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EP 11
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家賃は世界征服でいいかしら? ~神と魔王の入居審査~
世界の頂点に立つ二柱の女神と魔王が、俺の『聖域』のリビングに座っている。
それだけで、空気中の魔力濃度が致死レベルに跳ね上がっていた。
現在の俺のHPは【0.3/1.1】。
ただ同じ空間で空気を吸っているだけで、肺が焼けるように痛い。これが『神気』と『瘴気』のプレッシャーか。
重苦しい沈黙(俺にとっては窒息寸前の時間)を破ったのは、不機嫌そうな竜王デュークだった。
彼は腕を組み、目の前の二人を睨みつけた。
「……何故来たのだ? ルチアナ、それにラスティア。我はただ、静かにラーメンのスープを煮込み、一番風呂に入りたいだけなのだが」
デュークの言葉には、せっかくの隠れ家を荒らされた不満が滲んでいた。
だが、対する二人は全く動じる様子がない。それどころか、あまりにも『くつろぎすぎ』ていた。
「あらぁ、独り占めは良くないわよ、デューク」
女神ルチアナは、どこで着替えたのか、タロー国製の『芋ジャージ(緑色)』姿だった。
彼女はソファの上であぐらをかき、袋からポテトチップス(うすしお味)を取り出して、パリポリと齧った。
「ん~、美味しい。タローちゃんの発明は罪深わね。……で、ここがそのタローちゃんが『あそこはマジでヤバイ(快適すぎて)』と絶賛していた場所ね」
「本当よ~」
魔王ラスティアもまた、色違いの『芋ジャージ(赤色)』を着ていた。
彼女は板チョコを豪快に齧りながら、深紅の瞳を細めた。
「抜け駆けはずるいわ。私だって仕事(世界征服の計画)に疲れてるのよ。たまにはこうして、チョコを食べてゴロゴロする権利があると思わない?」
世界の創造主と破壊者が、ジャージ姿でポテチとチョコを貪っている。
この光景を信者の人間たちが見たら、信仰心が崩壊して集団発狂するに違いない。
俺はDr.ギアが作ってくれた『酸素吸入器』を口に当てながら、必死に声を絞り出した。
「あ、あの……お二人は、ここに何をしに……?」
すると、ルチアナとラスティアは顔を見合わせ、声を揃えて言った。
「「住みに来たのよ」」
「ぶふっ!?」
俺はむせ返り、HPが【0.2】に減った。
住む? ここに?
勘弁してくれ。竜王とエルフだけでも胃が痛いのに、これ以上増えたら俺の寿命(ストレス)がマッハだ。
「お断りだッ!」
叫んだのはデュークだった。
「ここは定員オーバーだ! これ以上増えたら、風呂の順番待ちが発生するだろうが! それに、貴様らがいると気が休まらん!」
「あら、酷い言い草ね。……ねえ、家主さん?」
ルチアナが俺を見た。
美しい瞳の奥に、銀河のような光が渦巻いている。
「私たちを追い出すなんて、言わないわよね? もし追い出されたら……私、悲しくて『天変地異』を起こしちゃうかもしれないわ」
「私もねぇ。ストレスで魔界の軍勢をここに進軍させちゃうかも」
脅迫だ。
神と魔王による、世界規模の脅迫だ。
俺はガタガタと震えながら、顧問弁護士に助けを求めた。
「リ、リベラさん! 法的にどうにかして!」
リベラは冷や汗を流しながらも、毅然と『六法全書』を開いた。
「……法的には、居住権の侵害および脅迫罪に該当しますが……相手が『神』と『魔王』では、地上の法の適用外ですわ。ですが!」
彼女は眼鏡をクイッと押し上げた。
「ここは『聖域』。お客様として滞在されるなら、『対価(家賃)』を支払っていただく必要があります。タダで住まわせるわけにはいきません」
「家賃?」
ラスティアが首をかしげた。
「私、人間のお金なんて持ってないわよ? ……そうね、代わりに西の大陸を一つ滅ぼして、その土地の権利書をあげるわ」
「私は加護をあげましょうか? 『即死耐性(ただし副作用で一生眠り続ける)』とかどう?」
「いりませんッ!!」
タクミが食い気味に叫んだ。
どっちも迷惑すぎる。土地をもらっても管理できないし、一生眠り続けるのは実質死んでいるのと同じだ。
「お、お金がないなら……入居はお断りです……」
タクミが勇気を振り絞って言うと、ルチアナが「むぅ」と頬を膨らませた。
その瞬間、リビングの重力が倍加した。
「ぐぇっ!?」
タクミが床にめり込む。HP残り【0.1】。
これはいけない。入居を断れば、力ずくで(結果的にタクミを殺して)奪い取られる。
「ま、待っておくんなはれ!」
沈黙を保っていたニャングルが、電卓を弾きながら進み出た。
彼は商人の勘で、この絶体絶命のピンチを『最大の利益』に変える計算式を導き出していたのだ。
「お二方、金がないなら『労働』で払ってもらうっちゅうのはどうでっか?」
「労働?」
「へえ、創造神の私に働けと?」
空気が凍りつく。
だが、ニャングルは怯まずにタクミに耳打ちした。
(オーナー様! これチャンスでっせ! この二人の膨大な魔力を『聖域の動力源』にするんですわ! それに、彼女らがここに住めば、文字通り世界最強のセキュリティになりまっせ!)
……なるほど。
タクミは理解した。毒を以て毒を制す。
この災害級の二人を飼い慣らせば、盗賊どころか国家間の戦争すら手出しできない『真の安全圏』が完成する。
「……わ、分かりました。入居を認めます」
タクミは震える手で、リベラが作成した『入居契約書』を差し出した。
「ただし条件があります。家賃の代わりに、この聖域の『結界維持』と『魔力供給(発電)』を担当してください。あと、絶対に喧嘩しないでください。余波で俺が死ぬので」
「まあ、魔力を流すだけでいいの? それなら息をするのと同じだし、簡単ね」
「いいわよ。デュークが作ったラーメンを食べさせてくれるなら、そのくらいの用心棒(ガードマン)はやってあげる」
二人はあっさりと契約書にサインした。
ルチアナの署名は光り輝き、ラスティアの署名は黒い炎を上げていた。
「よし、契約成立ね! じゃあ早速、お風呂いただきまーす!」
「私はカラオケよ! おいタロー(の友達)、マイクを持ってきなさい!」
ドカドカと奥へ進んでいく二人。
残された俺とデュークは、深いため息をついた。
「……災難だったな、若造」
「……はい。でも、これで世界最強の要塞になったと思えば……」
俺はHPポーション代わりの紅茶を飲み干した。
神と魔王が住むアパート。
世界中の誰も手出しできない『聖域』の完成である。
……ただし、家主の胃痛を除いては。
世界の頂点に立つ二柱の女神と魔王が、俺の『聖域』のリビングに座っている。
それだけで、空気中の魔力濃度が致死レベルに跳ね上がっていた。
現在の俺のHPは【0.3/1.1】。
ただ同じ空間で空気を吸っているだけで、肺が焼けるように痛い。これが『神気』と『瘴気』のプレッシャーか。
重苦しい沈黙(俺にとっては窒息寸前の時間)を破ったのは、不機嫌そうな竜王デュークだった。
彼は腕を組み、目の前の二人を睨みつけた。
「……何故来たのだ? ルチアナ、それにラスティア。我はただ、静かにラーメンのスープを煮込み、一番風呂に入りたいだけなのだが」
デュークの言葉には、せっかくの隠れ家を荒らされた不満が滲んでいた。
だが、対する二人は全く動じる様子がない。それどころか、あまりにも『くつろぎすぎ』ていた。
「あらぁ、独り占めは良くないわよ、デューク」
女神ルチアナは、どこで着替えたのか、タロー国製の『芋ジャージ(緑色)』姿だった。
彼女はソファの上であぐらをかき、袋からポテトチップス(うすしお味)を取り出して、パリポリと齧った。
「ん~、美味しい。タローちゃんの発明は罪深わね。……で、ここがそのタローちゃんが『あそこはマジでヤバイ(快適すぎて)』と絶賛していた場所ね」
「本当よ~」
魔王ラスティアもまた、色違いの『芋ジャージ(赤色)』を着ていた。
彼女は板チョコを豪快に齧りながら、深紅の瞳を細めた。
「抜け駆けはずるいわ。私だって仕事(世界征服の計画)に疲れてるのよ。たまにはこうして、チョコを食べてゴロゴロする権利があると思わない?」
世界の創造主と破壊者が、ジャージ姿でポテチとチョコを貪っている。
この光景を信者の人間たちが見たら、信仰心が崩壊して集団発狂するに違いない。
俺はDr.ギアが作ってくれた『酸素吸入器』を口に当てながら、必死に声を絞り出した。
「あ、あの……お二人は、ここに何をしに……?」
すると、ルチアナとラスティアは顔を見合わせ、声を揃えて言った。
「「住みに来たのよ」」
「ぶふっ!?」
俺はむせ返り、HPが【0.2】に減った。
住む? ここに?
勘弁してくれ。竜王とエルフだけでも胃が痛いのに、これ以上増えたら俺の寿命(ストレス)がマッハだ。
「お断りだッ!」
叫んだのはデュークだった。
「ここは定員オーバーだ! これ以上増えたら、風呂の順番待ちが発生するだろうが! それに、貴様らがいると気が休まらん!」
「あら、酷い言い草ね。……ねえ、家主さん?」
ルチアナが俺を見た。
美しい瞳の奥に、銀河のような光が渦巻いている。
「私たちを追い出すなんて、言わないわよね? もし追い出されたら……私、悲しくて『天変地異』を起こしちゃうかもしれないわ」
「私もねぇ。ストレスで魔界の軍勢をここに進軍させちゃうかも」
脅迫だ。
神と魔王による、世界規模の脅迫だ。
俺はガタガタと震えながら、顧問弁護士に助けを求めた。
「リ、リベラさん! 法的にどうにかして!」
リベラは冷や汗を流しながらも、毅然と『六法全書』を開いた。
「……法的には、居住権の侵害および脅迫罪に該当しますが……相手が『神』と『魔王』では、地上の法の適用外ですわ。ですが!」
彼女は眼鏡をクイッと押し上げた。
「ここは『聖域』。お客様として滞在されるなら、『対価(家賃)』を支払っていただく必要があります。タダで住まわせるわけにはいきません」
「家賃?」
ラスティアが首をかしげた。
「私、人間のお金なんて持ってないわよ? ……そうね、代わりに西の大陸を一つ滅ぼして、その土地の権利書をあげるわ」
「私は加護をあげましょうか? 『即死耐性(ただし副作用で一生眠り続ける)』とかどう?」
「いりませんッ!!」
タクミが食い気味に叫んだ。
どっちも迷惑すぎる。土地をもらっても管理できないし、一生眠り続けるのは実質死んでいるのと同じだ。
「お、お金がないなら……入居はお断りです……」
タクミが勇気を振り絞って言うと、ルチアナが「むぅ」と頬を膨らませた。
その瞬間、リビングの重力が倍加した。
「ぐぇっ!?」
タクミが床にめり込む。HP残り【0.1】。
これはいけない。入居を断れば、力ずくで(結果的にタクミを殺して)奪い取られる。
「ま、待っておくんなはれ!」
沈黙を保っていたニャングルが、電卓を弾きながら進み出た。
彼は商人の勘で、この絶体絶命のピンチを『最大の利益』に変える計算式を導き出していたのだ。
「お二方、金がないなら『労働』で払ってもらうっちゅうのはどうでっか?」
「労働?」
「へえ、創造神の私に働けと?」
空気が凍りつく。
だが、ニャングルは怯まずにタクミに耳打ちした。
(オーナー様! これチャンスでっせ! この二人の膨大な魔力を『聖域の動力源』にするんですわ! それに、彼女らがここに住めば、文字通り世界最強のセキュリティになりまっせ!)
……なるほど。
タクミは理解した。毒を以て毒を制す。
この災害級の二人を飼い慣らせば、盗賊どころか国家間の戦争すら手出しできない『真の安全圏』が完成する。
「……わ、分かりました。入居を認めます」
タクミは震える手で、リベラが作成した『入居契約書』を差し出した。
「ただし条件があります。家賃の代わりに、この聖域の『結界維持』と『魔力供給(発電)』を担当してください。あと、絶対に喧嘩しないでください。余波で俺が死ぬので」
「まあ、魔力を流すだけでいいの? それなら息をするのと同じだし、簡単ね」
「いいわよ。デュークが作ったラーメンを食べさせてくれるなら、そのくらいの用心棒(ガードマン)はやってあげる」
二人はあっさりと契約書にサインした。
ルチアナの署名は光り輝き、ラスティアの署名は黒い炎を上げていた。
「よし、契約成立ね! じゃあ早速、お風呂いただきまーす!」
「私はカラオケよ! おいタロー(の友達)、マイクを持ってきなさい!」
ドカドカと奥へ進んでいく二人。
残された俺とデュークは、深いため息をついた。
「……災難だったな、若造」
「……はい。でも、これで世界最強の要塞になったと思えば……」
俺はHPポーション代わりの紅茶を飲み干した。
神と魔王が住むアパート。
世界中の誰も手出しできない『聖域』の完成である。
……ただし、家主の胃痛を除いては。
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