スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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EP 15

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画鋲の罠と、初勝利の瞬間
アルクス郊外の森。
木漏れ日が差し込む静かな場所だが、そこには確かな緊張感が漂っていた。
先頭を歩くライザが、ふと足を止めて膝をついた。彼女は地面の土を指ですくい、鼻を近づける。
「……糞が有りますね。まだ新しい。それにこの独特の獣臭……ゴブリン特有の匂いです。近くに居ます」
「そ、そうか……」
太郎は生唾を飲み込んだ。いよいよだ。
後ろを歩くサリーが、杖を握りしめて小さく呟く。
「ドキドキするぅ……。本番だと思うと、手が震えちゃう」
「大丈夫だ、サリー。僕たちは一人じゃない」
三人は足音を忍ばせ、慎重に茂みをかき分けた。
すると、少し開けた広場のような場所で、焚き火の跡を囲む三つの影を見つけた。
緑色の汚れた肌、突き出た腹、そして醜悪な顔。間違いなくゴブリンだ。錆びた剣や棍棒を弄んでいる。
「数は3体……」
ライザが小声で報告する。
正面から突っ込んでも勝てる相手だが、無傷で済む保証はない。
太郎はゴブリンたちの足元をじっと観察し、ある「事実」を確認すると、二人を手招きした。
「作戦が有るんだ」
「作戦ですか?」
「聞きましょう。リーダー」
太郎はウィンドウを静かに開き、『文具・事務用品』カテゴリをタップした。
【 透明ケース入り・二重画鋲(60個入り):100P 】
太郎の手のひらに、プラスチックケースに入った大量の画鋲(がびょう)が現れた。
現代日本ならどこの家庭にもある、針が上を向くタイプの金属製の留め具だ。
「これを使う。僕とサリーは後衛、ライザは前衛だ。ゴブリンたちが僕とサリーの所に来ようとしたら、これを踏むように……」
太郎は地面の草むらに、画鋲を広範囲にばら撒いた。草に隠れて金属の針は見えにくい。
「僕が弓でゴブリンを仕留めるか、挑発する。怒って突っ込んできたゴブリンが、この画鋲地帯を踏んで苦しんでいる時に……」
「ライザが斬り捨てて欲しい。その隙に、サリーは魔法で援護だ」
「なるほど……!」
ライザが目を見開いた。
「ゴブリンは靴なんて履いていませんからね。裸足でこれを踏めば、激痛で動けなくなる」
「えげつないけど、良い作戦ね! さすが太郎さん!」
サリーが悪戯っぽく笑う。
太郎は頷き、配置についた。
「よし……行くぞ!」
太郎は深呼吸をして、弓を引き絞る。
狙うは中央の個体。練習の成果を見せる時だ。
ヒュンッ!
放たれた矢は風を切り、ゴブリンの太ももに突き刺さった。
「ギャッ!? ギャギャッ!?」
突然の痛みにゴブリンが叫び声を上げる。
周囲の二体も敵襲に気づき、弓を構える太郎を見つけた。
「ギギャァァァ!!」
怒り狂ったゴブリンたちが、武器を振り上げて太郎たちに向かって猛ダッシュしてくる。
殺意の塊が迫ってくる恐怖。だが、太郎は動かない。
「今だ……!」
ゴブリンたちが、太郎が仕掛けた「デス・ゾーン」に足を踏み入れた瞬間。
ブスッ! ザクッ!
「ギャアアアアッ!?」
「ギッ!? ギィィィッ!!」
全体重をかけた足裏に、鋭利な金属針が深々と食い込む。
ゴブリンたちは悲鳴を上げ、たまらずその場で転げ回った。しかし転がった背中や尻にも画鋲が刺さり、阿鼻叫喚の地獄絵図となる。
「痛そぉ~……」
太郎は顔をしかめたが、手は緩めない。
「ライザ! サリー!」
「任せて!」
サリーが前に出て、杖を突き出す。覚えたての詠唱が響く。
「火の神よ、かの者を焼き尽くせ! 『フレイム・ショット』!!」
杖の先端から、バスケットボール大の火球が勢いよく放たれた。
動けないゴブリンたちの中心で火球が炸裂し、三体をまとめて火だるまにする。
「ギャッ、アアアアア!」
「行きます! 『闘気(オーラ)・一閃』!」
トドメとばかりにライザが飛び出した。
その身体と長剣は、青白い光――「闘気」に包まれている。身体能力を強化した彼女の速度は、太郎の目では追えないほど速い。
ザンッ!!
一瞬の交差。
銀光が閃き、火に巻かれて苦しむゴブリンたちの首が、三つ同時に宙を舞った。
ドサッ、ドサッ……。
ゴブリンたちの身体が崩れ落ち、動かなくなる。
完全なる勝利だ。
「はぁ、はぁ……」
静寂が戻った森の中で、太郎はへたり込みそうになるのを堪えて拳を握った。
「や、やった……!」
「やったわ! 私たちの勝ちよ!」
サリーが飛びついてくる。
ライザも剣の血糊を払い、鞘に収めると、満足そうに微笑んだ。
「お見事です、太郎殿。あの罠のおかげで、私は一太刀も受けることなく制圧できました」
「い、いやぁ。ちょっと卑怯だったかな?」
「勝敗は兵家の常です。使えるものは何でも使う。それが冒険者として生き残る秘訣ですよ」
ライザの言葉に、太郎は大きく頷いた。
100円の画鋲が、魔物を倒す武器になった。
その事実は、この異世界で生きていく太郎にとって、何よりの自信となった。
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