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EP 5
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ファミレスとタッチパネル、そして乙女心
「いらっしゃいませ~♪ おタバコは吸われますか~?」
出迎えたのは、黒猫のような耳と尻尾を揺らす、猫耳族のウェイトレスだった。
制服は日本のファミレスそのものだが、スカートから伸びる尻尾が忙しなく動いている。
「あ、禁煙席で。3名です」
「かしこまりました~。奥のボックス席へどうぞ~♪」
優太たちは案内された赤いソファ席に腰を下ろした。
テーブルの上には、見慣れたメニュー表と、呼び出しボタン。そして、四角い石板のような端末が置かれている。
「へえ、これが……」
優太は端末――魔導タッチパネルを手に取った。
画面に触れると魔力が反応し、メニュー画像が鮮やかに浮かび上がる。UI(ユーザーインターフェース)は完全に日本のそれだ。
「えぇっと、ハンバーグランチに、唐揚げ定食……カキフライもあるのか。本当だ、日本そっくりだ」
優太が迷いなく指先で画面を操作し、人数分の水を注文する様子を見て、向かいのキャルルが目を丸くした。
「優太さん、すごい! 本当に転生者なのね。私なんて、この機械の使い方覚えるのに3回も通ったのに!」
「尊敬しますわ……。わたくしなど、前回は画面に向かって大声で注文を叫んで、店中の注目を浴びてしまいましたもの」
リーザが頬を赤らめて恥じらう。
優太は苦笑しながら、手元の操作を続けた。
「いや……僕の世界じゃこれが当たり前だからね。出来て当然というか。(……タッチパネルに苦戦する昭和のおじいちゃんおばあちゃんと同じ反応だな)」
優太は心の中でツッコミを入れつつ、二人に尋ねた。
「で、注文は何にする? 今日は僕が奢る……いや、キャルルの奢りだったか」
「うん! 遠慮なく頼んで! 私はやっぱり……『デミグラス・ハンバーグランチ』! 目玉焼き乗せで!」
キャルルがメニューの写真を指差して目を輝かせる。
「わたくしは……『カキフライ定食』にしますわ。タルタルソース増量で」
「リーザ、海出身なのにシーフードいくんだ……」
「故郷の味が恋しいのです(じゅるり)」
リーザが涎を拭うのを見て、優太も自分の注文を決めた。
「じゃあ僕は……ガッツリ行きたいから『ロースとんかつ定食』にするか。あと、全員にドリンクバーセットを付けて……送信、と」
『ピロリーン♪ ご注文ありがとうございました』
電子音が鳴り、注文が厨房へ飛んだ。
【ピロン!】
優太の視界にだけ見えるウィンドウがポップアップした。
> システム通知
> 善行:空腹の女性たちへの食事提供の助力(及びスムーズな注文代行)
> 判定:小善
> 獲得ポイント:100 P
>
(……え、これだけでポイント入るのか? 注文しただけだぞ? まあ、ラッキーだけど)
優太がポイント加算に驚いていると、キャルルが身を乗り出してきた。
「ねえねえ、優太さん。さっき言ってた女神ルチアナ様から貰ったスキルって、一体どんなスキルなんですか?」
「あ、そういえば見せてなかったね」
優太は周囲を見回した。店内はガヤガヤとしており、少しなら魔法を使っても目立たないだろう。
「えっと……【地球ショッピング】って言って、僕の世界の品物を取り出せるんだ。こうやって……」
優太は空中に指を走らせ、ホログラムウィンドウを展開した。
『100円ショップ』のカテゴリを選択し、手頃なアクセサリーを探す。
(……これなら安いし、喜ぶかな)
「購入」
キラキラと光の粒子が集まり、優太の手のひらに小さなパッケージが現れた。
それは、赤と青のサテン生地で作られた、可愛らしいヘアリボンだ。
「はい、これあげる」
優太はパッケージを開け、二人にリボンを差し出した。
「えっ!? い、いいんですか!? 魔法で出した貴重な道具なんじゃ……」
キャルルが驚いて耳をパタパタさせる。
リーザも目を見開き、震える手でリボンを受け取った。
「す、凄いですわ! この光沢、この滑らかな手触り……! まさにユニークスキルの賜物……!」
(いや、これ2つで100円(100P)の安物なんだけど……)
優太は二人の反応の良さに気恥ずかしくなりながらも、手を振った。
「オーバーだなぁ。ただの飾りだよ。二人に似合いそうだったから」
「ありがとう、優太さん! 優しい!」
キャルルは満面の笑みを浮かべると、早速赤いリボンを手に取り、自慢の長い耳の付け根にキュッと結んだ。
白い毛並みに赤いリボンがよく映える。
「どう? どう? 似合う? 優太さん♡」
キャルルが首を傾げ、上目遣いで見つめてくる。
その愛くるしさは、鉄靴でオークの顎を砕く武闘家とは思えない破壊力だった。
「……あぁ、すごく可愛いよ。よく似合ってる」
優太が素直に褒めると、キャルルは顔を真っ赤にして、さらに嬉しそうに笑った。
「やったああ♡ 優太さんに褒められたぁ!」
一方、リーザは青いリボンを胸に抱きしめ、拝むように呟いていた。
「一生の宝物にしますわ……。これを付けてステージに立てば、きっとスパチャが倍増……いえ、ファンの視線を独り占めですわ……!」
二人の笑顔(と野望)を見ていると、再びウィンドウが反応した。
【ピロン!】
> システム通知
> 善行:他者への贈答(精神的充足の付与)
> 判定:小善
> 獲得ポイント:100 P
>
(使ったポイントが100Pで、戻ってきたのが100P……実質タダか。いや、二人の笑顔が見れた分、黒字だな)
優太は運ばれてきたドリンクバーのアイスコーヒーを飲みながら、この異世界も悪くないな、と微かに口元を緩めたのだった。
「いらっしゃいませ~♪ おタバコは吸われますか~?」
出迎えたのは、黒猫のような耳と尻尾を揺らす、猫耳族のウェイトレスだった。
制服は日本のファミレスそのものだが、スカートから伸びる尻尾が忙しなく動いている。
「あ、禁煙席で。3名です」
「かしこまりました~。奥のボックス席へどうぞ~♪」
優太たちは案内された赤いソファ席に腰を下ろした。
テーブルの上には、見慣れたメニュー表と、呼び出しボタン。そして、四角い石板のような端末が置かれている。
「へえ、これが……」
優太は端末――魔導タッチパネルを手に取った。
画面に触れると魔力が反応し、メニュー画像が鮮やかに浮かび上がる。UI(ユーザーインターフェース)は完全に日本のそれだ。
「えぇっと、ハンバーグランチに、唐揚げ定食……カキフライもあるのか。本当だ、日本そっくりだ」
優太が迷いなく指先で画面を操作し、人数分の水を注文する様子を見て、向かいのキャルルが目を丸くした。
「優太さん、すごい! 本当に転生者なのね。私なんて、この機械の使い方覚えるのに3回も通ったのに!」
「尊敬しますわ……。わたくしなど、前回は画面に向かって大声で注文を叫んで、店中の注目を浴びてしまいましたもの」
リーザが頬を赤らめて恥じらう。
優太は苦笑しながら、手元の操作を続けた。
「いや……僕の世界じゃこれが当たり前だからね。出来て当然というか。(……タッチパネルに苦戦する昭和のおじいちゃんおばあちゃんと同じ反応だな)」
優太は心の中でツッコミを入れつつ、二人に尋ねた。
「で、注文は何にする? 今日は僕が奢る……いや、キャルルの奢りだったか」
「うん! 遠慮なく頼んで! 私はやっぱり……『デミグラス・ハンバーグランチ』! 目玉焼き乗せで!」
キャルルがメニューの写真を指差して目を輝かせる。
「わたくしは……『カキフライ定食』にしますわ。タルタルソース増量で」
「リーザ、海出身なのにシーフードいくんだ……」
「故郷の味が恋しいのです(じゅるり)」
リーザが涎を拭うのを見て、優太も自分の注文を決めた。
「じゃあ僕は……ガッツリ行きたいから『ロースとんかつ定食』にするか。あと、全員にドリンクバーセットを付けて……送信、と」
『ピロリーン♪ ご注文ありがとうございました』
電子音が鳴り、注文が厨房へ飛んだ。
【ピロン!】
優太の視界にだけ見えるウィンドウがポップアップした。
> システム通知
> 善行:空腹の女性たちへの食事提供の助力(及びスムーズな注文代行)
> 判定:小善
> 獲得ポイント:100 P
>
(……え、これだけでポイント入るのか? 注文しただけだぞ? まあ、ラッキーだけど)
優太がポイント加算に驚いていると、キャルルが身を乗り出してきた。
「ねえねえ、優太さん。さっき言ってた女神ルチアナ様から貰ったスキルって、一体どんなスキルなんですか?」
「あ、そういえば見せてなかったね」
優太は周囲を見回した。店内はガヤガヤとしており、少しなら魔法を使っても目立たないだろう。
「えっと……【地球ショッピング】って言って、僕の世界の品物を取り出せるんだ。こうやって……」
優太は空中に指を走らせ、ホログラムウィンドウを展開した。
『100円ショップ』のカテゴリを選択し、手頃なアクセサリーを探す。
(……これなら安いし、喜ぶかな)
「購入」
キラキラと光の粒子が集まり、優太の手のひらに小さなパッケージが現れた。
それは、赤と青のサテン生地で作られた、可愛らしいヘアリボンだ。
「はい、これあげる」
優太はパッケージを開け、二人にリボンを差し出した。
「えっ!? い、いいんですか!? 魔法で出した貴重な道具なんじゃ……」
キャルルが驚いて耳をパタパタさせる。
リーザも目を見開き、震える手でリボンを受け取った。
「す、凄いですわ! この光沢、この滑らかな手触り……! まさにユニークスキルの賜物……!」
(いや、これ2つで100円(100P)の安物なんだけど……)
優太は二人の反応の良さに気恥ずかしくなりながらも、手を振った。
「オーバーだなぁ。ただの飾りだよ。二人に似合いそうだったから」
「ありがとう、優太さん! 優しい!」
キャルルは満面の笑みを浮かべると、早速赤いリボンを手に取り、自慢の長い耳の付け根にキュッと結んだ。
白い毛並みに赤いリボンがよく映える。
「どう? どう? 似合う? 優太さん♡」
キャルルが首を傾げ、上目遣いで見つめてくる。
その愛くるしさは、鉄靴でオークの顎を砕く武闘家とは思えない破壊力だった。
「……あぁ、すごく可愛いよ。よく似合ってる」
優太が素直に褒めると、キャルルは顔を真っ赤にして、さらに嬉しそうに笑った。
「やったああ♡ 優太さんに褒められたぁ!」
一方、リーザは青いリボンを胸に抱きしめ、拝むように呟いていた。
「一生の宝物にしますわ……。これを付けてステージに立てば、きっとスパチャが倍増……いえ、ファンの視線を独り占めですわ……!」
二人の笑顔(と野望)を見ていると、再びウィンドウが反応した。
【ピロン!】
> システム通知
> 善行:他者への贈答(精神的充足の付与)
> 判定:小善
> 獲得ポイント:100 P
>
(使ったポイントが100Pで、戻ってきたのが100P……実質タダか。いや、二人の笑顔が見れた分、黒字だな)
優太は運ばれてきたドリンクバーのアイスコーヒーを飲みながら、この異世界も悪くないな、と微かに口元を緩めたのだった。
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