スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

文字の大きさ
30 / 46

EP 30

しおりを挟む
英雄の凱旋、そしてA級への特進
ルルカ村での激闘を終え、太郎たちがアルクスの冒険者ギルドへ戻ったのは深夜近くだった。
しかし、ギルドの灯りは消えていなかった。
先行して戻った冒険者たちから既に情報は伝わっており、ギルド内は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
執務室に通された三人を、ヴォルフが椅子を蹴り飛ばす勢いで出迎えた。
「何だと!? グリフィンを倒しただと!?」
ヴォルフの隻眼が限界まで見開かれている。
グリフィンは、騎士団が小隊を組んで挑むようなSランク級の魔獣だ。それを、たった三人のパーティーが、しかも村の防衛戦のついでに討ち取ったなど、常識では考えられない。
「えぇ、まぁ……。なんとかなりました」
太郎は頬をかきながら答えた。
激戦の疲労で泥だらけだったが、その瞳には自信が宿っていた。
「……全く。なんて輩だ」
ヴォルフは呆れたように天井を仰ぎ、次の瞬間、机をバンッ! と叩いて立ち上がった。
「よおし! ギルドマスターとして宣言する! 今日から貴様らは『A級冒険者』だ! 手続きや規定のランクアップ試験は全て免除する!」
「ええっ!?」
「そして今回の緊急依頼の達成報酬、およびグリフィン討伐の報奨金……合わせて金貨100枚だ! 持っていけ!」
ドサッ!!
重厚な革袋が机の上に置かれた。
金貨100枚。日本円にしておよそ100万円。
庶民なら数年は遊んで暮らせる大金だ。
「え、A級冒険者!? しかも金貨100枚!?」
「う、嘘でしょ……? 夢じゃないわよね?」
サリーが震える手で頬をつねる。
Fランクから一気にA級への5階級特進。前代未聞の昇格人事だ。
「やったわね、サリー、太郎さん。これでもう、初心者扱いされることはありませんわ」
ライザが誇らしげに微笑む。彼女にとっても、自分の護衛対象がこれほどの成果を挙げたことは鼻が高い。
「僕たちが、A級冒険者……」
太郎は呆然と呟いた。
数週間前まで、コンビニで廃棄弁当の処理をしていた自分が、異世界でトップクラスの冒険者になったのだ。
リュックの中の100円グッズと、仲間との絆が、ここまで連れてきてくれた。
「流石、ワシが見込んだ男だわい! ガハハハ!」
ヴォルフが豪快に笑い、太郎の背中をバシバシと叩いた。そして、小声で耳打ちする。
「(あの矢を使ったな? まぁ、グリフィン相手じゃ仕方あるまい。よく村を守ってくれた。礼を言うぞ)」
「(……はい。ありがとうございます)」
二人が視線を交わし、頷き合う。
ヴォルフは執務室の扉を開け放ち、階下のホールに向かって叫んだ。
「野郎共! 聞けぇ! ここにいる『チーム・タロウ』が、ルルカ村を救い、グリフィンの首を取った英雄たちだ!!」
うぉぉぉぉぉぉぉ!!
ギルド中が揺れるような歓声が上がった。
冒険者たちがジョッキを掲げ、口笛を吹く。
「すげぇぞ! 新人!」
「いや、A級の兄ちゃん!」
「俺たちの命の恩人だ! 乾杯!!」
もはや誰も、太郎の珍妙な服装を笑う者はいなかった。
そこにあるのは、強者への純粋な敬意と称賛のみ。
「ありがとうございます!」
太郎は照れくさそうに、しかし堂々と手を振って応えた。
佐藤太郎の異世界での名は、この夜、アルクスの街に深く刻まれたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...