転生したら推しが王子のフリしてやってきた。

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82話 友人達との夏休み

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学園での2回目の夏休みは、私は家に帰らず寮で過ごす事となった。
理由はリリもクリスもユフィ様も家に帰らないし、セキュリティ面でも学園の方が安全だからだ。
ちなみにウィルも「寮に残るなら先生が夏休み中稽古つけてくれるって言うし、カイン様とセスとニコラスも帰らないでしょ、その上マリーも寮に残るって言うなら俺は帰らないよ」と言っていた。

そうしてほとんどの生徒が家に帰るなか、私達の夏休みが始まった。
夏休み中の寮は、普段食堂で働いている人達も休みなので、ある程度自分の事は自分でしなければならない、そういう理由もあって帰る生徒が多いのだが、侍女のマーサもいるし、私とリリとクリスは料理も作れるので特に困るという事は無かった。
流石のユフィ様も料理はした事が無かったので、最初は私達がユフィ様の分も作っていたのだが、数日もすると自分で作れるようになっており、習得の早さには皆驚いた。

「ねぇ、ユフィ様って出来ない事とかあるの?」とリリが聞くと「さぁどうかしら、王女ってしがらみが多いし、勉強以外はさせてもらえない事の方が多いから」と言った。

「え、じゃあ今料理してて大丈夫なの?」
「大丈夫よ、侍女のライラは私の味方だし、ここでの私は自由に行動すると決めているから」

ユフィ様のその発言に、クリスが「ユフィ様って自分の国では我慢してるの?」と質問した。

「我慢とは少し違うかしら、私があまり目立つと国が荒れるから、お姉様達より評価が下になるように調整しているのよ」
「それってしようと思って出来る事?」
「割と出来るものよ、ちょっと大変だけどね」

そうユフィ様が言い切ったので、私はこの時ユフィ様はカイン様と同類だと確信した。

それとユフィ様の体型は、アルヴィン様から貰った腕輪の効果が凄まじく、既に標準まで戻っていたのだが、ユフィ様の目標はもう少し絞りたいとの事だったので、夏休み中は全員でユフィ様の部屋で筋トレに励む事になった。
この筋トレ、内容を考えたのがリリなのだが、絶妙なキツさで、何でこの内容なのかと聞くと「ダンスを綺麗に踊るのに必要な筋肉と、くびれを作ろうと考えたらこうなったのよ」と返ってきた。
「リリって既に美少女なのにこんな努力までしてるの?」とユフィ様が聞くと「いつか婚約者をギャフンと言わせる為に、自分磨きは怠らないわ」と答えた。

「今回リリが帰らなかったのって、それ関係?」
「そうよマリー、ディーン様とジュリアには私がいない間に更に仲良くなってもらわないと困るからね」
「確かにそうね、そういえばクリスは最近ニコラス様とどうなの?」
「…キスされそうになったのに思い止まられた」
「「「えっ!?」」」

予想外の答えに、私とリリとユフィ様の声が重なった。

「きっと私がお子様で魅力が無いから駄目なんだと思って、そんな時にユフィ様が、綺麗になってアルベール殿下を絶対落とすって頑張ってるから、私も一緒に頑張る事にしたの」
「クリス、その意気よ!キスされそうになったのなら、かなり望みがあるわ、手を出させたらこっちの勝ちなんだから!」
「ユフィ様…私頑張る!」
「えぇ、一緒に頑張りましょう!」

そうしてユフィ様とクリスが両手で握手しているのを見ながら、私が「これでいいのかしら…」と言うと、リリが「心折れずに頑張れるならいいんじゃない?」と言ってくれた。
確かにゲームでも、夏休み期間中はステータス上げがメインだったので、クリスが自分磨きをしているのは強ち間違いではないのだろう、ただ攻略対象でないニコラス様に効くのかどうかは不明だ。

クリスが「ユフィ様の方はどうなの?」と質問すると「夏休み直前はもう結構体型変わってたんだけど、全然反応が変わらないのよね、相変わらず眉間にしわよせられちゃうし、あまり私を見てくれないわ」と答えた。
いつもの事ながら、そんな相手に毎回声をかけれるユフィ様のメンタル本当に凄いなと思っていると、ユフィ様が「夏休み明けにもう1度告白して、それでも断られたら暫く声をかけるのは止めようと思っているの」と言い出した。

「え!?何で?ユフィ様アルベール殿下の事諦めるの?」
「クリス違うわ、押して駄目なら引いてみるだけよ、あれだけ何度も告白してきた私が急に来なくなったら、多少気になって私を見てくれるでしょう、でももし何も反応が無かったら攻め方を考え直す必要が出てきちゃうんだけどね」
「そうなんだ、私応援してるからね」
「ありがとう」

そんな感じで毎日を過ごしていると、あっという間に夏休みが終わり、1番頑張っていたユフィ様の成果だが、見事目標を達成し、制服も作り直し、入学式の時とは最早別人の美少女になっていた。

それと、例の腕輪は夏休みが終わる数日前に私とユフィ様で精霊の泉へ行き、アルヴィン様に返したのだが、アルヴィン様は「へぇ、綺麗になったじゃないかユーフェミア」と言うと、腕輪を受け取った後、青い石を使った付与付きの指輪をユフィ様に渡した。

「アルヴィン様、これは?」
「俺が付与した指輪だ、怪我をしたら治癒魔法がかかるようにしてある、持っとけ」
「あら、私怪我をしますの?」
「お前次第だと思うぞ」
「そうですか、ありがとうございます」

そう言ってユフィ様は、腕輪の時同様、躊躇なく指輪を着けた。

その後帰り際に、私はアルヴィン様にお母様との事を質問してみた。

「俺とアリアンナの関係?」
「はい、当時のアルヴィン様の事はお母様とバーナード様くらいしか知らなかったみたいなので」
「別に何もないぞ?前にも言ったが、俺は望む未来をつかみ取りに行くような女が好きだから、それで手伝ってやってただけだ」
「それだけですか?」
「それだけだ、俺がアリアンナの事を恋愛的な意味で好きだとでも思ったか?」
「まぁ、多少」
「勘弁してくれ、手伝ったり眺めてる分には面白いから好きなだけであって、そういう意味じゃない」
「そうだったんですか」
「あぁ、そもそも俺は…まぁいい、ユーフェミアが待ってるから早く行け」

アルヴィン様が何て言おうとしていたのかは気になるが、私はユフィ様と寮へ帰った。
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