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EP 24
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史上最大の「親権裁判」開廷! ~鬼神パパの育児日記は、聖典よりも重い~
指定された決戦の日。
私と龍魔呂さん(ヴォルを抱っこ紐で装備)は、大陸の秘境にある『竜人族の隠れ里』へと足を踏み入れた。
巨大な鍾乳洞の奥に広がる、荘厳な石造りの神殿。
ここが『竜の法廷』だ。
「被告人、前へ」
裁判長の席に座っていたのは、見上げるごとき巨躯の老人だった。
人間の姿をしているが、背中からは巨大な翼が生え、その瞳は数千年の時を見通すかのように深い。
**古竜(エンシェント・ドラゴン)**の長老、グランディスだ。
「……人間風情が、よくぞ逃げずに来た」
原告席には、先日公園で龍魔呂さんにフライパンでしばかれた長老たちが、包帯姿で憎々しげに並んでいる。
「裁判長! この人間どもは、我らが神、始祖竜ヴォルテクス様を誘拐し、劣悪な環境で飼育しております!」
「さらに、暴力によって我ら賢者を傷つけました! 野蛮極まりない!」
長老たちの主張に、傍聴席の竜人族たちが「そうだ!」「神を返せ!」と野次を飛ばす。
完全アウェーだ。
だが、龍魔呂さんはヴォルの背中をトントンしながら、涼しい顔をしている。
「……五月蝿い。ヴォルが起きる」
その一言と漏れ出る覇気で、野次が一瞬で止んだ。最強か。
グランディス裁判長が静かに口を開く。
「争点は一つ。『どちらが始祖竜の養育者として相応しいか』である。原告、主張を」
リーダー格の長老が進み出る。
「我々竜人族は、始祖竜様と同じ長命種であり、魔力の扱いを熟知しております。対して人間は短命で愚か! 栄養管理もできず、ただのペットとして扱っているに過ぎません! 高貴な始祖竜様に、人間の粗末な食事など毒も同然!」
なるほど。「種族的な適性」と「栄養管理」を突いてきたか。
私は扇子をパチリと鳴らし、一歩前に出た。
「異議あり!」
私の声が神殿に響く。
「原告は『粗末な食事』と言いましたが……貴方たちは、ヴォルの昨日の夕食の献立をご存知ですか?」
「は? 知るわけなかろう。どうせ泥のようなスープだろうが」
私はニヤリと笑い、龍魔呂さんの腰袋から**「一冊の大学ノート」**を取り出した。
使い込まれ、表紙が少し油で汚れたそのノートを、高々と掲げる。
「これは、ヴォルと出会ってから今日まで、龍魔呂さんが毎日欠かさず記録している**『育児日記』**です。証拠品として提出します!」
ノートが裁判長の手元へ飛ぶ。
グランディス裁判長は、怪訝な顔でページを開いた。
「……む?」
裁判長の目が、ページをめくるごとに大きく見開かれていく。
長老たちが「何が書いてあるというのだ!」と覗き込む。
そこには、狂気じみた緻密さで、日々の記録が綴られていた。
『X月X日。朝食:ユニコーン乳のポタージュ(温度38.5度)。完食。
備考:昨夜より0.5度温度を上げたところ、食いつきが20%向上した。』
『X月Y日。排泄物チェック。
色:健康的な黄金色。硬さ:昨日のカボチャの影響でやや硬め。
対策:明日の離乳食には、整腸作用のあるマンドラゴラの根(毒抜き済み)を繊維ごと煮込んで追加する。』
『X月Z日。初めての「パパ」呼び。
心拍数上昇。死ぬかと思った。記念に今日は最高級オーク肉のハンバーグにする(俺とリベラ用)。ヴォルにはその煮汁を使った特製リゾットを。』
会場がざわめき始める。
「な、なんだこのデータ量は……!?」
「食材の産地、カロリー計算、魔力含有量の測定まで……全て完璧に計算されているだと!?」
「それに、この排便記録……! ただの親ではない、専門医レベルの観察眼だ!」
私は畳み掛ける。
「ご覧の通りです! 龍魔呂さんは、ヴォルの体調をミリ単位で把握し、その日の天気や気分に合わせて、世界最高峰の食材と調理技術で食事を提供しています!」
私は長老たちを指差した。
「貴方たちに、ここまで出来ますか? 『神だから』と崇めるだけで、ヴォルが『今、何を食べたいか』『どこが痒いか』を理解しようとしたことがありますか!?」
長老たちは言葉に詰まった。
彼らはヴォルを「象徴」としてしか見ていない。
対して、龍魔呂さんの日記には、ヴォルへの「愛」と「責任」がインクと共に滲んでいた。
龍魔呂さんが、ボソリと口を開く。
「……料理人にとって、客の体調を見るのは基本だ。ましてや、自分の息子なら尚更だ」
彼は眠るヴォルの頭を撫でながら、淡々と言った。
「俺は学がないから、難しい魔法は分からん。だが、こいつが今日、何回笑って、何回うんちをして、何グラム成長したか……それだけは誰よりも知っている」
その言葉は、どんな高尚な魔法理論よりも重く、神殿に響き渡った。
傍聴席の女性竜人たちが「尊い……」「なんて素敵なパパなの……」と頬を染めている。
グランディス裁判長は、深く頷き、ノートを閉じた。
「……見事だ。これほどの記録、長命種である我らでも容易ではない。被告人の養育環境に、一点の曇りなしと認める」
「ば、馬鹿な! 騙されてはいけません裁判長!」
追い詰められた長老たちが喚く。
「食事だけが育児ではありません! 教育はどうするのです!? 人間ごときに、偉大なる竜の力を制御できるはずがない! やはり同族である我ら竜人族が育てるべきだ!」
まだ食い下がるか。
だが、その展開も想定内だ。
私は余裕の笑みで、法廷の入り口を振り返った。
「教育、そして同族としての導き……ですか。それならば、『最高の家庭教師』をお呼びしてありますわ」
ドォォォォン!!
神殿の扉が吹き飛び、黄金の光が差し込んだ。
「呼んだか、リベラ。……待ちくたびれて、スープが冷めるところだったぞ」
現れたのは、タオル鉢巻にエプロン姿、手にはオカモチを持った竜王デュークだった。
伝説の古竜の王が、ラーメン屋の出前スタイルで法廷に乱入!
「り、竜王様ァァッーー!?」
長老たちが目玉を飛び出させて絶叫する。
さあ、反撃の後半戦(ラーメンタイム)ですわよ!
指定された決戦の日。
私と龍魔呂さん(ヴォルを抱っこ紐で装備)は、大陸の秘境にある『竜人族の隠れ里』へと足を踏み入れた。
巨大な鍾乳洞の奥に広がる、荘厳な石造りの神殿。
ここが『竜の法廷』だ。
「被告人、前へ」
裁判長の席に座っていたのは、見上げるごとき巨躯の老人だった。
人間の姿をしているが、背中からは巨大な翼が生え、その瞳は数千年の時を見通すかのように深い。
**古竜(エンシェント・ドラゴン)**の長老、グランディスだ。
「……人間風情が、よくぞ逃げずに来た」
原告席には、先日公園で龍魔呂さんにフライパンでしばかれた長老たちが、包帯姿で憎々しげに並んでいる。
「裁判長! この人間どもは、我らが神、始祖竜ヴォルテクス様を誘拐し、劣悪な環境で飼育しております!」
「さらに、暴力によって我ら賢者を傷つけました! 野蛮極まりない!」
長老たちの主張に、傍聴席の竜人族たちが「そうだ!」「神を返せ!」と野次を飛ばす。
完全アウェーだ。
だが、龍魔呂さんはヴォルの背中をトントンしながら、涼しい顔をしている。
「……五月蝿い。ヴォルが起きる」
その一言と漏れ出る覇気で、野次が一瞬で止んだ。最強か。
グランディス裁判長が静かに口を開く。
「争点は一つ。『どちらが始祖竜の養育者として相応しいか』である。原告、主張を」
リーダー格の長老が進み出る。
「我々竜人族は、始祖竜様と同じ長命種であり、魔力の扱いを熟知しております。対して人間は短命で愚か! 栄養管理もできず、ただのペットとして扱っているに過ぎません! 高貴な始祖竜様に、人間の粗末な食事など毒も同然!」
なるほど。「種族的な適性」と「栄養管理」を突いてきたか。
私は扇子をパチリと鳴らし、一歩前に出た。
「異議あり!」
私の声が神殿に響く。
「原告は『粗末な食事』と言いましたが……貴方たちは、ヴォルの昨日の夕食の献立をご存知ですか?」
「は? 知るわけなかろう。どうせ泥のようなスープだろうが」
私はニヤリと笑い、龍魔呂さんの腰袋から**「一冊の大学ノート」**を取り出した。
使い込まれ、表紙が少し油で汚れたそのノートを、高々と掲げる。
「これは、ヴォルと出会ってから今日まで、龍魔呂さんが毎日欠かさず記録している**『育児日記』**です。証拠品として提出します!」
ノートが裁判長の手元へ飛ぶ。
グランディス裁判長は、怪訝な顔でページを開いた。
「……む?」
裁判長の目が、ページをめくるごとに大きく見開かれていく。
長老たちが「何が書いてあるというのだ!」と覗き込む。
そこには、狂気じみた緻密さで、日々の記録が綴られていた。
『X月X日。朝食:ユニコーン乳のポタージュ(温度38.5度)。完食。
備考:昨夜より0.5度温度を上げたところ、食いつきが20%向上した。』
『X月Y日。排泄物チェック。
色:健康的な黄金色。硬さ:昨日のカボチャの影響でやや硬め。
対策:明日の離乳食には、整腸作用のあるマンドラゴラの根(毒抜き済み)を繊維ごと煮込んで追加する。』
『X月Z日。初めての「パパ」呼び。
心拍数上昇。死ぬかと思った。記念に今日は最高級オーク肉のハンバーグにする(俺とリベラ用)。ヴォルにはその煮汁を使った特製リゾットを。』
会場がざわめき始める。
「な、なんだこのデータ量は……!?」
「食材の産地、カロリー計算、魔力含有量の測定まで……全て完璧に計算されているだと!?」
「それに、この排便記録……! ただの親ではない、専門医レベルの観察眼だ!」
私は畳み掛ける。
「ご覧の通りです! 龍魔呂さんは、ヴォルの体調をミリ単位で把握し、その日の天気や気分に合わせて、世界最高峰の食材と調理技術で食事を提供しています!」
私は長老たちを指差した。
「貴方たちに、ここまで出来ますか? 『神だから』と崇めるだけで、ヴォルが『今、何を食べたいか』『どこが痒いか』を理解しようとしたことがありますか!?」
長老たちは言葉に詰まった。
彼らはヴォルを「象徴」としてしか見ていない。
対して、龍魔呂さんの日記には、ヴォルへの「愛」と「責任」がインクと共に滲んでいた。
龍魔呂さんが、ボソリと口を開く。
「……料理人にとって、客の体調を見るのは基本だ。ましてや、自分の息子なら尚更だ」
彼は眠るヴォルの頭を撫でながら、淡々と言った。
「俺は学がないから、難しい魔法は分からん。だが、こいつが今日、何回笑って、何回うんちをして、何グラム成長したか……それだけは誰よりも知っている」
その言葉は、どんな高尚な魔法理論よりも重く、神殿に響き渡った。
傍聴席の女性竜人たちが「尊い……」「なんて素敵なパパなの……」と頬を染めている。
グランディス裁判長は、深く頷き、ノートを閉じた。
「……見事だ。これほどの記録、長命種である我らでも容易ではない。被告人の養育環境に、一点の曇りなしと認める」
「ば、馬鹿な! 騙されてはいけません裁判長!」
追い詰められた長老たちが喚く。
「食事だけが育児ではありません! 教育はどうするのです!? 人間ごときに、偉大なる竜の力を制御できるはずがない! やはり同族である我ら竜人族が育てるべきだ!」
まだ食い下がるか。
だが、その展開も想定内だ。
私は余裕の笑みで、法廷の入り口を振り返った。
「教育、そして同族としての導き……ですか。それならば、『最高の家庭教師』をお呼びしてありますわ」
ドォォォォン!!
神殿の扉が吹き飛び、黄金の光が差し込んだ。
「呼んだか、リベラ。……待ちくたびれて、スープが冷めるところだったぞ」
現れたのは、タオル鉢巻にエプロン姿、手にはオカモチを持った竜王デュークだった。
伝説の古竜の王が、ラーメン屋の出前スタイルで法廷に乱入!
「り、竜王様ァァッーー!?」
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