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第四章-⑵ ナサニエル墜落事件の真相
さようなら犬族と猫族
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全員で朝ご飯を食べること、レオ達におはようと挨拶をすること、地上を走り回ること、車を運転すること、全部が今日で最後になる。
十か月もの長い時間を、俺達は地上で生き抜いてきて、それが最後……
悪足掻気なんて子どもみたいなことをしたくなるほど、予想以上に俺の中で喪失感が襲った。
こんな気持ちになるなんて、こんなに地上を離れ難くなるなんて、十か月前は想像してなかったな。
「昴、気を付けて帰れよ?」
「ああ……無事を祈っててくれ」
天気は快晴、ジリジリと太陽が仕事を始めようとしてきた頃、俺達は空港の滑走路にやって来た。
滑走路には、俺達を見送るために王国中の奴らが集合していた。
あちこちで、別れの挨拶や激励の言葉の数々が聞こえてくる。
そんな感傷に浸る俺に、軽い調子で声を声をかけてきたのはレオだ……まるでまた明日も、会えるとでもいうように。
「くれぐれも、安全運転でな?」
「作戦成功することを、祈ってるわ」
そのレオの後ろからはからかうような口調のコタロウと、穏やかに笑うモカが歩いて来る。
ああ、本当に今日で終わるんだ、この生活が……日常が……
「……昴? どうした?」
三人の言葉に返事をしてこない俺を不思議に思ったのか、レオが問いかける。
普段なら、今までなら、こんなことで言葉が詰まることなんてないのに……
「もう……ギリギリだわ、俺……!!」
ずっと、我慢していた……前に進まなきゃいけないし、俺達がいる場所はここじゃないはずなんだ。
あんなに早く帰りたくて、空ばかり見上げていたはずなのに……
どうして、こんなに涙が止まらず、溢れてくるのだろうか?
「ハッ……!! ここにきて、お前が一番泣くのかよ?」
止まれと願って、晴れ渡る青い空を見上げたが、次から次へと溢れ出す熱い大きな雫は止まってはくれなくて……
そんな俺を見兼ねたコタロウが、悪態をつきながら俺のことを、大きな腕に抱き締めていた。
「情けね……お、れ……!!」
「すば、る……!!」
「それは反則だよ……ほんと、に……」
喉の奥が変に痛くなるほど、俺は蚊の鳴くような声を上げて、泣いた。
すると、コタロウに続いて、モカが俺を涙に混じった声で呼びながら、レオが絞り出すような声を上げながら……
三人全員で、温かくて、安心する、その腕で俺のことを抱き締めてくれた。
こんなに大切で、かけがえのないものを置いて行く……
人生は出会いと別れの繰り返しなんて言うけれど、俺はこんなに胸が張り裂けそうな別れを知らないよ、神様。
「昴はさ、よく自分は平凡だとか、取り柄がないとか言うよな? けど、僕はそれ、違うと思うよ?」
「……え?」
そんな時、横からレオのそんな声が聞こえて、俺は思わず聞き返していた。
「ああ……お前は、確かにあまりゾーイとか、望、サトル、クレア、アランとかとは違って目立つ存在じゃねえけど、お前がいなかったら、俺達とお前ら人間がここまで仲良くなるってことはなかったと思うぜ?」
「うん、そうね? 正直、最初はそれぞれが手探りだったし、ゾーイはそこら辺は論外だしね。けど、昴は、変な先入観とかなく、私達とは最初から普通以上に仲良くなっていたでしょ? それって簡単にできることじゃないわよ」
俺のことを離して、コタロウが照れ臭そうにそっぽを見ながら、モカは優しく諭すように、俺にそう言った。
俺は自分のことを平凡なんだと、この十か月の間に思い知ったんだ。
特にゾーイと比べると、あんな風に自分は人を巻き込む力なんて持ち合わせてはいないし、次から次へと斬新な作戦を出して大きな危機を打破するなんていうこともできないし、俺は言われたことを精一杯熟すだけで……
まあ、自信をなくしたなんて繊細な心を持ち合わせているわけじゃないけど、そんな自分に対して、少しだけガッカリしたこともある。
それなのに、三人の言葉に俺は足元がフワフワして落ち着かないような、不思議な感覚に陥る。
まさか、そんなことをこんな場面で言われるとは思わないし……
「昴は、誰かと誰かを繋いでくれる架け橋のような存在だと思う……何より、昨日ゾーイが、昴は必要不可欠な存在だと思うって言ってたよ?」
「ありが……え、今何て? あの、ゾーイが俺のことを……おお!?」
そんなトドメは、レオの言葉かなんて思って、流れでお礼を言おうとして、俺は耳を疑った。
今、聞こえるはずのない人物の名前が聞こえなかったか? ゾーイが!?
何かの間違いだと思って三人に問いかけようとしたが、それは三人にさっきとは比べものにならないほどの力で抱き締められたことで、最後まで発せられることはなかった。
というよりもだ、三人とも震えてる?
「どうした? 何で、震えて……」
「昴! お前に託す! ゾーイのことをどうか……離さないでくれ!」
「は?」
「あの子のこと、お願いよ……!!」
「……最後まで、見届けてやってくれ」
俺の質問を遮ったかと思えば、レオはさらに力を込めて俺にそう告げた。
わけがわからず聞き返すも、モカもコタロウも苦しそうに、悲しそうに、そう告げるだけで……
俺は、尋常じゃない三人のその様子を前に、ゾーイと何かあったのか、昨日何を話し合ったのか……それを問いかけることができなかった。
おそらくだが、聞いたとしても答えてくれることはないだろう。
そのことが、俺はなおさらに怖くてたまらなくなっていた。
十か月もの長い時間を、俺達は地上で生き抜いてきて、それが最後……
悪足掻気なんて子どもみたいなことをしたくなるほど、予想以上に俺の中で喪失感が襲った。
こんな気持ちになるなんて、こんなに地上を離れ難くなるなんて、十か月前は想像してなかったな。
「昴、気を付けて帰れよ?」
「ああ……無事を祈っててくれ」
天気は快晴、ジリジリと太陽が仕事を始めようとしてきた頃、俺達は空港の滑走路にやって来た。
滑走路には、俺達を見送るために王国中の奴らが集合していた。
あちこちで、別れの挨拶や激励の言葉の数々が聞こえてくる。
そんな感傷に浸る俺に、軽い調子で声を声をかけてきたのはレオだ……まるでまた明日も、会えるとでもいうように。
「くれぐれも、安全運転でな?」
「作戦成功することを、祈ってるわ」
そのレオの後ろからはからかうような口調のコタロウと、穏やかに笑うモカが歩いて来る。
ああ、本当に今日で終わるんだ、この生活が……日常が……
「……昴? どうした?」
三人の言葉に返事をしてこない俺を不思議に思ったのか、レオが問いかける。
普段なら、今までなら、こんなことで言葉が詰まることなんてないのに……
「もう……ギリギリだわ、俺……!!」
ずっと、我慢していた……前に進まなきゃいけないし、俺達がいる場所はここじゃないはずなんだ。
あんなに早く帰りたくて、空ばかり見上げていたはずなのに……
どうして、こんなに涙が止まらず、溢れてくるのだろうか?
「ハッ……!! ここにきて、お前が一番泣くのかよ?」
止まれと願って、晴れ渡る青い空を見上げたが、次から次へと溢れ出す熱い大きな雫は止まってはくれなくて……
そんな俺を見兼ねたコタロウが、悪態をつきながら俺のことを、大きな腕に抱き締めていた。
「情けね……お、れ……!!」
「すば、る……!!」
「それは反則だよ……ほんと、に……」
喉の奥が変に痛くなるほど、俺は蚊の鳴くような声を上げて、泣いた。
すると、コタロウに続いて、モカが俺を涙に混じった声で呼びながら、レオが絞り出すような声を上げながら……
三人全員で、温かくて、安心する、その腕で俺のことを抱き締めてくれた。
こんなに大切で、かけがえのないものを置いて行く……
人生は出会いと別れの繰り返しなんて言うけれど、俺はこんなに胸が張り裂けそうな別れを知らないよ、神様。
「昴はさ、よく自分は平凡だとか、取り柄がないとか言うよな? けど、僕はそれ、違うと思うよ?」
「……え?」
そんな時、横からレオのそんな声が聞こえて、俺は思わず聞き返していた。
「ああ……お前は、確かにあまりゾーイとか、望、サトル、クレア、アランとかとは違って目立つ存在じゃねえけど、お前がいなかったら、俺達とお前ら人間がここまで仲良くなるってことはなかったと思うぜ?」
「うん、そうね? 正直、最初はそれぞれが手探りだったし、ゾーイはそこら辺は論外だしね。けど、昴は、変な先入観とかなく、私達とは最初から普通以上に仲良くなっていたでしょ? それって簡単にできることじゃないわよ」
俺のことを離して、コタロウが照れ臭そうにそっぽを見ながら、モカは優しく諭すように、俺にそう言った。
俺は自分のことを平凡なんだと、この十か月の間に思い知ったんだ。
特にゾーイと比べると、あんな風に自分は人を巻き込む力なんて持ち合わせてはいないし、次から次へと斬新な作戦を出して大きな危機を打破するなんていうこともできないし、俺は言われたことを精一杯熟すだけで……
まあ、自信をなくしたなんて繊細な心を持ち合わせているわけじゃないけど、そんな自分に対して、少しだけガッカリしたこともある。
それなのに、三人の言葉に俺は足元がフワフワして落ち着かないような、不思議な感覚に陥る。
まさか、そんなことをこんな場面で言われるとは思わないし……
「昴は、誰かと誰かを繋いでくれる架け橋のような存在だと思う……何より、昨日ゾーイが、昴は必要不可欠な存在だと思うって言ってたよ?」
「ありが……え、今何て? あの、ゾーイが俺のことを……おお!?」
そんなトドメは、レオの言葉かなんて思って、流れでお礼を言おうとして、俺は耳を疑った。
今、聞こえるはずのない人物の名前が聞こえなかったか? ゾーイが!?
何かの間違いだと思って三人に問いかけようとしたが、それは三人にさっきとは比べものにならないほどの力で抱き締められたことで、最後まで発せられることはなかった。
というよりもだ、三人とも震えてる?
「どうした? 何で、震えて……」
「昴! お前に託す! ゾーイのことをどうか……離さないでくれ!」
「は?」
「あの子のこと、お願いよ……!!」
「……最後まで、見届けてやってくれ」
俺の質問を遮ったかと思えば、レオはさらに力を込めて俺にそう告げた。
わけがわからず聞き返すも、モカもコタロウも苦しそうに、悲しそうに、そう告げるだけで……
俺は、尋常じゃない三人のその様子を前に、ゾーイと何かあったのか、昨日何を話し合ったのか……それを問いかけることができなかった。
おそらくだが、聞いたとしても答えてくれることはないだろう。
そのことが、俺はなおさらに怖くてたまらなくなっていた。
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