エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第四章-⑶ ラスボスとの直接対決

最短ルートが一番だよね

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「ほんと、に……!! しつこい連中だ!」


 思わず、荒い息遣いとともに出た俺の言葉に答える者は、誰もいなかった。
 いや、全員が答える余裕がなかったと言った方が正しいのだろう。
 もれなく、全員が……ゾーイを除く全員が肩で息をしている。
 アラン達四人と別れた俺達は、必死で追っ手から逃げた。
 最上階の四階の右奥の部屋を……首相の執務室目指して、階段を何段も駆け上り、時には走って追っ手を撒き、時には多少の手荒な真似を、主にゾーイが先に仕掛けるのを後ろからサポートし、どうにか、この三階までやって来たのだ。
 それでも、ゾーイの体力お化けっぷりは別として……この後に控えるマイルズ首相との直接対決でその場への参加をご指名されている、ローレンさん、俺、望の負担を減らすために、他のみんなは本当に頑張ってくれていた。
 俺と望には絶対戦わせなかったし、ローレンさんの手を引いたり、先人を切るゾーイを抑えて先に様子を見たりと、とにかく、俺達の体力を温存させるために相当動いてくれていた。
 俺なんかより、みんなの方が何倍も疲れているはずだ……


「そういえば……はあ、はあ……!! ゾーイ! さっき別れる時にシンに言ってたこと……あれ、どういう意味なの?」


 息を整えるため、様子を伺いながら少しの休息をとっていると、その場に座り込みながらジェームズがゾーイに例の質問をしていた。
 他のみんなも気になるのか、全員が疲れ果てた顔を上げてゾーイを見ていた。


「あー、別プランを少しね? 全部が終わってから話すわ」


 しかし、どうやら、ここでゾーイは話をする気はないようだ。
 さっきのゾーイは、シンに対し話を覚えているかと聞き、シンはそれにまた無茶ぶりなんだよと叫んでいた。
 シンに頼むということは、おそらく機械周りのことだろうし、ゾーイの言う別プランとは、今必要なことなのだろう。
 まあ、すべてが終わってから教えると言うのだから待てばいいや。
 そして、他のみんなも俺と同じことを思ったのだろう、途端に意識を他のことに向けていた。
 しょうがないか、こうなったゾーイはテコでも動かないからな。


「ところで、この後のことだけど、多少手荒なことになってる今も、やることは特に変わらないのよね?」
「そうよ。マイルズ首相と話をして、ボイスレコーダーで録音はしつつ、自首を促す流れよ」
「わかったわ。そうと決まれば、先を急ぎましょうか!」


 すると、回復したであろうクレアがこの後の流れをゾーイに尋ねる。
 頷くゾーイを見て、クレアは俺達のことを確認してから立ち上がった。
 それにつられて、他のみんなも重い腰を上げて立ち上がる。
 まあ、こんなとこで、いつまでも座り込んでるわけにはいかないからな……


「待て! みんな、下がれ!」


 しかし、さあ先に進もうかと足を進めようとした時に、切羽詰まったようなサトルの声が響いたのだ。
 そして、その声は明らかに悪い知らせを紡ぐためのもので……俺は、自分の鼓動が早くなるのを、拳を強く握ることで誤魔化した。


「サトル、どうした?」
「前から三人ほどかな……? こっちに向かって来てる!」


 淡々と叫んだサトル本人に問いかけるゾーイと、それに答えるサトル。
 そんなことだろうとは思ったが、確かに前方からは追っ手がこちらにまっすぐと向かって来ていた。


「オーケー。それじゃ、一先ずは、左か右に曲がって……」
「ゾーイ、左は行けません! 追っ手が来てます!」
「右もダメよ! すぐそこに……!!」


 それを受けて、すぐにゾーイは進行方向を左右のどちらかに変更しようとしたのが、それは叶わなかった。
 ゾーイの言葉を遮り、モーリスがローレンさんが叫んだ内容は、俺達の行き先を塞ぐものだった。
 とっさに左右を確認したが、そこには二人の言う通りの光景が広がっているだけで……


「クソッ! 完全に囲まれた……!!」
「どうすんだよ!?」


 油断していたわけじゃないのに、どうしてこうなる……!!
 思わず、無意識に零れ出た舌打ちと悪態に吐き気がする。
 けど、すぐに俺は隣から望の焦る声が聞こえて、意識を取り戻す。


「なあ、ここは一旦下がって、別のルートを探すとかは……どうだ!?」


 それでも、俺の頭の中は、冷静とは真逆のぐちゃぐちゃで、出任せで出たその言葉は情けなくなるほど適当なもの。
 何だよ、それ……下がって、別ルートとか、時間かかるだけだろ!
 どうして、こういう時に俺にはいい考えが何も浮かばねえんだ!
 ああ、違うだろ……今は、自己嫌悪に陥ってる場合じゃねえ、こうしてモタモタしてる間にも追っ手が……!!


「四人とも、死ぬ気で走って!」


 そうやって俺がパニックに陥っている時だった……真由が、そう告げたのは。
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