HP1の建築士、最強の『絶対安全圏』を創る~小石で即死する俺の為、魔王も勇者も過保護に領地防衛します~

月神世一

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EP 7

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愚かなる侵略者 ~この領地を狙う盗賊団~
​ 竜王デュークが去った後、俺の領地『絶対安全圏』は、さらに活気づいていた。
 理由は単純だ。竜王が置いていった『竜の鱗』である。
 ニャングルがこれを担保にゴルド商会から莫大な資金を引っ張ってきたおかげで、俺たちは更なる資材(主にタロー国製の100均グッズと建材)を大量購入できたのだ。
​「うひょひょ! オーナー様、笑いが止まりまへんな! ルナはんのメロンも飛ぶように売れるし、これは近いうちに『リゾートホテル』の建設に着手できまっせ!」
「ああ、頼もしいよニャングル。……ところで、暖房の温度を0.5度上げてくれないか? ちょっと肌寒くてHPが減りそうだ」
​ 俺は最高級の羽毛布団(衝撃吸収率100%)に包まりながら言った。
 現在のHPは【1.1/1.1】。
 メロンのおかげで最大値は増えたが、相変わらず防御力はゼロだ。くしゃみ一つで肋骨がいく可能性がある。
​ そんな平和ボケしていた昼下がりのことだった。
​ ウゥゥゥゥゥゥゥ――ッ!!
​ 不快なサイレン音が領内に鳴り響いた。
 Dr.ギアが設置した『長距離警戒レーダー』だ。
​「な、なんだ!? 竜王のおっさんがまた来たのか!?」
「ちゃいます! モニターを見ておくんなはれ! あれは……盗賊団でっせ!」
​ ニャングルが指差したモニターには、土煙を上げて迫ってくる集団が映っていた。
 改造された魔導バイクや、凶暴なハイエナのような魔獣に跨った、見るからに柄の悪い連中だ。その数、およそ50。
​「ヒャッハー! ここが噂の『楽園』かァ!」
「金目の匂いがプンプンしやがるぜぇ!」
「女も食い物も全部奪っちまえ!」
​ ステレオタイプすぎる盗賊たちだ。
 彼らは『荒野の毒サソリ団』。近隣の村を襲っては略奪を繰り返す、懸賞金付きの極悪集団である。
​「ひぃぃっ! 野蛮! 野蛮な声が聞こえる!」
​ 俺は頭を抱えた。
 高性能マイクが拾った彼らの怒号だけで、精神的ストレスによりHPバーが【1.0】に減った。
​「ど、どうするんだよニャングル! あいつら、やる気満々だぞ!」
「落ち着いておくんなはれ。うちの領地には『ブルーシート絶対結界』があります。そう簡単には破られまへん」
​ ニャングルの言う通り、領地の外周はDr.ギアの科学と俺のスキルで強化された多重結界で守られている。
 だが、相手もプロの略奪者だ。
​ ドォォォォォン!!
​ モニターの中で爆炎が上がった。
 盗賊の一人が、肩に担いだ『魔導ロケットランチャー(どこかの国の軍事放出品)』を発射したのだ。
​「ギャアアアア! 爆発音! 鼓膜が! 心臓が!」
​ 俺は床に突っ伏して悶絶した。
 衝撃波は結界が完全に遮断しているはずなのに、ビビりすぎて過呼吸になりそうだ。
 HPが【0.8】まで減った。死ぬ。ショック死する。
​「お、おい! 結界の外層が揺らいどるで! あいつら、一点集中で攻撃してきよる!」
「嘘だろ!? 100均のブルーシートだぞ!? 最強じゃないのか!?」
「限度がありますわ! それに、あいつら……なんか『ドリル』みたいなもん持ち出してきよった!」
​ 盗賊団は手慣れていた。
 結界の魔力波長を乱す杭を打ち込み、物理的なドリルで強引にこじ開けようとしているのだ。
 ガガガガガガ! という不快な掘削音が、マイクを通してリビングに響く。
​「やめろぉぉぉ! 工事現場の騒音は俺の天敵なんだよぉぉぉ!」
「オーナー様! しっかりして! 今白目むいてましたで!?」
​ 絶体絶命のピンチ。
 俺がストレス死するか、結界が破られて惨殺されるか。
​ その時だった。
 リビングの扉が乱暴に開かれた。
​「やかましいわいッ!!」
​ 入ってきたのは、スパナを握りしめたDr.ギアだった。
 彼は血走った目で叫んだ。
​「ワシは今、メロンの糖度を測定する重要な実験中なんじゃ! 1ミクロンの振動も許されんのじゃ! 表で騒いでおるのはどこのどいつじゃ!」
​ 続いて、優雅に紅茶を飲んでいたはずのルナとネギオも現れた。
 ルナは頬を膨らませてプンプンしている。
​「もう! お昼寝の時間なのに、すごく空気が『淀んで』るわ! 外から汚い言葉がいっぱい飛んできて、果実たちが怯えてるじゃない!」
​「お嬢様の安眠を妨害するとは……万死に値しますね」
 ネギオがスチャッと青ネギを構えた。その切っ先は、かつてないほど鋭く尖っている。
​ 俺は、痙攣しながら彼らを見上げた。
 住民たちが、キレている。
 俺の命の危機に……ではなく、自分たちの『快適なスローライフ』を邪魔されたことに。
​「じ、爺さん、ルナさん……あいつらを、追い払ってくれるのか?」
​ 俺が虫の息で尋ねると、Dr.ギアはニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
​「追い払う? 甘いのう主よ。……せっかく開発した『新兵器』の実験台が向こうから来てくれたんじゃ。骨の髄までデータになってもらうぞ」
​「私も! 『お掃除』しなきゃね!」
 ルナが世界樹の杖を構え、無邪気(かつ邪悪)な笑顔を見せた。
​「ひぃっ……」
​ 俺は直感した。
 外の盗賊たちよりも、今ここにいる身内の方が、遥かに危険な存在なのではないかと。
​「オーナー様、耳栓しといた方がええです。……これは『虐殺』になりまっせ」
​ ニャングルがそっと俺の耳に、高性能ヘッドフォンを被せてくれた。
 モニターの向こうでは、盗賊たちが結界に小さな穴を開け、「開いたぞォォォ! 殺せェェェ!」と歓喜の声を上げて雪崩れ込んでくるところだった。
​ 彼らはまだ知らない。
 そこが『楽園』の入り口ではなく、世界最強の怪物たちが住まう『地獄』の一丁目だということを。
​「迎撃開始(パーティータイム)じゃああああ!!」
​ Dr.ギアが赤いボタンを叩き押した。
 俺の領地防衛戦――という名の、一方的な蹂躙劇が幕を開ける。
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