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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
荻凛太郎から届いた文字
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俺達は、丸型のテーブルにゾーイとその本を中心にして全員で着席する。
今まさに、俺達は空島の歴史をひっくり返すような事実を知ろうとしていた。
俺はぐるりと全員の顔を見渡すが、そこである人物の存在を思い出した。
「あ、ねえ、ゾーイ! ローレンさんには、説明しなくていいの?」
俺の言葉に対して、ゾーイを除いた全員がそういえば……という表情と、途端に申し訳ないという表情をする。
ローレンさんは、空港に行ったあの日以来、誰も顔を合わせていなかった。
ドア越しで話をすると、どうも遺体だとかの詳細を詳しく聞いてから、体調が優れなくなってしまったと言う……
そのため、ローレンさんは、ずっと自室に引きこもりっている。
最近は余裕がなくてあまり話をできてはいなかったけれど、みんなはローレンさんのことを気にかけていた。
けど、俺は体調不良の原因は、ゾーイとのあの日の会話にあると思っている。
結局だが、俺はあの日の出来事を、誰にも話すことができずにいた。
そのせいで、上手く自分の中で消化できずにいるのだろうが、やっぱり一連のゾーイとローレンさんのやり取りが、俺は頭から離れなかった。
「あー、まあ、後で説明しておくわ」
しかし、ゾーイはそう言うと、すぐに意識を目の前の本に戻してしまう。
話を逸らしたのか、それとも早く本の中を見たいだけなのか……俺にはゾーイの心理を読み解くことはできなかった。
「それじゃ、中を見るわよ?」
ゾーイはそう告げると、本を開き、最初のページを開いた。
俺は心臓が飛び出そうな衝動を、どうにか抑えて、みんなと同じように固唾を飲んでゾーイの言葉を待っていた。
どのような真実が、空島の歴史が、そこで明らかにされるのか……
「……あの、ゾーイさん?」
けど、数分待っても、ゾーイは何も告げることはなく、めくってからその最初のページを凝視するばかりだった。
どうかしたのだろうかと思って、俺は恐る恐るゾーイに声をかける。
すると、ゾーイはようやく顔を上げてくれたのだが……
「そうきましたか、さすがは天才」
「ゾーイ? どうかしたのか?」
「……これ見てみ?」
やっと声を出したかと思えば、ニヤリと笑って面白そうに、そう告げる。
ゾーイが笑うと嵐が来る……それが暗黙の了解となっており、目配せを全員でしてから代表でレオが声をかけた。
すると、ゾーイは少しの沈黙の後で俺達に開かれた本を見せてきて……それを見た俺達は固まった。
「は? 何だ、この文字……文字なんだよな……? 一応は?」
「これって、地上の文字とか、そういう系のやつ?」
「え? 人間側のものじゃないの!?」
困惑するのを隠せないデルタの言葉に続き、ソニアがレオ、モカ、コタロウの三人に視線を向けながら質問をする。
しかし、その質問に、モカも驚愕の表情で、逆に聞き返してきた。
本に書かれていたその文字は、見たことのない形をしていた。
何かの記号……絵にも見えるけど?
「これは、ヒエログリフ。古代のエジプトの文字よ」
「エジプト!? しかも、古代って……」
すると、ゾーイは淡々と冷静に、俺達の疑問に答えた。
その答えを聞いて、ジェームズは絶叫した。
エジプト……地上時代にもまだ多くの謎を残していたが、第三次世界大戦の被害を受けて、貴重な文献の半分以上が行方不明になってしまったのだと、授業で習った記憶がある。
けど、それじゃあ、この文字は……
「紀元前とかの時代のものよ。まあ、空島広しと言えど、ヒエログリフを読める人間は片手で収まる程度でしょうね」
「ええ!? それじゃ、この本の内容を読むことは……」
俺の思考を読んだように、ゾーイは絶望的な情報を告げる。
それを聞いたジェームズが目に見えて落ち込んことが伝染し、その場の空気はあっという間にドン底へと落ちた。
せっかく、ここまで来て、あと少しで手が届きそうなのに……!!
しかし、君はいつだって、不可能を可能にしてしまうんだ。
「ちょっと、全員揃って耳がイカれてるの? 言ったでしょう? 片手で収まる程度は解読できる奴がいるって」
「まさかだけど、ゾーイ……!?」
「エリート学園の史学科を舐めないでよね? それに、荻凛太郎もそうなる展開を望んでるみたいよ?」
暗く重たい空気を跳ね除ける、一筋の光のような言葉。
ジェームズからの期待のこもった言葉を、ゾーイは挑発するように返した。
そのゾーイが指差すのは本の裏表紙、そこに視線を移せば、日本語でこう書かれていた。
『これを読んでいる未来ある若者よ、初めまして。
君の友人に、史学科の子はいるかい?
もし、心当たりがあるのなら、すぐにこの手記をその友達に届けておくれ。
そして、すぐに、この手記の文字を解読してもらってほしいんだ。
回りくどいやり方をして申し訳ないが、この手記を絶対に、奴らの手に渡らせるわけにはいかないんだ』
俺は思った……これは勝ったなと。
ゾーイほど、不可能という言葉が似合わない人間もいないだろうから。
「それにしても、地上時代だって、これを読めるのはほんのひと握りよ? 荻凛太郎は、よっぽどこれを読まれたくなかったんでしょうね」
喜びに包まれる空気の中で、ゾーイは呆れたように本を見つめながら告げる。
それほどまで、こんな何百年もの時を経て、荻凛太郎が隠したがった真実。
「まあ、そう嫌がられれば嫌がられるほど、暴きたくなるよっていうのが、人間の性なんだけどね」
ニヤリと笑って、その文を読み始めたゾーイ。
そこには、予想しなかったことが書かれていたのだった。
今まさに、俺達は空島の歴史をひっくり返すような事実を知ろうとしていた。
俺はぐるりと全員の顔を見渡すが、そこである人物の存在を思い出した。
「あ、ねえ、ゾーイ! ローレンさんには、説明しなくていいの?」
俺の言葉に対して、ゾーイを除いた全員がそういえば……という表情と、途端に申し訳ないという表情をする。
ローレンさんは、空港に行ったあの日以来、誰も顔を合わせていなかった。
ドア越しで話をすると、どうも遺体だとかの詳細を詳しく聞いてから、体調が優れなくなってしまったと言う……
そのため、ローレンさんは、ずっと自室に引きこもりっている。
最近は余裕がなくてあまり話をできてはいなかったけれど、みんなはローレンさんのことを気にかけていた。
けど、俺は体調不良の原因は、ゾーイとのあの日の会話にあると思っている。
結局だが、俺はあの日の出来事を、誰にも話すことができずにいた。
そのせいで、上手く自分の中で消化できずにいるのだろうが、やっぱり一連のゾーイとローレンさんのやり取りが、俺は頭から離れなかった。
「あー、まあ、後で説明しておくわ」
しかし、ゾーイはそう言うと、すぐに意識を目の前の本に戻してしまう。
話を逸らしたのか、それとも早く本の中を見たいだけなのか……俺にはゾーイの心理を読み解くことはできなかった。
「それじゃ、中を見るわよ?」
ゾーイはそう告げると、本を開き、最初のページを開いた。
俺は心臓が飛び出そうな衝動を、どうにか抑えて、みんなと同じように固唾を飲んでゾーイの言葉を待っていた。
どのような真実が、空島の歴史が、そこで明らかにされるのか……
「……あの、ゾーイさん?」
けど、数分待っても、ゾーイは何も告げることはなく、めくってからその最初のページを凝視するばかりだった。
どうかしたのだろうかと思って、俺は恐る恐るゾーイに声をかける。
すると、ゾーイはようやく顔を上げてくれたのだが……
「そうきましたか、さすがは天才」
「ゾーイ? どうかしたのか?」
「……これ見てみ?」
やっと声を出したかと思えば、ニヤリと笑って面白そうに、そう告げる。
ゾーイが笑うと嵐が来る……それが暗黙の了解となっており、目配せを全員でしてから代表でレオが声をかけた。
すると、ゾーイは少しの沈黙の後で俺達に開かれた本を見せてきて……それを見た俺達は固まった。
「は? 何だ、この文字……文字なんだよな……? 一応は?」
「これって、地上の文字とか、そういう系のやつ?」
「え? 人間側のものじゃないの!?」
困惑するのを隠せないデルタの言葉に続き、ソニアがレオ、モカ、コタロウの三人に視線を向けながら質問をする。
しかし、その質問に、モカも驚愕の表情で、逆に聞き返してきた。
本に書かれていたその文字は、見たことのない形をしていた。
何かの記号……絵にも見えるけど?
「これは、ヒエログリフ。古代のエジプトの文字よ」
「エジプト!? しかも、古代って……」
すると、ゾーイは淡々と冷静に、俺達の疑問に答えた。
その答えを聞いて、ジェームズは絶叫した。
エジプト……地上時代にもまだ多くの謎を残していたが、第三次世界大戦の被害を受けて、貴重な文献の半分以上が行方不明になってしまったのだと、授業で習った記憶がある。
けど、それじゃあ、この文字は……
「紀元前とかの時代のものよ。まあ、空島広しと言えど、ヒエログリフを読める人間は片手で収まる程度でしょうね」
「ええ!? それじゃ、この本の内容を読むことは……」
俺の思考を読んだように、ゾーイは絶望的な情報を告げる。
それを聞いたジェームズが目に見えて落ち込んことが伝染し、その場の空気はあっという間にドン底へと落ちた。
せっかく、ここまで来て、あと少しで手が届きそうなのに……!!
しかし、君はいつだって、不可能を可能にしてしまうんだ。
「ちょっと、全員揃って耳がイカれてるの? 言ったでしょう? 片手で収まる程度は解読できる奴がいるって」
「まさかだけど、ゾーイ……!?」
「エリート学園の史学科を舐めないでよね? それに、荻凛太郎もそうなる展開を望んでるみたいよ?」
暗く重たい空気を跳ね除ける、一筋の光のような言葉。
ジェームズからの期待のこもった言葉を、ゾーイは挑発するように返した。
そのゾーイが指差すのは本の裏表紙、そこに視線を移せば、日本語でこう書かれていた。
『これを読んでいる未来ある若者よ、初めまして。
君の友人に、史学科の子はいるかい?
もし、心当たりがあるのなら、すぐにこの手記をその友達に届けておくれ。
そして、すぐに、この手記の文字を解読してもらってほしいんだ。
回りくどいやり方をして申し訳ないが、この手記を絶対に、奴らの手に渡らせるわけにはいかないんだ』
俺は思った……これは勝ったなと。
ゾーイほど、不可能という言葉が似合わない人間もいないだろうから。
「それにしても、地上時代だって、これを読めるのはほんのひと握りよ? 荻凛太郎は、よっぽどこれを読まれたくなかったんでしょうね」
喜びに包まれる空気の中で、ゾーイは呆れたように本を見つめながら告げる。
それほどまで、こんな何百年もの時を経て、荻凛太郎が隠したがった真実。
「まあ、そう嫌がられれば嫌がられるほど、暴きたくなるよっていうのが、人間の性なんだけどね」
ニヤリと笑って、その文を読み始めたゾーイ。
そこには、予想しなかったことが書かれていたのだった。
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