真!異世界転生×ユニークスキル 【地球ショッピング】で無双する!?

月神世一

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EP 11

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襲撃者?いいえ、ただの訪問販売です
 小鳥のさえずりが響く、爽やかな早朝。
 昨晩の宴の余韻を残した野営地は、静寂に包まれていた。
 だが、その静けさは偽りだった。
 木々の影から、音もなく忍び寄る黒い影の集団があった。
 大陸屈指の大企業『ゴルド商会』が裏で飼っている暗殺部隊――通称『黒牙(ブラックファング)』だ。
 その数、十名。全員が手練れであり、音もなく対象を始末するプロフェッショナルである。
「……ターゲットはあのテントだ。未知の技術を持つ医者と、逃亡中の月兎族。抵抗するなら殺しても構わん」
 隊長がハンドサインを送る。
 部下たちが短剣を抜き、殺気を完全に消してテントの入り口へと迫る。
 プロの仕事だ。寝込みを襲えば、ドラゴンですら反応できずに死ぬ。
 勝利を確信した隊長が、テントの布に手を掛けた――その時だった。
 ガバッ!
 テントの入り口が勢いよく開いた。
「……んあ?」
 出てきたのは、寝癖だらけの優太だった。
 彼はまだ半分夢の中にいるのか、虚ろな目で目の前の黒装束の集団を見つめた。
(……なんだ? 黒いスーツ? 早朝から?)
 優太の寝ぼけた脳みそが、地球の日本での記憶とリンクする。
 早朝のチャイム。黒っぽい服の人々。強引な訪問。
 答えは一つだ。
「……あー、新聞なら間に合ってますー」
 優太はダルそうに手を振った。
「は?」
 暗殺部隊の隊長が固まる。新聞? 何を言っている?
 優太は相手が帰らないのを見て、眉をひそめた。
「勧誘もしつこいと通報しますよ。……ほら、塩でも食らえ」
 優太はポケットから、昨日【地球ショッピング】で買った『アジシオ(食卓塩)』を取り出し、パッパッと彼らに振りかけた。
「うわっ!? なんだこの白い粉は! 毒か!?」
「ただの塩だよ。厄払いだ。帰ってくれ、二度寝するんだ」
 優太はあくびをして、テントに戻ろうとする。
 隊長は屈辱に震えた。暗殺者である自分たちが、塩を撒かれて「シッシッ」と追い払われたのだ。
「なめるなよ……! 全員、かかれッ!」
 隊長が叫び、部下たちが一斉に斬りかかろうとした。
 ヌッ。
 優太の背後から、巨大な影が立ち上がった。
 イグニスだ。彼は寝ぼけ眼で、鼻をヒクヒクさせている。
「……んご? なんだ、朝飯の出前か?」
「ヒッ……!?」
 目の前に現れた巨体に、暗殺者の一人が悲鳴を上げ、反射的に剣を突き出した。
 だが、イグニスにとってそれは「銀色のカトラリー(食器)」に見えたらしい。
「いただきまーす」
 ガブッ!!
 イグニスは、突き出された鋼鉄の剣を、刀身ごと噛み砕いた。
 バキボキッ、と硬質な音が響く。
「……ん、なんだこの串焼き。硬てぇな。焼きすぎだぞ」
「け、剣を……食った……!?」
 暗殺者たちが戦慄する。
 ミスリルに次ぐ硬度を誇る特殊合金の剣が、煎餅のように咀嚼されたのだ。
 イグニスは「ペッ」と剣の破片を吐き出すと、不機嫌そうに唸った。
「マズい。出前ならもっといい肉を持ってこい」
「ば、化け物……!」
 部隊がパニックに陥りかけたその時、テントの奥から優雅な声が響いた。
「まぁ、朝から騒がしいですわね」
 ルナが目を擦りながら現れた。
 彼女は目の前の黒装束の男たちを見て、眉をひそめて鼻をつまんだ。
「あら、なんて汚い……。泥だらけで、汗臭いですわ。優太様のお知り合い?」
「いや、ただのしつこいセールスマンだ」
「そうですの。お客様だとしても、身だしなみはマナーですわよ。……私が綺麗にして差し上げます」
 ルナが世界樹の杖を振るう。
 彼女の「綺麗にする」とは、すなわち「洗濯」だ。
 ただし、ハイエルフ基準の。
「汚れを落として、更生なさい! 生活魔法――『アクア・ウォッシュ(超高圧洗浄)』ッ!!」
 ズドドドドドドドッ!!
 杖の先から放たれたのは、消防車の放水を遥かに凌駕する、カッターのような水流だった。
 それは「洗う」というより「削る」威力だ。
「ぎゃああああああああッ!?」
「服が! 鎧が弾け飛ぶぅぅぅッ!?」
 暗殺者たちは洗濯機の中の雑巾のように揉みくちゃにされ、水流に乗って森の彼方へと吹き飛ばされていった。
 キラーン、と空の彼方で星が光る。
 後に残ったのは、綺麗に整地された地面と、濡れた草木だけだった。
「ふぅ。綺麗になりましたわね」
「ああ、静かになったな。……まったく、最近のセールスは強引で困るよ」
 優太は満足げに頷き、再び寝袋へと潜り込んだ。
 イグニスも「なんだ、飯じゃねぇのか」と再びいびきをかき始める。
 キャルルだけが、騒ぎで目を覚まし、きょとんとしていた。
「……あれ? 今、誰か来ませんでしたか?」
「気のせいだろ。おやすみ、キャルル」
「はぁ……おやすみなさい」
 ◇
 数時間後。
 ゴルド商会の支店に、ボロ雑巾のようになった暗殺部隊の生き残りが転がり込んだ。
「支店長……! あいつらはダメです……! 化け物です……!」
「な、何があった!?」
「塩で結界を張り、剣を主食にし、水攻めで山を削る悪魔たちでした……! もう二度と行きません!!」
 彼らは即日で辞表を出し、田舎へ帰っていったという。
 優太たちが、その事実を知ることは永遠になかった。
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