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第四章-⑵ ナサニエル墜落事件の真相
呪縛に支配された数百年
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「ほら、質問に答えたんだから、約束通りに洗いざらい話してよね?」
ゾーイには空気を支配してしまう力と同時に、それを一瞬にして解き放つ力を持っている。
今もそうだ、途端にいつもと同じように真顔で、文句は言わせないとばかりに言葉を吐き捨てるのだから。
「そうね……それでは、私の知るすべてをお話するわ」
そして、ローレンさんはその空気に飲まれるように、ゆっくりと話し始めた。
「我が家では物心がついた頃から、空島の神変動説を叩き込まれたわ。いつかはそれを実行しなければならない、それが一族の悲願だと……けれど、我が一族は数百年もの間、何かしらの具体的な行動を起こすことはなかった」
「それって、荻凛太郎の手記の存在が関係してるのかしら?」
重い口を開き、ゆっくりとなるべく丁寧に話を進めるローレンさんに、クレアは一つの疑問を投げかけた。
その疑問は、この場の誰もが思ってることの答えだったと思う。
荻凛太郎の手記は、何百年も昔に書かれたモノで、その間の歴史に一族による革命や反乱が起こったなんて記録はどこにもなかった。
そうなるとだ、ローレン家は数百年の間、ずっと身を潜めていたことになるわけで、それがどうしても疑問だった。
どうして、ローレン家は、このタイミングで動き始めたのかと……
「……さすがは、アーデルで学年の首席のサンチェスさんね。話が早くて助かるわ。そう、我が一族は荻凛太郎の最後の言葉にずっと怯えていたの」
「最後の言葉って、遺言とか……?」
「そんなに、綺麗なものではなかったと思うわ。私が聞いたのは、我が一族の悪行や、空島の歴史の真実を記した手記を空島のどこかに隠した。おそらく、時を経て、必ず我が一族は破滅するであろうと言い残し、荻凛太郎は死んだと……」
「嘘をつくな。死んだじゃなく、お前の先祖が安楽死に見せかけて、荻凛太郎を殺したんだろ」
ローレンさんはクレアの言葉に、何かを悲観するような苦しそうな笑みを浮かべながら、肯定した。
それに続いて、ジェームズが伺うように告げるが、これまたローレンさんは泣きそうな声で話を続ける……
けど、そんなローレンさんの言葉を遮ってお構いなしに確信をついたのは、アランだった。
思わず、アランを振り返ったが、その時のアランの顔は、まるで出会ったばかりの頃を彷彿とさせる冷たく鋭いものだった。
「なっ、なぜそれを……!?」
「荻凛太郎の手記だよ、そこに書いてあったの」
「そん、な……ことまで……」
「極端な話だがな、小さな誤魔化しも俺達は見逃さねえってことだ」
アランの言葉に対し、ローレンさんは本気で驚いているようで、答えたソニアの言葉を聞くと、さらに怯えるような仕草さえ見せた。
しかし、これまた容赦もなく、コタロウがほとんど脅すような口ぶりで、ローレンさんにそう告げていた。
少し胸が痛むけれど、下手に嘘をつかれないためにこういう釘を刺すようなことも重要なんだとは思う。
その効果もあってか、ローレンさんの目には緊張感が増した気がするし。
それに、ゾーイだと、もっと精神衛生上最悪な言い回しをしそうだしな……
「そもそもなんだが、ローレン家と荻凛太郎という人物は、どのような繋がりがあったのだ?」
「あ、えっと……荻凛太郎とは、近い支援者の間柄だったと聞いているわ。我が一族は、地上時代には鉱山事業を中心にしてたというから、シエロを設置する際にその関係で尽力したと」
「なるほど……近い関係だったから、異変に気付いたってことね?」
「そして、気付いたことにより、荻凛太郎は歴史の表舞台から消されたか」
「……本当に、一族が躍起になって手記を探し、それに怯えて行動を起こせなかった理由がわかるわね……この通り、手記が見つかってしまえば、ローレン家はおしまいだもの」
すると、珍しくも空気を読みまくったハロルドが地獄の空気を変えるように話を自然な方向にズラした。
やっぱり、地上に落ちてから、それぞれに成長しているんだなと、俺は何だか妙に感動してしまった。
一方で、ローレンさんはハロルドの言葉に戸惑いながらも、気を取り直すように話を進めていくが……鉱山か。
空島を浮かべる装置シエロは、地底深くに埋められるものだ。
ローレンさんの先祖は、当時の空島を作るために絶対的に必要な存在だったと言うわけか……とか、俺と同じことを思ったのだろう。
すぐに、モカが話をまとめ、デルタは少し嫌味を交えながらそう告げる。
それを受けて、ローレンさんはため息交じりに、そう吐き捨てていた。
「え? けど、手記はさっき発見されたわけだから、ローレン家が見つけることはできなかったわけでしょ? それなのに、どうして……?」
「……ある出来事が、我が一族の長く止まってた時計を一気に進めたの」
そんな時に、隣の真由から何かに気が付いたというような声と、疑問の言葉が投げかけられる。
確かに、ローレン家は荻凛太郎の手記という見えもしない呪縛に、長い間支配されていたはずなのに……?
その真由の言葉に、ローレンさんは顔を背けた……あ、まさか。
「あー、ここでみんな大好きマイルズ首相のご登場ってわけね?」
そんな中で確信をつく緊張感のないゾーイ声は、あっという間に重苦しいその空間に吸い込まれていった……
ゾーイには空気を支配してしまう力と同時に、それを一瞬にして解き放つ力を持っている。
今もそうだ、途端にいつもと同じように真顔で、文句は言わせないとばかりに言葉を吐き捨てるのだから。
「そうね……それでは、私の知るすべてをお話するわ」
そして、ローレンさんはその空気に飲まれるように、ゆっくりと話し始めた。
「我が家では物心がついた頃から、空島の神変動説を叩き込まれたわ。いつかはそれを実行しなければならない、それが一族の悲願だと……けれど、我が一族は数百年もの間、何かしらの具体的な行動を起こすことはなかった」
「それって、荻凛太郎の手記の存在が関係してるのかしら?」
重い口を開き、ゆっくりとなるべく丁寧に話を進めるローレンさんに、クレアは一つの疑問を投げかけた。
その疑問は、この場の誰もが思ってることの答えだったと思う。
荻凛太郎の手記は、何百年も昔に書かれたモノで、その間の歴史に一族による革命や反乱が起こったなんて記録はどこにもなかった。
そうなるとだ、ローレン家は数百年の間、ずっと身を潜めていたことになるわけで、それがどうしても疑問だった。
どうして、ローレン家は、このタイミングで動き始めたのかと……
「……さすがは、アーデルで学年の首席のサンチェスさんね。話が早くて助かるわ。そう、我が一族は荻凛太郎の最後の言葉にずっと怯えていたの」
「最後の言葉って、遺言とか……?」
「そんなに、綺麗なものではなかったと思うわ。私が聞いたのは、我が一族の悪行や、空島の歴史の真実を記した手記を空島のどこかに隠した。おそらく、時を経て、必ず我が一族は破滅するであろうと言い残し、荻凛太郎は死んだと……」
「嘘をつくな。死んだじゃなく、お前の先祖が安楽死に見せかけて、荻凛太郎を殺したんだろ」
ローレンさんはクレアの言葉に、何かを悲観するような苦しそうな笑みを浮かべながら、肯定した。
それに続いて、ジェームズが伺うように告げるが、これまたローレンさんは泣きそうな声で話を続ける……
けど、そんなローレンさんの言葉を遮ってお構いなしに確信をついたのは、アランだった。
思わず、アランを振り返ったが、その時のアランの顔は、まるで出会ったばかりの頃を彷彿とさせる冷たく鋭いものだった。
「なっ、なぜそれを……!?」
「荻凛太郎の手記だよ、そこに書いてあったの」
「そん、な……ことまで……」
「極端な話だがな、小さな誤魔化しも俺達は見逃さねえってことだ」
アランの言葉に対し、ローレンさんは本気で驚いているようで、答えたソニアの言葉を聞くと、さらに怯えるような仕草さえ見せた。
しかし、これまた容赦もなく、コタロウがほとんど脅すような口ぶりで、ローレンさんにそう告げていた。
少し胸が痛むけれど、下手に嘘をつかれないためにこういう釘を刺すようなことも重要なんだとは思う。
その効果もあってか、ローレンさんの目には緊張感が増した気がするし。
それに、ゾーイだと、もっと精神衛生上最悪な言い回しをしそうだしな……
「そもそもなんだが、ローレン家と荻凛太郎という人物は、どのような繋がりがあったのだ?」
「あ、えっと……荻凛太郎とは、近い支援者の間柄だったと聞いているわ。我が一族は、地上時代には鉱山事業を中心にしてたというから、シエロを設置する際にその関係で尽力したと」
「なるほど……近い関係だったから、異変に気付いたってことね?」
「そして、気付いたことにより、荻凛太郎は歴史の表舞台から消されたか」
「……本当に、一族が躍起になって手記を探し、それに怯えて行動を起こせなかった理由がわかるわね……この通り、手記が見つかってしまえば、ローレン家はおしまいだもの」
すると、珍しくも空気を読みまくったハロルドが地獄の空気を変えるように話を自然な方向にズラした。
やっぱり、地上に落ちてから、それぞれに成長しているんだなと、俺は何だか妙に感動してしまった。
一方で、ローレンさんはハロルドの言葉に戸惑いながらも、気を取り直すように話を進めていくが……鉱山か。
空島を浮かべる装置シエロは、地底深くに埋められるものだ。
ローレンさんの先祖は、当時の空島を作るために絶対的に必要な存在だったと言うわけか……とか、俺と同じことを思ったのだろう。
すぐに、モカが話をまとめ、デルタは少し嫌味を交えながらそう告げる。
それを受けて、ローレンさんはため息交じりに、そう吐き捨てていた。
「え? けど、手記はさっき発見されたわけだから、ローレン家が見つけることはできなかったわけでしょ? それなのに、どうして……?」
「……ある出来事が、我が一族の長く止まってた時計を一気に進めたの」
そんな時に、隣の真由から何かに気が付いたというような声と、疑問の言葉が投げかけられる。
確かに、ローレン家は荻凛太郎の手記という見えもしない呪縛に、長い間支配されていたはずなのに……?
その真由の言葉に、ローレンさんは顔を背けた……あ、まさか。
「あー、ここでみんな大好きマイルズ首相のご登場ってわけね?」
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