スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

文字の大きさ
2 / 251

EP 2

しおりを挟む
初めてのスキルと、森のクマさん……じゃなくてウルフ
​「う……痛っ……」
​全身を襲う鈍痛と共に、太郎は目を覚ました。
背中に感じるのはゴツゴツとした土と草の感触。見上げれば、見たこともない巨大な樹木が天を覆い隠すように生い茂っている。
​「うぅ……ここは何処だ?」
​太郎はよろめきながら身体を起こし、周囲を見渡した。
鬱蒼とした森の中だ。空気はひんやりとしていて、どこからか得体の知れない獣の鳴き声が聞こえる。
​「えっと……まずはスキルの確認だよな。100円ショップ!」
​太郎が念じると、目の前の空中に半透明の青いウィンドウが「ポンッ」という軽い電子音と共に現れた。
​【 異世界100円ショップへようこそ! 】
​画面のレイアウトは、太郎が見慣れた通販サイトや、バイト先のセルフレジの画面にそっくりだった。
ご丁寧に『初回チュートリアル』というポップアップまで出ている。
​「説明書を読む、と……」
​《システム説明》
​地球の100円ショップ(および一部300円~500円商品)のラインナップを呼び出せます。
​商品の購入には『ポイント(P)』を使用します。基本レートは1商品=100Pです。
​ポイントチャージ:『素材回収ボックス』に現地の素材(石、草、魔物の死骸など)や不用品を入れることで、査定額に応じたポイントが加算されます。
​「何々……初回異世界転生ボーナスにより1000ポイント支給。後は素材を入れて加算されます……なるほど」
​現在の所持ポイントは【1000P】と表示されている。
とりあえず、この危険そうな森を歩くには手ぶらでは心許ない。
​「まずは……武器が要るよな」
​画面をスクロールし、『キッチン用品』→『包丁・ナイフ』のカテゴリをタップする。
ずらりと並ぶ、見慣れたステンレス製の包丁たち。
​【 万能三徳包丁:100P 】
[購入しますか? YES / NO]
​「YES」を押すと、光の粒子が集まり、太郎の手にパッケージに入った包丁が現れた。バリバリとパッケージを破り、柄を握る。
​「……これでどうするんだ? 僕は喧嘩なんてした事ないし……」
​頼りない輝きを放つ薄い刃を見つめ、太郎は溜息をついた。
剣道の経験すらない。あるのは、千切りと皮剥きのスキルだけだ。
​「取り敢えず、人に会わないと」
​太郎は包丁を右手に、あてどなく歩き出した。
​数時間後。
日が暮れ始め、森は急速に闇に包まれていった。
​「はぁ、はぁ……腹減った……」
​緊張と疲労で、空腹感が限界を超えていた。
太郎は少し開けた場所を見つけると、足を止めた。
​「とにかく何か食べよう。腹が減っては戦はできぬ、だ」
​周囲に落ちていた枯れ枝を集める。
そして再びスキルを発動。『アウトドア・行楽用品』と『食品』カテゴリを開く。
​着火用ライター(2本セット):100P
​天然水(2L):100P
​焼き鳥缶詰(たれ味):100P
​「よし、購入」
​[消費:300P / 残り:600P]
​チャキッ、ボッ。
ライターで枯れ葉に火をつけ、小枝をくべる。ゆらめく炎が、心細い太郎の心を少しだけ温めた。
​「飯が出せるってのは良いよな……」
​パカッ。缶詰を開けると、甘辛い醤油ダレの匂いが湯気と共に立ち上る。
一口食べると、化学調味料の味が身体に染み渡った。いつもの味だ。美味い。
​ガサッ……。
​「ん?」
​背後の茂みが揺れた。
風ではない。明らかに何かが踏みしめる音。
​「グルルルル……」
​闇の中から現れたのは、犬ではない。
体長1メートルはある、凶悪な牙を持った狼――ウルフだった。
その瞳はギラギラと赤く光り、口からはダラダラと涎を垂らしている。明らかに、焼き鳥の匂いではなく、太郎という「生肉」を狙っていた。
​「う、うわあああ! 来るなあ! 来るなあ!」
​太郎は腰を抜かしそうになりながら、三徳包丁をめちゃくちゃに振り回した。
​「あっち行け! シッシッ!」
​しかし、ウルフはそんな素人の動きなど意に介さない。
獲物の弱さを確信したのか、ゆっくりと、確実に距離を詰めてくる。
​「ひぃっ……!」
​殺される。食われる。
恐怖で思考が真っ白になりかけたその時、バイト先の防犯訓練の記憶が蘇った。
コンビニには、強盗対策のアレがある。
​「そ、そうだ!」
​太郎は震える指で空中のウィンドウを連打した。
『防犯・防災グッズ』カテゴリ!
​【 携帯用・防犯スプレー(カプサイシン配合):100P 】
​「出ろぉぉぉ!!」
​[消費:100P / 残り:500P]
​太郎の左手に、小さなスプレー缶が出現する。
ウルフが地面を蹴り、飛びかかってきたその瞬間。
​「食らえぇぇぇ!!」
​太郎はウルフの顔面に向けて、スプレーを全力で噴射した。
​プシュゥゥゥゥーーーッ!!
​高濃度のトウガラシ成分を含んだ赤い霧が、ウルフの目と鼻を直撃する。
​「ギャウウン!? キャン、キャイーン!!」
​鋭敏な嗅覚を持つウルフにとって、それは地獄の刺激だったのだろう。
ウルフは空中でバランスを崩し、地面にのたうち回って顔をこすりつけ始めた。
​「うわあああ!」
​太郎はその隙を見逃さなかった。
トドメを刺す? そんな勇気はない。
太郎はスプレーと包丁を握りしめ、一目散に逆方向へと逃げ出した。
​「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」
​枝が顔に当たろうが、ジーンズが泥だらけになろうが構わない。
ただひたすらに、暗闇の中を走り続けた。
​どれくらい走っただろうか。
肺が焼き切れそうになった頃、木々の隙間から温かな光が漏れているのが見えた。
​「あ……」
​森を抜けると、そこには畑と、いくつかの小さな家屋が並んでいた。
窓から漏れるランプの光。
​「む、村……?」
​助かった。
そう思った瞬間、張り詰めていた緊張の糸がプツリと切れた。
​「……よかった……」
​太郎はその場に崩れ落ち、泥のように意識を失った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

処理中です...