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EP 9
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ゴルド商会の注目~異界の物資~
ギルドマスターの娘を救い、英雄として崇められながらギルドを出た優太たち。
懐(ポイント)は潤った。所持ポイントは『1500pt』。日本円にして十数万円分の購買力だ。
夕暮れの街を歩きながら、早速、欲望に忠実な仲間たちが騒ぎ出した。
「優太よぉ、俺様は肉が食いたいな。ポイント入っただろ? あのカップ麺に入ってた謎肉じゃなくて、もっとこう、分厚いステーキ肉だ!」
「駄目です! スイーツ♡ スイーツが良いな! あの黒い宝石(チョコ)も捨てがたいですが、もっとフワフワで甘いものを所望しますわ!」
イグニスとルナが左右から詰め寄ってくる。
優太は眉間を揉みほぐしながら、首を横に振った。
「そんなに出せるか。1500ptなんて、油断したら一瞬で消える額だぞ。節約節約」
「ケチぃー!」
「むぅ、優太様の分からず屋」
ブーイングが飛ぶ中、キャルルがポンと手を叩いた。
「あ、優太さんの能力、『善行』を積めばポイントが貰えるんですよね? じゃあ、私が『肩が凝ったなぁ』と言って、優太さんが私の肩を揉めば良いのでは? 人助けになります!」
キャルルは名案だと言わんばかりに兎耳をピコピコさせた。
しかし、優太は冷たく却下する。
「マッチポンプは不可だ。キャルル、それに仲間うちで『肩叩き券』みたいなノリでポイント稼ぐのは勘弁してくれ。システムに『詐欺』判定されて減点されるのがオチだ」
「むぅ……。いいアイデアだと思ったのにぃ」
キャルルが唇を尖らせる。
すると、イグニスが優太の背中をバシンと叩いた(優太はむせた)。
「優太よぉ、せめて今晩の飯くらい豪勢にしようぜ? なんだかんだで、俺たちのパーティー初勝利だぜ? ゴブリン退治は赤字だったが、ガキの命は救ったんだ。祝い酒くらいあっても罰は当たらねぇだろ」
「そうですわね。締める所は締めて、騒ぐ時は騒ぐ。メリハリこそが美学ですわ」
ルナもうんうんと頷く。
優太は二人の言葉に、少しだけ表情を緩めた。
確かに、怒涛の数日間だった。転移して、戦って、逮捕されかけて、ドブ掃除して……。ここらで息抜きも必要かもしれない。
「……はぁ。仕方ないな。買い出しに行くか」
「やったぁ!」
「優太、愛してるぜ!」
「さあ、善は急げですわ!」
三人が歓声を上げ、優太の手を引いて歩き出した。
◇
その夜。
優太たちは街外れのキャンプ可能な河原に陣取っていた。
優太が【地球ショッピング】で購入したのは、使い捨てのバーベキューコンロと炭、そして――
「うおおおおおおッ! なんだこの霜降りはぁぁぁ!」
イグニスが絶叫する。
網の上でジュウジュウと音を立てているのは、奮発して購入した『国産和牛カルビ』と『厚切り牛タン』だ。脂が炭に落ち、香ばしい煙が立ち上る。
「はい、ルナにはこれな」
「まぁ! なんて美しい……!」
ルナの前には『有名ホテルのアソートケーキセット(冷凍解凍済み)』が並べられた。イチゴのショートケーキに、モンブラン、チーズケーキ。宝石のような輝きに、エルフの姫君はうっとりと見惚れている。
「キャルルには、これだ」
「わぁっ! スティック人参に、特製ディップソースですね!」
「あと、とっておきの飲み物もあるぞ」
プシュッ!
優太が開けたのは、キンキンに冷えた『缶ビール(プレミアム)』だった。
「「「乾杯ーーッ!!」」」
異世界の星空の下、地球のグルメによる宴が始まった。
◇
一方その頃。
バルダーの街にある巨大な石造りの建物――大陸屈指の大企業『ゴルド商会』の支店にて。
薄暗い執務室で、一人の男が「ある物」を鑑定用ルーペで覗き込んでいた。
「……支店長。これは、ギルドマスターの家から回収したゴミの一部です」
部下が差し出したのは、優太が少女の治療に使った後に捨てた『プラスチック製の注射筒(シリンジ)』と、薬の包装シート(PTPシート)、そしてイグニスが食べた『バケツプリンの空容器』だった。
支店長と呼ばれた恰幅の良い男は、脂汗を流しながら震える声を出した。
「信じられん……。ミスリルよりも軽く、ガラスよりも透明で、割れない素材……。それにこの精巧な加工技術……。ドワーフの地下帝国でも、こんな物は作れんぞ」
プラスチック。
石油化学工業が存在しないこの世界において、それは未知のオーパーツだった。
「ギルドからの情報では、旅の医者を名乗る若者が持っていたそうです」
「医者だと? 馬鹿な。これは古代文明の遺産か、あるいは伝説の『錬金術』の極致だ」
支店長の目が、商人の欲にギラリと光った。
もしこの素材の製造法、あるいは入手ルートを独占できれば、ゴルド商会は国すら買える富を得るだろう。
「その男を探せ。……それと、最近『ガルーダ獣人国』から、逃亡した『月兎族』の捜索依頼も来ているな?」
「ハッ。銀髪の兎耳の少女とのことです」
「その医者の連れに、特徴が一致する女がいるという報告もある。……フフッ、カモがネギを背負って歩いているようなものだ」
支店長はプラスチックの容器を指で弾き、ニヤリと笑った。
「確保しろ。多少手荒でも構わん。その『未知の技術』と『希少種』、我らゴルド商会が頂く」
楽しい宴の裏で、巨大な悪意が優太たちに迫りつつあった。
だが、焼肉のタレの美味さに感動して泣いているイグニスたちは、まだそのことに気づいていない。
ギルドマスターの娘を救い、英雄として崇められながらギルドを出た優太たち。
懐(ポイント)は潤った。所持ポイントは『1500pt』。日本円にして十数万円分の購買力だ。
夕暮れの街を歩きながら、早速、欲望に忠実な仲間たちが騒ぎ出した。
「優太よぉ、俺様は肉が食いたいな。ポイント入っただろ? あのカップ麺に入ってた謎肉じゃなくて、もっとこう、分厚いステーキ肉だ!」
「駄目です! スイーツ♡ スイーツが良いな! あの黒い宝石(チョコ)も捨てがたいですが、もっとフワフワで甘いものを所望しますわ!」
イグニスとルナが左右から詰め寄ってくる。
優太は眉間を揉みほぐしながら、首を横に振った。
「そんなに出せるか。1500ptなんて、油断したら一瞬で消える額だぞ。節約節約」
「ケチぃー!」
「むぅ、優太様の分からず屋」
ブーイングが飛ぶ中、キャルルがポンと手を叩いた。
「あ、優太さんの能力、『善行』を積めばポイントが貰えるんですよね? じゃあ、私が『肩が凝ったなぁ』と言って、優太さんが私の肩を揉めば良いのでは? 人助けになります!」
キャルルは名案だと言わんばかりに兎耳をピコピコさせた。
しかし、優太は冷たく却下する。
「マッチポンプは不可だ。キャルル、それに仲間うちで『肩叩き券』みたいなノリでポイント稼ぐのは勘弁してくれ。システムに『詐欺』判定されて減点されるのがオチだ」
「むぅ……。いいアイデアだと思ったのにぃ」
キャルルが唇を尖らせる。
すると、イグニスが優太の背中をバシンと叩いた(優太はむせた)。
「優太よぉ、せめて今晩の飯くらい豪勢にしようぜ? なんだかんだで、俺たちのパーティー初勝利だぜ? ゴブリン退治は赤字だったが、ガキの命は救ったんだ。祝い酒くらいあっても罰は当たらねぇだろ」
「そうですわね。締める所は締めて、騒ぐ時は騒ぐ。メリハリこそが美学ですわ」
ルナもうんうんと頷く。
優太は二人の言葉に、少しだけ表情を緩めた。
確かに、怒涛の数日間だった。転移して、戦って、逮捕されかけて、ドブ掃除して……。ここらで息抜きも必要かもしれない。
「……はぁ。仕方ないな。買い出しに行くか」
「やったぁ!」
「優太、愛してるぜ!」
「さあ、善は急げですわ!」
三人が歓声を上げ、優太の手を引いて歩き出した。
◇
その夜。
優太たちは街外れのキャンプ可能な河原に陣取っていた。
優太が【地球ショッピング】で購入したのは、使い捨てのバーベキューコンロと炭、そして――
「うおおおおおおッ! なんだこの霜降りはぁぁぁ!」
イグニスが絶叫する。
網の上でジュウジュウと音を立てているのは、奮発して購入した『国産和牛カルビ』と『厚切り牛タン』だ。脂が炭に落ち、香ばしい煙が立ち上る。
「はい、ルナにはこれな」
「まぁ! なんて美しい……!」
ルナの前には『有名ホテルのアソートケーキセット(冷凍解凍済み)』が並べられた。イチゴのショートケーキに、モンブラン、チーズケーキ。宝石のような輝きに、エルフの姫君はうっとりと見惚れている。
「キャルルには、これだ」
「わぁっ! スティック人参に、特製ディップソースですね!」
「あと、とっておきの飲み物もあるぞ」
プシュッ!
優太が開けたのは、キンキンに冷えた『缶ビール(プレミアム)』だった。
「「「乾杯ーーッ!!」」」
異世界の星空の下、地球のグルメによる宴が始まった。
◇
一方その頃。
バルダーの街にある巨大な石造りの建物――大陸屈指の大企業『ゴルド商会』の支店にて。
薄暗い執務室で、一人の男が「ある物」を鑑定用ルーペで覗き込んでいた。
「……支店長。これは、ギルドマスターの家から回収したゴミの一部です」
部下が差し出したのは、優太が少女の治療に使った後に捨てた『プラスチック製の注射筒(シリンジ)』と、薬の包装シート(PTPシート)、そしてイグニスが食べた『バケツプリンの空容器』だった。
支店長と呼ばれた恰幅の良い男は、脂汗を流しながら震える声を出した。
「信じられん……。ミスリルよりも軽く、ガラスよりも透明で、割れない素材……。それにこの精巧な加工技術……。ドワーフの地下帝国でも、こんな物は作れんぞ」
プラスチック。
石油化学工業が存在しないこの世界において、それは未知のオーパーツだった。
「ギルドからの情報では、旅の医者を名乗る若者が持っていたそうです」
「医者だと? 馬鹿な。これは古代文明の遺産か、あるいは伝説の『錬金術』の極致だ」
支店長の目が、商人の欲にギラリと光った。
もしこの素材の製造法、あるいは入手ルートを独占できれば、ゴルド商会は国すら買える富を得るだろう。
「その男を探せ。……それと、最近『ガルーダ獣人国』から、逃亡した『月兎族』の捜索依頼も来ているな?」
「ハッ。銀髪の兎耳の少女とのことです」
「その医者の連れに、特徴が一致する女がいるという報告もある。……フフッ、カモがネギを背負って歩いているようなものだ」
支店長はプラスチックの容器を指で弾き、ニヤリと笑った。
「確保しろ。多少手荒でも構わん。その『未知の技術』と『希少種』、我らゴルド商会が頂く」
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