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EP 6
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善行ポイントを稼げ!~ドブ掃除から始まる英雄譚~
路地裏の湿った石畳に、四人の男女が座り込んでいた。
優太は虚空に表示された【地球ショッピング】の画面を見つめ、絶望的な声を漏らした。
「……嘘だろ。ポイントが『マイナス500』になってる」
昨夜の1500ポイントはどこへ消えたのか。
履歴を見ると『詐欺行為への加担(連帯責任):-2000pt』という非情な文字が刻まれている。ルナの偽金騒動のペナルティだ。
システムは神よりも残酷だった。
「腹減ったぞぉぉぉ……」
「優太様、喉が渇きましたわ。あのアマゾンの清水を出してくださいな」
「うぅ、ごめんなさい……私の奢りのはずだったのに……」
イグニスが地面を転がり、ルナが無邪気にねだり、キャルルが自己嫌悪で膝を抱えている。
優太はガシガシと頭を掻きむしった。
「くそっ、凹んでても腹は膨れねぇ! やるぞ! ポイントを稼ぐんだ!」
優太は立ち上がり、鼻をひくつかせた。
路地裏の奥から、腐敗臭が漂ってくる。
「……トリアージ開始。ターゲットは『ドブ』だ」
◇
そこは、街のスラム街に近い用水路だった。
生活排水とゴミが溜まり、ヘドロが詰まって完全に流れが止まっている。強烈な悪臭に、通りがかる人々も鼻をつまんで走り去る場所だ。
「うげぇ……ここを掃除するのか? 俺様は竜人だぞ? 将来の最強だぞ?」
イグニスが露骨に嫌な顔をする。
優太はイグニスの肩を掴み、ドスの利いた声で言った。
「イグニス。お前、昨日のチョコ食いたいか?」
「食いたい!!」
「なら掘れ。ヘドロを掻き出せ。働かざる者食うべからずだ」
「ぐぬぬ……チョコのためならプライドも捨てるぜ!」
イグニスが巨大な岩のような瓦礫を軽々と持ち上げる。
優太は袖をまくり、ヘドロの中に手を突っ込んだ。
「うっ……くせぇ……!」
ヌルリとした感触に吐き気を催すが、耐える。
詰まっていた木片を取り除き、泥を掻き出す。
《ピロリン♪ 溝掃除:善行10pt獲得》
「よし! 入った!」
脳内に響く通知音。これが今の優太にとっての生命線だ。
それを見ていたキャルルも、スカートの裾を縛り、ドブに入ってきた。
「私もやります! 優太さんだけに汚れ仕事はさせられません!」
「キャルル、足の傷が……」
「これくらい平気です! 私、鼻は利きますけど我慢強いんです!」
キャルルは兎耳をペタンと倒して臭いを防ぎながら、一生懸命にゴミを拾い始めた。健気すぎる。
《ピロリン♪ 仲間との協力作業:善行5pt獲得》
「あら、楽しそうですわね。私も手伝いますわ!」
汚れるのを嫌がっていたルナが、杖を構えた。
「水の精霊よ、汚れを浄化なさい! 『アクア・ストリーム』!」
「待てルナァァァァッ!!」
優太が叫ぶより早く、ルナの杖から高圧洗浄機も裸足で逃げ出すほどの激流が放たれた。
ドォォォォォン!!
詰まっていたゴミごと、水路の壁が吹き飛ぶ。
「きゃっ、勢い余りましたわ」
「余りすぎだ! 破壊活動は減点対象なんだよ!!」
《ブブーッ! 公共物損壊:-50pt》
「あああああ! 俺のポイントがぁぁぁ!」
優太は涙目でルナの杖を取り上げた。
「ルナは魔法禁止! そこの乾いたゴミを拾って袋に入れる係だ! いいな!」
「むぅ、地味ですわ」
◇
数時間後。
夕日が街を赤く染める頃、ドブ川は見違えるように綺麗になっていた。
水がサラサラと流れ、悪臭も消えている。
「ふぅ……終わった……」
優太は泥だらけの顔を拭った。
通りがかったスラムの老婆が、驚いた顔で声をかけてきた。
「おやまぁ……。何十年も詰まってたドブが流れてるよ。あんたたちがやってくれたのかい?」
「ええ、まあ。ちょっとした運動です」
「ありがとねぇ。おかげで空気が美味いよ」
老婆は深々と頭を下げて去っていった。
その瞬間。
《ファンファーレ♪ 地域住民からの深い感謝:善行300pt獲得》
《現在の所持ポイント:380pt》
「やった……! 借金返済して、プラスになったぞ!」
優太はガッツポーズをした。
その横で、イグニスとキャルル、ルナが腹の虫を大合唱させる。
「優太……限界だ……」
「目が回ります……」
優太は頷き、路地裏の影に隠れて【地球ショッピング】を開いた。
380ポイント。高級品は買えないが、今の彼らを満たす最強のコスパ商品がある。
「購入。『カップヌードル(カレー味)』×4個! あとお湯入りポット!」
空間が裂け、湯気を立てるカップ麺が四つ現れた。
スパイシーなカレーの香りが、爆発的に広がる。
「な、なんだこの匂いはぁぁぁッ!?」
イグニスの目が血走る。
優太は3分待たずに蓋を開けた。
「食っていいぞ! 地球のソウルフードだ!」
四人は薄暗い路地裏で、ズルズルと麺を啜った。
「う、うめぇぇぇ! なんだこのドロドロした汁! 肉が入ってるぞ!」
「辛い……でも美味しいです! 身体がポカポカします!」
「この縮れた麺……絶妙な歯ごたえですわ! 王宮料理より美味です!」
イグニスは汁まで飲み干し、キャルルは涙を流して喜び、ルナは口の周りを黄色くしながら夢中で食べている。
優太も久しぶりの現代の味に、思わず目頭が熱くなった。
「(ドブ掃除して食うカップ麺が、こんなに美味いなんてな……)」
英雄への第一歩は、カレー味のスープと共に胃袋に収まったのだった。
路地裏の湿った石畳に、四人の男女が座り込んでいた。
優太は虚空に表示された【地球ショッピング】の画面を見つめ、絶望的な声を漏らした。
「……嘘だろ。ポイントが『マイナス500』になってる」
昨夜の1500ポイントはどこへ消えたのか。
履歴を見ると『詐欺行為への加担(連帯責任):-2000pt』という非情な文字が刻まれている。ルナの偽金騒動のペナルティだ。
システムは神よりも残酷だった。
「腹減ったぞぉぉぉ……」
「優太様、喉が渇きましたわ。あのアマゾンの清水を出してくださいな」
「うぅ、ごめんなさい……私の奢りのはずだったのに……」
イグニスが地面を転がり、ルナが無邪気にねだり、キャルルが自己嫌悪で膝を抱えている。
優太はガシガシと頭を掻きむしった。
「くそっ、凹んでても腹は膨れねぇ! やるぞ! ポイントを稼ぐんだ!」
優太は立ち上がり、鼻をひくつかせた。
路地裏の奥から、腐敗臭が漂ってくる。
「……トリアージ開始。ターゲットは『ドブ』だ」
◇
そこは、街のスラム街に近い用水路だった。
生活排水とゴミが溜まり、ヘドロが詰まって完全に流れが止まっている。強烈な悪臭に、通りがかる人々も鼻をつまんで走り去る場所だ。
「うげぇ……ここを掃除するのか? 俺様は竜人だぞ? 将来の最強だぞ?」
イグニスが露骨に嫌な顔をする。
優太はイグニスの肩を掴み、ドスの利いた声で言った。
「イグニス。お前、昨日のチョコ食いたいか?」
「食いたい!!」
「なら掘れ。ヘドロを掻き出せ。働かざる者食うべからずだ」
「ぐぬぬ……チョコのためならプライドも捨てるぜ!」
イグニスが巨大な岩のような瓦礫を軽々と持ち上げる。
優太は袖をまくり、ヘドロの中に手を突っ込んだ。
「うっ……くせぇ……!」
ヌルリとした感触に吐き気を催すが、耐える。
詰まっていた木片を取り除き、泥を掻き出す。
《ピロリン♪ 溝掃除:善行10pt獲得》
「よし! 入った!」
脳内に響く通知音。これが今の優太にとっての生命線だ。
それを見ていたキャルルも、スカートの裾を縛り、ドブに入ってきた。
「私もやります! 優太さんだけに汚れ仕事はさせられません!」
「キャルル、足の傷が……」
「これくらい平気です! 私、鼻は利きますけど我慢強いんです!」
キャルルは兎耳をペタンと倒して臭いを防ぎながら、一生懸命にゴミを拾い始めた。健気すぎる。
《ピロリン♪ 仲間との協力作業:善行5pt獲得》
「あら、楽しそうですわね。私も手伝いますわ!」
汚れるのを嫌がっていたルナが、杖を構えた。
「水の精霊よ、汚れを浄化なさい! 『アクア・ストリーム』!」
「待てルナァァァァッ!!」
優太が叫ぶより早く、ルナの杖から高圧洗浄機も裸足で逃げ出すほどの激流が放たれた。
ドォォォォォン!!
詰まっていたゴミごと、水路の壁が吹き飛ぶ。
「きゃっ、勢い余りましたわ」
「余りすぎだ! 破壊活動は減点対象なんだよ!!」
《ブブーッ! 公共物損壊:-50pt》
「あああああ! 俺のポイントがぁぁぁ!」
優太は涙目でルナの杖を取り上げた。
「ルナは魔法禁止! そこの乾いたゴミを拾って袋に入れる係だ! いいな!」
「むぅ、地味ですわ」
◇
数時間後。
夕日が街を赤く染める頃、ドブ川は見違えるように綺麗になっていた。
水がサラサラと流れ、悪臭も消えている。
「ふぅ……終わった……」
優太は泥だらけの顔を拭った。
通りがかったスラムの老婆が、驚いた顔で声をかけてきた。
「おやまぁ……。何十年も詰まってたドブが流れてるよ。あんたたちがやってくれたのかい?」
「ええ、まあ。ちょっとした運動です」
「ありがとねぇ。おかげで空気が美味いよ」
老婆は深々と頭を下げて去っていった。
その瞬間。
《ファンファーレ♪ 地域住民からの深い感謝:善行300pt獲得》
《現在の所持ポイント:380pt》
「やった……! 借金返済して、プラスになったぞ!」
優太はガッツポーズをした。
その横で、イグニスとキャルル、ルナが腹の虫を大合唱させる。
「優太……限界だ……」
「目が回ります……」
優太は頷き、路地裏の影に隠れて【地球ショッピング】を開いた。
380ポイント。高級品は買えないが、今の彼らを満たす最強のコスパ商品がある。
「購入。『カップヌードル(カレー味)』×4個! あとお湯入りポット!」
空間が裂け、湯気を立てるカップ麺が四つ現れた。
スパイシーなカレーの香りが、爆発的に広がる。
「な、なんだこの匂いはぁぁぁッ!?」
イグニスの目が血走る。
優太は3分待たずに蓋を開けた。
「食っていいぞ! 地球のソウルフードだ!」
四人は薄暗い路地裏で、ズルズルと麺を啜った。
「う、うめぇぇぇ! なんだこのドロドロした汁! 肉が入ってるぞ!」
「辛い……でも美味しいです! 身体がポカポカします!」
「この縮れた麺……絶妙な歯ごたえですわ! 王宮料理より美味です!」
イグニスは汁まで飲み干し、キャルルは涙を流して喜び、ルナは口の周りを黄色くしながら夢中で食べている。
優太も久しぶりの現代の味に、思わず目頭が熱くなった。
「(ドブ掃除して食うカップ麺が、こんなに美味いなんてな……)」
英雄への第一歩は、カレー味のスープと共に胃袋に収まったのだった。
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