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EP 2
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極上のマドレーヌと破滅の令嬢 ~王族が仕掛けた濡れ衣に異議あり!~
朝日の差し込む自室で、私は優雅に紅茶を啜っていた。
昨夜の豚の角煮と、龍魔呂さんが食後のデザートだと出してくれた「林檎のコンポート」のおかげで、疲労は完全に吹き飛んでいた。彼の料理は、ただ美味しいだけでなく、まるで強力なポーションのように心身を癒やしてくれる。
「さすが、裏社会のキング・オブ・角煮ですわね。今日からまた、この健全なる美貌と頭脳で、世界の歪みを是正していきましょう」
私は、お気に入りのマドレーヌを一口齧り、リボンを締め直した。
ルミナス帝国・王都第一法律事務所。
私の事務所は、王都でも一等地に建つ洒落た洋館にある。見た目はカフェか高級サロンだが、中身は世界を裏から動かす策謀と法の戦場だ。
私が出勤すると、受付の若い獣人族の女性(以前私が弁護した元被告人)が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「リベラ様! 大変です、特急のご相談者が! 今まで来た中で一番位の高い方で……」
応接室に入ると、そこには黒いドレスに身を包んだ、憔悴しきった絶世の美女が座っていた。
一目でわかる。彼女は「悪役令嬢」の定型だ。端正な顔立ちと高慢な美しさを持つ、本来なら光の下にいるはずの人間。
彼女の名は、セラフィーナ・ド・ラヴィエ公爵令嬢。
つい先日まで第二王子エドワードの婚約者であり、帝国屈指の名門貴族の令嬢だった。
「初めまして、セラフィーナ様。桜田リベラと申します。さあ、まずは温かい紅茶をどうぞ。甘いものは心を落ち着かせます」
私は自分のために用意していた、秘蔵のマドレーヌとアールグレイを差し出した。
セラフィーナ様は、そのマドレーヌを前にして、ボロボロと大粒の涙をこぼした。
「リベラ弁護士様……私、私は……やっていません! エドワード殿下から『婚約破棄』を突きつけられた上、『軍用ジオ・リザード管理費の横領』と『殿下への毒殺未遂』の罪を着せられました!」
私は静かに頷き、マグカップに注がれた紅茶を一口。
「なるほど。『婚約破棄』と『断罪イベント』の合わせ技ですわね。古典的ですが、王族が仕掛けてくるとなると厄介です」
私はセラフィーナ様の訴えを整理した。
【被告人】 セラフィーナ・ド・ラヴィエ公爵令嬢。
【罪状】 1.軍事予算(ジオ・リザードの飼育費を含む)の横領。2.王太子(第二王子)への毒殺未遂。
【現状】 既に令嬢の父である公爵は逮捕。資産は凍結され、裁判で有罪が確定すれば一族は断罪され、令嬢自身は奴隷落ちが確実。
これは普通の「弁護」の範疇ではない。もはや国家を相手取った戦争だ。
「王族の意向は、この国の法そのもの。ましてや横領と毒殺未遂は、死刑か極刑が確定している罪。……私では、勝ち目がないかもしれません」
私はわざとそう言ってみた。
すると、セラフィーナ様は涙を拭い、毅然とした表情で訴えた。
「それでも、お願いします! 横領は全て、王子の女遊びと裏の武器取引(ドワーフの武具)に使われたものです! 私はただ、それを隠蔽する役割を強制されていただけで……」
私は微笑んだ。私の【真実の天秤】が、確かに『嘘はない』と示している。
そして、何より――
「王族の横領と、裏の武器取引……なるほど。これは面白くなってきましたわね」
――罪のない人間が、権力者の都合で踏みにじられる。これこそ、私が最も嫌う不条理だ。
「わかりました、セラフィーナ様。この裁判、私が引き受けましょう」
私の瞳に、法廷で勝訴を掴んだ時に浮かぶ獰猛な光が宿る。
「ですが、一つ約束していただきたいことがあります。私は、合法であれ違法であれ、勝利のためには『グレーな手段』を選びます。貴族の体面や名誉は全て捨てて、私の指示に従えますか?」
「はい! 私の命も全て、リベラ弁護士様にお任せします!」
契約成立。
私は立ち上がり、窓の外に広がる王都の街並みを見下ろした。
王族が相手だろうと、腐敗した貴族が相手だろうと関係ない。
「第二王子エドワード殿下。あなた方は、法律を破っただけでなく、私の貴重なアフタヌーンティーの時間を無駄にした。その代償は、高くつきますわよ」
私はすぐさま事務員に指示を出す。
「すぐに検察への通知書を作成。そして、ドワーフの『地下帝国ドンガン』への情報ルートを確保。ついでに、ルミナス帝国の武器商人が抱える『負債者リスト』をすべて抽出してください。すぐにでも就職を斡旋したい方が、たくさん出てくるでしょうから」
法廷戦争の準備は整った。
あとは、今夜龍魔呂さんの店に行って、英気を養うだけだ。
朝日の差し込む自室で、私は優雅に紅茶を啜っていた。
昨夜の豚の角煮と、龍魔呂さんが食後のデザートだと出してくれた「林檎のコンポート」のおかげで、疲労は完全に吹き飛んでいた。彼の料理は、ただ美味しいだけでなく、まるで強力なポーションのように心身を癒やしてくれる。
「さすが、裏社会のキング・オブ・角煮ですわね。今日からまた、この健全なる美貌と頭脳で、世界の歪みを是正していきましょう」
私は、お気に入りのマドレーヌを一口齧り、リボンを締め直した。
ルミナス帝国・王都第一法律事務所。
私の事務所は、王都でも一等地に建つ洒落た洋館にある。見た目はカフェか高級サロンだが、中身は世界を裏から動かす策謀と法の戦場だ。
私が出勤すると、受付の若い獣人族の女性(以前私が弁護した元被告人)が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「リベラ様! 大変です、特急のご相談者が! 今まで来た中で一番位の高い方で……」
応接室に入ると、そこには黒いドレスに身を包んだ、憔悴しきった絶世の美女が座っていた。
一目でわかる。彼女は「悪役令嬢」の定型だ。端正な顔立ちと高慢な美しさを持つ、本来なら光の下にいるはずの人間。
彼女の名は、セラフィーナ・ド・ラヴィエ公爵令嬢。
つい先日まで第二王子エドワードの婚約者であり、帝国屈指の名門貴族の令嬢だった。
「初めまして、セラフィーナ様。桜田リベラと申します。さあ、まずは温かい紅茶をどうぞ。甘いものは心を落ち着かせます」
私は自分のために用意していた、秘蔵のマドレーヌとアールグレイを差し出した。
セラフィーナ様は、そのマドレーヌを前にして、ボロボロと大粒の涙をこぼした。
「リベラ弁護士様……私、私は……やっていません! エドワード殿下から『婚約破棄』を突きつけられた上、『軍用ジオ・リザード管理費の横領』と『殿下への毒殺未遂』の罪を着せられました!」
私は静かに頷き、マグカップに注がれた紅茶を一口。
「なるほど。『婚約破棄』と『断罪イベント』の合わせ技ですわね。古典的ですが、王族が仕掛けてくるとなると厄介です」
私はセラフィーナ様の訴えを整理した。
【被告人】 セラフィーナ・ド・ラヴィエ公爵令嬢。
【罪状】 1.軍事予算(ジオ・リザードの飼育費を含む)の横領。2.王太子(第二王子)への毒殺未遂。
【現状】 既に令嬢の父である公爵は逮捕。資産は凍結され、裁判で有罪が確定すれば一族は断罪され、令嬢自身は奴隷落ちが確実。
これは普通の「弁護」の範疇ではない。もはや国家を相手取った戦争だ。
「王族の意向は、この国の法そのもの。ましてや横領と毒殺未遂は、死刑か極刑が確定している罪。……私では、勝ち目がないかもしれません」
私はわざとそう言ってみた。
すると、セラフィーナ様は涙を拭い、毅然とした表情で訴えた。
「それでも、お願いします! 横領は全て、王子の女遊びと裏の武器取引(ドワーフの武具)に使われたものです! 私はただ、それを隠蔽する役割を強制されていただけで……」
私は微笑んだ。私の【真実の天秤】が、確かに『嘘はない』と示している。
そして、何より――
「王族の横領と、裏の武器取引……なるほど。これは面白くなってきましたわね」
――罪のない人間が、権力者の都合で踏みにじられる。これこそ、私が最も嫌う不条理だ。
「わかりました、セラフィーナ様。この裁判、私が引き受けましょう」
私の瞳に、法廷で勝訴を掴んだ時に浮かぶ獰猛な光が宿る。
「ですが、一つ約束していただきたいことがあります。私は、合法であれ違法であれ、勝利のためには『グレーな手段』を選びます。貴族の体面や名誉は全て捨てて、私の指示に従えますか?」
「はい! 私の命も全て、リベラ弁護士様にお任せします!」
契約成立。
私は立ち上がり、窓の外に広がる王都の街並みを見下ろした。
王族が相手だろうと、腐敗した貴族が相手だろうと関係ない。
「第二王子エドワード殿下。あなた方は、法律を破っただけでなく、私の貴重なアフタヌーンティーの時間を無駄にした。その代償は、高くつきますわよ」
私はすぐさま事務員に指示を出す。
「すぐに検察への通知書を作成。そして、ドワーフの『地下帝国ドンガン』への情報ルートを確保。ついでに、ルミナス帝国の武器商人が抱える『負債者リスト』をすべて抽出してください。すぐにでも就職を斡旋したい方が、たくさん出てくるでしょうから」
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