スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

文字の大きさ
10 / 46

EP 10

しおりを挟む
親バカなギルド長と、麗しの剣士ライザ
​商談がまとまったところで、ヴォルフは満足そうに頷いた。
​「よし」
​彼がパンッ、と乾いた柏手を打つと、執務室の奥の扉が開いた。
現れたのは、凛とした空気を纏う女性だった。
輝くような金髪を後ろで束ね、身体のラインにフィットした革鎧に身を包んでいる。腰には細身だが業物(わざもの)と分かる長剣を差していた。
​「お呼びですか? お父様」
​その声は鈴のように澄んでいるが、芯の通った強さを感じさせた。
​「ライザ! 久しぶり!」
​サリーが椅子から飛び上がり、その女性――ライザに駆け寄った。
​「あら、サリー? 元気してた? 村のおじ様は息災かしら」
​ライザは氷のような美貌をふわりと緩め、懐かしそうにサリーの手を取った。
​「うむ。再会を喜んでいるところ悪いが、本題に入ろう」
​ヴォルフが咳払いをすると、二人は居住まいを正した。
​「太郎さん。君に専属の護衛を付けたいと思う」
​「護衛、ですか?」
​太郎は目をぱちくりさせた。
ギルドの後ろ盾を得たとはいえ、わざわざ個人の護衛まで?
​「ああ。紹介しよう。我が娘、ライザだ。ライザは美しく、剣の腕も良く、何より気立てが優しくて料理もできる自慢の娘でね!」
​ヴォルフの顔が、先ほどの強面から一転、デレデレの父親の顔に崩れた。
​「それに小さい頃から剣術大会では優勝続きで、ファンクラブもあるくらいでな……!」
​「お、お父様! 恥ずかしいです! 業務中にそのような話を……!」
​ライザが顔を真っ赤にして抗議する。クールな女剣士の仮面が早くも剥がれ落ちていた。
​「いやぁ、すまんすまん。本当の事を言ったまでなのだが……コホン。ともかく、ライザを太郎さんの護衛にと思う」
​ヴォルフは再び表情を引き締め、真剣な眼差しで太郎を見た。
​「そんな……ライザさんのような凄い人が、僕の護衛? 勿体なくないですか?」
​太郎が恐縮して尋ねると、ヴォルフは首を横に振った。
​「太郎さん、君は分かって無いようだが……君の力は危険すぎるんだ」
​ヴォルフの声色が一段低くなる。
​「無限に物資を出せる能力。これは単なる商売道具ではない。君のスキルの使い方次第では、幾らでも金は稼げるし、一国の軍隊を維持する兵站(へいたん)すら一人で賄えてしまう。それは、国々のパワーバランスさえも変えてしまう力だ」
​「パワーバランス……」
​「そうだ。この情報が漏れれば、君は各国の諜報機関や、裏社会の組織に狙われる。最悪の場合、どこかの地下牢に幽閉され、死ぬまで物資を出させるだけの『生きた道具』として飼い慣らされることになるぞ」
​「そ、それは……」
​背筋が凍るような未来図に、太郎は言葉を失った。
​「その為の護衛だ。単に腕が立つだけでは駄目だ。金で買収されず、秘密を厳守し、私の命令を忠実に実行できる信頼の置ける護衛となれば……娘のライザ以外に考えられない」
​ヴォルフの言葉には、娘への絶対的な信頼と、太郎という「爆弾」を管理する責任感が滲んでいた。
​「良いんですか? 本当に、ライザさんの人生を僕なんかに……」
​「これは決定事項だよ。それに、ライザにとっても広い世界を見る良い機会だ。……ライザ、よいな?」
​ヴォルフが娘に問いかける。
ライザは恥じらいを捨て、騎士としての顔つきに戻っていた。彼女は太郎に向き直ると、その場に片膝をつき、恭しく頭を下げた。
​「父の……いいえ、ギルドマスターの命、謹んでお受けします」
​そして顔を上げ、太郎を真っ直ぐに見据えた。
​「太郎殿。これから貴方をしっかりお守りします。ギルドの為、そして世界の為に」
​「……分かりました。このライザ、今日より太郎殿の剣となりましょう」
​その瞳には一点の曇りもなかった。
​「やったぁ! ライザと一緒に冒険が出来るのね!」
​サリーが両手を挙げて歓声を上げた。
​「ふふ、サリーと一緒なら退屈しなさそうね」
​ライザが微笑む。
太郎は改めて、この頼もしすぎる仲間たちに頭を下げた。
​「よろしくお願いします! ライザさん。……頼りにしてます」
​こうして、現代知識を持つコンビニ店員、天真爛漫な村長の娘、そしてギルド長自慢の美人剣士。
奇妙で賑やかなパーティーがここに結成された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...