ドブ掃除してたら伝説の侍と勘違いされました〜小心者の俺、丼スキルと土下座でS級美少女たちと最強パーティ結成。え、コンビニのシフト?遅刻です〜

月神世一

文字の大きさ
5 / 27

EP 5

しおりを挟む
異議あり! 悪徳(?)弁護士リベラ
​ シェアハウス『タロウ・ハイツ』201号室。
 築30年、2LDK。家賃・金貨3枚。
​ そこに現在、男1人、女3人が暮らしている。
 字面だけ見ればハーレムだが、実態は「保育園」に近い。
​「ルナ! あんたまた廊下で『キノコ栽培』したでしょ! 踏んで滑ったじゃない!」
「ごめんなさいキャルルちゃん……食費の足しになるかと思って……」
「プロデューサーさん! 今日のパンの耳は『高級食パン』のものですよ! バターの香りがします!」
「よかったなリーザ……(涙)」
​ 流賀隆史は、リビングの隅で膝を抱えていた。
 災害級エルフ・ルナを拾ってから数日。
 彼女が良かれと思ってやる行動(室内に光合成ライト設置、水道から聖水を出す等)のせいで、隆史の胃壁は限界を迎えていた。
​ そんなある日の午後。
 玄関のドアがドンドンドン! と激しく叩かれた。
​「商業ギルドだ! いるのは分かっているぞ! 開けろ!」
​ 隆史は飛び上がった。
 商業ギルド。この街の経済を牛耳る組織だ。
​「ひぃっ! 借金取り!? いやNHK(集金)か!?」
「タカシ、あんた何かしたの?」
「してないでござる! ゴミ拾いしかしてないでござる!」
​ 恐る恐るドアを開けると、強面の男たちがズカズカと踏み込んできた。
 彼らはリビングにいたルナを指差した。
​「いたぞ! 通貨偽造の重要参考人、ルナ・シンフォニアだな!」
「え? 私?」
「先日、市場で使用された『大金貨』。あれが今朝、ただの石ころに戻ったという被害届が殺到している! 詐欺罪および通貨偽造罪で連行する!」
​ ガーン。
 隆史とキャルルは顔を見合わせた。
​「あいつ、やっぱりやりやがった……!」
「3日で戻るって設定、忘れてたのね……」
​ ルナはキョトンとしている。
 「あれ? おかしいな。永遠に輝くように魔法をかけたはずなのに……あ、賞味期限設定しちゃったかも?」
 悪気ゼロ。それが一番タチが悪い。
​「問答無用! 署まで来てもらおう。有罪なら……強制労働100年の刑だ!」
​ 男が手錠を取り出した瞬間。
​「――待ちたまえ」
​ 凛とした、しかし鈴を転がすような美しい声が響いた。
 開けっ放しの玄関に、一人の女性が立っていた。
​ 仕立ての良い紺色のスーツ。知的な銀縁メガネ。
 手にはなぜか、湯気の立つティーカップとソーサーを持っている。
​「誰だあんたは!」
「ご紹介にあずかりました。彼女の弁護人を務めます、ゴルド商会顧問弁護士、リベラ・ゴルドですわ」
​ リベラは優雅に紅茶を一口すすると、眼鏡をクイッと押し上げた。
​「彼女を連行する? 証拠隠滅や逃亡の恐れがない場合、不当な拘束は人権侵害ですわよ?」
「なっ、ゴルド商会だと……!?」
​ ギルドの男たちが怯む。
 大陸屈指の大企業『ゴルド商会』。その令嬢であり敏腕弁護士のリベラの名は、業界では「死神」として恐れられていた。
​「そ、そうは言っても! 偽造金貨は重罪だ!」
「偽造? 異議あり。彼女は『金貨』を作ったのではありません。**『金貨の形をした3日間限定の芸術的オブジェ』**を譲渡しただけです」
​ リベラは平然と言い放った。
​「えっ」
「受け取った商人が、それを勝手に通貨として流通させた……これは商人の鑑定眼不足、いわば過失ですわ。私のクライアント(ルナさん)は、純粋な善意で『綺麗な石』をあげただけ。そうですよね?」
​ リベラがルナにウインクする。
 ルナはよく分かっていないが、とりあえず頷いた。
 「うん! 綺麗な石だよ!」
​「屁理屈だ! 裁判になれば負けるぞ!」
「あら、裁判? 構いませんけれど……その場合、ゴルド商会は貴殿のギルドとの全取引を一時停止し、徹底的に争わせていただきますが?」
​ 脅迫である。
 法廷闘争どころか、経済制裁をチラつかせた。
​「ぐぬぬ……! だが、被害者が納得しないぞ!」
​ 場が膠着する。
 ここで、リベラが隆史に視線を送った。
 その目は語っていた。『さあ、貴方の出番ですわよ』と。
​ 隆史は悟った。
 これは、アレを出すしかない。
 刑事ドラマの定番、取調室の最終兵器。
​「……ギルドの御仁。話がこじれているようでござるな」
​ 隆史はトングをカチリと鳴らし、男たちの前に進み出た。
 善行ポイント、残り8000pt。惜しみなく使う時だ。
​「腹が減っては議論もできぬ。まずはこれを食すがよい」
「あぁ? なんだお前は」
​「食らえ! 勝利の女神の微笑み……『特製・カツ丼』!!」
​ ドンッ!!
​ テーブルの上に、黄金色に輝くカツ丼が人数分出現した。
 揚げたての豚カツ。半熟卵のトロトロ感。三つ葉の彩り。
 暴力的なまでの出汁の香りが、男たちの鼻腔を直撃する。
​「な、なんだこれは……美味そうすぎる……!」
「いかん! これは買収だ!」
「買収ではない。『試食』でござるよ」
​ 隆史がニヤリと(引きつった顔で)笑う。
 男たちは抗えなかった。箸を取り、カツ丼を口に運ぶ。
​「う、うめええええ!!」
「サクサクなのにジューシー! 卵が甘い! 故郷の母ちゃんを思い出す味だ……!」
​ 【カツ丼の効果:LUCK上昇・精神鎮静・自白促進】
​ 食べ終わる頃には、男たちの顔からは険が取れ、仏のような表情になっていた。
​「……俺たち、少しカリカリしすぎていたようだ」
「そうだな。あれは芸術作品だったのかもしれない……」
「よし、今回は厳重注意処分として処理しよう。なあ?」
​ カツ丼の魔力が、彼らの思考を強引にポジティブ(事なかれ主義)に書き換えたのだ。
 男たちは「ごちそうさん」と言い残し、満足げに帰っていった。
​ ***
​ 嵐が去ったリビング。
 リベラは紅茶を飲み干し、ふぅと息をついた。
​「ふふ、見事な手際でしたわね、サムライさん」
「いや……リベラ殿の弁舌のおかげでござる。助かった……」
​ 隆史はその場にへたり込んだ。
 リベラはニコリと微笑み、請求書のような紙を差し出した。
​「さて、弁護費用ですが」
「ひぃっ! 金はないでござる!」
「お金はいりませんわ。代わりに――」
​ 彼女の目が、スイーツ好きの乙女のそれに変わった。
​「貴方のスキルで、甘い丼を出してくださる? 『カツ丼』の味から推測するに、貴方なら作れるはずですわ。究極のスイーツ丼が!」
「す、スイーツ丼……?」
​ そんなメニュー、牛丼屋にはない。
 だが、スキル【丼マスター】は「丼」と名のつくあらゆる料理に対応している。
 隆史は想像力を総動員した。
​「……承知した。これぞ、甘味の極致!」
​ 「出でよ! 『プリン・ア・ラ・モード丼(生クリーム増し)』!!」
​ ボロンッ!
 丼鉢の中に、巨大なプリン、フルーツ、アイス、そして山盛りの生クリームが鎮座する、カロリーの爆弾が召喚された。
 もはや丼である必要性は皆無だが、器は丼だ。
​「まあっ……!!」
​ リベラが眼鏡を外した。
 一口食べた瞬間、彼女はとろけるような笑顔になり、頬を赤らめた。
​「んふぅ……♡ 甘い、濃厚……幸せ……!」
「(キャラが変わったでござる……)」
​ 完食した後、リベラはキリッとした表情に戻り(口元にクリームがついているが)、宣言した。
​「気に入りましたわ! 貴方たち、私がスポンサーになります。このアパートの家賃も、今後の食費も私が持ちましょう!」
「ほ、本当ですかリベラ様ーっ!?」
​ リーザが歓喜の声を上げる。
 キャルルもガッツポーズ。
​「その代わり、私の専属シェフ兼、トラブルシューターとして働いてもらいますわよ? 特に貴方のその『カツ丼』……今後の裁判や交渉で大いに役立ちそうですわ」
​ リベラの目が怪しく光る。
 隆史は背筋が寒くなった。
​(あれ? これ、借金取りより怖い人に捕まったのでは……?)
​ こうして。
 チーム・サスガに「最強の頭脳(兼スポンサー)」が加わった。
 金銭的な危機は脱した。
 だが、それは同時に、隆史が「裏社会の交渉人」として駆り出される日々の始まりでもあった。
​「あの、拙者、明日はコンビニの早朝シフトが……」
「あら、シフトごと店を買い取りましょうか?」
「やめて! 店長(国王)が喜ぶだけだからやめて!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

処理中です...