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EP 17
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銀貨5枚の重みと、ささやかな祝勝会
夕暮れ時、太郎たちは冒険者ギルドへと戻ってきた。
朝の重い足取りとは打って変わり、その表情には達成感が満ちていた。
「お疲れ様です。ゴブリン討伐の報告ですね」
受付カウンターで、太郎は証明部位であるゴブリンの耳が入った袋を提出した。
受付嬢は慣れた手つきで中身を確認し、依頼書に完了のスタンプを押す。
「はい、確かに3体分の討伐を確認しました。こちらが報酬になります」
チャリン、と革のトレイに置かれたのは、鈍く光る銀貨が5枚。
「ありがとうございます!」
太郎はその銀貨を震える手で受け取った。
日本円にして約5000円。
コンビニバイトの日当にも満たない金額かもしれないが、これは太郎が異世界で、自分の力と仲間の協力で稼いだ最初のお金だ。
「やった……報酬だ……!」
太郎は銀貨の冷たい感触と重みを噛み締めた。
「おめでとうございます、リーダー」
ライザが横から声をかける。しかし、その視線は現実的だった。
「ただ、収支としてはトントンといったところですね。私たちが泊まっている『銀の月亭』の宿泊費が、三人部屋で一泊・銀貨2枚。食事代や装備のメンテナンス費を考えると、ゴブリン退治だけではギリギリの生活です」
「うっ……そ、そうだね」
太郎は現実に引き戻された。
命がけで戦って、報酬は宿代と飯代で消える。冒険者稼業の世知辛さを痛感する。
「もう! ライザったら、すぐに計算ばっかり!」
サリーが頬を膨らませて割って入った。
「金額なんてどうでもいいの! 大事なのは、私たちが無傷で勝って、こうして帰ってこれたこと! パーティー初勝利よ!」
「ふふ、そうね。サリーの言う通りだわ。ごめんなさい、水を差すようなことを言って」
ライザも表情を緩め、太郎に向き直った。
「リーダー、初勝利を祝いましょう」
「そうだね。今日はパーッと……と言いたいところだけど、予算の範囲内でレストランで祝おう!」
「賛成ー!」
三人は再び、昼間訪れた『大樹の梢亭』へと向かった。
夜の店内は、仕事終わりの商人や冒険者たちでさらに賑わっていた。
「かんぱーい!」
木製のジョッキをぶつけ合う。
太郎とサリーは果実水、ライザはエール(麦酒)だ。
テーブルには、温かいシチューと、焼きたてのパン、そしてローストチキンが並んでいる。
銀貨5枚の報酬は今夜の支払いでほとんど消えてしまうだろうが、今の太郎たちには、この温かい食事と笑顔の方が価値があった。
「ん~っ! 生きて帰ってきて食べるご飯は最高ね!」
サリーがパンをシチューに浸して頬張る。
「ええ。それに、今日の勝利は太郎さんの作戦勝ちです。あの画鋲の罠……単純ですが、理にかなった素晴らしい戦術でした」
ライザがエールの泡を拭いながら称賛する。
「いやぁ、二人がいてくれたからだよ。僕一人じゃ、罠にかける前にやられてた」
太郎は照れくさそうに頭をかいた。
「でも、次はもっとうまくやれる気がする。素材も手に入ったし、100円ショップのアイテムでもっと色々なことができるはずだ」
「楽しみにしてますよ、ドラえ……じゃなくて、太郎さん!」
「サリー、その名前は違う世界の猫型ロボットだから」
「ふふっ」
三人の笑い声が、賑やかな酒場に溶けていく。
微々たる報酬と、大きな達成感。
佐藤太郎の異世界での冒険は、まだ始まったばかりだが、その前途は(少なくとも食生活においては)明るい予感に満ちていた。
夕暮れ時、太郎たちは冒険者ギルドへと戻ってきた。
朝の重い足取りとは打って変わり、その表情には達成感が満ちていた。
「お疲れ様です。ゴブリン討伐の報告ですね」
受付カウンターで、太郎は証明部位であるゴブリンの耳が入った袋を提出した。
受付嬢は慣れた手つきで中身を確認し、依頼書に完了のスタンプを押す。
「はい、確かに3体分の討伐を確認しました。こちらが報酬になります」
チャリン、と革のトレイに置かれたのは、鈍く光る銀貨が5枚。
「ありがとうございます!」
太郎はその銀貨を震える手で受け取った。
日本円にして約5000円。
コンビニバイトの日当にも満たない金額かもしれないが、これは太郎が異世界で、自分の力と仲間の協力で稼いだ最初のお金だ。
「やった……報酬だ……!」
太郎は銀貨の冷たい感触と重みを噛み締めた。
「おめでとうございます、リーダー」
ライザが横から声をかける。しかし、その視線は現実的だった。
「ただ、収支としてはトントンといったところですね。私たちが泊まっている『銀の月亭』の宿泊費が、三人部屋で一泊・銀貨2枚。食事代や装備のメンテナンス費を考えると、ゴブリン退治だけではギリギリの生活です」
「うっ……そ、そうだね」
太郎は現実に引き戻された。
命がけで戦って、報酬は宿代と飯代で消える。冒険者稼業の世知辛さを痛感する。
「もう! ライザったら、すぐに計算ばっかり!」
サリーが頬を膨らませて割って入った。
「金額なんてどうでもいいの! 大事なのは、私たちが無傷で勝って、こうして帰ってこれたこと! パーティー初勝利よ!」
「ふふ、そうね。サリーの言う通りだわ。ごめんなさい、水を差すようなことを言って」
ライザも表情を緩め、太郎に向き直った。
「リーダー、初勝利を祝いましょう」
「そうだね。今日はパーッと……と言いたいところだけど、予算の範囲内でレストランで祝おう!」
「賛成ー!」
三人は再び、昼間訪れた『大樹の梢亭』へと向かった。
夜の店内は、仕事終わりの商人や冒険者たちでさらに賑わっていた。
「かんぱーい!」
木製のジョッキをぶつけ合う。
太郎とサリーは果実水、ライザはエール(麦酒)だ。
テーブルには、温かいシチューと、焼きたてのパン、そしてローストチキンが並んでいる。
銀貨5枚の報酬は今夜の支払いでほとんど消えてしまうだろうが、今の太郎たちには、この温かい食事と笑顔の方が価値があった。
「ん~っ! 生きて帰ってきて食べるご飯は最高ね!」
サリーがパンをシチューに浸して頬張る。
「ええ。それに、今日の勝利は太郎さんの作戦勝ちです。あの画鋲の罠……単純ですが、理にかなった素晴らしい戦術でした」
ライザがエールの泡を拭いながら称賛する。
「いやぁ、二人がいてくれたからだよ。僕一人じゃ、罠にかける前にやられてた」
太郎は照れくさそうに頭をかいた。
「でも、次はもっとうまくやれる気がする。素材も手に入ったし、100円ショップのアイテムでもっと色々なことができるはずだ」
「楽しみにしてますよ、ドラえ……じゃなくて、太郎さん!」
「サリー、その名前は違う世界の猫型ロボットだから」
「ふふっ」
三人の笑い声が、賑やかな酒場に溶けていく。
微々たる報酬と、大きな達成感。
佐藤太郎の異世界での冒険は、まだ始まったばかりだが、その前途は(少なくとも食生活においては)明るい予感に満ちていた。
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