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62話 契約
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午後の授業は歴史学からで、久しぶりに1人での授業だった。
「今日はマリアンヌさん1人ですから魔王の話の続きをしましょうか」
「はい、お願いします」
私はヴィンス先生から、魔王について聞く前に、黄昏のメモリアでの魔王について思い起こしていた。
ゲームの魔王は封印されており、3章の時期に理由は知らないが封印が解けて、ティルステアの聖地を乗っ取ってしまう、しかし魔王側の言い分は、ティルステアの聖地にあるお城は元々は自分のもので、返してもらっただけだと言っていた。
しかも、話し合いの時に国を滅ぼされたくなければ自分と契約しろとヒロインに迫ってくる、ちょっと何考えてるか分からない人だ。
ちなみに契約を受け入れれば4章の攻略対象者ルートに入り、断ると4章の攻略対象者に拉致られる、誰に攫われるのかは、3章までに誰を攻略してるかで変わるようになっていた。
私は魔王に攫われるヒロインとかは、以前授業で聞いた昔の攫われた大聖女様とかぶるので、何か聖女を攫う理由でもあるのかな、と思いながら先生の話を聞いた。
「まず以前話した800年前の魔王は亡くなってます、なのでマリアンヌさんがご存じの魔王は別の人ですから、そこは間違えないで下さいね」
「分かりました、というか魔王は本当にいるんでしょうか?」
「魔王になる可能性のある人物なら確かにいますよ、当時の魔王の子供がいますので」
「ん?800年前の人ですよね?」
「えぇ、800年前の魔王と大聖女様との子供ですから、アルヴィンやキースと近い存在ですね」
「先生、私どこから聞いていいのか分からなくなりました」
私がそう言うと、ヴィンス先生は笑って「でしょうね」と言った後「では分かるように説明します」と話し出した。
「以前授業で大聖女様は攫われたと言いましたが、あれはこの国から見た歴史であって、真実は大聖女様自ら魔王の所へ行ったのです。お互い茨の道ですけど愛し合っていたんでしょうね、それと当時の大聖女様は祝福持ちです、魔王は寵愛者や祝福持ちのそばにいるとエレボスからの干渉を受けにくくなりますから、大聖女様と一緒に居た時の魔王は本来の姿に近かったはずです」
「本来の魔王ってどんな人だったんでしょうか」
「大聖女様には優しい人だったんだと思います、ただ愛しい人を守る為に苛烈になる所があったので、戦争が終わる事はありませんでしたが」
「では大聖女様が2代目国王陛下を殺したのって…」
「愛する人を殺した男の妻になるくらいなら、というやつですね」
「授業で聞いた時は殺すほど嫌いだなんて何があったのだろうと不思議に思いましたが、今納得しました」
「では次にその2人の子供ですが、基本害はないです、魔王と人のハーフなので寿命は長いですけどね、ただ、魔王の子供だからと迫害を受け人に憎悪を持ったり、両親を殺した王家に殺意などを持ったりすると、エレボスの干渉を受けて魔王化する可能性があります。なので、それを心配したキースによって封印され、その後キースは魔王になる可能性についての記録を消し去りました。そして封印されたその人物こそ、マリアンヌさんがご存じの魔王ヴィンセントという事になります」
ヴィンス先生の話を聞いた私は、ゲームの魔王についてもう1度考えた。
ゲームでは既に魔王になっていて、すぐにでも戦争をするつもりだと言っていたが、ヒロインをそばに置きたがったり、攻略出来る事を考えると、普通に厄介な体質の被害者なだけである。
それなのにゲームでは始終「破壊神から生まれ、封印された化物」という扱いだ、酷いにも程がある。
私が1人憤ってると、ヴィンス先生に「それでマリアンヌさんはどう思いますか?」と聞かれた。
「ヴィンセント様が可哀想です、ただの体質なのに封印されたりして」
「魔王化がただの体質ですか」
「え、だって私やヴィンス先生、アルヴィン様がそばにいれば問題のない体質ですよね?」
「ですがマリアンヌさん、四六時中一緒にはいられないでしょう?」
「あ、そうですね…何か方法って無いのですか?」
「契約魔法を結べばおそらく可能でしょう」
「契約…私の知っているヴィンセント様もヒロインに契約を迫ってました」
「おや、そうなんですね、ちなみにマリアンヌさんは契約の仕方は知ってますか?」
「いえ、どうやるんですか?」
私がそう聞くと、先生は1つの魔法陣を出した。
「これは精霊と契約する時に使う魔法陣で、魂の契約になります」
「魂の契約だとどうなるのですか?」
「離れていても契約者の魂がそばにある感じですかね、知ろうと思えば互いの位置や状況、思ってる事等も分かりますよ」
「割と包み隠さずなんですね」
「信頼関係が無いと分からないので、普通に結んだだけなら魂の恩恵くらいですよ」
「魂の恩恵って何ですか?」
「私達祝福持ちやアルヴィンみたいな寵愛者は、そばにいるだけで多少の癒し効果があるんです、例えば魔力や体力が回復しやすかったり、精神が安定したりとかですね」
「ではヴィンセント様が契約したい理由はその恩恵欲しさですか?」
「おそらくそうでしょう、精神が安定していれば魔王化しませんから」
「なるほど、それでどうすれば契約出来るんですか?」
「あぁ、魔法陣に手を置くだけでいいですよ」
私はそれを聞いて、何も考えずに「こうですか?」と魔法陣に手を置いた。
すると魔法陣は明るく光った後消えてしまい、何となくやらかした事を察した私が恐る恐るヴィンス先生を見ると頭を抱えていた。
「あの、先生これって…」
「契約成立ですね…本来この契約は契約の効果をお互いが知っていて、それに同意した上で手を置くと成立するんです、効果については私が説明しましたが、マリアンヌさん何気軽に同意してるんですか!?説明聞いてましたか?」
「聞いてましたよ!?でも別に恩恵くらいならよくないですか?あっ!それとも先生が私と契約嫌でした?」
「私は構いませんよ」
「私も構いません」
私の発言を聞いたヴィンス先生はため息を吐いた後「もし解除が必要となった時は言って下さい」と言うと、丁度授業終了のベルが鳴った。
「今日はマリアンヌさん1人ですから魔王の話の続きをしましょうか」
「はい、お願いします」
私はヴィンス先生から、魔王について聞く前に、黄昏のメモリアでの魔王について思い起こしていた。
ゲームの魔王は封印されており、3章の時期に理由は知らないが封印が解けて、ティルステアの聖地を乗っ取ってしまう、しかし魔王側の言い分は、ティルステアの聖地にあるお城は元々は自分のもので、返してもらっただけだと言っていた。
しかも、話し合いの時に国を滅ぼされたくなければ自分と契約しろとヒロインに迫ってくる、ちょっと何考えてるか分からない人だ。
ちなみに契約を受け入れれば4章の攻略対象者ルートに入り、断ると4章の攻略対象者に拉致られる、誰に攫われるのかは、3章までに誰を攻略してるかで変わるようになっていた。
私は魔王に攫われるヒロインとかは、以前授業で聞いた昔の攫われた大聖女様とかぶるので、何か聖女を攫う理由でもあるのかな、と思いながら先生の話を聞いた。
「まず以前話した800年前の魔王は亡くなってます、なのでマリアンヌさんがご存じの魔王は別の人ですから、そこは間違えないで下さいね」
「分かりました、というか魔王は本当にいるんでしょうか?」
「魔王になる可能性のある人物なら確かにいますよ、当時の魔王の子供がいますので」
「ん?800年前の人ですよね?」
「えぇ、800年前の魔王と大聖女様との子供ですから、アルヴィンやキースと近い存在ですね」
「先生、私どこから聞いていいのか分からなくなりました」
私がそう言うと、ヴィンス先生は笑って「でしょうね」と言った後「では分かるように説明します」と話し出した。
「以前授業で大聖女様は攫われたと言いましたが、あれはこの国から見た歴史であって、真実は大聖女様自ら魔王の所へ行ったのです。お互い茨の道ですけど愛し合っていたんでしょうね、それと当時の大聖女様は祝福持ちです、魔王は寵愛者や祝福持ちのそばにいるとエレボスからの干渉を受けにくくなりますから、大聖女様と一緒に居た時の魔王は本来の姿に近かったはずです」
「本来の魔王ってどんな人だったんでしょうか」
「大聖女様には優しい人だったんだと思います、ただ愛しい人を守る為に苛烈になる所があったので、戦争が終わる事はありませんでしたが」
「では大聖女様が2代目国王陛下を殺したのって…」
「愛する人を殺した男の妻になるくらいなら、というやつですね」
「授業で聞いた時は殺すほど嫌いだなんて何があったのだろうと不思議に思いましたが、今納得しました」
「では次にその2人の子供ですが、基本害はないです、魔王と人のハーフなので寿命は長いですけどね、ただ、魔王の子供だからと迫害を受け人に憎悪を持ったり、両親を殺した王家に殺意などを持ったりすると、エレボスの干渉を受けて魔王化する可能性があります。なので、それを心配したキースによって封印され、その後キースは魔王になる可能性についての記録を消し去りました。そして封印されたその人物こそ、マリアンヌさんがご存じの魔王ヴィンセントという事になります」
ヴィンス先生の話を聞いた私は、ゲームの魔王についてもう1度考えた。
ゲームでは既に魔王になっていて、すぐにでも戦争をするつもりだと言っていたが、ヒロインをそばに置きたがったり、攻略出来る事を考えると、普通に厄介な体質の被害者なだけである。
それなのにゲームでは始終「破壊神から生まれ、封印された化物」という扱いだ、酷いにも程がある。
私が1人憤ってると、ヴィンス先生に「それでマリアンヌさんはどう思いますか?」と聞かれた。
「ヴィンセント様が可哀想です、ただの体質なのに封印されたりして」
「魔王化がただの体質ですか」
「え、だって私やヴィンス先生、アルヴィン様がそばにいれば問題のない体質ですよね?」
「ですがマリアンヌさん、四六時中一緒にはいられないでしょう?」
「あ、そうですね…何か方法って無いのですか?」
「契約魔法を結べばおそらく可能でしょう」
「契約…私の知っているヴィンセント様もヒロインに契約を迫ってました」
「おや、そうなんですね、ちなみにマリアンヌさんは契約の仕方は知ってますか?」
「いえ、どうやるんですか?」
私がそう聞くと、先生は1つの魔法陣を出した。
「これは精霊と契約する時に使う魔法陣で、魂の契約になります」
「魂の契約だとどうなるのですか?」
「離れていても契約者の魂がそばにある感じですかね、知ろうと思えば互いの位置や状況、思ってる事等も分かりますよ」
「割と包み隠さずなんですね」
「信頼関係が無いと分からないので、普通に結んだだけなら魂の恩恵くらいですよ」
「魂の恩恵って何ですか?」
「私達祝福持ちやアルヴィンみたいな寵愛者は、そばにいるだけで多少の癒し効果があるんです、例えば魔力や体力が回復しやすかったり、精神が安定したりとかですね」
「ではヴィンセント様が契約したい理由はその恩恵欲しさですか?」
「おそらくそうでしょう、精神が安定していれば魔王化しませんから」
「なるほど、それでどうすれば契約出来るんですか?」
「あぁ、魔法陣に手を置くだけでいいですよ」
私はそれを聞いて、何も考えずに「こうですか?」と魔法陣に手を置いた。
すると魔法陣は明るく光った後消えてしまい、何となくやらかした事を察した私が恐る恐るヴィンス先生を見ると頭を抱えていた。
「あの、先生これって…」
「契約成立ですね…本来この契約は契約の効果をお互いが知っていて、それに同意した上で手を置くと成立するんです、効果については私が説明しましたが、マリアンヌさん何気軽に同意してるんですか!?説明聞いてましたか?」
「聞いてましたよ!?でも別に恩恵くらいならよくないですか?あっ!それとも先生が私と契約嫌でした?」
「私は構いませんよ」
「私も構いません」
私の発言を聞いたヴィンス先生はため息を吐いた後「もし解除が必要となった時は言って下さい」と言うと、丁度授業終了のベルが鳴った。
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