺達を襲っている。
「あ、そういえば! 一つだけ、幅が他と違う本棚があるの気付いたか?」
「幅が違う?」
そんな俺を見兼ねてなのか、空気を変えたかったのかはこの際どうでもいいとして、サトルは俺に話題を振る。
しかし、覚えがないその話題に、俺は首を傾げた。
「他のは僕の足で、四歩ぐらいの幅に収まるんだけど、その本棚は七歩ぐらいの幅があって、少し広いんだよ」
「ああ。そういや、そんなのあったな」
サトルに説明されても、まったく俺はピンと来なかったが、どうやら同じ建築科の望は違ったようだ……
「建築科の性ってやつか」
「これも、一種の職業病かもな?」
「その本棚、どこ」
アランからの質問にサトルは苦笑いで答えている。
ああ、それって、俺が雨が降ると水やりは不要だなって考えが先に来るのと同じような感じか……待て、この声って?
「うわあああ!? 何だ、ゾーイか……!!」
「急に出て来るなよな!?」
シンは大きく仰け反り、望はまたもや怒鳴り声を上げる。
本当にいつの間にか、ゾーイが俺達の後ろに立っていたのだ。
レオ達と話をしていたのではなかったのか、いつここに来たのかと言いたいことは山ほどあったが、俺に関しては、驚きすぎての声も出なかった。
毎度のごとくだけど、ゾーイって気配を感じないんだよな……
「サトル! その幅の違う本棚って、どこにあるの!?」
「え、あー、えっと……六列目の、右端とかだった気が?」
俺の心臓が鳴り止まない中、ゾーイは俺達のことなんてお構いなしにサトルに叫びながら、珍しく焦った様子で質問を投げかけていた。
それを見たサトルは、こちらも珍しくしどろもどろで答えていて……それを聞くと、ゾーイが一目散で走って消えたかと思えば……
「コタロウオオッ!!!!」
程なくして、サトルが言った方の本棚の方から、ゾーイの叫び声が上がった。
何事だと思って、俺達は全員でゾーイの元に向かう。
「なっ、何だよ!? どうし……うおっ!?」
「お願いがある! あんたにしか、絶対に無理なこと!」
「わかった! わかったから……首が絞まってんだよ、お前は!」
「おおっと……これは失礼!」
到着して、ご指名をくらったコタロウ本人が一番に声をかけたのだが、その言葉を遮ったかと思えば、ゾーイはコタロウの胸ぐらを掴んで……あ、いや、ゾーイは、おそらく掴みあげる気はなかったのだろうが、結果的に必死さゆえにコタロウの首を絞める事態になっていた。
コタロウが訴え、それに気付くと、ゾーイは素早く手を離していたしな……
「はあ、はあ……!! それで? 何がどうしたんだよ?」
「そんな説明は後で! とにかく……!!」
解放されたコタロウは呼吸を整え、そのゾーイの見たこともないただならぬ様子を問いただす。
すると、ゾーイはさらに急かすように指を本棚に指し示して……
「この本棚、全部ぶっ壊して!」
どういう結果が待つのか不明で不安なことを、堂々と叫ぶのであった。
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